面接で「御社」は使わない?「貴社」との違いや使い分けを解説

就職・転職の採用面接では、質問への受け答えも重要ですが、言葉の使い方にも注意が必要です。特に「御社」と「貴社」は使用すべきシーンが異なるので、正しい使い方を知って間違えないようにしましょう。「当社」と「弊社」の違いも解説します。

面接で「御社」は使わない?

面接の様子

(出典) pixta.jp

「御社」は、相手企業に敬意を示す表現として知られていますが、面接で使ってはいけないと考えている人もいるようです。本当のところはどうなのでしょうか?

面接では「御社」で問題ない

「御社」は相手の会社を指す言葉で、いわゆる「話し言葉」であるため、面接時の受け答えで用いて問題はありません。むしろ敬意を示すための正しい表現なので、面接時やビジネスシーンにおける電話での受け答えなどで用いるべきものです。

特に新卒の就職活動で面接を受ける場合、初めて企業の担当者と接することになるので、基本的なビジネス用語を使えるようにしておきましょう。「こちらの会社」「この会社」といった表現は適切な敬語ではないので、「御社」を使うことが大事です。

また、敬語を使うことに意識を取られるあまり、「御社様」といった表現にならないように注意しましょう。「御社」自体が敬語であるため、その後に「様」を付けると、二重敬語という誤用になってしまいます。ただし、実際のビジネスシーンでは文法的には間違っていてもこの言い方をしている人が一定数いるため、緊張などで意図せず「御社様」を使ってしまっても過度に気にする必要はありません。

「御社」と「貴社」の違いと使い分け

面接の様子

(出典) pixta.jp

「御社」と似た表現に「貴社」があります。どちらも同じ相手企業を指す表現ですが、使用すべきシーンが異なるので、正しい用法を知っておきましょう。

「貴社」は書き言葉

「御社」と「貴社」は、意味こそまったく同じですが、利用できるシーンが異なります。

上記のように「御社」は話し言葉ですが、「貴社」は書き言葉です。従って、面接では「御社」を用いるのが一般的であり、履歴書や職務経歴書などの応募書類において、相手の会社を指す場合は「貴社」を用います。

どちらも同じように使えると思っている人も多いですが、話し言葉と書き言葉を混同してはいけません。面接で「貴社」を使ったり、応募書類に「御社」と書いたりしないように気を付けましょう。

使い方を間違えた場合、選考に影響は?

もし、面接の場面で「貴社」を使ってしまうなど、利用シーンや言葉の使い方などを間違えてしまった場合、選考に影響はあるでしょうか?

結論としては、言葉の使い方の間違いだけで合否に直結するケースはまれです。

ただし、採用担当者によっては言葉遣いを細かく気にするケースもあるので、正しい表現を使うに越したことはありません。

「御社」「貴社」を使った例文を紹介

面接に応える男性

(出典) pixta.jp

「御社」と「貴社」を使った、正しい表現の例文を紹介します。実際の使用例を確認しておけば、就職・転職活動の際に正しい表現を使えるようになるでしょう。

「御社」の使い方の具体例

「御社」は話し言葉であるため、上記のように就職・転職活動中の場合は面接シーンで使用したり、応募企業に電話をかけたりする場面で使います。

就職・転職後も、ビジネスシーンで相手と話す際に用いる機会は多いので、相手に違和感を与えない使い方を心掛けることが大事です。面接における用例と、相手企業に電話をする場面での用例を簡単に紹介します。

面接における用例
①御社は小売業界において、他の企業に先駆けて最新の技術を取り入れています。さまざまな方法で積極的に業務効率化を図る姿勢に、大変共感を覚えております。
②これまで培ってきたITエンジニアとしての経験を、御社でも十分に生かせると考えております。
③流通業界において多くの企業が御社の製品を導入しており、常に独自のサービス開発に力を入れている点に、とても魅力を感じています。
電話をかける場面での用例
④先日、御社より面接日程の変更のご連絡をいただいた中村と申します。面接時、提出が必要なものはございますか?
⑤それでは来月5日の14時に、御社に伺います。当日、製品開発部の田中様にお電話を差し上げた方がよろしいでしょうか?
⑥先月末に、御社がリリースされた販売管理システムに興味があり、お電話いたしました。製品資料を送っていただきたいのですが、ご担当の方はいらっしゃいますか?

「貴社」の使い方の具体例

面接や電話をかける場面で使用する「御社」に対して、「貴社」は書き言葉であり、履歴書や職務経歴書など、就職・転職時の応募書類や、ビジネス文書などで使用します。

すでに解説したように、「御社」や「貴社」自体が敬語表現であるため、「貴社様」といった表現を使わないように注意しましょう。履歴書や職務経歴書での用例と、ビジネスメールを作成する際の用例を紹介します。

履歴書や職務経歴書での用例
⑦長年、業界トップクラスの開発力を維持している貴社の製品開発部門で、これまでのエンジニアとしての経験を生かしたいと考え、応募させていただきました。
⑧このたび、貴社のコンサルタント採用に応募いたしました鈴木と申します。ご指定の通り、応募書類の職務経歴書を添付ファイルに送付いたします。ご査収の程、よろしくお願い申し上げます。
ビジネスメールを作成する際の用例
⑨お話を聞いていただけるとのこと、大変うれしく思います。それでは来月5日の14時に、貴社に伺います。もし日程の変更が必要な場合は、早めにご連絡いただけますと幸いです。
⑩貴社の営業部門でご活躍されている山本様にお話を伺いたく、ご連絡を差し上げました。

「当社」と「弊社」の違いにも注意

面接を受ける就活生

(出典) pixta.jp

「御社」と「貴社」に加えて、「当社」と「弊社」の違いにも注意が必要です。特に使い分けを意識していないビジネスパーソンは少なくありませんが、厳密には使用すべき場面が異なるので、ここでしっかり確認しておきましょう。

「弊社」は謙譲語、「当社」は丁寧語

「弊社」と「当社」は同じ文脈で用いられがちですが、前者は謙譲語であり後者は丁寧語です。謙譲語は自らをへりくだることにより相手を立てる敬語であり、主に社外の相手に対して、自社を表現する場合に「弊社」を用います。

一方、「当社」は丁寧語です。言い回しを丁寧にして、相手に敬意を示す表現として使います。へりくだる必要はないものの、一定の敬意を示す必要がある相手に対して使うのが一般的です。

多いパターンとしては、顧客に向けて話すときは相手を立てる意味で「弊社」を使い、プレスリリースや会社説明など、フラットな立場で自社のことを指すときは「当社」を使うといった考え方です。

使わない・使えない表現に気を付けよう

面接を受ける就活生

(出典) pixta.jp

就職・転職活動時に加えて、日常のビジネスシーンでも混同されがちな「御社」と「貴社」との違いを解説しました。

どちらも相手の会社に敬意を示す表現ですが、「御社」は話し言葉であり、面接や電話などで相手と話す場合に使用します。一方「貴社」は書き言葉で、応募書類やビジネスメールなどで用いる表現です。利用シーンを間違えると相手の印象を損なう可能性があるので、正しく使い分けられるようにしましょう。

紹介した例文を参考にしながら実際に使ってみることで、重要な場面で間違えることもなくなるでしょう。これから就職・転職を目指す人は、これらの使い分け以外にも、基本的なビジネス用語の使い方を押さえておくことが大事です。