リモートハラスメントが起きる原因とは?具体例や対策も紹介

ここ数年、リモートワークを実施する企業が増えており、自由に働ける環境ではあるものの、一部の企業では嫌がらせ行為(リモートハラスメント)に悩む人もいます。リモートハラスメントが起きる原因や具体例とともに、有効な対策を知っておきましょう。

リモートハラスメントとは?

リモート会議

(出典) pixta.jp

近年はリモートワークの普及に伴い、オフィス内で発生するものとは異なるハラスメントが問題視されており、対策に乗り出している企業も少なくありません。まずは、リモートハラスメントとはどういうものか、具体的に紹介します。

リモートワーク中の嫌がらせ行為のこと

リモートハラスメントとは、リモートワーク中に発生した嫌がらせ行為のことを指します。

リモートワークはオフィス以外の場所で働く、いわゆる在宅ワークとして認知が広まっています。リモートハラスメントには、オフィスでのハラスメントと同様に、パワハラ・セクハラ・モラハラなどがあります。

ただし、リモートワークは基本的に社員同士が離れた場所で勤務しているため、オフィス内とは異なるハラスメントが発生する傾向にあります。

オフィスで起こるハラスメントとの違い

オフィスで起こるハラスメントとリモートハラスメントの大きな違いとして、後者の方が他者の目に触れない分、嫌がらせ行為がエスカレートする傾向にある点が挙げられます。

また、被害者は基本的に、対面で直接的に嫌がらせをされるのではなく、インターネットを通じてパワハラ・セクハラ・モラハラなどを受けるのが特徴です。

在宅ワークをはじめとしたリモートワークでは、気軽に相談できる相手が周りにいないため、1人で抱え込んでしまう可能性があります。管理者や人事部門の目が届きにくく、周囲も分からないため、長く悩み続けている人も決して少なくありません。

事実、株式会社ソノリテが行ったリモートハラスメントに関する調査※では、20代女性のうち、約4割が何らかのリモートハラスメントを受けた経験があると回答しています。

※調査期間:2022年10月17日(月)~2022年10月19日(水)
調査方法:インターネット調査
調査人数:1,011人
調査対象:最低週1回リモート勤務の20代女性

出典:【リモートハラスメント経験者は約4割】企業ができる対策とは | 株式会社ソノリテのプレスリリース

リモートハラスメントが起きてしまう原因

リモートワーク

(出典) pixta.jp

リモートハラスメントが起こる主な原因としては、以下の点が挙げられます。意図してハラスメント行為をするのは当然ながら重大な問題です。

しかし、嫌がらせの意図が全くなかったとしても、結果的にハラスメントに近い行為をしてしまう上司・管理者の立場にある人も多いのが実態です。

オンラインでの業務に不慣れ

リモートワークでは、業務の進み具合が分かりにくいことから、過度に進捗(しんちょく)を確認してしまうことで、部下に必要以上のストレスを与えてしまう管理者が少なくありません。

部下がリモートワーク下において、本当に仕事をしているか不安になり、つい干渉してしまう人もいるでしょう。社員からすれば、まるで監視されているような感覚になり、ハラスメントを受けていると感じるケースは珍しくありません。

オンオフの区別があいまい

リモート会議やオンラインミーティングなどで、相手のプライベート空間が垣間見られることから、仕事とプライベートの境界があいまいになってしまう人もいます。

上司の立場から部下の生活に口を出してしまう場合はもちろん、同じ立場でも相手のプライバシーを侵害してしまう可能性もあるので注意しなければなりません。

明らかにセクハラやモラハラと受け止められる発言をするのは当然NGですが、相手の生活空間やライフスタイルなどに関して不用意に口を出すと、ハラスメントと受け止められる可能性があります。

業務に関する事柄以外は、基本的にその人の自由です。そのため、オンとオフの区別をしっかりと分けることが重要です。

リモートハラスメントの被害に遭うだけではなく、軽はずみな発言により、自分が加害者になってしまう恐れがある点も覚えておきましょう。

リモートハラスメントの具体例

リモートワーク疲れ

(出典) pixta.jp

リモートハラスメントの例として、業務状況を過度に確認されたり、オンラインの飲み会にしつこく誘われたりするケースが挙げられます。

また、上司から部下のみならず、社員同士でもハラスメントが発生することも珍しくありません。それぞれ具体的に紹介します。

業務状況を過度に確認される

部下が上司の目の前で仕事をするオフィス内とは異なり、リモートワークでは相手が何をしているのか、詳細に把握するのは困難です。

上記のように、部下がきちんと仕事をしているか確認したり、業務の進み具合をチェックしたりするために、チャット・メール・電話などで過度に報告を求める管理者も存在します。

しかし、過度な干渉や報告の強制は、相手にストレスを与えてしまうだけでなく、業務の生産性が下がってしまう可能性があります。

オンライン飲み会にしつこく誘われる

コロナ禍をきっかけに多くの企業がリモートワークを導入し、部内などでの飲み会をオンラインで開催する企業も増えてきました。

部下や同僚を飲み会に誘うこと自体は問題ありませんが、オンライン飲み会は外出の必要がないことから、しつこく参加を求める人もいるようです。

しかし、オンライン飲み会の場合であっても、参加を強制するのはハラスメントに該当する可能性があります。飲み会は誰もが参加したいわけではなく、終業後のプライベートを重視する人も多いので、誘う側は相手の意思を十分に尊重する必要があります。

Webカメラを常時オンにさせられる

目の前にいない部下を監視するため、常時Webカメラをつなげることを強要した上で、監視したり離席を叱責したりするようなケースも問題視されています。

部下を指導・管理する立場にあるとしても、Webカメラを常時オンにさせるのは、部下のプライバシーを無視した行為として、モラハラに該当する可能性があります。

どのような形で部下の業務状況を確認するにせよ、事前に社内で取り決めをしておき、リモートワークに従事する社員側の意見を尊重することが大切です。管理者側・社員側とでしっかりと話し合い、双方の合意の下でルール化する必要があるでしょう。

上司から部下だけではないハラスメント

リモートハラスメントの中でも起こりがちなパワハラは、「労働施策総合推進法(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律、パワハラ防止法)」において組織内で優越的な関係を利用し、業務上必要な範囲を超えて、相手の就業環境を害する行為とされています。

これは上司から部下への嫌がらせに限定されるものではなく、同じ立場にある者同士の行為も該当します。

例えば、チャットで他の社員を誹謗(ひぼう)中傷したり、チームで1人だけ業務負担を増やしたりするのは、当然ながらハラスメント行為です。加えて、メールやチャットのメッセージを意図的に無視し、相手の業務に支障を及ぼす行為なども含まれます。

また部下から上司への行為に関しても、一定の条件において部下の方が優位にある場合、状況によってはハラスメントと見なされる可能性もあります。

(雇用管理上の措置等)第30条の2 |労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律

リモートハラスメントへの対策

リモート会議

(出典) pixta.jp

リモートハラスメントを防止するための対策にはさまざまな方法があります。ここでは代表例として、リモート会議やオンラインミーティングにおいて、バーチャル背景を利用する方法や、適宜業務報告をする方法を紹介します。

バーチャル背景を利用する

リモート会議やオンラインミーティングでWebカメラをオンにする必要がある場合、バーチャル背景を利用することで、プライベートな空間の映り込みを防げます。

上司や同僚などに室内の様子を見せずに済むので、プライベートに関する無遠慮な質問を受けたり、ライフスタイルに口を出されたりする機会を減らせます。

加えて、身だしなみをしっかり整えておくと、服装や仕事に向かう姿勢などに関しても、上司から注意や叱責を受けずに済むでしょう。

適切な頻度で報連相を行う

業務の進み具合が分からないことによる不安が、管理者によるリモートハラスメントにつながるケースが多いため、社員側から定期的に業務状況を伝えることも重要です。

過度な干渉を受けて集中力が低下したり、感情的になってしまったりして、生産性が低下する事態も回避できます。

また、メールやチャットのメッセージに関しても、後回しにせず、できるだけ迅速に返信することも、リモートハラスメントを避けるポイントです。

受信したメッセージを放置していると、頻繁に連絡があったり、過度な干渉につながりかねないため、適切なタイミングで報告・連絡・相談することが大切です。

リモートハラスメントを受けている場合には

頭を抱える女性

(出典) pixta.jp

実際にリモートハラスメントを受けてしまい、なかなか事態が改善しない場合には、1人で悩まずに周囲に相談することが大切です。

ただし、社内で相談しても解決に結び付かない場合もあるので、証拠をそろえて労働局や労働基準監督署などに相談しましょう。

証拠をそろえて相談しよう

リモートハラスメントを受けている場合は、まず証拠になるようなメール・チャット・映像などを収集し、人事部門や社内に設けられている窓口などに相談しましょう。

人事部門に力になってもらえない場合や、相談すべき窓口がない場合には、各都道府県の労働局や労働基準監督署内に相談するのがおすすめです。

労働局や労働基準監督署には「総合労働相談コーナー」が設置されており、基本的に誰でも相談できます。

対応のスピードや質は地域によって差があるものの、きちんと証拠がそろっていれば、すぐに動いてもらえる可能性が高いので、1人で悩まず積極的に動くことが重要です。

参考:総合労働相談コーナーのご案内|厚生労働省

リモートハラスメントは1人で抱え込まず相談しよう

パソコンを前に悩む女性

(出典) pixta.jp

リモートハラスメントは近年とりわけ問題視されており、積極的に解決に乗り出している企業も多くあります。しかしリモートワークでは、オフィス内における嫌がらせ行為とは異なり、他者の目に触れにくく、表面化されにくいという性質がある点は否めません。

業務状況を過度に確認されたり、飲み会にしつこく誘われたりなど、ハラスメントの形はさまざまです。いずれも状況が深刻で、社内の相談窓口で解決できない場合は、労働局や労働基準監督署などに相談しましょう。リモートハラスメントを受けている場合は、1人で抱え込まないことが大切です。