洋服作りに深く関わる「パタンナー」の役割とは、何なのでしょうか?仕事内容や年収の傾向、必要な資格を紹介します。働く上で求められる資質や、仕事のやりがいも見ていきましょう。職種の概要を知れば、自分に向いている仕事なのか判断しやすくなります。
パタンナーの役割や年収とは?
まずは、パタンナーの仕事の概要と役割、年収について見ていきましょう。自分に合っている仕事なのか見極めるためにも、概要を把握するのが大切です。
洋服の型紙作りを担う
「パタンナー」は、アパレル業界で洋服の型紙を制作する仕事です。洋服を仕立てるには、縫製の基準となる型紙を作らなければなりません。
パタンナーは、デザイナーが作ったデザイン画を基に、立体的な型紙を制作します。デザイン画から実際の洋服の雰囲気を読み取るには、デザインと縫製に関する幅広い知識が必要です。
洋服の仕立てにおいて、大変重要な役割を果たす仕事なので、知識だけでなく確かな技術力も求められます。
平均年収は約462万円
厚生労働省の職業情報サイトによると、パタンナーの平均年収は約462万円(「令和4年賃金構造基本統計調査」の結果を加工)となっています。
国税庁の「令和4年分 民間給与実態統計調査」で示される、日本の給与所得者の平均年収458万円と比べて、大きな差はありません。一般的な民間企業の平均と、同程度であると考えられます。
パタンナーは雇用形態が幅広く、フリーランス・業務委託として働いている人も多いのが特徴です。年収アップの手段として、才能や人脈を生かしての独立も視野に入ってくるでしょう。
参考:パタンナー - 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
パタンナーには資格が必要?
洋服の型紙を作るには、資格が必要なのでしょうか?未経験や知識がない状態からパタンナーを目指すにはどうすればよいのかや、一般的に必要とされる資格・技術を身に付ける方法を解説します。
必須資格はないが知識・経験が必要
パタンナーになるための「必須資格」と呼べるものは、特にありません。しかし、服作りやデザインの知識・経験は求められます。全く知識・経験がない状態から抜擢されるとは、考えにくいでしょう。
日本では、服飾系・デザイン系の大学や専門学校の卒業が、知識・経験の証明になります。独学で勉強する方法もありますが、基礎・常識を理解しているかどうかの判断がつきにくいため、実績・資格がなければ敬遠される可能性は高いでしょう。
完全に未経験、かつ知識の証明ができないケースでの採用はほとんどなく、学校以外のルートからパタンナーを目指すのは難しいと考えられます。
スキル証明に役立つ資格は存在する
必須資格はないとはいえ、持っておくとスキルの証明ができる資格は豊富です。資格を持っていれば、熱意や得意分野のアピールに役立ちます。
例えば、近年は型紙をデジタルツールで制作するケースも増えています。3D制作やパソコンでの型紙制作を中心とする企業では、「CAD利用技術者検定」のような、デジタルツールを使いこなせる技術を証明できる資格を取っておくのもおすすめです。
ほかには、型紙制作技術を証明する「パターンメーキング技術検定」や、縫製関連の資格である「洋裁技術認定」などがあります。働きたい企業の特徴・得意分野に合わせて、資格を取得していきましょう。
参考:CAD利用技術者試験 - ACSP 一般社団法人コンピュータ教育振興協会
パタンナーの主な仕事内容
パタンナーの仕事には、いくつかの工程があります。仕事内容が幅広く、さまざまな人との交流が生まれるのが特徴です。工程ごとに、どのような業務があるのか見ていきましょう。
デザインを見て型紙を作る
パタンナーは型紙を作るために、デザイナーが作ったデザイン画をチェックします。必要事項やデザイナーの意図を確認した上で、デザイン画を型紙に起こすのが最初の仕事です。
型紙制作には紙だけでなく、デジタルツールを使うケースもあります。立体裁断を取り入れて3Dの型紙を作るパターンもあり、臨機応変な対応が必要です。
また、型紙はわずかな違いで縫製後のイメージが大きく変化するため、すぐに制作完了となるとは限りません。修正・チェックを重ね、デザイナーや上司のOKが出るまで調整します。
試作品制作と確認・修正
型紙制作が終わると、その型紙を使って「トワル」と呼ばれる試作品を作ります。ただし近年では、型紙を3D化したデータ作成もできるようになっています。デジタル化に積極的な企業では、試作品の制作を簡略化することも多いでしょう。
試作品の制作段階でも、修正・調整は必要です。すでに型紙が決定していても、素材や質感によってイメージが変わるケースはよくあります。
OKが出るまで試作品の修正・チェックを行い、実際に縫製が進められるようイメージを固めるのがパタンナーの役割です。オーダーメイドの洋服・ドレスでは、顧客の採寸から型紙制作、トワルチェックまでパタンナーが携わります。
製品用の型紙を制作
大量生産の既製服では、複数のサイズ展開・バリエーションが求められるケースも多いものです。試作品のOKが出た後はサイズ違いも含めて、実際の製品に使用する型紙を作らなければなりません。
製品用の型紙は、縫製者が使用します。工場からの要望・修正依頼があれば、対応が必要です。デザイナーと縫製者の間に立ち、お互いの意見・要望をまとめる役割も求められるでしょう。
製品が完成し、無事に販売されたら、一連の仕事は完了です。
パタンナーに求められる資質
パタンナーには、どのような資質が求められるのでしょうか?身に付けておきたい性質や、特徴について見ていきましょう。
根気強さと細かい作業への適性
型紙のサイズや切り方、組み合わせが少しでも異なると、洋服の印象や着心地は大きく変化します。デザイン画に忠実に制作したつもりでも、細かい修正・調整箇所は必ず出てくるでしょう。
そのためパタンナーには、何度NGが出ても、根気強くやり遂げる力が求められます。ほんの少しの違いを指摘される可能性も高く、細かい作業を正確にこなす能力も必須となるでしょう。
性格的に真面目で、コツコツと努力するタイプの人は、パタンナーの仕事に向いています。手先の器用さや、指摘されたわずかな違いに気付くためのファッションセンスを、持ち合わせているかも重要です。
ファッション・制作に対する興味と知識
パタンナーには、ファッション全般に対する興味や知識が求められます。デザイナーと縫製者の間に立ち、両方の意見を理解しなければなりません。
デザインの立体化や仮縫いまで、業務内容も幅広くなっています。服を作りたいという強い思いや、思いを形にするための知識が求められるでしょう。
もともとアパレル業界や服作りに興味があり、好きなブランド・洋服がある人は楽しく勉強を続けられるはずです。
パタンナーのやりがい
型紙を作る仕事には、単に「好きなファッションに関われる」といった喜び以外にも、魅力・やりがいがあります。パタンナーならではのやりがいについて、具体的に見ていきましょう。
自分の作品が店舗で販売される
パタンナーとして型紙制作に携わっていくと、自分が関わった洋服が店舗に並ぶようになります。デザイナーとは異なり、裏方の作業ではあるものの、実際に出来上がった洋服が販売されているのを見れるのは大きなやりがいです。
実際に着た人から、着心地についての感想が届くケースもあります。着やすさやサイズ感のよさは、パタンナーの手腕による部分も大きいため、褒められれば次の作品へのモチベーションも生まれてくるでしょう。
売れ行きがよいパタンナーは、社内での評価が上がり、昇給・昇進の可能性もあります。
海外進出や有名ブランドの服を手掛けるチャンスも
日本で身に付けた型紙制作の技術は、世界的にも通用します。能力・センスが認められれば、有名ブランドの服を手掛けるチャンスや、海外進出が視野に入る可能性もあるでしょう。
大きな成功を手にできる人は一握りとはいえ、自分の技術・能力を生かして活躍する夢を描けるなら、仕事にやりがいも生まれてきます。
最初はコツコツと努力を重ね、周囲に型紙制作の正確さや魅力を分かってもらえるよう、手を抜かずに仕事を進めていきましょう。
知識と経験を身に付けてパタンナーを目指そう
パタンナーは、アパレル業界で洋服の型紙を作る職種です。目指すのであれば、専門学校やデザイン・服飾関係の大学で学ぶのが近道です。学校を卒業し、資格を取得していれば、一定の知識・技術があると証明できるでしょう。
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