日本語教師になるには?転職活動であると便利な資格と求人の傾向

日本語教師とは

スーツの男性

(出典) photo-ac.com

日本語教師は、日本語を母語(幼少時に自然に獲得する言語)としない人たちに日本語を教える仕事です。海外・国内の語学学校や、教育機関が主な活躍の場です。

生徒には外国人はもちろん、海外で生まれ育ったなどの理由で日本語が得意でない日本人もいます。大人のほか、母語がまだ十分に発達していない子どももいるでしょう。日本国内では、在留外国人の増加に伴い、日本で生活するための日本語学習ニーズが増えています。

日本語教師は、国籍・年齢・学ぶ目的・習得レベルなど、それぞれの生徒に適切な教材・教案を準備し、1人1人の進度を見ながら目指しているレベルに導くのが一般的です。

また、ただ「言葉を教える」だけでなく、日本の生活習慣や価値観を伝える場面が多くあります。同時に、生徒の生活習慣や価値観を尊重し、生徒との信頼関係を築くことも、日本語教師の業務に不可欠な要素でしょう。

資格が不要という点では誰でもなれますが、実際はそう簡単な仕事ではありません。

具体的な仕事内容

生徒に実際に教える前の重要な準備として、コースデザインがあります。コースデザインは、学習目的・学習ニーズ・現在のレベル・学習に使える時間などから、教える項目や使用する教授法を、生徒に合わせて決めることです。

例えば、短期の旅行を楽しみたい生徒と、日本の大学院に留学したい生徒では、当然教える内容も方法も異なります。生徒の目的を達成するために最適な計画を立てるのが、日本語教師の重要な業務の1つです。

語学学校などの教育機関では、45〜90分を1コマとし、午前中に2コマ、午後に2コマなど、1日に複数コマを担当することが多くなっています。

授業時間の前後にも、準備・教材作成・採点などの作業が発生するため、実際にかかる時間は1コマに対し数時間ということもあるようです。教材は、指定のものがある場合が多いものの、副教材として教師が自作することもあります。

日本語教師の活躍場所と仕事内容の違い

日本語教師の働く場所は、いくつかあります。「専門学校の教師」や「教育機関の教師」として働くことが一般的でしょう。

専門学校では、日本語の勉強がメインです。年齢を問わず、日本語を勉強したいと考える人が生徒として通っています。「英会話教室」や「語学の専門学校」のような位置付けです。

小学校、中学校などの教育機関では、日本語教育を含む全般的な基礎教育が行われます。日本語教師は、その中で日本語教育を専門に扱う教師です。

日本だけでなく、海外で活躍するシーンも多いでしょう。外国人が母国で日本語を学んだり、海外にいる日本人が通ったりと、日本語教育は多くの国で行われています。

日本語教師に向いている人

勉強する女性

(出典) photo-ac.com

日本語教師は、正しい日本語を教える仕事です。どのような人に適正があるのでしょうか?日本語教師に必要な能力や、備えておきたいスキルを紹介します。

語学スキルがある人

日本語教師には、複数の言語でのコミュニケーションが求められます。教える相手の母国語でコミュニケーションが取れるかどうかは、日本語教師に必要とされる重要なスキルです。語学スキルは大きな武器となるでしょう。

国際交流基金による「海外の日本語教育の現状 2018年度日本語教育機関調査」では、中国・インドネシア・韓国・オーストラリアなど、日本語を学ぶ人の多い国が発表されています。

日本語を学びたいと考える人が多い地域では、日本語教師の需要があります。需要の高いエリアの言葉だけでなく、第2言語として使う国が多い英語を習得するのもよいでしょう。

各国の文化に興味がある人

日本語教師は、国の文化に興味を持つ人に向いています。異文化が好きな人も、日本文化が好きな人も日本語教師としての適性は高いでしょう。

「日本の文化が好きで諸外国にもよさを知ってもらいたい」と考える人は、言葉を教えることでやりがいを感じられます。それだけではなく、「日本語」という文化が広まっていく達成感が味わえるでしょう。

「外国の文化が好きで異国の人と交流したい」と考える人は、多くの国の人とふれあう仕事に魅力を感じるはずです。日本に興味を持つ各国の人とのふれあいは、外国文化を吸収するきっかけになります。生徒たちと交流していくうちにグローバルな感覚を養えるでしょう。

コミュニケーション能力が高い人

違う言語を母国語として扱う人同士が集まる日本語学校では、コミュニケーション力が求められます。同じ言語を扱う人同士よりも、交流には努力が必要です。

特に、日本語学校に通い始めたばかりの生徒たちは、日本語でのコミュニケーションが堪能とはいえません。身振り手振りや、簡単な共通語で意思の疎通をはかる必要もあるでしょう。コミュニケーション能力が高い人は、自然と相手に合わせた交流ができます。

生徒に安心感を与え、適切な指導をするにはコミュニケーションを取る力が大切になってくるはずです。人とふれあうのが好きで、言葉が通じにくい相手とも工夫しながら交流できる人は、日本語教師に向いています。

日本語教師になるには

図書館で勉強する女性

(出典) photo-ac.com

日本語教師になるためには、教員免許をはじめとした資格は特に必要ありません。日本語が話せて、教える相手がいれば、誰でも日本語教師になれます。

ただし、日本語を教えるには、言語的な専門知識はもちろん、社会学・心理学・教育学などの知識も必要です。そのため実際の求人では、以下のいずれかの条件を満たすことが求められるケースが少なくありません。

  • 日本語教育能力検定試験の合格
  • 大学での日本語教育主専攻(副専攻も可のことが多い)修了
  • 教育機関での420時間の日本語教師養成講座修了

日本語教育能力検定試験の概要

日本語教育能力検定試験とは、「公益財団法人日本国際教育支援協会」が実施する、日本語教育に携わるにあたって必要とされる基礎的な知識・能力を検定する試験です。

年に1回10月ごろに、札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・広島・福岡の7会場で実施されます。2019年以降は受験者が1万人を超え、合格者は2,500人程度です。2019〜2021年の試験では、合格率28〜31%で推移しています。受験資格には、特に制限はありません。

試験はI〜IIIで構成されています。

  • 日本語教育の実践につながる基礎的な知識を測定
  • 試験Iで求められる「基礎的な知識」および試験IIIで求められる「基礎的な問題解決能力」について音声を媒体とした出題形式で測定
  • 出題範囲の区分横断的な設問により熟練した日本語教員の有する現場対応能力につながる基礎的な問題解決能力を測定

出題範囲は広範囲にわたるので、合格にはかなりの学習量が必要になるでしょう。そのため、大学で日本語教育を専攻・修了した人や、教育機関で420時間の日本語教師養成講座を修了した人が受験することが多いようです。

大学の日本語教育専攻、教育機関での420時間養成講座

日本語教育専攻課程を置く大学は、全国に180校以上あります。日本語を学ぶ留学生が身近にいることや、教育実習の環境が充実しているのも、大学で日本語教育を学ぶメリットです。

一方、教育機関での420時間養成講座は、大学に比べてかかる費用や時間を抑えられる点が大きな魅力です。日本語学校が併設されていることが多く、教育の現場が身近にあることも利点でしょう。

中には、通学せずオンラインで学習可能な講座もあります。しかし、日本国内の日本語教育機関の求人において、応募資格として認められない場合があります。講座の受講を検討するときは確認が必要です。

日本語教師の求人について

黒いスーツの女性

(出典) photo-ac.com

実は、日本語教師を職務別に分類すると、全体の50%をボランティアが占めています。次いで非常勤講師が33.5%、常勤講師は14.1%です。

職業としての日本語教師は、業務の専門性や難易度に対して、待遇面で恵まれているとはいえません。求人も、国内の日本語学校などでは、常勤よりも非常勤の募集が多い傾向にあります。

日本語学校の求人の場合、選考は「写真付きの履歴書」「職務経歴書」「応募資格を満たすことを証明する書類(修了証のコピーなど)」を送付します。書類選考の通過後、模擬授業を行ったり、面接を受けたりといった流れが多いようです。

応募条件は、以下のいずれかを満たすことが最低限であることがほとんどです。

  • 日本語教育能力検定試験の合格
  • 大学での日本語教育主専攻(副専攻も可のことが多い)修了
  • 教育機関での420時間の日本語教師養成講座修了

日本語教育の実務経験は、不要の場合もありますが、かなり重視される要素といえます。

また、国内外の大学の専任講師の募集もありますが、多くは修士以上の学歴や、数年以上の日本語教育実務経験が応募資格となっており、門戸は狭いようです。

出典:
外務省「日本語学習者の多い国・地域」
文化庁「日本語教育実態調査」
公益財団法人 日本国際教育支援協会「日本語教育能力検定試験」
文化庁「日本語教師養成を実施する大学」