小児科看護師は、子どもが好きな人にとって魅力的な職業の1つです。とはいえ、子どもを相手にする仕事には、他の診療科にはない、特別なスキルや適性が求められます。主な仕事内容や必要なスキル、やりがいなど、小児科看護師を希望する人が知っておきたい知識をチェックしましょう。
小児科看護師の特徴と仕事内容

小児科は、子どもの健康と成長を支える重要な役割を担っています。生まれたばかりの赤ちゃんを含めた幅広い年齢の患者を対象に、それぞれの発達段階に応じた診察・ケアを行います。小児科看護師の特徴と、日常的な業務について詳しく見ていきましょう。
小児科看護の基本と成人看護との違い
小児科看護の基本は、子どもの発達段階に合わせたケアを提供することです。成人看護との大きな違いは、対象となる患者の年齢幅が広く、新生児から思春期までの子どもたちを扱う点にあります。
小児科は、新生児から高校生くらいまで、幅広い年齢の子どもを対象としています。このため、各年齢層の特性を理解し、適切なアプローチを選択する必要があるのです。
また、小児科看護では子どもの体格が小さいことや、意思疎通が難しい場合があることから、医療行為の難易度が高くなります。そのため、通常は看護師が行う採血や点滴といった処置を、医師が行うことが多いのが特徴です。
日常的な業務と主な役割
小児科看護師の日常業務は多岐にわたります。例えば病棟勤務の場合、朝の申し送りから始まり、バイタルサインの測定、与薬、処置の介助などを行います。特に重要なのが、子どもの様子を細かく観察することです。
言葉で症状を伝えられない小さな子どもの変化を見逃さないよう、常に注意を払います。子どもの発達段階に合わせた遊びや学習支援も行い、入院生活をサポートします。
子どもの不安を取り除き、安全に診察や処置を受けられるよう、医師を介助するのも小児科看護師の重要な役割です。
さらに、子どもの家族に対するケアも欠かせません。子どもの病気や入院に伴う家族の不安や心配を理解し、適切な情報提供やサポートを行うことが求められます。
対象年齢と主な疾患
通常、小児科にかかる年齢は0~15歳が目安ですが、中には20歳くらいになるまで継続してかかる人もいます。また小児科では、けがなどの外科的処置以外、全ての疾患に対応しているのも特徴です。
年齢によってかかる疾患にも特徴があり、医師・看護師ともに幅広い知識や技術が求められます。新生児の場合、生まれつきの疾患や機能異常でかかる子どもが多いでしょう。
乳児期によくあるのが、食物アレルギーの発症です。幼児期になると、風邪ウイルスの感染やぜんそく、花粉症といったアレルギー疾患が増えてきます。
小学生や中学生は、成長に伴い風邪をひく回数が減る傾向にある一方で、生活習慣の乱れや心の問題による体調不良が見られるようになります。
小児科看護師に求められるスキルと適性

病気の子どもと接する小児科看護師には、どのようなスキルや知識が求められるのでしょうか。向いている性格も併せて紹介します。
コミュニケーション能力
小児科看護師にとって、子どもや家族とのコミュニケーション能力は非常に重要です。年齢や発達段階に応じた言葉遣いや接し方が求められ、言語的・非言語的コミュニケーションを適切に使い分ける必要があります。
例えば、幼児に対しては、「体を拭いて」「ご飯を食べて」と指示するよりも、「お体拭こうね」「ご飯の時間だよ」と、優しく語りかけることで、安心感を与えながらケアできます。
また、子どもの表情やしぐさを注意深く観察し、痛みや不安を察知する力も大切です。家族に対しては、子どもの状態を分かりやすく説明し、治療への協力を得られるよう信頼関係を築くことが重要です。このようなコミュニケーション能力は、経験を重ねながら磨いていくことが求められます。
専門的知識と技術
小児科看護師には、高度な専門知識と技術の習得が不可欠です。体格に合わせた適切な投薬量の計算や、年齢に応じた処置技術はもちろん、子どもの成長発達および子どもを取り巻く環境についても、深い理解が求められます。
こうした専門知識は、大学での「小児看護学概論」や「小児看護方法論」などの授業で学ぶのが一般的です。小児医療の歴史や子どもの権利、成長発達理論などが身に付き、さらに実際の臨床現場での実習を通じて、理論と実践を結びつける能力を養います。
継続的な学習も重要で、最新の医療技術や看護ケアの方法を常にアップデートしていく姿勢が求められます。
小児科看護師に向いている性格
小児科看護師に向いている人は、子どもへの深い愛情と理解を持ち、柔軟な対応力を備えています。鋭い観察力と素早い判断力は、子どもの急変を見逃さないために不可欠です。
創造性豊かで、遊び心を持ちながら子どもと接することができる人も、小児科看護に向いています。子どもの目線に立って考え、共感する力があると、より効果的なケアが提供できるでしょう。
また、忍耐強さも重要です。現場では、子どもが言うことを聞いてくれないケースはもちろん、保護者が子どもを心配するあまり、冷静さを欠くケースも少なくありません。どのような状況でも、看護師は患者や家族に対して冷静に、忍耐強く接する必要があります。
小児科看護師のやりがいと大変さ

小児科看護師の仕事には、大きなやりがいと同時に独特の困難が伴います。子どもの成長を支える喜びと大変さについて、詳しく解説します。
子どもの成長に寄り添える喜び
小児科看護師の仕事には、子どもの成長に寄り添う喜びと達成感があります。日々の看護を通じて、子どもたちの小さな進歩や回復を目の当たりにできることは、大きなやりがいの源となります。
プレパレーションやディストラクションといった技術を用いて、子どもの不安を和らげ、治療に前向きに取り組む姿勢を引き出すことも、小児科看護師の重要な役割です。
治療に不安を感じていた子どもが、自分のサポートによって笑顔で処置を受けられるようになった瞬間は、何物にも代えがたい喜びをもたらすでしょう。
子どもの言葉に耳を傾け、寄り添いながら、安心して診療を受けられる環境を整えることで、専門的なスキルを生かしているという達成感を得られます。
大変なことやつらいこと
小児科看護師は、さまざまな困難に直面します。子どもの痛みや不安への対応は特に難しく、言葉で症状を十分に伝えられない患者の状態を適切に把握するのは大変です。急変時の迅速な判断や対応にも、小児科特有の難しさがあります。
薬の副作用や術後の痛みなどで、子どもが苦しんでいる姿を日常的に見るのも、つらいものです。どんなに手を尽くしても助からないケースもあり、受け持ちの患者が亡くなって、無力感や自責の念に襲われることもあるでしょう。
また、家族との信頼関係構築も重要な課題です。不安を抱える家族に対し、適切な情報提供と心理的サポートが求められます。
小児科看護師のキャリアや収入

小児科看護師が活躍できる場は多く、専門性を高めてキャリアアップに生かす選択肢もあります。給与水準や待遇などの現状も併せて押さえておきましょう。
小児看護師の活躍の場
小児科看護師の活躍の場は多岐にわたります。以下は主な勤務先の例です。
- 総合病院の小児科
- 小児科専門病院
- NICU(新生児集中治療室)やPICU(小児集中治療室)
- 小児科クリニック
総合病院や専門病院は入院患者を受け入れているため、夜勤があります。高度な医療を必要とする患者が多く、看護師にもそれなりの知識や技術が求められるでしょう。
重篤なケースの多いNICUやPICUでは、高い専門性が求められます。夜勤や急な呼び出しもあり、心身共にハードな点は否めません。一方、総合病院の外来やクリニックでは、ワークライフバランスを重視した働き方が可能です。
キャリアアップの方法
小児科看護師は、さまざまな専門性を高める機会に恵まれています。例えば、小児看護専門看護師や小児プライマリケア認定看護師などの資格取得を目指すことで、より高度な看護スキルを習得できます。これらは、子どもの健康管理や家族支援において重要な役割を果たす資格です。
アレルギー疾患の適切なケア方法を患児や家族に指導する専門家・小児アレルギーエデュケーターの資格も注目されています。NICUで活躍する、新生児集中ケア認定看護師資格も取得可能です。
専門性を高めることで、リーダーシップを発揮したり、看護の質を向上させたりする機会が増えていきます。自身のキャリアアップにつながるだけではなく、子どもたちの健康と成長を支える喜びを、より深く感じられるでしょう。
給与水準と待遇の実態
小児科看護師の給与水準は、他の診療科と大きな差はありません。厚生労働省の職業情報提供サイトによると、看護師の平均年収は508.2万円です。
年収は経験や夜勤の有無、保有資格などで変わります。外来や小児科クリニックでは、夜勤がない分、年収が若干低くなるでしょう。収入アップを目指すには、夜勤のある職場で働く・専門資格を取得する・役職を目指すなどの方法があります。
資格取得支援制度や資格手当を設ける医療機関も多いので、活用するとよいでしょう。またワークライフバランスを重視し、週休2日制や3日制を導入する職場も増えています。
出典:看護師 - 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
小児科看護師を目指す人へのアドバイス

小児科看護師として働くために必要な資格や学習方法、将来性について解説します。目指す際の参考にしましょう。
必要な資格と取得方法
小児科看護師になるためには、まず看護師の国家資格を取得する必要があります。その後、小児科のある病院やクリニックなどの求人に応募するのが一般的です。
国家試験を受けるには、高等学校を卒業後、看護学科がある大学・短期大学もしくは3〜4年制の専門学校などの看護師養成所を卒業する必要があります。
社会人から転職したい場合、まず准看護師となり、働きながら看護師資格を取得するのもよいでしょう。准看護師になるには養成所で2年以上学び、都道府県知事が実施する試験を受ければよく、看護師に比べて免許取得までの期間や学費を抑えられます。
効果的な学習方法と準備
小児科看護師として活躍したいなら、小児の成長発達や疾患に関する専門書を読み込むことから始めましょう。また、実践的なスキルを身に付けるため、シミュレーション教育や演習にも積極的に参加することをおすすめします。
多くの看護学校や病院では、模擬患者を使った実践的な訓練を実施しています。これらの機会を活用し、子どもとのコミュニケーション能力を磨きましょう。
さらに、小児科病棟でのインターンシップやボランティア活動に参加することで、実際の現場の雰囲気を体験できます。子どもや家族との接し方を学ぶよい機会となるでしょう。
最新の小児医療の動向に注目し、学会や研修会に参加して知識のアップデートを心がけることも大切です。準備段階から継続的な学習姿勢を持つことが、優れた小児科看護師への近道となります。
小児科看護師の需要と将来性
小児科に限らず看護師の需要は高く、未経験者やブランクのある人も歓迎される傾向があります。経験者や小児科に興味のある人なら、より応募しやすいでしょう。
特に小児看護専門看護師や小児プライマリケア認定看護師など、高度な知識とスキルを持つ専門家の需要が高まっています。
一方で、看護師には新たな課題も生まれています。デジタル技術の進歩に伴い、電子カルテやテレヘルスなどのICTスキルの習得が求められます。
また、多様化する家族形態に対応するため、より柔軟なコミュニケーション能力も必要です。慢性疾患を抱える子どもの長期的なケア管理など、継続的な支援の重要性も増しています。
これらの変化に対応しつつ、子どもたちの健やかな成長を支える小児科看護師の役割は、ますます重要性を増していくでしょう。
小児科看護師は子ども好きに適した仕事

小児科は幅広い年齢層を対象とし、成長発達に応じたケアを提供する診療科です。看護師には、子どもの発達段階に合わせたコミュニケーション能力と、専門的な医療知識が欠かせません。
言葉で症状を伝えられない患者の状態把握や、不安を抱える家族への対応などで、大変な思いをすることも多いでしょう。その一方で、子どもの成長に寄り添える喜びもあり、子どもが好きな人にとってはやりがいのある仕事といえます。
看護師免許の取得後、病院の小児科や小児科クリニックに就職すれば、小児科看護師としてのキャリアが始まります。経験を積み、資格を取得するなど専門性を高めれば、よりよい条件で働くことも可能です。
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