もしかしたらモラハラを受けているのではないかと思っている人に向けて、モラハラの具体例や対処法を解説します。モラハラをしやすい人・受けやすい人の特徴も紹介するので、モラハラに悩んでいる人はぜひ参考にしましょう。
モラハラとは
まずは、基本的な知識を解説します。モラハラとは何なのかを理解し、パワハラとはどう違うのかを把握しましょう。
正式名称は「モラルハラスメント」
正式には『モラルハラスメント』といい、精神的苦痛を与える陰湿な嫌がらせを指します。モラルは『倫理』『道徳』を意味する言葉で、ハラスメントは『嫌がらせ』を意味します。
直接暴力を振るうことがないことから、周りが気付きにくいのが特徴です。モラハラは職場だけでなく、家庭でも起こりやすい特徴があります。特に、夫から妻へモラハラをするケースが目立っています。
パワハラとの違い
モラハラとよく似たハラスメントに、『パワハラ』があります。両者の大きな違いは、立場の優位性を利用したハラスメントであるかどうかです。
パワハラは『パワー』という言葉の通り、上司と部下、経営者と従業員のような優越的な関係を利用して、嫌がらせをすることが特徴です。暴力・暴言を伴うこともあり、周りも気付くことが多いでしょう。
また、パワハラには法的な定義が存在しており、通称『パワハラ防止法』にて定められています。
一方、モラハラには法的な定義はなく、対等な立場であっても発生します。極端なケースでは、部下が上司にモラハラをするといったこともあるようです。
モラハラにおける嫌がらせは陰湿なことから、周りだけでなくモラハラを受けている本人も気付きにくいことが、パワハラとの違いの1つです。
職場のモラハラ「具体例」
職場において、どのような行動がモラハラに当たるのでしょうか?職場におけるモラハラの具体例を3つ紹介するので、自分に当てはまっていないか確認してみましょう。
無視など周りから孤立させる
あいさつをしても無視したり、意図的に仲間外れにする行為は、モラハラに当たります。人間は社会的な動物なので、孤立している状況下では精神的なダメージを受けやすくなります。
こうした行為は、個人的な好き嫌いや、過去のトラブルが発端となっているケースが多いでしょう。
精神的な攻撃という意味では、嫌味や悪口、馬鹿にするような態度・発言もモラハラに該当します。個人を孤立させる場合もあれば、会議に誘わないなど集団で仲間外れにするケースもあります。
仕事を振らない・過剰に振る
その人本来の仕事を振らなかったり、逆に能力を超えて過剰に仕事を与えたりすることも、モラハラです。
仕事を振らないことの例としては、雑用ばかりさせることや、意図的に曖昧な指示を与えてミスを誘発することなどが挙げられます。
仕事を振らないことで、その人があたかも会社にとって不要な存在であるかのような気持ちにさせ、精神的苦痛を与えるのです。
逆に、期限までに到底終わらない量の仕事をわざと振って、プレッシャーをかけるといったケースもあります。「仕事が終わるまで帰らせない」と圧力をかける場合もあるでしょう。
いずれの場合も、相手を精神的に追い詰めることを目的としている点で共通しています。
プライベートの詮索・攻撃
同じ会社で働く者同士、多少なりともプライベートな話をすることはあるでしょう。しかし、必要以上に相手のプライベートを詮索したり、いちゃもんをつけたりする行為は、モラハラに該当します。
例えば、恋人や友人の話を根掘り葉掘り聞くといったことが挙げられます。嫌がっているのにもかかわらず、しつこく詮索されると気分が悪いのはいうまでもありません。
ほかにも、休日に連絡への返信を強要したり、私物や服装に過度なコメントをしたりすることもモラハラです。
モラハラをする人の特徴・心理
職場でモラハラをする人の特徴や心理を解説します。相手がどのような心理でモラハラをしているかを把握することで、適切な対処法が分かるようになります。
また、モラハラをする人の特徴が分かれば、その人に不用意に近づかないなどモラハラを予防することもできるでしょう。
相手を支配したがる
モラハラをする人は、負けず嫌いでプライドが高い傾向にあります。負けず嫌いであるが故に、自分が相手より優れていることを示すため、モラハラを行うのです。家庭におけるモラハラは、この心理に端を発しているケースが多いようです。
特に、職場でよくマウントを取ってくる人には要注意です。このような人は相手のことを下に見る発言をしやすく、結果としてモラハラを行う可能性があります。
また、相手を支配したがる人は、正論を言われても認めず、暴論で言い負かそうとする傾向があるので気を付けましょう。
自信のなさを隠している
プライドと実力が見合っておらず、その自信のなさからモラハラをする人もいます。これといった成功体験がない割にプライドだけは高いので、相手を見下すことで手っ取り早く自尊心を満たそうとします。
また、自信のなさからモラハラをする人の中には、幼少期の家庭環境に問題があった人もいると考えられるでしょう。親からの愛情を十分に受けなかったことで自己肯定感が低くなり、それを埋め合わせるためにモラハラを行う人もいます。
モラハラの被害者だった場合も
モラハラをする人自身が、過去にモラハラを受けていた場合もあります。過去に家庭や職場でモラハラを受けていたことで、道徳観が歪んでしまったことが考えられます。
しかし、モラハラの危害を加えてきている以上、その人は今は加害者なので、同情をする必要はありません。
本人は無意識の可能性もあるため、本人にモラハラだと気付かせることも大切です。
モラハラを受けやすい人の特徴
モラハラの標的になりやすい人には、どのような特徴があるのでしょうか?自分がモラハラを受けているのは、もしかするとターゲットにされやすい性格の持ち主だからかもしれません。
自己主張が苦手でおとなしい
標的にされやすい人は、自己主張が控え目でおとなしい性格であることが挙げられます。相手に何か言われても言い返すことが苦手なので、モラハラをする人にとっては支配している気分を得られるのでしょう。
モラハラをされても言い返すことができないため、表立って衝突することも少なく、周りが気付きにくくなっていることも考えられます。
このような人は謙虚で他者を思いやることができる反面、その温厚さから悲しくもモラハラのターゲットにされやすいのです。
責任感が強く真面目
責任感が強く真面目な人も、モラハラを受けやすいといえます。そのような人は自責の念が強いため、何か問題が発生しても、自分に原因があると考える傾向にあります。
さらに「自分が我慢すればよい」と考えがちなため、相手に対して問題提起をすることがあまりありません。その結果、相手がつけ上がってモラハラをすることになります。
モラハラは弱い人がされるイメージがあるかもしれませんが、強い人でもターゲットにされてしまうことがあるのです。
自分に自信がなく相手の機嫌に敏感
他人への配慮が得意で空気を読める人は、ついつい相手の意見がもっともであると考えてしまう傾向があります。自分に自信がない人の場合は、なおさらでしょう。
そのような人は、相手に従順な態度を見せることが多く、結果として相手の支配欲を刺激してしまいます。モラハラ被害を受けているうちに、いっそう相手の顔色をうかがうようになることもあり、悪循環に陥りかねません。
また、モラハラを受けたとしても、周りの空気を悪くしないことを優先して我慢してしまい、相手をつけ上がらせてしまうこともあります。
モラハラを受けた場合の対処法
自分がモラハラを受けていると分かった場合、どのような行動を取ればよいのでしょうか?モラハラを受けた場合の対処法を、4つ紹介します。
自分が悪いと責めない
モラハラを受ける人は、自責の念の強さから「自分に問題があるからだ」と考えてしまいがちです。
もしかすると自分にも何かしらの原因があるのかもしれませんが、自分だけが悪いと考えることはやめましょう。
自分と相手に何かトラブルがあったとしても、精神的な嫌がらせをしてよい理由にはなりません。自分を改善することも大切ですが、1人で抱え込まないことも非常に重要です。
相手との距離を取る
モラハラの被害を最小限に抑えるためには、相手と距離を取り、なるべく関わらないことが重要です。周りを味方につけることで、相手をけん制するのも効果的です。
同じ職場ではなかなか関係を切ることは難しいかもしれませんが、相手と距離を取るようにすることはできるでしょう。距離を取ることで、自然とモラハラのターゲットから外れる可能性もあります。
もし状況が改善されない場合は、転職も選択肢に入るでしょう。徹底抗戦をする場合は、法的手段も検討の余地があります。
モラハラの証拠を確保する
モラハラを受けていることを第三者に相談する場合は、証拠を集めてから相談することをおすすめします。
モラハラは、周りからは気付きにくいことが特徴です。自分の話だけでは、周囲の人は簡単には信じてくれない可能性があります。
さらに、モラハラ被害を相談していることが本人に伝わってしまった場合、根回しや証拠の隠滅をさせることも考えられます。
これではモラハラを立証しにくくなってしまうため、まずは証拠集めを優先しましょう。
信頼できる上司や専門窓口に相談する
モラハラの相談先として、上司が信頼できる場合は上司に相談するのがよいでしょう。上司は職場環境を整える義務があるため、相談すれば働きかけてくれるはずです。
しかし、上司からモラハラを受けている場合や、会社の力を頼れない場合は、専門機関に相談することをおすすめします。
相談できる専門窓口は、『総合労働相談コーナー』や『みんなの人権110番』などです。
総合労働相談コーナーは、厚生労働省が各都道府県の労働局に設けた機関で、モラハラを含むあらゆる労働問題の相談に乗ってくれます。みんなの人権110番は法務省が設置した、モラハラを含む人権問題を相談できる窓口です。
法務省:常設相談所(法務局・地方法務局・支局内)みんなの人権110番(全国共通人権相談ダイヤル)
モラハラの証拠になるものとは?
モラハラ問題を相談する際、いかに証拠を集めてモラハラの事実があることを証明するかが重要です。モラハラの証拠として有効なものを、2つ紹介します。
暴言や傷つける言葉の録音・記録
モラハラを実際に受けている様子を録音することは、有効な方法です。実際のやりとりをそのまま伝えられるので、口頭で伝えるよりも相手を納得させやすいでしょう。
スマホの録音機能を使えば手軽に記録が取れますし、ボイスレコーダーでも問題ありません。
メールやチャットでも暴言を吐かれていた場合は、スクリーンショットを控えておきましょう。相手に消されてしまう可能性があるため、早めに記録することをおすすめします。
また、メモ帳などに『いつ・どこで・誰からモラハラを受けたか』を記録するのも効果的です。メモ帳の記録はモラハラの証拠となるだけでなく、口頭で状況を説明する場合の備忘録にもなります。
医師にかかっている場合は診断書も有効
モラハラによって心身に不調を来している場合、それを証明できる診断書も証拠となります。モラハラによって医師にかかっているのであれば、診断書を作成してもらいましょう。
ただし注意点は、診断書やカルテだけでは体調不良の原因がモラハラによるものなのかが分からないことです。そのため、診断書だけでは証拠として不十分とみなされる可能性もあります。
直接の証拠として録音やスクリーンショットを用意しておき、診断書やカルテはあくまでそれらをサポートするものと思っておくとよいでしょう。
理不尽なモラハラを我慢しないで!
モラハラはパワハラとは違い、暴力などを伴わないため、自分も周りもハラスメントであることに気付きにくいのが特徴です。
ターゲットにされやすい人には、自己主張が苦手だったり、自分に原因があると考えたりする真面目な人が多いものです。これも、モラハラを気付きにくくしている要因の1つといえます。
しかし、業務の範囲を超えて精神的に苦痛を与える行為は、立派なハラスメントです。もし「モラハラを受けているかもしれない」と思った場合、まずはモラハラが発生している証拠を集めましょう。
証拠が十分に集まったら、信頼できる人や専門機関に相談します。心身に不調を来す前に、モラハラに対処しましょう。
慶應義塾大学卒業。平成24年、茨城県取手市「じょうばん法律事務所」を開設。主に労働者側の労働事件(不当解雇など)や、インターネット詐欺被害救済(サクラサイト、支援金詐欺など)を取り扱う。
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