年収が103万円を超えると扶養から外れる?扶養内で収める方法とは

家族の扶養に入りながらアルバイトで働いている場合は、年収103万円の壁に注意する必要があります。年収が103万円を超えると、税制上の扶養から外れてしまうルールのためです。年収と扶養の関係や扶養内で働くメリット・デメリットを解説します。

103万円と扶養の関係

通帳を見ている女性

(出典) pixta.jp

年収103万円は、税制上の扶養に入れるかどうかのボーダーラインです。家族に影響を与えるだけでなく、自分に納税の義務が発生する点にも注意しましょう。

所得税がかかるようになる

給与所得者の所得からは、給与所得控除55万円と基礎控除48万円が差し引かれます。所得税は控除後の所得に課されるため、合計所得が103万円以下であれば、55万円+48万円=103万円となり、所得税は発生しません。

アルバイトによる年収が103万円を超えると、控除を引いた後にも所得が残ることになり、所得税の納税義務が発生してしまうのです。

所得税の税額は、「課税される所得金額×税率−控除額」で計算できます。例えば、年収が105万円の場合、所得税の税額は以下のように算出が可能です。

(105万円−103万円)×5%−0円=1,000円

税率や控除額は、国税庁のWebサイトで確認しましょう。

参考:No.2260 所得税の税率|国税庁

扶養する側は控除が適用されなくなる

親の扶養に入っている場合、アルバイトによる自分の年収が103万円以下なら、親に扶養控除が適用されます。親の所得から扶養控除分が差し引かれるため、親の税負担が軽減されるのです。

一方、自分の年収が103万円を超えると、親の扶養控除は適用されなくなります。親の所得が増えることに伴い、親が負担する所得税や住民税も増えてしまうのです。

自分の年収が103万円を超えた場合、自分に税負担が発生する上、親の税負担も重くなる点に注意しましょう。

参考:家族と税|国税庁

扶養内で働くメリット

通帳を見ている女性の手

(出典) pixta.jp

家族の扶養に入ることで、税金や社会保険料の負担がなくなります。給料が全額手取りになる点や、扶養している側の節税につながる点もメリットです。

各種税金・社会保険料を支払う必要がない

扶養の種類には、税制上の扶養と社会保険上の2種類があります。社会保険上の扶養に入ることで、自分が税金や社会保険料を納める必要がなくなります。

社会保険上の扶養とは、主に世帯主が加入している健康保険や厚生年金の被扶養者になることです。アルバイトの場合は、親や配偶者の扶養に入るケースが多いでしょう。

社会保険上の扶養に入っていれば、保険料を負担しなくても、自分も健康保険や公的年金に加入している状態になり、医療費の自己負担3割が適用される点や国民年金が支給される点がメリットです。

なお、家族と同居していなくても、一定の条件を満たせば社会保険上の扶養に入れます。

働いた給料が全額手取りになる

扶養に入らずに働く場合、税金や社会保険料が毎月の給与から控除されます。会社から支給されたお金を全額もらえなくなるのです。

一方、扶養内で働いているうちは税金や社会保険料が引かれないため、働いて支払われた給料が全額手取りになります。働くモチベーションがアップしやすい点がメリットです。

年収が103万円を超えた場合、収入が増えていっても所得税は少しずつしか増えていきません。しかし、社会保険上の扶養から外れると、社会保険料の控除により、手取りが一時的に大きく減ります。

扶養している側も節税につながる

扶養内で働くメリットとしては、扶養している側の節税につながる点も挙げられます。扶養控除や配偶者控除が適用されると所得が減ることで、所得税の負担も軽減されるためです。

扶養している側の所得税が減れば、その分手取りが増えます。扶養手当が出る会社で働いていれば、手取りはさらに増加するのです。

同居中の親の扶養に入っている場合、生活費の一部を親に負担してもらっているケースも多いでしょう。親の扶養に入ることは、生計を一にする家族の収入を増やすことにつながり、ひいては自分の生活を助ける結果になるのです。

103万円を超えて働きたいと考えるなら、親ともよく話し合う必要があります。親の扶養から外れると家族全体の収入が減る事態になるため、働き方を大幅に見直す必要があるかもしれません。

扶養内で働くデメリット

通帳を見る夫婦

(出典) pixta.jp

親の扶養内で働き続けることには、メリットだけでなくデメリットもあります。どのようなリスクがあるのかを知ると、場合によっては勤務先を変えることを検討する必要が生じるかもしれません。

収入の上限が決まってしまう

扶養内で仕事を続けようと考えた場合、どうしても収入の上限が決まってしまいます。扶養内で働く以上、年収の上限が103万円を超えないよう注意する必要があるためです。

現状の収入に満足していないケースでも、扶養の壁がある限り、バリバリ働いて給料を上げることは不可能です。収入を増やしたければ年収の壁を越え、さらに収入を増やしていかなければ、税金や社会保険料の控除分も取り戻せません。

扶養内でアルバイトを続けている限り、自分のキャリアにポジティブな影響を与えない点にも注意が必要です。正社員に転職しようと思っても、年齢が上がるにつれて転職は難しくなっていきます。

勤務先が見つかりにくいケースも

扶養内で働く以上、シフトに入れる数も制限されてしまいます。たくさんシフトに入ってほしい会社で働こうとする場合、断られてしまうケースが考えられるのです。

特定の仕事に就きたいという希望があっても、労働時間に自分で制限を設けなければならないため、希望がかなえられない状況も多いでしょう。

年収が103万円に達するのは、毎月の平均収入が約8万6,000円になる場合です。年収103万円を意識してアルバイトを探すのであれば、この金額を超えないようにシフトを組める勤務先に制限されてしまいます。

103万円以外の「壁」とは?

通帳を見ている女性

(出典) pixta.jp

年収の壁には、103万円以外にも98万円・106万円・130万円の壁があります。それぞれでどのような制限がかかるのか確認しましょう。

98万円の壁

収入の少ないアルバイトが稼ぎを増やしていく過程で最初にぶつかる壁は、年収が100万円弱に達した状況です。自分の収入に対して住民税がかかるようになります。

所得税は年収103万円を超えると発生するため、収入を増やしていくと住民税の方が先に課されることになるのです。

年収いくらから住民税が発生するのかは、住んでいる自治体により異なります。収入が90万円台に達した段階で、住民税がかかることを意識する必要があるでしょう。

住民税が発生する具体的なボーダーラインを知りたい場合は、住んでいる自治体に直接確認するのがおすすめです。

106万円の壁

年収が106万円に達した場合、一定の要件を満たしていると社会保険上の扶養から外れます。106万円が壁となる具体的な要件は、以下の5つです。

  • 従業員数が101人以上の企業で働いている(2024年10月以降は51人以上)
  • 週20時間以上働いている(残業を除く)
  • 2カ月以上の雇用期間が見込まれる
  • 賃金が月額8万8,000円以上(手当・賞与を除く)
  • 学生ではない

上記の要件をすべて満たした場合、年収が106万円以上になると社会保険への加入が必要になります。

参考:動画・チラシ・ガイドブック | 社会保険適用拡大 特設サイト|厚生労働省

130万円の壁

年収が130万円以上になると、無条件で社会保険上の扶養から外れます。106万円の壁の条件を満たさなかった人も、年収130万円で社会保険への加入が必要になるのです。

社会保険上の扶養から外れた場合は、勤務先の健康保険・厚生年金に加入するか、自分で国民健康保険と国民年金に加入するかを選択しなければなりません。

勤務先の健康保険や厚生年金に加入すれば、年金の上乗せ分が発生するため、老後にもらえる年金が増えます。障害厚生年金が支給される点や、保険料の負担が会社と折半になる点もメリットです。

社会保険上の扶養から外れると、社会保険料の控除分により手取りが一気に減ります。扶養内で働くかどうかを考える際、年収130万円は大きな壁になるでしょう。

扶養内で効率的に働くコツは?

家計簿を見ている女性

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どうしても家族の扶養に入りながら働きたい場合は、効率的に働くことを意識しましょう。扶養内で効率的に働くコツを紹介します。

勤務先に相談する

扶養内で仕事をしたい場合は、勤務先の理解を得ておきましょう。あらかじめ勤務先に扶養内で働きたいと伝えておくことで、仕事がやりやすくなります。

これからアルバイトを探すケースでも、応募の際に扶養内で仕事をしたい旨を伝えておく必要があります。急な出勤が無理であることを伝えておけば、働き始めた後に迷惑をかける心配もありません。

早くアルバイト先を決めたいからといって、扶養に入りながら働きたいことを黙っているのはNGです。面接の際には、マイナスの評価を受けそうなこともきちんと伝えなければなりません。

シフトをしっかり管理する

扶養内で効率的に働くためには、シフトをきちんと管理することも重要です。稼げる額の上限を把握し、オーバーしないようにシフトをしっかり管理する必要があります。

掛け持ちでアルバイトをしている場合は、うっかり103万円を超えてしまう可能性も考えられるため注意が必要です。働き損にならないように、計算しながら掛け持ちをしましょう。

アルバイト先によっては、103万円をオーバーしそうになった際に教えてもらえるケースもあるため、勤務先に相談しておくのがおすすめです。

交通費についても確認が必要

交通費は原則として非課税となるため、年収には含まれません。扶養内で働くことを意識する場合、通常は交通費まで考慮する必要はないでしょう。

ただし、交通費が時給に含まれているケースでは、勘違いにより103万円を超えてしまう事態もありえます。交通費として別途支払われるのか、時給や日給にあらかじめ上乗せされているのか、分かりにくい場合は確認しておきましょう。

なお、バスや電車などの公共交通機関を使っている場合、月当たりの交通費が15万円を超えると課税対象になります。

税金の制度を正しく理解して効率的に働こう

前向きな女性

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年収が103万円を超えると税制上の扶養から外れるため、自分の収入に所得税が課されるようになります。親など扶養する側の税負担が増してしまう点もポイントです。

年収が106万円や130万円に達すると、社会保険上の扶養からも外れます。年収の壁の仕組みを正しく理解し、効率的に働きましょう。