ダンスインストラクターとは
ダンスにはさまざまなジャンルがあり、各ジャンルのインストラクターを総称してダンスインストラクターといいます。ストリートダンスのなかにも、ヒップホップやジャズ、ロック、ハウスなど細かなジャンルがあるほか、社交ダンスやサルサ、タンゴなどのペアダンス、タップダンス、フラダンス、チアダンスなど、踊りのスタイルは多岐にわたります。各ジャンルで習得すべき基本のステップや踊りの型はまったく異なるため、ダンスインストラクターは得意の分野で自分のレッスンを担当しています。
ダンスインストラクターの仕事内容
ダンスインストラクターの仕事内容は、その名の通り「ダンスを教える」ことです。1コマ(1時間~2時間ほど)のレッスンを担当し、受講生のダンス技術の習得を目指します。教えるとひとことで言っても、子どもの習い事としてダンスを教えるのか、中高大学生のダンスチームに対して教えるのか、社会人が趣味のために続けるダンス教室(スタジオ)で教えるのか、あるいはプロのダンサーに振付をするのか、その対象によって求められるスキルやレッスンの進行は異なります。
レッスン時間では、体の筋肉をほぐすウォームアップやストレッチからはじめ、必要であれば腹筋などの筋力トレーニングを終えたあとに、ダンスで必要なステップや、スタジオ全体を使って行うクロスフロア(曲に合わせてステップやターンの練習を行うレッスン)、ターンやキック、ジャンプといった技の練習を行います。教えている対象が、ダンスコンペティションや発表イベントなどに向けて練習を重ねている場合は、特定の振りをつけていく振り入れと踊り込みの時間を設けます。
レッスン時間外での業務としては、担当しているレッスンのゴール設定や年間スケジュール(どの時期にどのコンペティションやイベントに出演するか)の策定、コンペティションやイベントへのエントリー業務、踊る曲の選定や編曲、振りとフォーメーション(ダンスの隊形)作り、衣装の選定と発注業務、ステージのリハーサルや本番の引率などがあります。レッスン進行自体は、ダンススキルがあれば体ひとつでできる仕事ですが、レッスンの前後には多くの時間とエネルギーが必要です。
ダンスインストラクターの働き方と求人
ダンスインストラクターがレッスンを持つ場合、本格的なダンサーの輩出を目指すダンススクールや、スポーツクラブ、カルチャースクールなどと講師契約をして担当クラスを受け持つ場合と、自身でスタジオを借りて教室を運営する場合とがあります。
講師契約をする場合、スクールを運営する会社から指導料として給与が払われます。個人で会社と契約するケースもありますし、ダンスインストラクター人材の派遣会社に登録して仕事をもらうケースもあります。一定のマージンが引かれた額が払われますが、生徒集めの広告宣伝や生徒との金銭的なやりとりなど、レッスン進行以外の業務をスクール運営側が行うため、教えることだけに集中できるメリットがあります。
自分で教室を運営する場合、月謝を直接生徒からもらいます。その中から、スタジオ代をはじめとした経費精算を行い、残った分から自身の給与が受け取れます。生徒が増えれば増えるほど、受け取れる指導料が増えるメリットがありますが、生徒集めから自分ですべてを行うため、レッスン外の業務も多くなります。
ダンスインストラクターになるために・必要な資格
ダンスインストラクターになるために必要な資格はありません。資格よりも、ダンスの経験年数や大会やコンテストでの入賞実績のほか、オーディションを受けて出演したミュージックビデオ、テレビCM、映画、ミュージカル、音楽番組やライブなどでのバックダンサー実績など、ダンサーとしての活動履歴が、もっとも大きなセールスポイントとなります。 講師を採用するダンススタジオやスクールとしては、「こんな経歴の先生がダンスを教えてくれる」という宣伝効果の高い人材ほど、生徒集めにおいて有利になるからです。
各ジャンルには協会があり、それらの協会がインストラクター資格を出しているケースもあります。例えば、多くのアーティストを輩出する「エイベックス・アーティストアカデミー」の「JSDA公認ダンスインストラクターコース」など、インストラクター養成に力を入れているスクールもあります。
インストラクターの養成講座を受ける最大のメリットは、インストラクターになるために資格がある方が有利というよりも、ダンサーとして行ってきたことを体系的に学びなおすことができる点にあります。「ダンスがうまい」ことと、「ダンスをうまく教えられる」ことは違います。ダンスインストラクターを目指すには、まずはダンサーとしての経験を積むことが重要です。インストラクターの資格取得は、「教える」「伝える」ノウハウを習得するための学習手段だと考えた方が良いでしょう。
ダンスインストラクターになるための学校と卒業後の進路
ダンスインストラクターを目指すには、まずダンサーとして実力をつける必要があります。ダンスを学べる学校としては、大阪ダンス&アクターズ専門学校、専門学校東京アナウンス学院(ダンスパフォーマンス科)、日本女子体育大学(舞踏学専攻)、尚美学園大学(ダンスコース)など、大学・専門学校を含め全国にあります。卒業後は、すぐにダンスインストラクターとしてスタジオや講師派遣会社と業務契約を結んで働くケースもありますし、オーディションを受けて劇団や芸能事務所に所属したり、テーマパークでのダンサーとして就職したりするケースもあります。ダンサーとしてさまざまなオーディションに挑戦し、作品やメディア出演で報酬をもらいながら、週に何コマかのインストラクター業を兼業している人も多くいます。
固定でレッスンを持つほかに、振付家(コリオグラファー)として、「このCM作品の振付」「このアーティストの楽曲の振付」など、プロジェクトごとに仕事が舞い込むケースもあります。このような仕事は、ダンサーとしての実績と振付した作品の高い評価が求められます。
ダンスインストラクターの雇用形態と給与
インストラクターの多くは、ダンススタジオやカルチャースクール、スポーツクラブとの講師業務契約を交わすフリーランスです。各スクールと契約している講師派遣会社と業務契約を交わすケースもあります。時給よりも1コマでいくら、という「コマ給」で支払われることが多いです。大会などの外部への引率時には引率費が支払われたり、振付を担当した際に振付料が加わったりと、契約内容によって給与額は異なります。
また、副業を可とする企業が増えているため、普段は正社員、契約社員として会社に勤めながら、レッスンのある週末にインストラクターとして活動する、パラレルキャリアの働き方も広がっていくかもしれません。