高卒から税理士になるには?受験資格を得る方法や難易度を紹介

学歴を問わず、税理士になるには税理士試験を合格する必要があります。受験には一定の基準があり、まずは受験資格を得るところから始めなければなりません。高卒の人が税理士試験の受験資格を得る方法や、税理士試験を受けた場合の難易度を紹介します。

高卒で税理士になるには?

税理士のイメージ

(出典) pixta.jp

学歴を問わず、税理士になるには、税理士試験に合格する必要があります。高卒から税理士になる方法・難易度を詳しく見ていきましょう。

税理士試験の合格・実務経験が必須

税理士になるには「税理士試験に合格していること」「2年間の実務経験があること」が必要です。これらを満たした人が「日本税理士会連合会」に登録し、地域の税理士会に入会すれば、税理士として働けます。

税理士試験では、会計学や税法に関する科目が出題されます。合格には、会計学2科目・税法科目7科目のうち3科目の計5科目をクリアすることが必須です。

ただし、受験者は、1度に全ての科目を合格する必要はありません。1度合格となった科目は、生涯有効とされています。

数年かけて資格取得するのが一般的

税理士試験の難易度は高く、各科目の2022年度の平均合格率は約17%です。1度で試験に合格するのが難しいため、多くの人は数年計画で5科目の合格を目指します。

税理士試験の合格者には高卒も一定数おり、高卒から税理士になることは不可能ではありません。厚生労働省の職業情報提供サイト「jobtag」によると、税理士全体のうち高卒者が占める割合は約17%となっています。

ただし、税理士試験は、会計学科目をのぞき、受験に必要な資格が設けられています。詳細は後述しますが、税理士試験を受ける人は、受験資格の取得から始めなければなりません。

参考:
税理士 - 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
令和4年度(第72回)税理士試験結果|国税庁

高卒における税理士試験の難易度

試験勉強をする男性

(出典) pixta.jp

税理士試験は学歴以外の受験資格もあり「高卒だから受験できない」ということはありません。高卒における税理士試験の難易度を紹介します。

決して簡単ではないが学歴は関係ない

税理士試験の受験者における高卒者の割合は7.0%です。全体で見ると多くありませんが、税理士試験は学歴に偏重するものではありません。

税理士試験の受験資格では、大卒者にも「社会科学に属する科目を修めていること」(※)という条件が定められてます。学歴不問の「資格による受験資格」「職歴による受験資格」も設けられており、高卒でも受験・合格は十分に可能です。

国税庁が発表する「税理士試験の受験資格の検証」によると、学歴不問の受験資格で税理士試験を受験した人は、全体の21%に上るとされています。

参考:
税理士試験の受験資格の検証|国税庁
税理士試験受験資格の概要|国税庁

※2023年度(第73回)の税理士試験から適用見込み

2022年度の税理士試験の高卒合格率は22.1%

「2022年度(第72回)税理士試験」では、高卒・旧中卒の受験者数は1,962人でした。うち433人が合格し、合格率は22.1%となっています。

一方、大卒を見ると、受験者数2万1,822人に対し、合格者は4,054人です。合格率は18.6%で、高卒者の方が高いことが分かります。

税理士試験の、学歴別・年齢別の全体の合格率は19.5%となっており、高卒者の合格率は決して低いとはいえません。学歴別で見ると、大学在学中の受験者の合格率「29.8%」に次ぐ高い合格率です(その他をのぞく)。

参考:令和4年度(第72回)税理士試験結果|国税庁

高卒で税理士試験の受験資格を得る方法

電卓とパソコンを操作する手元

(出典) pixta.jp

2023年度(第73回)の税理士試験からは、会計学に属する試験科目の受験資格が撤廃される見込みです。しかし、税法に属する試験科目については、受験資格が維持されます。

高卒で税理士試験を受けるには、規定の受験資格を満たさなければなりません。高卒で税理士試験の受験資格を得る方法を紹介します。

参考:税理士試験が受験しやすくなります!!|日本税理士会連合会

学識により受験資格を満たす

学識による受験資格は、以下のとおりです。

  • 大学、短大または高等専門学校を卒業し、社会科学に属する科目を1科目以上履修した人
  • 大学3年次以上で、社会科学に属する科目を1科目以上含む62単位以上を取得した人
  • 一定の専修学校の専門課程を修了し、社会科学に属する科目を1科目以上履修した人
  • 司法試験合格者

高卒者が学識による受験資格を選択する場合、最短は「短大に入学して社会科学に属する科目を履修し、卒業する」ルートです。

社会科学に属する科目とは、法律や経済学に関係する科目のほか、社会学・政治学・行政学なども対象です。専門科目ではなく、教養科目・共通科目として履修した場合も、資格を満たしたと認められます。

とはいえ、税理士試験を受けるためだけに短大に行くのは、あまり現実的ではありません。

参考:税理士試験受験資格の概要|国税庁

資格により受験資格を満たす

資格による受験資格は、以下のとおりです。

  • 日商簿記検定1級合格者
  • 全経簿記検定上級合格者

日商簿記検定は「日本商工会議所」、全教簿記検定は「公益社団法人 全国経理教育協会ZENKEI」が実施する検定試験です。それぞれの最上位の試験に合格すれば、税理士試験の受験資格を得られます。

両試験とも誰でも受験可能なため、高卒者が税理士試験の資格を得たいとき、まず検討すべきルートといえます。

試験に合格するためには、会計や簿記・税務に関する深い知識と理解が必要です。資格取得を目指して勉強することは、税理士試験を受験する上でもメリットとなるでしょう。

参考:税理士試験受験資格の概要|国税庁

職歴により受験資格を満たす

職歴による受験資格は、以下のとおりです。

  • 法人または個人の会計に関する事務に2年以上従事した人
  • 銀行・信託会社・保険会社等において、資金の貸付け・運用に関する事務に2年以上従事した人
  • 税理士・弁護士・公認会計士などの業務の補助事務に2年以上従事した人

2年以上、会社で会計業務を担当したり、税理士・弁護士・公認会計士の事務所で補助業務に従事したりすれば、職歴による受験資格を満たしたことになります。

なお、職歴での受験では、職歴を証明するための「職歴証明書」が必要です。ひな形は、国税庁のホームページに掲載されているものを参考にしましょう。

参考:
税理士試験受験資格の概要|国税庁
受験資格について|国税庁

資格により受験資格を得る方法

簿記試験

(出典) pixta.jp

高卒者が税理士試験の受験資格を得る場合、資格または職歴による方法が一般的です。まずは資格によって受験資格を得る方法を見ていきましょう。

日商簿記検定試験1級に合格する

日商簿記検定1級試験は、日本商工会議所が実施する簿記検定試験です。例年6月と11月の2回行われ、合格すれば税理士試験の受験資格を得られます。

日商簿記1級試験では、商業簿記と工業簿記への深い知識が必要です。合格率は例年10%前後で、取得しやすいとはいえません。合格ラインは正答率70%以上、かつ1科目の得点が40%以上とされています。

独学で簿記1級を取得するには、500~1,000時間程度の学習時間が必要といわれています。1年間の学習計画を立てたとしても、1日に1.5~3時間ほど勉強しなければならない計算です。働きながら取得を目指す人は、専門学校に通った方が効率的かもしれません。

参考:
1級受験者データ(統一試験)
簿記 | 商工会議所の検定試験

全経簿記検定上級に合格する

全教簿記検定上級は、公益社団法人 全国経理教育協会が実施する検定試験です。試験そのものは年4回行われますが、上級を受けられるのは2回のみとなっています。

試験では、日商簿記と同様に、高レベルな商業簿記・工業簿記に関する問題が出題されます。上級に合格するためには、試験科目4科目全てで100点満点中40点以上・4科目合計で280点以上を取得しなければなりません。難易度は高く、2023年度第209回における上級合格率は13.63%でした。

全教簿記検定上級も、日商簿記1級と同様に会計知識をアピールできる資格です。ただし、知名度や企業へのアピール度では「日商簿記1級が上」と考える人も少なくありません。

全教簿記検定上級と日商簿記1級のどちらを受験するかは、慎重に考えましょう。

参考:公益社団法人 全国経理教育協会 ZENKEI 簿記能力検定

職歴により受験資格を得る方法

職務経歴書

(出典) pixta.jp

税理士試験の受験資格は、実務経験をつむことでも得られます。職歴で受験資格の取得を目指す人におすすめの「転職ルート」を紹介します。

会計事務所や税理士事務所に転職する

職歴での税理士試験受験資格取得を目指す人は、会計事務所や税理士事務所への転職を目指しましょう。2年間補助業務に従事すれば、受験資格を取得することが可能です。

転職の際は、一定レベルのパソコンスキルのほか、会計や簿記に関する資格や経験があると有利になります。

FP(ファイナンシャルプランナー)2級や、日商簿記2級資格の所有者、または経理や会計担当者は、資格や実務経験をしっかりとアピールしましょう。

一方、資格も実務経験もない場合は「税理士試験の勉強中です」と伝えるのも1つの方法です。言葉を尽くして熱意を伝えれば、面接者に好印象を与えやすくなります。

未経験者はオフシーズンの転職活動がおすすめ

未経験から会計事務所や税理士事務所に転職する場合は、税理士試験直後や繁忙期は避けましょう。

税理士試験直後の8~9月は、職を探す科目合格者や実務経験者が増える傾向にあり、未経験者が応募すると、書類審査の通過さえ難しいかもしれません。

また、3月は決算準備や確定申告などがあり、会計事務所や税理士事務所は忙しくなります。求人そのものが少なくなる可能性も高く、転職活動には適しません。

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受験資格を得れば高卒でも税理士を目指せる!

試験を受ける様子

(出典) pixta.jp

高卒でも、学識・資格・職歴のいずれかで条件をクリアすれば、税理士試験の受験資格を得られます。税理士試験に合格して実務経験をつみ、日本税理士会連合会に登録されれば、税理士として働くことが可能です。

高卒からの受験を目指す場合は、資格または職歴で受験資格を得ましょう。日商簿記1級または、全教簿記検定上級を取得するか、2年以上税理士事務所や会計事務所で補助業務に従事すれば、税理士試験を受験できます。

受験資格を取得できれば、試験合格に向かってまい進するのみです。