診療放射線技師になるのは「やめとけ」といわれることがあります。なぜ、一部では避けた方がよい職業と認識されているのでしょうか?この記事では、その理由を解説するとともに、どのようなやりがいや魅力があるのか、年収なども含めて紹介します。
診療放射線技師は「やめとけ」の理由と誤解
診療放射線技師は「やめとけ」と言われてしまう理由は何でしょうか?理由と、その背後にある誤解について解説します。
地域によっては就職先が少ない
診療放射線技師の主な就職先は、CTやMRIなどの検査機器を備えた医療機関です。そのため、一般的な内科や小児科などのクリニックへは、就職する機会はほとんどありません。とくに、地方などでは設備が整った医療機関の数が少ないため募集が見つからない場合もあります。
厚生労働省の提供する職業情報提供サイト「jobtag」によると、診療放射線技師の有効求人倍率は1,12と報告されています。ただし、地域によっては1倍以下の場所もあります。看護師の2,53倍や薬剤師の3,29倍など、他の医療従事者と比較しても就職機会が限られていることがわかります。
就職機会の少なさから「やめとけ」という声も聞かれますが、就職先が無いわけではありません。地域を選べば十分に就職先を見つけることができます。
資格取得後の就職先に不安がある場合は、養成校選びの段階で、就職率やサポート体制を確認することが重要です。
参考:職業情報提供サイトjobtag「診療放射線技師」|厚生労働省
仕事が大変
救急外来や、がん治療・手術など、高度な技術が求められる現場では、やりがいを感じる一方で、ミスが許されない検査に対して精神的な負担を感じることがあります。検査時間を予約管理している病院でも、緊急検査が入ると勤務時間が延びることもあります。また、健診施設など多くの件数を請け負ったり、体力が必要とされる職場もあるなど、仕事が大変な側面はさまざまです。
そのほかにも、勤務先の人数が少ない場合、休みが取りにくいケースもあります。とくに、マンモグラフィなど女性が担当する検査では、女性の診療放射線技師が少ないことから突発的な休暇を取るのが難しいという問題も生じます。
これらの仕事内容や休みの取りにくさから「やめとけ」という声も聞かれるかもしれませんが、その一方で多くのやりがいも存在します。自身の特性に合わせて勤務先を選択すると良いでしょう。
放射線に関する誤解が壁になることも
診療放射線技師は、主に「放射線」を扱います。一般の人々は「放射線」と聞くと原子力発電所の事故や原子爆弾などを連想し「被ばく」などの危険性を心配することもあるでしょう。このような誤解が生じると、家族や知人から「やめた方がいい」と勧められることもあります。
診療放射線技師を含む医療従事者が、検査の手技や介助により、ごく微量の放射線を被ばくする機会があるのは事実です。しかし、医療従事者の被ばく線量は影響があらわれないよう法律でも定められ、しっかりと管理されています。
また、技術の進歩により検査で使用する放射線量は減少しています。実際の生活で被ばくする放射線量よりも少なく、安心して従事できるでしょう。
診療放射線技師のやりがいは?
診療放射線技師としての仕事には、大変なところもありますが、この仕事ならではのやりがいもあります。この職業の魅力や、働いていて満足感が得られる瞬間を紹介します。
技術の上達を感じられるとき
診療放射線技師の主な仕事は、さまざまな機器を使用して患者さんの状態を撮影することです。自身の技量が向上し、医師が判断しやすく、鮮明で分かりやすい画像を撮影できれば、病気の見落としを防ぐことができ、病気の発見に貢献できます。撮影技術しだいで、病気の発見率が変わるといっても過言ではありません。高品質な画像を提供することで周囲からの評価も高まり、日々の業務に楽しみを感じられるでしょう。
チーム医療への貢献ができたとき
近年の画像診断装置の進歩により、画像検査の重要性がますます高くなっています。患者さんを診察するにあたって、画像検査が第一選択になるケースも増えています。提供した画像により、患者さんの治療方針が決定されることも少なくありません。
診療放射線技師として、専門知識や技術を活かし、患者さんの健康状態に関する画像情報を提供することは、医療現場において非常に重要な役割です。診療チームの一員として患者さんの診療に貢献することは、大きなやりがいを感じるでしょう。
患者・家族から声をかけてもらったとき
診療放射線技師の仕事は検査が主体ですが、放射線治療にも携わります。治療中は患者とコミュニケーションを取る機会も多く、感謝の言葉を聞くこともあるでしょう。
また、定期的に検査が必要な病気では、病気が治癒し元気になっていく患者の姿を見られるのもうれしいことです。家族とともに来院する患者の場合は、家族に声をかけてもらえることもあります。
検査で病気を発見してもらったことに対するお礼や、治療に対する感謝の気持ちもあるでしょう。患者と触れ合える仕事ならではのやりがいです。
気になる年収をチェック
診療放射線技師の平均年収は、どの程度なのでしょうか?年収の目安や、男女別の違いについて解説します。また、収入面の特徴についても見ていきましょう。
平均年収は約543,7万円
賃金構造基本統計調査で公開されている数値から試算すると、放射線技師の平均年収は543,7万円です。国税庁の調査で公開されている日本全体の平均年収は458万円となっており、放射線技師の年収は約100万円ほど高い水準であることが分かります。医療に携わる専門性の高い仕事だからこそ、一般よりも高い年収が維持できると考えられます。
医師ほどではありませんが、安定した収入が得られる放射線技師は、年収面で魅力的な職業といえるでしょう。
参考:職業情報提供サイトjobtag「診療放射線技師」|厚生労働省
男女別の平均年収
診療放射線技師の平均年収には、性別によって多少の差が見受けられます。賃金構造基本統計調査の月給やボーナスから試算すると(※)男性は約564,1万円、女性は約478,1万円です。国税庁が公開している日本全体の男女別の平均年収は、男性563万円、女性は314万円のため、男女の平均年収の差は、日本全体よりも少なくなっています。男性は平均年収とほぼ同じですが、女性の場合は、平均よりも高い水準にあるのが特徴です。性別にかかわらず、安定した収入が期待できるでしょう。
※年収の試算は令和4年賃金構造基本統計調査より、きまって支給する現金給付額×12+年間賞与その他特別給与額(企業規模計)の数値を使用しています。
参考:令和4年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種|e-Stat
診療放射線技師の活躍の場を探そう
診療放射線技師の就職先の多くは医療機関です。しかし、医療機関にも多くの種類や特徴があります。また、医療機器メーカーなどの一般企業に就職する方もいます。それぞれの職場の特徴を理解し、自分の特性や志向にあった環境を選びましょう。
病院など医療機関
診療放射線技師は、主に医療機関で活躍しています。大学病院や総合病院をはじめ、整形外科や脳神経外科など、専門のクリニックでも需要があります。
また、病院・クリニックだけでなく、検査を主体とする健診・検診施設も対象です。
診療放射線技師の仕事内容は、病院の規模や医療機関の領域によって仕事内容や働き方が変わります。求人募集の数も仕事内容によって異なるため、まずは主な求人をチェックしてみるのがおすすめです。
一般企業で活躍することも
診療放射線技師の働く場所は、医療機関だけではありません。放射線技師の知識やスキルを必要とする一般企業に就職する道もあります。
医療機器メーカーでは、開発された機器の実演や研修を担当する「アプリケーションスペシャリスト」として働くのが主流です。
また、画像にかかわらず、線量測定など放射線を管理する知識やスキルを生かす働き方もあります。
医療機関以外の就職先は数が少ないものの、働き方は多様です。キャリアチェンジや、一般企業での勤務を希望する場合には求人情報を探してみましょう。
大変さ以上のやりがいを見出そう!
診療放射線技師の仕事は、仕事内容や放射線に関する不安から、時に「やめとけ」という声も聞かれるかもしれません。しかし、この職業には多くのやりがいがあり、年収面でも安定しています。さらに、国家資格のため全国どこでも働けるメリットもあります。これから診療放射線技師を目指す場合は、自分がどのように働きたいかを考えておくと良いでしょう。
どの職種にもメリットとデメリットがありますが、診療放射線技師はさまざまな働き方が可能です。自分の性格や志向に合った職場で活躍できれば、この仕事の魅力を十分に味わうことができるでしょう。
診療放射線技師×医療ライター。地域基幹病院、健診センターに20年の勤務経験あり。現在も診療放射線技師の職を継続しながら、医療分野に特化したライターとして活動中。これまでに、クリニックや企業サイトに掲載する医療記事、医師や製品開発者へのインタビュー記事などの執筆実績がある。
公式サイト:
https://oswrite.com
監修者のコメント
最近では、パートやアルバイトの求人も増えています。診療放射線技師は資格職のため、免許とスキルがあればどこでも働けます。自分の都合に合わせて複数の場所で働いたり、働く時間を自分で調整したりすることも可能です。特に子育てをしている人にとって、家庭と仕事をうまく両立できる働き方と言えるでしょう。働く環境を選ぶ際に迷っている方は、初めはさまざまな検査を経験できる病院でキャリアをスタートするのがおすすめです。