テクニカルライターとは、何を書く仕事なのでしょうか。未経験でもなれるのか、資格は必要なのかなど、気になる人もいるでしょう。具体的な仕事の内容から必須スキル、年収の目安までテクニカルライターを目指す人が押さえておきたい情報を解説します。
テクニカルライターの仕事内容とほかのライターとの違い
テクニカルライターはその名の通り、技術的な情報を専門とするライターです。主な業務内容やほかのライターとの違い、テクニカルライターが活躍する業界について解説します。
テクニカルライターの主な業務内容
テクニカルライターとは、製品マニュアルやユーザーガイド、技術仕様書などを作成する職業のことです。難解で複雑な技術情報を、一般の人が分かるように記載することが、テクニカルライターの役割です。
例えば、最新のスマートフォンの操作方法を初心者向けに解説したり、高度な医療機器の使用手順を医療従事者向けに詳細に記述したりします。ソフトウェアのオンラインヘルプやFAQ、ナレッジベースなどのデジタルコンテンツの制作も行います。
視覚的な理解を促進するために、文章だけでなく図表やイラストを作成するのも業務の一部です。
ほかのライターとの違い
ライターにも、Webライターや雑誌記者など、さまざまな種類があります。テクニカルライターとほかのライターの違いは、主に以下の3点でです。
- 読者の知識レベルへの配慮
- 情報の詳細さ
- 文章の目的
テクニカルライターには、専門知識がない人でも理解できるよう、丁寧な説明が求められます。使用方法や機能をもれなく説明する必要があり、省略は許されません。正確な情報伝達が目的なので、主観的な文章も不要です。
ブログや雑誌の場合は、読者の興味を引いたり、共感を得たりするのが主な目的となります。正しい情報を伝えることに変わりはありませんが、個人的な感想を述べる、代表的な機能をピックアップして紹介するなど、表現方法は自由です。
テクニカルライターが活躍する業界
テクニカルライターの需要は、IT・医療・製造業など幅広い分野で高まっています。IT業界では、ソフトウェアやアプリケーションの進化に伴い、ユーザーマニュアルや開発者向けドキュメントの需要が増加しています。
人工知能(AI)や機械学習といった最新技術の分野でも、テクニカルライターの活躍が目立ちます。医療分野では、新しい医療機器の取扱説明書や患者向け資料の作成が不可欠です。
マニュアルといえば、家電製品の取扱説明書が身近な例ですが、近年はどの製品もIT化が著しく、機能が複雑になっています。このため製造業での需要も、増えていると考えてよいでしょう。
テクニカルライターに必要なスキルと適性
テクニカルライターの役目は、開発者や技術者と、一般ユーザーとの橋渡しをすることです。そのためには、どのようなスキルが必要なのでしょうか。向いている人の特徴も併せて見ていきましょう。
技術的知識とライティングスキル
テクニカルライターには、高度な技術的知識とライティングスキルが求められます。技術的知識としては、担当する製品や分野に関する深い理解が不可欠です。例えば、IT分野ではプログラミング言語やネットワーク技術、医療分野では医学用語や治療法などの専門知識が必要となります。
ライティングスキルは、複雑な情報を分かりやすく伝えるために欠かせない力です。専門用語を適切に使いつつ、一般の人にも理解できる言葉で表現することが重要です。論理的な文章構成力や、図表を効果的に活用するセンスもあるとよいでしょう。
技術者出身ならライティングスキルを、ライター出身なら技術的知識を学ぶことで、未経験者でもテクニカルライターに近付けます。
コミュニケーション能力と情報収集力
テクニカルライターの仕事は、パソコンに向かって文書を作成するだけではありません。マニュアル作成には多くの人が関わるため、コミュニケーション能力が高い方が、仕事を円滑に進められるでしょう。
必要な情報を収集するためにも、コミュニケーション能力を発揮する必要があります。例えば開発者や技術者から製品情報を聞き取る際、知らない専門用語が出てきて困ることもあるでしょう。
そのようなとき、うまく質問して解説してもらえば、何度も聞きに行かずに済み、修正を減らせます。自分が担当する技術や製品について、常に最新情報を集めておくのも、テクニカルライターとしての成長につながります。
テクニカルライターに向いている人の特徴
好奇心旺盛で学習意欲の高い人は、テクニカルライターに向いています。技術が日々進化する中、常に新しい知識を吸収し続ける姿勢が重要だからです。
マニュアルは何も知らない人に使い方を教えるためにあるので、自分の知っていることを人に教えるのが好きな人も、適性があるといえます。
テクニカルライターには、ち密さや忍耐強さも求められます。マニュアルの作成には時間がかかり、細かい修正作業も多いため、根気強く取り組める人が向いているでしょう。
テクニカルライターになるための具体的なステップ
テクニカルライターとしてキャリアを築くには、計画的な準備が欠かせません。役立つ資格やスキルの習得法、将来のキャリアパスをチェックしましょう。
必要な資格と取得方法
テクニカルライターにとって、資格は必須ではありません。ただし関連する資格を取得することで、自己研鑽の機会となるだけでなく、就職や転職時にも有利に働くでしょう。
テクニカルライターの技術を示す代表的な資格に、一般財団法人テクニカルコミュニケーター協会が実施する「テクニカルコミュニケーション技術検定試験」があります。3級と2級があり、テクニカルライティングの基礎から実務レベルまでの知識とスキルを評価します。
IT系の資格や、専門分野に関連する資格の取得もおすすめです。より高度な技術文書作成に対応でき、キャリアアップにつながるでしょう。
出典:テクニカルコミュニケーション技術検定試験 - TC協会(JTCA) 公式サイト
実践的なスキルの習得
テクニカルライターとして必要なスキルを効果的に習得するには、実践的なアプローチが重要です。実際の製品マニュアルや技術レポートを分析し、構成や表現方法を学びましょう。
業界セミナーや勉強会は、最新のトレンドや技術を把握できる貴重なチャンスです。積極的に参加するとよいでしょう。プロジェクト管理やグラフィックデザインソフトなど、業務効率の向上に役立つツールの使い方を学ぶのも有効です。
これらのスキルを身につけることで、テクニカルライターとしての実力が着実に向上します。
テクニカルライターとしてのキャリアパス
テクニカルライターのキャリアパスは、多様な可能性を秘めています。複雑な技術情報を誰にでも分かりやすく説明できる人材は、多くの企業にとって貴重な存在です。同じ業界内で、より条件のよい会社へ転職し、収入を上げるのも1つの道です。
テクニカルライターは、業務を通じて品質管理や製品企画、情報設計などのスキルも身につきます。経験を生かし、品質保証の専門家や製品開発のマネージャー、Webサイトの設計者といった関連職種へのキャリアチェンジも可能です。
AIやIoTなどの新しい分野での需要も高まっています。 専門性を追求する、新しい職種や業界に挑戦する、どちらも選べるのがテクニカルライターの魅力といえます。
テクニカルライターの年収と働き方
テクニカルライターの収入は、経験や専門分野、雇用形態などで大きく変わります。具体的な年収の目安と、働き方について見ていきましょう。
テクニカルライターの平均年収
厚生労働省の職業情報提供サイトによると、2023年のテクニカルライターの平均年収は571.7万円です。新人は300万円前後から始まり、経験を積むにつれて上昇していきます。中堅クラスは400万~600万円で、800万円を超える層もいます。
IT業界や医療機器分野など、高度な専門知識が求められる分野では、さらに高い年収を得られる可能性もあるでしょう。海外製品に対応できる英語力や、特定の技術資格の有無も、年収アップにつながる重要な要素といえます。
出典:テクニカルライター - 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
フリーランスと社員の比較
テクニカルライターの仕事は専門性や秘匿性が高く、セキュリティの観点からも、企業に属して働くケースが一般的です。一方で、フリーランスとして活動する人も少なくありません。
フリーランスは案件ごとの報酬制なので、高単価の案件を継続して獲得できれば、社員で働くよりも高収入を得られる可能性があります。
ただし、フリーランスが安定した収入を得るためには、自己管理力や営業力が求められます。情報漏えいにより信頼を失うことのないよう、Wi-Fi環境やパソコンへの対策にも責任を持たなくてはなりません。
社員とフリーランス、どちらを目指すのかは、自分の性格やライフプランに合わせて慎重に検討しましょう。
需要の高いテクニカルライター
テクニカルライターは、専門的な情報を分かりやすく伝える重要な役割を担っています。製品マニュアルや仕様書といった技術文書の作成に特化しており、製造業を始めさまざまな分野で需要があります。
テクニカルライターになるには、技術的知識とライティングスキルはもちろん、コミュニケーション能力や忍耐力が必要とされます。関連資格の取得や実務経験の積み重ねは、キャリアアップを後押ししてくれるでしょう。
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