給料が安いと感じたらするべきこと。転職や副業も視野に入れよう

給料が安い会社で働くことには、さまざまなデメリットがあります。条件別に見る平均給料を参考にして、自分の給料が安いのか高いのか、一度チェックしてみましょう。自分の現在の給料に不満があるときの、具体的な対策についても解説します。

自分の給料は安い?知っておきたい平均給料

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(出典) photo-ac.com

自分の給料が安いかどうか知るための目安の1つに、平均給料があります。まずは、業種や事業規模などの条件別に、平均給料を見ていきましょう。

なお、ここでいう給料とは、基本給に各種手当や賞与を加えたもの(いわゆる『給与』)を指しています。

参考:令和3年分 民間給与実態統計調査-調査結果報告―(令和4年9月)国税庁

男女別の平均給料

国税庁が2021年に実施した『民間給与実態統計調査』によると、1年を通じて勤務した給与所得者1人あたりの平均給料は、443万円でした。

男女別では、男性の平均給料が545万円であるのに対して、女性の平均給料は302万円となっており、男女間で金額にかなりの開きがあることが分かります。

自身の性別の平均給料よりも受け取っている額が低い場合、「自分の給料は低い」と考える参考にしてみましょう。

男女間の賃金格差については、さまざまな要因が考えられます。現在の日本の社会構造上、結婚や出産などのライフイベントを機にキャリアを中断せざるを得ない女性が少なくないことも影響しているでしょう。

年齢別の平均給料

平均給料を年齢別に見ていくときに注目したいのが、20代のうちでの増幅額です。20代前半では269万円の平均額が、20代後半には371万円まで一気に上昇しています。同じ若年層の20代でも、前半と後半では大きな差が生じているといえるでしょう。

その後、男性の場合は30〜50代後半(60歳未満)まで、平均給料は顕著に増額していきます(30代前半472万円、50代後半687万円)。

一方で、女性の場合は年齢の上昇に伴う平均給料の増額がほとんど見られません(30代前半309万円、50代後半311万円)。年齢とともに給料が上がる男性に比べ、年齢を重ねても大きく上昇するわけではない女性の社会的な状況が見て取れるでしょう。

業種別の平均給料

業種別に平均給料を見ると、最も高水準なのが『電気・ガス・熱供給・水道業』の 766万円で、次いで『金融業、保険業』の 677万円が続いています。一方、最も平均給料が低いのは、『宿泊業、飲食サービス業』の260万円です。

あらゆる人の生活に必要不可欠なインフラを提供する業種や、金融・保険・情報通信などの高い専門性を求められる業種ほど、給料の平均値が高くなる傾向にあるといえるでしょう。

一方で、同業他社との価格競争が激しく、景気の影響も受けやすいサービス業系の業種では、給料の平均値も安く抑えられがちです。

事業規模別の平均給料

事業規模の大きな会社の方が、規模の小さな会社よりも平均給料が高い傾向にあるでしょう。

社員10人未満の小規模な事業所では、社員の平均給料が358万円(男性444万円、女性258万円)であるのに対し、社員5,000人以上の大規模な事業所においては、515万円(男性669万円、女性295万円)にも上ります。

事業規模の大小による給料の差には、さまざまな要因があるでしょう。一因としては、事業規模が大きい方が動かせるお金が大きく、業務の効率化もしやすい点などが考えられます。

雇用形態別の平均給料

雇用形態の違いによる差も見逃せません。一般的に、非正規雇用者よりも正規雇用者の方が平均給料は高くなるでしょう。

正規雇用者の平均給料が508万円(男性570万円、女性389万円)である一方、非正規雇用者の平均給料は 198万円(男性267万円、女性162万円)に留まっています。

男女別に見ても、正規雇用者の平均給料が非正規雇用者の平均給料の2倍以上であることに変わりはありません。

業種により多少の差異はあるにせよ、非正規雇用者が正規雇用者に比べて給料面で不利であることは間違いないといえるでしょう。

ボーナスの影響も大きい

給与所得者の平均給料について考えるとき、無視できないのがボーナス(賞与)の存在です。

平均給料443万円(男性545万円、女性302万円)のうち、平均賞与67万円(男性86万円、女性41万円)と、非常に高い割合を占めています。男女差はあるものの、平均給料に対する平均賞与の割合は、17.7%(男性18.6%、女性15.5%)にも上るのです。

非正規雇用者の平均給料が正規雇用者の平均給料と比べて著しく低いのは、ボーナスの有無の影響が大きいといえるでしょう。一般的に、非正規雇用者にボーナスが支給されることはほとんどありません。

給料が安い会社の特徴は?

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給料が安い会社には、いくつかの特徴があります。自分の所属する会社が当てはまっていないかどうか、チェックしてみましょう。

業績が悪い

社員の給料の元になっているのは、会社が上げている利益です。会社の売上が下がっていたり、売上はあっても利益率が悪かったりする場合、社員の給料も低く抑えられることになるでしょう。

日本経済団体連合会が2022年に実施した調査によれば、実に55.6%もの企業が、賃金決定にあたって主に考慮した要素として『企業業績』を挙げています。

会社の業績が悪化する原因としては、第一に上層部の経営努力不足が考えられますが、国内外の情勢変化などに伴う景気の低迷が起因となっているケースも少なくありません。

景気の影響を受けやすい小売業や飲食業などを主な事業とする企業ほど、業績も不安定になりやすいといえるでしょう。

参考:2022年 人事・労務に関するトップ・マネジメント調査結果(2022年9~11月実施分)|日本経済団体連合会

自社独自の付加価値を作りにくい

自社のオリジナル商品を持つメーカーなどは、同業他社の商品との差別化やブランド力の向上によって、自社商品の価値を高めることができます。

自社が販売するモノやサービスに高い価値を持たせることができる会社は、大きな利益を上げられるでしょう。しかしながら、そのメーカーの商品を運搬する流通業者や店頭で販売する小売業者などは、商品の価値そのものを変えることはできません。

自社のサービスに独自の付加価値を与えることが難しい業種の会社では、利益率を上げるためにはコスト削減に励むしかないのです。社員の給料を、高水準に引き上げる余裕が生まれにくい環境といえるでしょう。

「人件費=コスト」と考えている

会社の経営層が、社員を自社の財産ではなく単なる人件費として捉えている場合も、社員の給料は安く抑えられがちです。

この手の企業には会社の利益を社員に還元するという発想がないので、仮に景気が良好で業績がうなぎ上りの状態でも、昇給は望めないでしょう。

業績が低迷したときにも、業務の効率化や設備への投資などの長期的な視点に基づく計画を練らず、真っ先に人件費、つまりは社員の給料や福利厚生などを削ろうとするはずです。

このような社風の会社では、将来的な昇給もほとんど期待できないといってよいでしょう。

給料が安いとどんなデメリットがある?

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給料が安いと、さまざまなデメリットが生じます。代表的なものを見ていきましょう。

モチベーションが保てない

給料の安さは、仕事に対するモチベーションの低下に直結します。どれほどやりがいの感じられる仕事であっても、金銭的な見返りが伴わなければ、やる気は減少していくでしょう。

給料の金額は、自分の仕事に対する評価でもあります。十分な成果を上げているにもかかわらず正当な評価が得られない状態では、モチベーションを保てなくて当然でしょう。

やる気が削がれたまま仕事を続けていると、技術や知識の向上も見込めなくなります。スキルを磨けないために転職によるステップアップにも踏み切れないという、悪循環に陥ってしまう可能性もあるでしょう。

生活に余裕が持てない

給料が安いと、お金の使い方に余裕が持てません。日々の暮らしが立ち行かなくなるほどの生活苦に陥るわけではなくとも、マイカーやマイホームの購入など、大金が必要になる場面で困難を感じることになるでしょう。

給料が安いために、結婚や子育てにも後ろ向きにならざるを得ない人たちも少なくありません。

国立社会保障・人口問題研究所が実施した「2021年社会保障・人口問題基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」によると、結婚へのハードルとして挙式や新生活の準備に必要な結婚資金の不足を挙げる人が男女ともに最も多く、経済面が未婚理由の一つになっています。

参考:2021年社会保障・人口問題基本調査(結婚と出産に関する全国調査)|国立社会保障・人口問題研究所

老後が不安

給料が安いと、貯金に回せる金額が減ってしまいます。元気に働けるうちはよくても、老後も安泰に暮らせるかどうか不安で仕方がないという人は少なくないでしょう。

2019年には、金融庁が公開した調査結果を元にした『老後2,000万問題』が話題になりました。老後に無職の夫婦2人が暮らすためには、およそ2000万円の蓄えが必要になるという説です。

厳密にいえばこの調査結果では、誰もが老後に2000万円必要になるとは述べられていません。個々人のライフスタイルなどによって、大きく変動すると但し書きされているのです。

しかしながら、長寿化に伴ってより多くの資産が必要になることは事実でしょう。給料が安いことにより不安の多い生活を送らなければならないというのは、デメリットの1つといえます。

参考:金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」 (令和元年6月3日)

給料が安いときの対策

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自分の給料が安いと感じているなら、何かしらの対策を講じる必要があるでしょう。会社や自分自身の置かれている状況によって、取るべき選択肢は変わってきます。

会社に昇給交渉する

自分の実力や会社への貢献度に現在の給料が見合っていないと感じるなら、会社に昇給の交渉をしてみましょう。年度の変わり目などに、上司との面談の機会が設けられている会社も多いはずです。

そういった席では、会社の今後の展望や経営方針を聞いたり、自分自身の達成目標を話したりすることになるでしょう。自然な流れで昇給について言及するチャンスといえます。

しかし、やみくもに「給料を上げてほしい」と頼んでも、空振りに終わる可能性が高いでしょう。自分が年度内に上げた成果を数値で示すなど、実績を具体的に示すことをおすすめします。

転職する

経営が傾いていたり、社員を大切にしようという理念がなかったりする会社の場合、たとえ自分に十分なスキルがあったとしても、昇給の実現は難しいかもしれません。

そんなときは、今の職場にきっぱりと見切りをつけて、転職するのも選択肢の1つでしょう。

転職する場合、自分の価値を正当に評価し、ふさわしい対価を払ってくれる会社を見極めなければなりません。企業規模が大きな会社を狙ったり、平均給料が高い業界に新天地を求めたりなどの戦略が必要になるでしょう。

副業の選択肢もあり

転職して給料を上げるためには、それ相応のスキルと実績が必要です。実力面や経験面ですぐの転職は難しい状態にある場合、副業を始めるという手もあるでしょう。

副業の可否は所属している会社の就業規則によるところもありますが、副業によってダブルインカムになれば、収入面に余裕ができます。また、転職したい業界での実績がない場合、まずは副業で経験を積んでみるというのも有効です。

初心者でも始めやすい副業としては、データ入力やアンケートモニター業務などが挙げられます。インターネット上には多数のクラウドソーシングサイトがありますので、自分に合った求人がないか探してみるとよいでしょう。

転職を成功させるには

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悔いのない転職を実現するには、事前の計画がとても大切です。転職の成功率をアップさせる秘訣について解説しましょう。

スキルアップを目指す

一般的に、給料の高い仕事に就く人には、高い専門性が求められます。業種によっては、取得難易度の高い資格の所持を採用条件としている会社も珍しくありません。

また、会社は中途採用者には即戦力を求めている場合が多いでしょう。転職による給料アップを目指すなら、それ相応のスキルを持つことが欠かせません。

現在の職場で、次につながるスキルを磨けるのであれば、積極的に磨きましょう。転職したいと思っている業種に関連する資格の取得を目指すのもおすすめです。

自分自身の市場価値を最大限に高めておくことが、転職成功の秘訣といえます。

給料面以外も考慮することを忘れずに

転職する際には、給料以外の面に目を向けることも忘れてはいけません。給料が高い仕事では、会社に対するコミットメントを強く求められる場合が少なくないでしょう。

残業時間が多かったり、会社によっては遠方への転勤が必須であったりするケースもあり得ます。

給料の高さだけを求めて転職先を決定すると、ワーク・ライフ・バランスが崩れてしまい、結果的に長く働き続けられなくなるという事態にもなりかねません。いくら給料が上がっても、これでは転職に成功したとはいえないでしょう。

業務内容にやりがいを感じられるか・拘束時間はどの程度か・転勤や異動はあるのかなど、さまざまな要素について総合的に判断することが大切です。

給料が安いと感じる現状を変えよう

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自分の給料が安いかどうか知るには、平均給料の数値を参考にするとよいことがわかりました。

給料の安い会社で働き続けていると、ライフイベントへの支障や老後の不安の増大など、さまざまなデメリットが生じてきます。不満を抱えたままにせず、具体的な対策に乗り出しましょう。

「自分の給料は安すぎる」と思いながらやる仕事は、あまり楽しくないはずです。より充実した毎日を送るためにも、スキルアップや資格取得などに力を入れて、転職・副業のために早めに動き始めることをおすすめします。

小西道代
【監修者】All About 労務管理ガイド小西道代

労務トラブルを未然に防ぐ社会保険労務士・行政書士。行政書士法人グローアップ代表、社会保険労務士法人トップアンドコア役員。大学卒業後、日本マクドナルドに入社。幅広い年齢層と共に働くことで、法律や制度だけではない労務管理・組織運営に興味を持ち、弁護士事務所等で経験を積む。自身も喫茶店を経営した経験から、労務トラブル予防の労務相談を得意とする。
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