正社員とは何なのか、どのようなメリット・デメリットがあるのかを知っていれば、転職して正社員を目指すのが自分にとって得なのかどうか判断できます。気になる給与や福利厚生、保険や年金制度についても深掘りしてみましょう。
この記事のポイント
- 正社員の定義
- 正社員は正規雇用と同じ意味で使われる言葉で、雇用期間の定めなく企業と直接労働契約を結んでいる労働者のことです。
- 正社員のメリット・デメリット
- 正社員には給与や福利厚生など待遇面でのメリットがある半面、ワークライフバランスが取りにくい、転勤・異動があるといったデメリットもあります。
- 正社員のなり方
- 非正規雇用から正社員への転職を成功させる上では、業種や職種、転職先企業の選び方がポイントになります。
正社員とは
「子どもが大きくなってきたのでパートから正社員を目指したい」「年収の壁への支援対策が変われば正社員の方が得かも」と、正社員への転職を意識し始めている人もいるのではないでしょうか。
転職の方向性を見定めるためにも、まずは正社員とは何なのか、その定義を確認しておきましょう。
雇用期間の定めがない正規雇用
「正社員」は法律用語ではありません。「正規雇用」と同じ意味で使用される言葉で、雇用期間を定めずに企業と直接労働契約を結んだ労働者を表します。
ポイントは2つで、1つ目は雇用期間が決められていないことが挙げられます。特別な事情がない限りは、定年まで働き続けられます。2つ目は、直接契約であるという点です。派遣会社などの紹介事業者が間に入ることはありません。
労働時間は労働契約によって定められていますが、フルタイム勤務を求められるのが一般的です。労働基準法では、原則として労働時間は1日8時間、週40時間以内と定められています。
ただし、労使協定(36協定)の締結と所轄の労働基準監督署長への届け出をしている企業では残業もあり得ます。
出典:労働基準法 第4章 労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇|安全衛生情報センター
出典:労働基準法第36条(時間外・休日労働協定)について|厚生労働省
正社員の種類
長らく正社員はフルタイムで働くものとされてきましたが、近年、厚生労働省の働きかけもあり、正社員(正規雇用)の働き方にも多様性が認められるようになってきました。
ワークライフバランスの実現と優秀な人材の確保が目的です。家庭や健康状態など個人の状況に合わせた柔軟な労働環境により、より多くの人が正社員として働けるようになっています。代表的な種類は以下の3つです。
- 職務限定正社員:専門性が高い、あるいは資格が必要な職務を限定的に行う
- 勤務地限定正社員:転勤の範囲が決められている、または転勤がない
- 短時間正社員:フルタイムの正社員よりも短い勤務時間で働く
さらに、企業によっては週休2日制ではなく、週休3日制を導入しています。週休3日制では、1日8時間のまま週4日勤務する「時短」ケースと、1日の労働時間を10時間にして総労働時間を維持するケースとがあります。
出典:概要|職務・勤務地・時間を限定した多様な正社員|厚生労働省
正社員以外の働き方
正社員、つまり正規雇用以外で労働者が企業で働く場合は非正規雇用と呼ばれます。種類は以下の通りです。
- 契約社員
期間が定められた労働契約を企業と直接結んでいる
契約期間の上限は3年、または5年(専門的な知識が必要とされる業種など)で、その後更新できる - 嘱託社員
有期労働契約を結ぶ契約社員の一種
一般的に労働時間や勤務日数、業務範囲が限定されている - 派遣社員
派遣会社と契約を結び、そこから企業に派遣される労働者
1つの企業に派遣される期間の上限は原則3年 - パートタイム労働者
企業と直接契約を結んでいるパート・アルバイト従業員のこと
労働時間が正社員よりも短い
なお、業務委託は「個人事業主として企業と取引している」という形になるため、非正規雇用には含まれません。
正社員と非正規雇用の待遇はどう違う?
非正規雇用から正社員への転職を考える場合、それが自分にとって得なことなのかどうかは慎重に見極めたいところです。特に給与や福利厚生、保険・年金制度など待遇面の違いは、しっかりと理解しておきましょう。
給与
正社員の給与は、月給制や年俸制など固定給が一般的です。企業によっては成果に応じて給与に上乗せするインセンティブ制度を取り入れていることもあります。非正規雇用の場合は、契約内容によっても異なりますが、多くは時給制です。
正社員には通常、固定給のほかにボーナスや退職金などのプラスαがありますが、非正規雇用の場合にはないのが一般的です。
正社員に比べると非正規雇用の給与単価は少なくなりがちですが、正社員と同じ業務を行っているのにもかかわらず不当に低い給与というケースをなくすため、同一労働同一賃金の導入が推奨されています。
福利厚生
福利厚生には、法律で定められた「法定福利厚生」と、企業が独自に実施する「法定外福利厚生」とがあります。ここでは、従業員のモチベーションアップや企業のイメージアップなどを目的に実施する「法定外福利厚生」について比較してみましょう。
「法定外福利厚生」は企業によって内容も適用範囲も異なりますが、通勤手当や住宅手当、人間ドックやジム費用の提供、育児や介護に関する独自の制度、有給休暇以外の独自の休暇制度など多岐にわたります。
非正規雇用の従業員が法定外福利厚生をどれほど利用できるかは企業によって異なりますが、実際にはかなり少ないのが現状です。
保険・年金制度
健康保険・厚生年金保険・介護保険・雇用保険・労災保険などは、企業に実施が義務付けられている「法定福利厚生」です。
労災保険は全ての従業員が対象とされるため、正社員であろうと非正規雇用であろうと、全額企業負担で加入しなければなりません。
その他の保険や年金制度に関しては適用の範囲が法律によって決められているため、条件を満たしていれば非正規雇用であっても適用されます。ただし、全額企業負担ではなく一部は労働者本人が負担することになるため、手取りが少なくなることは理解しておきましょう。
正社員のメリット
正社員に転職した方がよいのか、非正規雇用のままでもよいのかを判断するためには、正社員のメリット・デメリットを知り、自分のライフスタイルや健康、価値観などと照らし合わせることが必要です。まずは正社員のメリットについて考えてみましょう。
収入が安定している
正社員の場合には基本給が契約によって決められているため、一定の収入は確保されており、祝日などで業務が休みであっても原則大きな変動はありません。基本給にプラスしてボーナスや退職金、インセンティブなどがもらえるのも大きなメリットです。
収入が安定していることは社会的な信用にもつながるため、クレジットカードや住宅ローンの審査にも通りやすくなります。
年齢や勤続年数により昇給する年功序列の企業であれば、長く勤めるほどに収入は上がっていくため、住宅購入や教育資金などのプランは立てやすいでしょう。
福利厚生を最大限活用できる
正社員であれば、保険や年金といった法定福利厚生はもとより、企業によってさまざまなバリエーションがある法定外福利厚生も最大限活用できます。
住宅補助を使えば、住居費を安く抑えて将来のために貯金ができるかもしれません。育児休業の延長制度やベビーシッター料金の補助など、子育て支援に積極的な企業であれば、子育てと仕事の両立もしやすくなるでしょう。
スキルアップのための教材費やセミナー費用を負担してくれる企業であれば、企業のお金で資格や専門性を身に付け、昇進・昇給というさらなるメリットにもつながります。
キャリアアップのチャンスが多い
企業としては、正社員に長く腰を据えて働くことを期待しており、教育して育てていくというスタンスです。より責任のある仕事を引き受けることで実力を付け、キャリアアップしてもらいたいと企業は思っています。
大きなプロジェクトや責任のある業務に関われるチャンスは、非正規雇用よりも正社員の 方が格段に多くなるでしょう。
仕事の幅を広げたり責任の度合いが深まったりしていくと、企業での立ち位置も確立します。仕事からより大きな達成感を得られるだけでなく、キャリアアップへもつながっていくでしょう。
正社員のデメリット
正社員はメリットばかりと思われがちですが、デメリットもあります。正社員のデメリットが今の自分にとっては負担になるという場合には、正社員への転職は先送りにした方がよいかもしれません。どのようなデメリットがあるのか、詳しく見てみましょう。
ワークライフバランスが取りにくくなる
正社員で働くということは、週の大半を仕事に使うということです。健康や生きがい、家族や友人など仕事以外の大切なものをなくさないためには、意識してワークライフバランスを保つことが必要です。
働く時間・場所・スケジュールなどへの裁量権といった面で柔軟性のある企業、子育てに理解のある企業、働き方改革に積極的な企業などでは、ワークライフバランスが実現しやすいといわれています。しかし、企業による格差は大きいのが現状です。
厚生労働省の調査によると、労働時間が長い正社員ほどワークライフバランスが実現できていないと感じており、共働きの場合、非正規雇用より正規雇用の正社員の方が仕事と家庭の両立にストレスを感じているという結果が出ています。
出典:第3-(1)-8図 ワーク・ライフ・バランスに問題を抱えている方の状況|平成29年版 労働経済の分析 -イノベーションの促進とワーク・ライフ・バランスの実現に向けた課題-|厚生労働省
転勤や異動の可能性
組織が大きくなれば、人材を育て、適材適所を見極めながら企業に利益を生み出す人材配置を行うものです。企業側には人事権があり、その範囲は労働契約に明記されています。
労働契約に人事異動があり得ることが明記されている場合には、通常、転勤や配置転換といった人事異動命令を拒否できません。拒否した場合、法律上は懲戒処分も可能です。
転勤や異動のある企業の正社員になった当初は覚悟していたはずなのに、子どもの成長や共働き、介護などライフスタイルが変化することで転勤や異動を難しく感じるケースも少なくありません。
正社員になるには
メリット・デメリットを慎重に考慮した上で正社員への転職を目指したいというのであれば、すぐに行動を開始しましょう。転職で重要なのは、自分に合った転職先とうまく巡り合うことです。時間を無駄にしない効率的な転職先探しのポイントを解説します。
同業種・同職種から正社員に転職
1つ目の方法は、これまで非正規雇用で働いてきた経験や知識を生かせる業種・職種で正社員を目指すことです。非正規雇用とはいえ、正社員と変わらない業務をこなしている人は多くいます。現在働いている企業に正社員登用制度があるのであれば、活用しましょう。
正社員登用制度が使えないのであれば、気持ちを切り替えて転職へのステップを踏み出します。求人情報は頻繁に更新されているため、こまめにチェックするようにしましょう。自分に合った求人を見つけたらすぐにリサーチすることが重要です。
未経験OKの求人を見つけて転職
転職を機にキャリアチェンジしたいのであれば、どの業種・職種にするかを慎重に選ばなければならないでしょう。未経験からの転職成功例が多い業種・職種を見つけましょう。営業職・IT関連のエンジニア・販売職・製造業などがおすすめです。
求人を探す場合には、「未経験OK」のもので検索します。「未経験OK」とは「実務経験なしでもOK」という意味です。業種・職種に関する知識やスキルは習得していることが前提となります。
どのような知識やスキルが必要なのかを調べ、必要最低限のものは身に付けておくようにしましょう。資格があれば強みにできます。
紹介予定派遣から正社員を目指す
正社員、つまり正規雇用を前提に派遣として働くスタイルを紹介予定派遣といいます。紹介予定派遣は募集の段階から「6カ月の派遣期間が終了し、企業と派遣社員の双方が同意すれば正社員になる」という条件を明示していなければなりません。
この6カ月はいわば試用期間です。実際に働きながら業務のノウハウを学んだり企業の雰囲気をつかんだりできるため、長く働けそうかどうかの判断もしやすくなります。
あなたに合った働き方を見つけたいなら
正社員とは、雇用期間の定めなく企業と直接労働契約を結んでいる労働者のことです。収入の安定や待遇面でのメリットはありますが、ワークライフバランスが維持しにくい、転勤・異動があるなどのデメリットもあります。
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