インフラエンジニアとは、IT基盤の設計や構築、運用、保守を担当するエンジニアです。担当領域によって業務内容は変わりますが、ITサービスの円滑な運用において、なくてはならない存在です。インフラエンジニアの仕事内容や種類・必要なスキルを紹介します。
IT基盤を支えるインフラエンジニア
インフラエンジニアは、ITのインフラである、サーバーやネットワークを扱うエンジニアです。定義や種類、システムエンジニアとの違いを紹介します。
インフラエンジニアの定義
インフラエンジニアとは、サーバーやネットワークの設計・構築・運用・保守を担当するエンジニアです。
インフラは「インフラストラクチャー」の略語で、「基盤」という意味があります。例えば生活インフラといえば、人々の生活に欠かせない水道・ガス・電気などを指すのが一般的です。
インターネットの世界では、サーバーやネットワークがあらゆるサービスの基盤です。そのため、サーバー・ネットワークを業務領域とするエンジニアは、インフラエンジニアと呼ばれます。
インフラエンジニアの種類
インフラエンジニアは、業務領域によって以下の3つに大別されます。
- サーバーエンジニア
- ネットワークエンジニア
- セキュリティエンジニア
サーバーエンジニアは、サーバーの設計・構築・設定・運用・保守を行うエンジニアです。業務内容には、データ容量アップや速度向上など、各サーバーが抱える課題解決のための、専門的な知識が求められます。
ネットワークエンジニアは、安全・安定的なネットワーク環境を提供できるよう、ネットワーク機器の選定から設定、障害対応まで行います。
セキュリティエンジニアは、セキュリティ対策専門のエンジニアです。サイバー攻撃や、マルウェアの脅威からシステムを保守したり、システムの脆弱性を解消したりします。
システムエンジニアとの違い
システムエンジニアとは、ITシステムやアプリの開発に関わるエンジニアです。現場でのコーディング指示やテストを担当する他、要件定義から設計まで幅広い領域をこなします。
システム開発に必要なIT基盤を提供するのがインフラエンジニア、インフラエンジニアによって提供されたIT基盤を活用して、正しく動作するシステムを開発するのがシステムエンジニア、と考えればよいでしょう。
インフラエンジニアの仕事内容
インフラエンジニアの仕事には、通常のシステム開発と同様に、設計・開発・試験のフェーズがあります。それぞれの内容について詳しく見ていきましょう。
顧客の望む性能を実現するインフラ設計
ITインフラ設計は顧客へのヒアリングを実施し、構築するITインフラを具体的に決めます。必要な項目は主に以下の3つです。
- ITインフラの性能
- ITインフラ構築のコスト
- ITインフラ構築までの期間
まずは顧客の要望をかなえるために、どのような性能が必要か考えます。サーバーやOS、ハードウェアの種類を決定するのはもちろん、各機器のスペックの選定や、ネットワーク経路の想定まで行わなければなりません。
ITインフラに必要な性能が決まった後は、ITインフラの構築に必要なコストや、具体的なプロジェクト期間も決定します。
機器やソフトウェアでインフラを構築
インフラ構築は、設定に基づいて、サーバーやネットワークを構築する作業です。クラウド型ではなく、物理サーバーを設置する場合の設置場所や、電源の確保・管理を行います。
このときサーバーダウンのリスクを抑えられるよう、排熱効率や電源容量のバランス確認も必要です。
またサーバーや周辺機器に、OSやアプリをインストールしたり、サーバー周辺のネットワーク機器を整えたりして、環境を整えるのもインフラエンジニアの大切な仕事です。
運用開始後のトラブル対応・稼働チェック
インフラの運用開始後は、正常に動作させるために、継続的な稼働チェック・動作確認を行います。
運用後に想定されるトラブルは、システムやアプリのトラブルの他、アクセスの集中によるサーバーダウン・速度低下などです。サーバーに過剰な負荷がかからないよう、インフラエンジニアは常にサーバーの負荷対策や、キャパシティ管理も行います。
とはいえ、少人数のインフラエンジニアが、24時間体制でサーバーを管理・保守するのは困難です。インフラ構築はインフラエンジニア、保守・管理は専門のベンダーに依頼する、というケースも珍しくありません。
インフラエンジニアに求められるスキル
インフラエンジニアを目指す場合、ITインフラの知識やスキルはもちろん、マネジメントスキルなども必要です。インフラエンジニアに必要とされるスキルを紹介します。
IT技術の知識・スキル全般
インフラエンジニアに必要なのは、サーバーやネットワーク全般の知識やスキルです。物理サーバーの構築や運用では、OSの基本知識が必要なので、Linux・Windows・Unixが問題なく操作できるのが理想です。
またネットワークの構築・運用のためには、通信規格プロトコルやLANについて、知らなければなりません。運用監視ツールやセキュリティツール、クラウド技術も、基本的な部分を理解しておきましょう。
なお要件定義や設計といった上流工程については、未経験者が任されることはまずありません。未経験からインフラエンジニアを目指す場合は、まず運用・保守の経験や知識を増やすのがおすすめです。
マネジメントなどのヒューマンスキルも必須
より高いレベルのインフラエンジニアを目指すなら、マネジメントスキルや、コミュニケーションスキルも重要です。
ITインフラの構築は、プロジェクトチームを作って行われ、上流工程を担当するインフラエンジニアが、リーダー的な役割を果たすことも少なくありません。各担当の進捗管理や、全体の状況把握などをスムーズに行う、適切な管理能力が求められます。
また上流工程に関わるインフラエンジニアは、顧客へのヒアリングや提案も担当します。外部との調整・やり取りは自然に多くなるため、コミュニケーションを円滑に進める能力が必要です。
インフラエンジニアにおすすめの資格
インフラエンジニアは、実績や経験が重視される傾向にあります。未経験から目指す場合は、資格の取得によって実務スキルをアピールするのも1つの方法です。インフラエンジニアを目指す人に役立つ資格を紹介します。
「基礎の基礎」が身に付くITパスポート試験(IP)
IT関連の基礎知識を証明する国家試験です。試験にはIT基礎知識から、ビッグデータやアジャイルなどの新しい技術・手法、さらには経営やプロジェクトマネジメントの知識まで、総合的なIT知識が求められます。
合格すれば、ITの基礎知識がある証明になるでしょう。ただしITパスポートは、国家試験の難易度を示す「スキルレベル」では、最も低い1とされています。ITパスポート試験に合格しただけでは、転職市場におけるアピール力は弱いかもしれません。
ITパスポート試験でITの基礎を習得したら、より専門的かつ難易度の高い資格にチャレンジするのがおすすめです。
参考:【ITパスポート試験】受験要領|IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
登竜門とされる基本情報技術者試験(FE)
エンジニアに必要な知識とスキルを証明する国家試験です。試験では、エンジニアが理解しておくべき、システム設計・開発・運用全般の知識から、幅広く出題されます。
対象は経験の浅いエンジニアや、エンジニアを目指す人です。スキルレベルは2とされ、ITパスポート試験と比較すると、難易度はやや高くなっています。合格にはITに関する専門的な知識・技能を身に付ける必要があるでしょう。
資格を重視する大手企業には評価されやすいため、未経験からインフラエンジニアを目指すなら、ぜひ合格を狙いたい試験です。
参考:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構:制度の概要:基本情報技術者試験
上級者向け応用情報技術者試験(AP)
エンジニアとして、より高い知識・技能を持つことを証明できる国家試験です。スキルレベルは3で、基本情報技術者試験の、上位試験として位置付けられています。
試験対象は、IT業界である程度の実務経験を持つ、中堅のエンジニアです。応用的なIT知識や技能のスキルも求められます。出題範囲は非常に広く、エンジニアとして総合的な知識が必要です。
ちなみに2022年春期の合格率は、24.3%でした。難易度は高く、試験に合格することは大きな強みとなります。
参考:
制度の概要:応用情報技術者試験|IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
プレス発表 応用情報技術者試験で70歳の合格者、10年ぶりに最年長記録を更新 | プレスリリース | IPA 独立行政法人 情報処理推進機構
インフラエンジニアに向いている人
インフラエンジニアはIT技術に関わる専門職であるため、向き不向きがはっきり出ます。転職を考えるなら、まずは自分の適性をチェックしてみましょう。
知的好奇心が強い
知らないことを知りたいという知識欲や、新しいものに興味関心がある人は、インフラエンジニアに向いています。
インフラエンジニアとして質の高い仕事をするためには、サーバーやネットワークに関する深い知識が求められます。適切なインフラ環境を構築するためには、機器やアプリ・ソフトについて、常に最新情報を追う必要もあるでしょう。
学ぶことが苦手な人や、新しいものに興味を持てない人は、ITの進化に追い付けません。顧客に有益な提案ができず、インフラエンジニアとなっても、高い評価を得るのは困難です。
機械・細かな作業が好き
機器類をいじるのが苦にならない人は、インフラエンジニアの仕事を楽しめるでしょう。インフラエンジニアの仕事には、物理サーバーの設置やネットワーク機器の設定といった、現場作業が含まれるためです。
インフラエンジニアには、几帳面さも求められます。サーバーの設置では、ケーブル配線や電源確保まで考えなければなりません。「電源につないでおけばいいだろう」などと適当な人は、システム障害や、サーバーダウンを引き起こすリスクが高くなります。
効率化を考えられる
業務効率を考えながら働ける人は、インフラエンジニアとして高い評価を受けやすくなります。仕事の進捗がスムーズで、成果物の質も高い傾向があるためです。業務効率を考えられない人は、ペース配分がうまくできず、納期ギリギリになることもしばしばです。
一方業務効率を考えられる人は、全体を見て仕事ができます。プロジェクト全体を見て有意義な提案ができる人も多く、インフラエンジニアとして、顧客はもちろんベンダーや同僚からも信頼されます。
インフラエンジニアの活躍の場
高度IT人材が不足している日本では、インフラエンジニアの需要は今後も高いと予想されます。インフラエンジニアの需要や働き方を見ていきましょう。
IT企業全般で活躍できる
ITインフラの知識があれば、Webサービス提供会社やアプリ制作会社といったIT企業で働けます。IT業界以外では、自社にITインフラを持つ物流や金融業界などでも、多くの需要が見込めるでしょう。
ただし近年はサーバーのクラウド化が進み、自社運用でサーバーを設置する企業は減少しています。インフラエンジニアとしての選択肢を増やすなら、クラウド型のサービス・ネットワーク・環境構築の知識や技術は必須です。
クラウドサーバーのスペシャリストとなれば、物理サーバーに張り付く必要がありません。フリーランスとして、在宅で働くという選択もできます。
企業によって働き方は異なる
インフラエンジニアの業務内容は、業種や企業によってさまざまです。大手ITサービス会社(SIerエスアイヤー)に転職した場合は、インフラ構築の要件定義や、設計などが主な仕事です。
一方中小規模のSIerなら、大手の下請けとして働くケースがほとんどです。プロジェクトでは、システム構築やテスト作業が多くなるでしょう。
エンジニア派遣サービス会社の場合は、顧客となる企業に出向いて、インフラ構築サービスを提供することになります。一般企業のIT担当部門なら、IT業務全般を担当するかもしれません。応募する際は、業務内容について細かく確認するのがおすすめです。
需要の高いインフラエンジニアになろう
インフラエンジニアは、IT基盤を設計・構築・運用・保守する重要な仕事であり、今後も安定した需要が見込まれます。未経験からの転職を考えている人は、スキル・知識を身に付けて、資格の取得にチャレンジするのが早道です。
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