採用試験の最終選考を通過した場合、会社から採用通知書が届きます。求職者は速やかに内容を確認し、お礼の連絡を入れるのがマナーです。内定通知書との違いや、採用通知書を受け取った後の対応について解説します。
採用が決まったら届く採用通知書
転職活動中は、応募した会社からいつ採用通知書が届くのか気になるものです。採用通知書とは、採用の正式決定を求職者に通知するための書類です。記載内容や内定通知書との違いを確認しましょう。
採用通知書の内容
採用通知書に決められた様式はありませんが、以下のような内容を記載するのが一般的です。会社から採用通知書を受け取った求職者は、自分が正式に採用されたことを知ります。
- 求職者の氏名・日付
- 社名・代表者の氏名
- 採用決定の内容
- 入社日
- 労働条件
- 同封書類及び書類の返送期限
- 人事担当者の氏名・連絡先
なお採用通知書の発行は義務ではないので、電話で採否を伝える会社もあります。
内定通知書との違い
会社が求職者に通知する書類には、採用通知書と内定通知書があります。どちらにも法的な定義はなく、両者の違いも曖昧です。
あえて違いを挙げれば、採用通知書は「正式な採用」を知らせるもので、内定通知書は「内定」を通知するものです。
最初に採用通知書を送り、入社の同意が取れてから内定通知書を送る会社もあれば、その逆もパターンもあります。両者を兼ね備えた「採用内定通知書」を送る会社も少なくありません。会社によって取り扱いが違う点に留意しましょう。
採用通知書と同封される書類
採用通知書を受け取った求職者は、会社側に入社意思の有無を伝える必要があります。入社承諾書をはじめとする重要書類が同封されているので、内容をよくチェックしましょう。不採用の場合は、不採用通知書が届く場合があります。
添え状と返送用の封筒
採用通知書には、添え状と返信用の封筒が同封されています。添え状とは、あいさつ状のような役目を果たす書類で、内容物の詳細が記載されています。採用通知書が届いたら、記載の内容物が間違いなく同封されているかを確認しましょう。
返信用の封筒は、入社承諾書などを返送するために使います。封筒を同封するかしないかは会社ごとに異なります。求職者が誤った宛先に送付しないように、返信用封筒にあらかじめ宛名や住所を印字する会社もあるようです。
入社承諾書
入社承諾書は、求職者が入社を承諾する旨を伝える書類で、入社誓約書とも呼ばれます。入社承諾書に法的効力はなく、承諾後の辞退も可能です。
ただし、会社側は入社のための準備を進めているため、入社承諾後の辞退は会社に迷惑がかかります。入社承諾書に署名・捺印をするに当たり、本当にこの会社でいいのかをじっくりと考えましょう。入社承諾書の主な内容は以下の通りです。
- 内定者情報
- 誓約事項
- 承諾日
- 署名・捺印欄
雇用契約書や労働条件通知書
雇用契約書は、雇用契約や労働条件が記載された書類です。会社側に発行の義務はなく、口約束でも雇用契約は成立します。ただし、後々のトラブルを防ぐため、双方が契約内容に合意したことを書面に残しておくケースが多いようです。
労働条件通知書は、労働条件を明示した書類で、発行が義務づけられています。労働基準法15条には、以下のような記述があります。
(労働条件の明示)
第十五条 使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。
労働条件通知書の様式に決まりはありませんが、労働契約の期間・賃金・労働時間・始業及び終業の時刻など、一定事項を必ず盛り込む必要があります。
出典:労働基準法 | e-Gov検索
参考:採用時に労働条件を明示しなければならないと聞きました。具体的には何を明示すればよいのでしょうか。|厚生労働省
採用通知書が届く時期とは
転職活動では、同時に複数の会社に応募する人も多く見受けられます。採用通知が届く時期があらかじめ分かっていると、転職活動のスケジュールが立てやすくなる上、いつ届くのだろうと気にせずに済むでしょう。
最終選考から1、2週間ほどで届く
採用通知書は、最終選考から1~2週間ほどで届くのが一般的です。企業への応募者が多かったり、人事担当者の手が回らなかったりすれば、多少遅れることもありますが、遅くても2週間以内に届くとみてよいでしょう。
一部の業界は深刻な人手不足で、企業間の人材獲得競争が激化しています。最終選考から採用通知までの時間が長すぎると、優秀な人材が他社に流れてしまうため、多くの会社は早めのレスポンスを心掛けているようです。
先に電話やメールで通知されることも
採用通知の前に、電話やメールで採用の結果が通知されることもあります。特に、求職者の入社の意思をいち早く知りたい企業は、電話で連絡をする傾向があるようです。
会社からのメールが迷惑メールに振り分けられてしまえば、内定のチャンスを逃してしまいます。最終選考後は小まめにメールフォルダをチェックしておきましょう。求職者に電話やメールで通知した後、1週間以内に採用通知書を送る企業が多いようです。
届かなかった場合はどうする?
2週間以上経っても採用通知書が届かないときは、自分から会社に連絡をして構いません。郵送中のトラブルや担当者の送付漏れなどが考えられます。
会社に電話をする際は、昼食時間や終業間際を避けるのがマナーです。始業直後は何かと慌ただしいため、始業時間が9時の場合は、10~11時頃に連絡をしましょう。
メールで連絡をする際は、件名を「選考の結果につきまして」などとし、メール内容が一目で分かるようにします。
〇〇株式会社
人事部 〇〇様お世話になっております。〇月〇日に面接を受けた〇〇と申します。
先日はお忙しい中、最終面接の機会をいただき、ありがとうございました。恐れ入りますが、選考結果の連絡がいつ頃になるのかを教えていただくことは可能でしょうか?
こちらの都合で大変恐縮ですが、ご返信をいただけますと幸いです。
採用通知書が届いた際の対処法
採用通知書が届くと、誰でも安堵した気持ちになりますが、転職活動はまだ終わったわけではありません。採用通知書が届いたら、できるだけ早くお礼の連絡を入れ、内定に必要な書類の準備に取り掛かりましょう。
書類の内容を確認する
まずは、採用通知書と同封されている書類の内容を確認します。雇用契約書や労働条件通知書を丁寧に見て、面接で聞いた内容と相違がないかを確かめましょう。
内容の確認後は、受諾か辞退かを検討します。採用通知書を出した会社が、第二志望や第三志望であれば、第一志望の会社の結果通知を待つ手もあるでしょう。
承諾書を提出するまでの期限は、1週間以内が通常です。期限内に回答が出せない場合は保留も可能ですが、入社意欲が低いと見なされるでしょう。
電話やメールで連絡をする
採用通知書の内容を確認した後は、速やかに電話やメールで連絡をします。特に、辞退する場合や返事を保留にする場合は、必ず連絡をしなければなりません。
採用の電話・メールをもらった際、その場で承諾していれば、改めてお礼の連絡を入れる必要はないでしょう。メールの内容には、採用へのお礼と入社への意気込みを記載するのがポイントです。
○○株式会社
人事部 ○○様お世話になっております。採用通知書をいただきました〇〇と申します。
この度は採用のご連絡をいただき、誠にありがとうございます。謹んで内定をお受けいたします。
入社後は1日でも早く貴社に貢献できるよう、精一杯努力する所存です。ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。
まずは取り急ぎ、お礼を申し上げます。
書類を返送する
採用通知書に返送が必要な書類が同封されていた場合は、署名・捺印をして返送します。期日が記載されていない場合でも、できるだけ速やかに対応しましょう。
返送をする際は、添え状を付けると丁寧です。添え状がないからといって、採用を取り消されることはありませんが、あれば相手に好印象を与えます。書類が折り曲がらないようにクリアファイルに入れるのがマナーです。
○○株式会社
人事部 ○○様拝啓
春暖の候、貴社におかれましてはますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
この度は採用のご連絡をいただき、誠にありがとうございました。貴社の一員として活躍できるように精進してまいります。ご指導のほどよろしくお願い申し上げます。
ご指定いただいた下記の書類を送付いたします。ご多忙のところ恐縮ですが、ご査定のほどよろしくお願いいたします。
敬具
記
・内定承諾書 1部
以上
添え状の右上には、自身の氏名・住所・連絡先を忘れずに記載しましょう。
採用通知書の気になる疑問
法的効力の有無や採用担当者に辞退を伝える方法など、採用通知書に関するQ&Aをまとめました。初めての転職活動では色々と迷ってしまう場面が多いですが、採用通知書を手にしたら、できるだけ速やかに対処するようにしましょう。
法的効力は発生する?
「会社から採用を取り消されたらどうしよう」と不安を覚える人は多いものです。採用通知書の法的効力の有無は、会社と求職者の間でどのようなやりとりが行われたかによって異なります。
やりとりの内容が「労働契約」に該当すれば、会社は採用内定を勝手に取り消せません。書面・口頭にかかわらず、労働契約は、双方が合意に達した時点で成立します。
(労働契約の成立)
第六条 労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する。
採用通知書に入社承諾書や労働条件通知書が添えられ、かつ求職者が入社承諾書を返送した場合は、労働契約が成立したと見なしてよいでしょう。
どのタイミングで労働契約が成立するかは、見極めが難しいのが実情です。
辞退する場合はどうすべき?
採用通知書や内定通知書をもらった後でも、求職者は採用内定を辞退することが可能です。辞退を伝えるのには勇気がいりますが、できるだけ早めに連絡を入れましょう。候補者が辞退した場合、企業は次の人材を探さなければなりません。
電話・メールのどちらでも構いませんが、電話の方が確実でスピーディです。メールの場合は、採用へのお礼とお詫びの言葉を添えましょう。
〇〇株式会社
人事部 〇〇様お世話になっております。
貴社より採用通知書を受け取りました〇〇と申します。この度は採用の連絡をいただき、誠にありがとうございました。大変心苦しいのですが、貴社の内定を辞退させていただきたくご連絡を差し上げました。自分の適性やキャリアを考えた結果、他社への入社を決意いたしました。
ご期待をいただいていたにもかかわらず、内定辞退のご連絡となり大変申し訳ございません。本来であれば直接ごあいさつをすべきところ、メールでのご連絡とさせていただきますことご容赦ください。
何卒よろしくお願い申し上げます。
採用通知書が届いたら内容を確認しよう
採用通知書は、正式な採用を通知する書類ですが、件名や記載内容、送付のタイミングは会社ごとに異なります。内定通知書と兼用だったり、複数の書類が同封されていたりするため、手元に届いたら内容を丁寧に確認しましょう。
採用通知書を受け取った後でも、求職者は辞退が可能です。新たな人材を確保しなければならない会社側の立場を考慮して、できるだけ早く連絡を入れましょう。
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