作業療法士に求められる資格とは。キャリアアップに有効な資格も紹介

リハビリの専門家である作業療法士は、手に職を付けたい人にとって魅力的な仕事です。作業療法士には、どのような資格が必要になるのでしょうか?必須の国家資格に関する基礎知識と、キャリアアップに役立つ資格を併せて紹介します。

作業療法士資格の国家試験とは

マークシートの試験

(出典) photo-ac.com

作業療法士になるには、国家試験に合格する必要があります。これから受験を考えているなら、どのような試験なのかを把握しておきましょう。作業療法士国家試験の概要を解説します。

基本は選択式の筆記試験で合否を判定

作業療法士の国家試験が実施されるのは毎年2月です。作業療法士になるには養成校に通い、実習に合格する必要があります。国家試験では、筆記試験のみで合否を判定する流れです。

筆記試験は一般問題と実地問題に分かれており、解剖学・生理学・運動学・臨床心理学・リハビリテーション医学などの分野から、幅広く出題されます。問題数は一般問題と実地問題合わせて200問です。午前と午後に分けて解答します。

重度の視覚障害を持つ人については、実地試験の代わりに口述試験と実技試験が用意されています。ただ、口述試験と実技試験は東京でしか受験できない点に注意しましょう。

参考:作業療法士国家試験の施行|厚生労働省

受験資格は養成校でのカリキュラム修了

作業療法士試験を受けられるのは、文部科学大臣が指定した学校か都道府県知事が指定した養成施設に3年以上在籍し、必要な知識・スキルを習得した人です。

高校を卒業後、4年制大学・3年制短期大学・3年制か4年制の専門学校のいずれかに通い、カリキュラムを修了することで受験資格を得られます。要件を満たしていれば年齢を問わず受験できるため、社会人から目指す人も少なくありません。

海外の養成施設を卒業した人や、海外で日本の作業療法士資格に相当する免許を持っていて、厚生労働大臣が認定した人にも受験資格があります。 

合格率は毎年80%前後と高め

作業療法士試験の合格率は、80%前後で推移しています。2022年に実施された第57回作業療法士国家試験の合格率は、80.5%でした。

近年の合格率を見ると、作業療法士試験の難易度はそれほど高くないといえるでしょう。養成校に通ってしっかり対策していれば、合格は難しくないと考えられます。

ただし、合格率8割ということは、5人に1人は不合格ということです。「8割は合格する試験だから」と甘く考えず、しっかりと勉強に励みましょう。

参考:
理学療法士・作業療法士国家試験合格者、合格率の推移
第57回理学療法士国家試験及び第57回作業療法士国家試験の合格発表について|厚生労働省

作業療法士資格を得るまでのロードマップ

研修を受ける介護士

(出典) photo-ac.com

作業療法士の資格を得るまでの、具体的な流れもチェックしておきましょう。資格取得までのロードマップが分かれば、行動の計画を立てやすくなるはずです。

養成校に入学する

作業療法士になるには、まず大学や専門学校などの養成校に入学し、作業療法のプロに求められる知識とスキルを身に付ける必要があります。

4年制大学は、作業療法士に必要な知識をじっくり学べるのが特徴です。受けられる授業の幅も広いので、キャリアプランとして作業療法士以外の道も残しておきたい人に適しています。

短期大学は、必要な知識やスキルを最短で身に付けられるのがメリットです。いち早く現場に出て経験を積みたい人にぴったりです。

専門学校は実習に重きを置いている学校が多いため、実践的なスキルが身に付きやすいでしょう。夜間部を設けている学校もあり、働きながら学びたい人にもおすすめです。

カリキュラムをクリアして国家試験を受験

養成校に入学したら、講義と実習を通して、作業療法士に必要な知識とスキルを身に付けていきます。

講義では、解剖学・生理学・運動学など作業療法士に必須の知識を学びます。実習とは、実際のリハビリの現場に出向いて行う学習です。見学実習・評価実習・総合臨床実習の3段階の実習を通して、作業療法士に求められる実践的な能力を身に付けます。

養成学校で3年以上学んだ末に待っているのが、国家試験です。国家試験に合格して免許申請手続きを済ませれば、作業療法士としてのキャリアをスタートできます。

国家試験に合格するための勉強法

ノートと参考書

(出典) photo-ac.com

作業療法士国家試験の突破を目指している人は、学習のコツも押さえておきましょう。正しい方法で学習を進めれば、効率よく合格に向けて知識を付けられます。

復習を習慣づける

作業療法士の国家試験に合格するために大切なのは、養成校で得た知識やスキルを日頃から復習しておくことです。

国家試験では、3年間または4年間で学んだ知識から幅広く問題が出されます。その都度インプットし直すことを習慣にしておけば、国家試験の直前になって試験範囲の復習が終わらず、付け焼き刃の学習で試験に挑むリスクを避けられます。

また、日々学んだことを復習しておくことで、自分の苦手な分野を早い段階で発見できる可能性が高まります。弱い部分をいち早く把握できると、対策も立てやすくなるでしょう。

過去問を積極的に解く

積極的に過去問にチャレンジするのも、作業療法士の国家試験対策に有効な勉強法です。過去問の数をこなせば直近の出題傾向が見えてくるので、効率的に国家試験対策を進められます。

苦手な分野が分かってくるという点も、復習と同じく過去問にチャレンジするメリットです。苦手分野の問題がすっきり解けるようになるまで過去問にアプローチを続ければ、効率的に弱点を克服できるでしょう。

過去問で国家試験対策をしたいなら、市販の解説書付き過去問集が一般的にですが、直近では過去問アプリを活用して対策をする人も増えてきました。日常の延長として学習できるので、なかなか勉強に身が入らない人でも手軽に国家試験対策ができます。

ダブルライセンスにおすすめの国家資格

勉強する介護福祉士

(出典) photo-ac.com

すでに作業療法士の資格を持って活躍している人も、他の資格を取得するとキャリアアップに役立ちます。まずは国家資格の中から、作業療法士とのダブルライセンスにおすすめの3資格を見てみましょう。

介護福祉士

介護福祉士とは、介護に関する専門的な知識やスキルを持った人に与えられる国家資格です。介護系の資格の中で唯一の国家資格となっています。

介護福祉士の仕事は、身体・精神に障害を持つ人の相談や指導に合わせて、利用できるサービスのご紹介や日常生活をケアする介護業務を行います。

普通科の高校を卒業した人が介護福祉士国家試験の受験資格を得るには、次の3ルートがあります。

  • 2年以上、介護福祉士養成施設で学ぶ
  • 福祉系の大学や社会福祉士養成施設等・保育士養成施設等に通った後、1年以上介護福祉士養成施設で学ぶ
  • 実務経験を3年以上積み、指定の研修を受ける

作業療法士が介護福祉士の資格を取ると、医療と介護をつなぐパイプ役として活躍できます。双方の視点から、リハビリ対象者を総合的にバックアップできるでしょう。

参考:

社会福祉士及び介護福祉士法 | e-Gov法令検索
[介護福祉士国家試験]受験資格:福祉系大学等:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター

義肢装具士

義肢装具士とは、手足の代わりとなる器具や、治療や症状の緩和を目的とした器具を製作できる国家資格です。医師の処方に基づいて、患者の体にぴったり合う器具を作ります。

大学や短大・高等専門学校・専門学校に行っていない場合の受験資格は、都道府県知事が指定した義肢装具士養成所で3年以上必要な知識・技術を学ぶことです。学歴によって、受験資格が変わる点に注意しましょう。

作業療法士が義肢装具士の資格を取得すると、医療人としての活躍の幅が広がります。作業療法士の知識と義肢装具士の技術との相乗効果が狙えるため、スキルアップやキャリアチェンジに役立つでしょう。

参考:義肢装具士とは:日本義肢装具士協会

柔道整復師

柔道整復師とは、骨折・脱臼・打撲などを、手術以外の方法で治療する人を指します。厚生労働大臣からの免許を受ける国家資格です。

受験資格は、都道府県知事が指定した養成施設で3年以上修学するか、文部科学省が指定した4年制大学で基礎系科目と臨床系専門科目を履修することで得られます。

作業療法士が柔道整復師を取得すると、開業できるようになることが魅力です。作業療法士は医師の指示の下でリハビリをする必要があるため、開業権は認められていません。

柔道整復師を取得すれば、自分の接骨院や整骨院を持てるようになります。作業療法士として提供してきたリハビリの知識を生かせば、他の院との差別化を図れるでしょう。

参考:柔道整復師・整骨院・接骨院について|公益社団法人 日本柔道整復師会

キャリアアップに役立つ民間資格

リハビリする高齢者と介護士

(出典) photo-ac.com

作業療法士としてのキャリアアップに役立つのは、国家資格だけではありません。民間の資格にも、スキルアップに有効な資格が複数あります。代表的なものを3つチェックしておきましょう。

認定作業療法士

認定作業療法士とは、作業療法の臨床実践や教育などについて、一定水準以上の能力を持った作業療法士に与えられる民間資格です。日本作業療法士協会が定める取得要件には、まず前提として次の2点が挙げられます。

  • 日本作業療法士協会に入会後、作業療法士として5年以上の臨床経験を積んでいる
  • 生涯教育基礎研修を修了している(修了年度が有効期限内である)

さらにその後、以下の要件を満たして申請すると、認定作業療法士の資格を得られる流れです。

  • 36時間以上、教育・研究・管理運営に関する研修を受ける
  • 24時間以上、自身の専門領域に関する研修を受ける
  • 修了試験に合格する
  • 3例以上の事例を報告する

認定作業療法士を取得するメリットは、人材としての差別化ができる点です。確かな知識とスキルを持ったプロフェッショナルだとアピールできるので、転職する上で大いに役立つでしょう。

参考:
生涯教育「認定作業療法士とは?」|日本作業療法士協会
認定作業療法士「認定作業療法士になるには」|日本作業療法士協会

3学会合同呼吸療法認定士

3学会合同呼吸療法認定士は、次の3団体が合同で作った認定資格です。

  • 日本胸部外科学会
  • 日本呼吸器学会
  • 日本麻酔科学会

3学会合同呼吸療法認定士は、呼吸療法に携わるチームでの活躍が期待される看護師や作業療法士を対象にしています。受験資格がある作業療法士は、以下の2要件を満たした人です。

  • 作業療法士として2年以上の実務経験がある
  • 指定の学会や講習会などに参加し、12.5点以上を取得している

作業療法士が3学会合同呼吸療法認定士を取得すると、人材としての希少性が高まります。作業療法士で3学会合同呼吸療法認定士を取得する人は少ないので、応募先によっては転職を有利に進められる可能性があるでしょう。

参考:医療従事者向け講習会・試験|公益財団法人 医療機器センター

認知症ケア専門士

認知症ケア専門士とは、日本認知症ケア学会が認定する民間資格です。日本における認知症ケアの技術向上を目的として作られました。一定期間中に3年以上の認知症ケアの実務経験を持っている人に、受験資格が与えられます。

作業療法士が認知症ケア専門士を取得すると、認知症を患った人への対処法が身に付きます。認知症は進行を遅らせるために作業療法が適用されるケースもあるため、作業療法士にとって避けては通れない疾患の1つです。

資格取得の勉強を通して認知症への対処法を学んでおけば、現れた症状に対して適切に対応できるようになり、理想的なリハビリの実現に近づけます。

参考:認知症ケア専門士 公式サイト

資格を取って理想のキャリアを目指そう

車いすを押す介護士

(出典) photo-ac.com

これから作業療法士を目指すなら、作業療法士国家試験に合格し、資格を取得する必要があります。まずは養成校に入学して、作業療法士に求められる知識とスキルを身に付けましょう。

作業療法士としてキャリアアップしたい人には、国家資格や民間資格の取得がおすすめです。実際の求人も見て、自身が理想とする働き方を実現するにはどのような資格が必要なのか、調べてみましょう。

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【監修者】作業療法士、呼吸認定療法士、LSVT認定臨床家。 都内の回復期リハビリテーション病院に入職。主に脳血管疾患等などのリハビリテーション業務に従事。3年間在籍し、都内の株式会社が経営する訪問看護ステーションに転職。地域でのリハビリテーション業務と事業所のマネジメント業務、グループ内の教育研修を担当。5年間在籍し、現職である栃木県にある獨協医科大学病院に入職。現在は、超急性期分野でリハビリテーション業務に従事している。