薬剤師の資格には何がある?キャリアアップに役立つ9資格を紹介

薬剤師としてのレベルを上げる方法に、資格の取得が挙げられます。どのような薬剤師になりたいのかに合わせて資格を選べば、理想とする人材の姿に一歩近づけるでしょう。薬剤師のキャリアにおいてプラスに働く資格を、9選紹介します。

薬剤師のキャリアアップに有効な資格とは

薬を処方する薬剤師

(出典) photo-ac.com

薬剤師として成長したい人におすすめなのが、認定薬剤師と専門薬剤師です。薬剤師としてキャリアを重ねていこうと考えているなら、取得を検討しましょう。それぞれの資格について解説します。

まず目指すなら「認定薬剤師」

薬剤師としてキャリアアップを目指すなら、まずは認定薬剤師の資格取得を目指しましょう。認定薬剤師は必要な実務経験を積んだ後、一定期間内に講習会や研修会を履修する・試験に合格するなど、各認定制度の基準をパスした人に与えられる資格です。

認定薬剤師は認定する機関ごとに名称や内容が違い、1つの資格を指す言葉ではありません。他の認定薬剤師にチャレンジする前提となるものが、日本薬剤師研修センターの「研修認定薬剤師」です。

研修認定薬剤師になると、例として以下のような認定制度の対象となります。

  • がん薬物療法認定薬剤師(日本病院薬剤師会)
  • 緩和薬物療法認定薬剤師(日本医療薬学会)
  • 感染制御認定薬剤師(日本病院薬剤師会)

認定薬剤師を目指すのであれば、まず研修認定薬剤師からのチャレンジになると考えましょう。

参考:
研修認定薬剤師制度とは|公益社団法人 日本薬剤師研修センター
薬剤師の専門性認定制度|日本医療薬学会

さらにステップアップするなら「専門薬剤師」

認定薬剤師を取った後、さらにレベルアップしたい人には「専門薬剤師」を目指すのも選択肢です。専門薬剤師の種類の多くでは、目指す分野の認定薬剤師であることが前提になります。

分野ごとの認定薬剤師として認められた後、専門的な実務経験や研修・講習の履修・試験の合格を経て、専門薬剤師の認定が付与される流れです。

認定機関や分野によっては認定薬剤師や専門薬剤師しかない場合もあるので、目指したい領域が決まっているなら、各学会の情報をチェックしてみましょう。

参考:薬剤師の専門性認定制度|日本医療薬学会

代表的な認定薬剤師資格3選

薬剤師の女性

(出典) photo-ac.com

薬剤師としてステップアップしたいなら、まずは認定薬剤師を目指すのがおすすめです。前提となる研修認定薬剤師と他2つの認定薬剤師について、具体的な内容を見てみましょう。

研修認定薬剤師

研修認定薬剤師は、日本薬剤師研修センターが設ける認定薬剤師資格です。質の高い業務のために必要な研修を受けて単位を取り、申請後に認定された薬剤師に資格が与えられます。

時代に即した薬物療法を実践できるようになるには、薬剤師にはスキルアップが求められます。研修認定薬剤師は、スキルアップのために研修を受けた実績を保証するものです。

研修認定薬剤師は、薬剤師としての信頼性を高めてくれる資格といえます。自己研鑽を忘れない薬剤師であることを証明できるので、他の医療スタッフから厚い信頼を得られるでしょう。

がん薬物療法認定薬剤師

がん薬物療法認定薬剤師は、日本病院薬剤師会が設ける認定薬剤師資格です。がんの薬物療法に関する高度な知識とスキルを持ち、有効かつ安全に服薬指導や薬剤情報の提供ができる薬剤師に与えられます。

がん薬物療法認定薬剤師の仕事は、患者に対して薬物治療の説明や指導です。患者が納得して治療と向き合えるよう、丁寧な説明を通して疑問の解消に努めます。

病院薬剤師の場合には、薬学の専門家としてがん治療のチームに参加して活動します。他の医療スタッフと連携して、最善の治療を実現できるようにサポートするのが仕事です。

上位の資格として「がん専門薬剤師」が設けられています。

参考:がん専門薬剤師部門|日本病院薬剤師会

緩和薬物療法認定薬剤師

緩和薬物療法認定薬剤師は、日本緩和医療薬学会(JPPS)が設ける認定薬剤師資格です。緩和医療に関する高度な知識・スキル・態度を持ち合わせた薬剤師に与えられます。

がん患者の増加を背景に、緩和ケアを実践する病棟数は増加している傾向です。緩和医療に不可欠な薬物療法を専門とする緩和薬物療法認定薬剤師は、ニーズが高まっている資格といえるでしょう。

がん治療と向き合う患者に合った薬物療法を提案するのが、緩和薬物療法認定薬剤師の仕事です。この分野には専門薬剤師が設けられていません。

参考:緩和薬物療法認定薬剤師 | 日本緩和医療薬学会

代表的な専門薬剤師資格3選

薬の説明をする手元

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専門性を究めてレベルアップしたい人には、専門薬剤師が適しています。資格を取って薬剤師としての専門性を極限まで高めれば、その分野のプロフェッショナルとして活躍できるでしょう。専門薬剤師から3つピックアップして紹介します。

感染制御専門薬剤師

感染制御専門薬剤師とは、日本病院薬剤師会が認定している専門薬剤師資格です。感染制御についての知識やスキルを、十分に備えた薬剤師に与えられます。2020年頃から感染症が拡大したことに伴い、注目を集める資格です。

感染制御専門薬剤師の仕事の1つが、患者が心配せず医療を受けられるよう環境を整えることです。

感染症にかかってしまった患者に対しては薬物療法で回復を促し、感染リスクが懸念される患者にも適切なサポートで感染制御に取り組みます。医療関係者に、感染制御に関する知識を教えることも役割の1つです。

目指す場合は、「感染制御認定薬剤師」からのステップアップとなります。

参考:感染制御専門薬剤師部門|日本病院薬剤師会

精神科専門薬剤師

精神科専門薬剤師は、日本病院薬剤師会が設ける専門薬剤師資格です。精神科治療の薬物療法に関する優れた知識と技術を証明する資格で、「精神科薬物療法認定薬剤師」を前提としています。

精神科の患者の状態に合わせた薬物療法を医師に提案するのが、精神科専門薬剤師の仕事です。必要に応じて患者と治療方針について話し合い、快適な生活や社会復帰を実現できるようにサポートします。

豊富な知識と経験を生かし、他の医療スタッフを指導するのも仕事の1つに数えられます。

参考:精神科専門薬剤師部門|日本病院薬剤師会

妊婦・授乳婦専門薬剤師

妊婦・授乳婦専門薬剤師は、日本病院薬剤師会が認定する専門薬剤師資格です。妊婦や授乳中の女性に対する薬物療法に関して熟練し、知識も豊富な薬剤師に与えられる資格で、「妊婦・授乳婦薬物療法認定薬剤師」となった後に取得できます。

妊婦・授乳婦専門薬剤師の仕事は、妊婦や授乳中の女性が安心して医療を受けられるように取り計らうことです。胎児や乳児の存在に配慮した薬物治療を提案・実践し、疾患を抱える妊婦や母親を、適切な薬物療法でサポートします。

参考:妊婦・授乳婦専門薬剤師部門|日本病院薬剤師会

その他のおすすめ資格3選

おくすり手帳と処方箋と薬

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薬剤師におすすめの資格は、認定薬剤師や専門薬剤師だけではありません。薬剤師としてレベルアップするために有用な資格を、さらに3つ紹介します。

認定実務実習指導薬剤師

認定実務実習指導薬剤師とは、薬学部で実施される実務実習にあたり、薬学生を指導できる薬剤師に与えられる資格です。通常の薬剤師業務に加え、実習で学びにやってくる学生の指導も担当します。

実習生を受け入れる施設では、認定実務実習指導薬剤師を1名以上配置することが望ましいとされています。資格を取得しておけば、転職に有利になる可能性が高いでしょう。

調剤や服薬指導といった本来の役割にとどまらず、幅広く活躍したい人にもおすすめです。

参考:
一般社団法人 薬学教育協議会 - CPE - Council on Pharmaceutical Education | 一般社団法人 薬学教育協議会
病院における長期実務実習に対する基本的な考え方 | 一般社団法人 薬学教育協議会 - CPE - Council on Pharmaceutical Education

日本糖尿病療養指導士

日本糖尿病療養指導士は、糖尿病に関して豊富な知識を持つ人に付与される資格です。薬剤師に限らず、糖尿病患者に自己管理の方法を指導する医療従事者を対象としています。

日本糖尿病療養指導士の役割は、食事療法・運動療法・薬物療法の指導を通して、糖尿病患者の生活をサポートすることです。薬剤師の場合、薬学の専門家の観点から患者の体質や合併症に適した薬物療法を提案します。

資格を取得すると、糖尿病患者により高度な薬物療法を提供できるようになります。糖尿病と薬物療法双方の専門知識を持っている薬剤師なら、糖尿病患者の生活を強力にバックアップできるでしょう。

参考:CDEJ(日本糖尿病療養指導士)とは - 日本糖尿病療養指導士認定機構

NR・サプリメントアドバイザー

NR・サプリメントアドバイザーは、サプリメントや保健機能食品の啓発を目的に設立された資格です。サプリメントに関して正しい知識を持つ人に与えられます。

NR・サプリメントアドバイザーの仕事は、サプリメントの専門家の立場から個人の状態に合ったアドバイスをすることです。

資格を取得すると、サプリメントに関する患者からの質問に的確に答えられるようになります。サプリメントも販売するドラッグストアや薬局で働く薬剤師にとって、他の人材との差別化を図れるアドバンテージになるでしょう。

参考:NR・サプリメントアドバイザーとは | NR・サプリメントアドバイザー | 日本臨床栄養協会

資格を取得して薬剤師としてのキャリアアップを

薬を渡す手元

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専門分野を持つ薬剤師としてキャリアアップするなら、認定薬剤師と専門薬剤師の資格取得を検討するのが近道です。どのような薬剤師になりたいか具体的に考えてから選べば、目標をかなえる資格が見つかるでしょう。

目指す資格を選ぶ際には、実際の求人を見て、どのような資格があれば自分の理想とする働き方が実現できるのか調べてみるのも1つの手です。キャリアアップにダイレクトにつながる資格が分かります。

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高垣育
【監修者】薬剤師・ライター高垣育

調剤薬局、医療専門広告代理店などの勤務を経て、2012年にフリーランスライターとして独立。薬剤師とライターのパラレルキャリアを続けている。人だけではなく動物の医療、介護、健康に関わる取材・ライティングも行う。

著書:
犬の介護に役立つ本(山と渓谷社)

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