福祉やものづくりに興味を持っている場合、義肢装具士を目指すのもおすすめです。義肢装具士になるには、どうすればよいのでしょうか?資格取得の方法や試験の内容、資格を生かして働ける主な場を紹介します。必要な資質と適性も併せて確認しましょう。
義肢装具士になる上で必要なもの
義肢装具士として働くにあたって、必須となるものには何があるのでしょうか?仕事探しの前に取得しなければならない資格と、受験資格を得る方法を解説します。
専門知識を学び国家資格を取得する
義肢装具士は、義肢装具士法によって定められた国家資格です。資格取得のための試験には、受験資格が設けられています。
まずは受験資格を得るために、専門の学校で知識を身に付けなければなりません。学校卒業後、試験に合格すると義肢装具士として就職できます。
多くの場合、専門コースや専門学校で就職活動をしながら、卒業に合わせて試験合格を目指すことになるでしょう。
職業訓練で短期間だけ義肢装具の製作を学べる学校も存在し、無資格でも対応できる業務は一部あるようですが、義肢装具士として本格的に業務に携わるのであれば、国家資格の取得は必須です。
義肢装具士試験を受験するまでの道のり
義肢装具士試験の受験資格を得る方法は、いくつかあります。どの方法を選ぶにしても、専門の学校で知識を身に付けなければなりません。進路として考えられる道を確認しましょう。
大学の義肢装具士コースで学ぶ
一部の大学には、義肢装具士の専門コースを設けているところがあります。専門知識を学べる大学は多くはないため、場所・難易度・学力などを確認し、自分が受験できるのか把握しておくのが大切です。
大学で学ぶ場合、4年制大学が候補になります。専門学校であっても3年以上のカリキュラムとなっており、短大は対象外です。
ある程度の時間がかかる点は理解した上で、義肢装具士の専門知識と一般教養を身に付けたいと考えるなら、大学を選ぶことになるでしょう。
養成施設で3年以上学ぶ
義肢装具士の養成施設で3年以上学ぶと、試験の受験資格が得られます。3年制の専門学校を選択すれば、4年制大学よりも早く資格取得を目指せるのがメリットです。
福祉系や工業系の専門学校で、義肢装具士コースや専門課程が設けられている学校を探しましょう。
なお、義肢装具士試験の受験資格の項によると、「大学等で1年以上修業し、指定の単位を取得している場合は、2年以上養成施設で学ぶ」というルートもあります。
3年制の専門学校に通う、もしくは大学等1年以上・養成施設2年以上のルートのいずれにしても、原則は資格取得まで3年以上かかると考えておきましょう。
留学して専門知識を学ぶ
義肢装具士と同じように、義肢を製作する仕事は海外にもあります。日本の免許にこだわらないのであれば、海外の専門的な学校に通い、技術を身に付けるのもよいでしょう。
例えば、オーストラリアには国際義肢装具協会(ISPO)の教育プログラムを学べる大学があり、ドイツでも義肢製作のマイスターの資格を取得できます。
とはいえ、海外で学べる知識・技術は、資格取得国でのみ活用できるものです。日本で義肢装具士として働くには、日本の免許を取得しなければなりません。
海外で学んだ専門知識が認められれば、日本の義肢装具士試験の受験資格を得ることも可能ですが、留学前に自分が通う学校が認められているか確認しておきましょう。
義肢装具士試験の内容と合格率
義肢装具士試験は、国家試験です。試験科目などの概要や、スケジュールは公開されています。試験対策や勉強を進める前に、大まかな内容と合格率について見ていきましょう。
義肢装具士試験の内容とスケジュール
義肢装具士試験は、年1回・毎年2月頃に実施されます。試験地は東京都です。受験にあたって、大学・養成施設の卒業見込証明書または卒業証明書が必要になるため、試験を受けるのは卒業年度かそれ以降になります。
試験科目は、臨床医学大要・義肢装具工学・義肢装具材料学・義肢装具生体力学・義肢装具採型・採寸学・義肢装具適合学などです。
学校に通っている間は、試験の時期や受験手続きの知らせが入る可能性が高いですが、試験対策のためにもある程度の情報はチェックしておきましょう。
義肢装具士試験の合格率は高め
義肢装具士試験は、学校に通い基礎知識を身に付けた人たちが受験します。多くの人が試験内容を把握し、技術も持っているため合格率は高い傾向です。
2023年の試験では、200人が受験して162人が合格、合格率は81.0%でした。80%以上が合格すると考えると、きちんと勉強しておけば難易度はそれほど高くはないと推察できます。
目安として過去の合格率も見てみると、2022年の合格率は68.5%、2021年は72.7%となっています。年度によってばらつきはあるものの、約60〜80%の人が通過する試験です。
学校に通っているにもかかわらず、20〜40%程度が落ちてしまうことを考えると、学校でしっかり勉強し、試験対策をしておく必要があるでしょう。
参考:第36回義肢装具士国家試験の合格発表について|厚生労働省
:第35回義肢装具士国家試験の合格発表について|厚生労働省
:第34回義肢装具士国家試験の合格発表について|厚生労働省
義肢装具士を目指す上で必要な資質・適性
義肢装具士を目指すには、どのような特性や資質が求められるのでしょうか?身に付けておいた方がよい資質・適性について解説します。
ものづくりへの興味と手先の器用さ
義肢を必要とするのは主に、何らかの理由で手足を失った人、もしくは機能の補助をしなければならない人たちです。手足の代わりになるものであり、違和感なく使ってもらうには本人の使い心地や希望を聞き、細かい修正をしなければなりません。
義肢を作るには道具を使いこなし、手作業で細かい部分を調整しなければならないため、ものづくりへの興味や手先の器用さが求められます。使う人によって求める形状・機能が異なるのが特徴であり、毎回違うものをオーダーされる可能性も高いでしょう。
ものづくりの作業に抵抗がなく、楽しめる人にとって義肢装具士は適職です。また、手先が器用であれば、学校での技術習得や実際の業務でも素早く対応できます。
他者への思いやりと社会貢献への熱意
義肢を必要とする人や動物に対して、思いやりを持つのも義肢装具士に求められる資質です。相手の気持ちを理解し、要求を正確に把握するには、共感力・思いやりの気持ちが大切といえます。
義肢を求める人たちとコミュニケーションを取り、思いやりを持って接していれば、感謝の言葉を聞く機会も増えてくるでしょう。仕事にもやりがいが生まれます。
福祉や社会貢献に対する意識が強く、誰かの役に立ちたいと考える人に向いている仕事です。熱意を持ち、提案や使い心地の確認を続けていけば、多くの人から必要とされる義肢装具士を目指せるでしょう。
義肢装具士の主な仕事内容と働く場所
義肢装具士は、具体的に何をする職業なのでしょうか?基本的な仕事内容や、活躍できる場所について紹介します。
患者に合う「義肢」を提供する仕事
義肢装具士の仕事は、対象者の義肢を作ることです。対象となるのは手足を失った人・機能が低下した人などなので、単に同じモデルを大量生産するのではなく、それぞれの状況・求める形に合わせた義肢を製作し提供します。
医師の指示に従い、患者の状態や必要な義肢の範囲を確認した上で、製作に取りかかるのが基本の流れです。義肢装具士の定義を定めた義肢装具士法でも、医師の指示の下で義肢の製作・適合を行うとされています。
一般的には人間が対象ですが、希望があれば動物のサポートも行うケースがあり、幅広い活躍が期待できる仕事です。ペットや保護動物など、義肢を必要とする生き物は人間だけとは限りません。
義肢製作所や医療機関で活躍
義肢装具士が働く主な場所は、義肢を製作する民間企業です。義肢を製作する専門の会社に勤務し、場合によっては複数の人員で製作・設計を行うこともあるようです。
義肢装具士を必要とする製作会社では、積極的に新卒求人を出しているため、卒業した人の大半は義肢製作の専門企業が勤務先候補となるでしょう。有資格者は限られており、就職率は高い傾向です。
それ以外に、医療機関やパラスポーツの分野でも、少数ではあるものの義肢装具士を求めています。発展途上国支援として、海外で活躍する道もあるでしょう。自治体の福祉課や施設で募集されるケースもあります。
義肢装具士を目指すなら養成施設を探そう
これから義肢装具士を目指そうと考えているなら、まずは国家試験の受験資格を得るために養成施設を探しましょう。大学や専門学校で、必要な知識・技術を学べます。
義肢装具士という仕事に興味を持っている段階であれば、求人サイトで実際の求人をチェックし、仕事内容や働ける場所を確認しておいてもよいでしょう。
「スタンバイ」でも、義肢装具士の仕事が探せるので、1度チェックしてみてはいかがでしょうか。