マタニティハラスメントを防ぐには?具体的な事例や防止策を紹介

「妊娠したら辞職を促された」「育休を取得させてもらえない」これらは、マタニティハラスメントに該当する恐れがある行為です。マタニティハラスメントの被害を防ぐにはどうすればよいのでしょうか。具体例を紹介しながら対策について解説します。

マタニティハラスメントの定義

妊娠している女性社員

(出典) pixta.jp

厚生労働省によれば、マタニティハラスメントは「職場における妊娠・出産・育児休業などに関するハラスメント」と呼ばれ、法律に抵触する恐れがある行為です。詳しい定義について解説します。

妊娠・出産・育児などに関する嫌がらせ

マタニティハラスメントとは、女性の労働者が、妊娠・出産・育児などに関して職場で受ける嫌がらせや不当な扱いを受けることをいいます。

例えば、妊娠・出産・育児などをきっかけに、解雇・降格・減給などを言い渡されたり、業務内容を不当に変えられたりすることです。上司や同僚から嫌みを言われるなど、精神的な苦痛を受けることも含まれます。

これらは「男女雇用機会均等法」や「育児・介護休業法」に抵触する恐れがある行為です。また、主に女性が対象となるハラスメントですが、妻の妊娠や出産などを理由に夫が嫌がらせを受けるケースもあります。

男女雇用機会均等法育児・介護休業法のあらまし|厚生労働省 都道府県労働局雇用環境・均等部(室)

パタニティハラスメントとの違い

パタニティハラスメントは、男性社員が育休などを取得する際に受けるハラスメントのことです。

マタニティハラスメントが、妊娠・出産・育児に関する嫌がらせ全般を指すのに対し、パタニティハラスメントは、育休制度の利用に関して男性社員が受ける被害を指します。

パタニティハラスメントも法令に抵触する恐れがある行為の1つです。

マタニティハラスメントの具体例

マタニティハラスメント

(出典) pixta.jp

マタニティハラスメントには大きく分けて「制度を利用することに対しての嫌がらせ」「妊娠・出産に関することに対しての嫌がらせ」の2種類があります。それぞれの具体例を見ていきましょう。

制度を利用することに対しての嫌がらせ

いわゆる産前・産後休暇や育休は、女性が妊娠・出産・育児と、仕事を両立させるために取得することが認められている制度です。

これらの制度の利用を阻害したり、利用したことで不利益な扱いを受けたりするのは法に抵触する恐れがあります。具体的には以下のような事例が挙げられます。

  • 育休を取るなら辞めてもらうなど、阻止する行動や言動を受ける
  • 育休明けに不当な配置転換させられる
  • 育休を取られると他の社員が迷惑などと言われる

妊娠・出産することに対しての嫌がらせ

妊娠や出産そのものに対する嫌がらせや、不利益な扱いを受けた場合もマタニティハラスメントに該当する恐れがあります。

  • 妊娠したと伝えたら辞めてもらいたいと言われた
  • なんでこんなに忙しい時期に妊娠するんだと冗談を言われた
  • 妊娠したら違う部署へ異動になった
  • 産前の健診は勤務時間外に行ってくれと言われる

ただし、妊婦の安全面に配慮した部署異動や、明らかに体調が悪いと判断された場合に休みを取るよう促す行為などは、ハラスメントには該当しません。強制的な異動や、業務上では必要性のない言動が該当します。

マタニティハラスメントに関する法律

六法全書

(出典) pixta.jp

妊娠・出産・育児などを理由とした解雇や減給などの不当な扱いや嫌がらせは、いわゆる「男女雇用機会均等法」ならびに「育児・介護休業法」に抵触する恐れがある行為です。それぞれの法律について詳しく見ていきましょう。

男女雇用機会均等法

いわゆる男女雇用機会均等法は、正式名称を「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」といいます。雇用に関する男女の均等な機会や、待遇の確保を図ることを目的とし、性別を理由としたさまざまな差別を禁止している法律です。

2019年には、妊娠や出産などによる不利益な扱いを禁止する法改正が公布されました。2020年6月1日に施行された法令では、事業主に対してマタニティハラスメントの防止措置を義務付ける内容が新たに盛り込まれています(男女雇用機会均等法第11条の3)。

法改正により、妊娠・出産・育児に対する上司や同僚からの嫌がらせなど、就業環境に悪影響を及ぼす恐れのある言動などもハラスメントとして認められるようになりました。

これにより、妊娠や出産などを理由とした不利益な扱いに加え、嫌がらせなどの行為をした場合も法令違反となる恐れがあります。

雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律 | e-Gov法令検索

職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)

職場におけるセクシュアルハラスメント対策に取り組みましょう!!

育児・介護休業法

いわゆる育児・介護休業法とは、育児や介護をする人が仕事と家庭を両立できるように支援することを目的とした法律です。正式名称は「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」といいます。

育休などに関する社内ルールが整備されていなくても、要件を満たした社員は、この法律に基づいた制度の利用が可能です。

いわゆる育児・介護休業法でも、2020年6月1日の法改正によって、育休制度などの利用に関するハラスメントの防止措置を講じることが事業主に対して義務付けられました(育児・介護休業法)。

育休の申請や取得を理由に不利益な扱いをした場合に加えて、制度の利用を阻むような言動や嫌がらせも法令違反となり得ます。

育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 | e-Gov法令検索

職場でマタニティハラスメントを受けたらどうする?

相談窓口

(出典) pixta.jp

マタニティハラスメントを受けたときの対処方法についても知っておきましょう。主な対策を3つ紹介します。

話を聞いてほしいときはホットラインに

「具体的な被害を報告するまでではないが嫌な思いをした」「まず話を聞いてほしい」「被害を受けたがどうすればよいか分からない」などの場合は、ホットラインや相談ダイヤルを活用するのもおすすめです。

ホットラインや相談ダイヤルでは、ハラスメントを含めた職場のトラブルや、雇用に関するさまざまな相談を無料で受け付けています。

  • 職場のトラブル相談ダイヤル:社会保険労務士による解雇・退職などの職場トラブルに関する電話相談や面談(相談料無料・通話料有料)
  • 労働条件相談ほっとライン:厚生労働省の相談窓口。違法な残業や雇用条件などに関する無料電話相談。平日の午後5時以降や土日祝日など、労働基準監督署が閉庁している時間帯に相談可能

職場のトラブル相談ダイヤル|全国社会保険労務士会連合会

労働条件相談「ほっとライン」(Working Hotline)|厚生労働省

被害の報告は人事や相談窓口へ

具体的な被害に遭ったときは、社内の人事部や相談窓口など、ハラスメント問題に対応している部署への報告が必要です。報告に当たっては、事前に以下の準備をしておくと、客観的な事実として提示できます。

  • ハラスメントの事実が確認できる記録:被害に遭ったときの音声やメールなどを保存しておく。難しければ、日付を記したメモも有効
  • ハラスメントによる影響の記録:休みを取れなかったなどの不当な扱いを受けたり、嫌がらせを受けて体調を崩したりした場合があれば、記録をつけておく

これらの記録に加えて、今後どういう状況を望むのかについても伝えられるようにしておきましょう。

社内での解決が難しい場合は?

社内の窓口への報告や相談では解決しなかった場合の対策として、主に2つの方法が挙げられます。1つは、各都道府県の労働基準監督署やハラスメントに詳しい弁護士など、外部に相談する方法です。

労働局の雇用環境均等部(雇用環境均等室)では、ハラスメントに関する相談を無料で受け付けています。解雇や減給などによって損害を受けた場合は、弁護士に依頼すれば法的措置を取ることも可能です。

2つ目は、その職場には見切りを付けて転職を検討するという方法です。ハラスメントが収まったとしても、周囲との関係性や自分自身の気持ちが以前のようには戻らないと感じたら、環境を変えてみるのも選択肢の1つです。

労働者の方へ |厚生労働省

マタニティハラスメント受けたらしっかり対処を

妊娠している女性ビジネスパーソン

(出典) pixta.jp

マタニティハラスメントは、いわゆる「男女雇用機会均等法」「育児・介護休業法」に抵触する恐れがある行為です。ハラスメントを受けてしまったときは、被害に遭ったことを客観的に提示できる記録を取って、社内のしかるべき部署に報告しましょう。

社内だけで解決できないときや、環境を変えたいと考えているなら、転職を視野に入れて早めに動き出すのもおすすめです。

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