再就職したら、健康保険の切り替えが必要です。しかし、どのような手続きをすればよいかよく分からない人も多いでしょう。再就職した場合の健康保険の切り替え方や注意点について、現在加入している健康保険の種類別に解説します。
再就職するまで加入できる健康保険の種類

会社を退職してから加入できる健康保険の種類は3つあります。再就職してからの切り替え方法は保険の種類によって異なる部分もあるため、現在加入している保険について、改めて確認しておきましょう。
任意継続
任意継続とは、退職した会社の健康保険に引き続き加入する方法です。任意継続するには下記の条件を満たす必要があります。
- 退職するまでに、健康保険の加入期間(被保険者期間)が継続して2カ月以上あること
- 退職日の翌日から20日以内に、継続の申請をすること
任意継続できる期間は、最長で退職後2年までです。しかし、以下のいずれかに該当すると、加入期間中でも被保険者の資格はなくなります。
- 加入者本人が就職したとき
- 加入者本人が後期高齢者医療制度の被保険者となったとき
- 加入者本人が継続中止を希望したとき
- 加入者本人が死亡したとき
なお、在職中は保険料を会社と折半して納めますが、任意継続になると全額自己負担となります。
家族の扶養
家族が勤務している会社の健康保険に扶養家族として加入することも可能です。被扶養者となるための条件は、健康保険組合によって異なります。例えば、協会けんぽの場合は以下の条件を満たしていることが必要です。
- 三親等以内の親族。直系尊属・配偶者(事実上の婚姻関係も含む)・子・孫・兄弟姉妹以外は、被保険者と同一世帯であること
- 年収130万円未満(60歳以上または障害厚生年金を受給できる程度の障害者は180万円未満)
- 被保険者と同一世帯の場合は、年収が被保険者の年収の1/2未満であること
- 被保険者と同一世帯ではない場合は、年収が被保険者から援助されている金額より少ないこと
なお、いわゆる「年収130万円の壁」への対策として、2023年10月より、一時的な収入増であれば事業主の証明によって引き続き扶養に入れる特例措置が講じられています。
出典:被扶養者とは? | こんな時に健保 | 全国健康保険協会
出典:パート・アルバイトで働く「130万円の壁」でお困りの皆さまへ
国民健康保険
任意継続せず、家族の扶養にもならない場合は、住民票を置いている自治体の国民健康保険に加入します。国民健康保険の加入に必要な書類は自治体によって異なりますが、古い健康保険の資格喪失証明書が必須です。
保険料の算出方法も自治体によってさまざまですが、基本的に前年の所得を基に計算されます。国民健康保険の加入手続きは、退職日の翌日から14日以内に済ませることが必要です。
14日を過ぎてしまった後でも手続きは可能ですが、その場合は退職日の翌日までさかのぼって、保険料を納めます。
再就職したときの健康保険の手続きの流れ

再就職すると、それまで加入していた健康保険から、勤務先の健康保険への切り替えが必要になります。大まかな手続きの流れを確認しておきましょう。
再就職先の保険に加入する
75歳未満で正社員として再就職する場合は、無条件で会社の社会保険に加入できます。加入手続きは基本的に会社側で行うため、特にしなければならないことはありません。
40歳以上の場合は介護保険への加入も必要ですが、健康保険の手続きをすれば自動的に加入できます。扶養家族がいる場合は、被扶養者認定の申請書類の提出も必要です。加入手続きが完了すると、1~3週間ほどで新しい健康保険証が発行されます。
再就職して加入する健康保険の種類
会社員や公務員が加入する健康保険の種類は、運営している保険者の違いによって大きく3つに分かれます。
- 組合健保:単独の企業または複数の企業が共同して、自主的に運営している健康保険
- 協会けんぽ:全国健康保険協会が運営している健康保険。組合健保を設立していない企業の従業員が対象
- 各種共済組合:公務員を対象とした健康保険。組合員や家族の生活安定・福祉の向上に寄与するための相互救済制度
現在加入している健康保険から脱退する
現在加入している保険からの脱退は自身で行うことが必要です。脱退方法は加入していた保険の種類により異なります。
- 任意継続:任意継続している保険組合に、任意継続被保険者資格喪失申出書とともに任意継続被保険者証を送付する。新しく加入した健康保険証のコピーを添付する場合もある
- 家族の扶養:扶養者の勤務先に被扶養者(異動)届を提出し、被扶養者の保険証を返却する
- 国民健康保険:自治体の窓口に国民健康保険被保険者証を返却する。新しく加入した健康保険証の提示が必要
マイナンバーカードを保険証として利用している場合
転職先での健康保険の加入手続きが完了すれば、マイナ保険証の情報は自動的に更新されます。そのため、ご自身でマイナ保険証に関する切り替え手続きを行う必要はありません。ただし、物理的な保険証(カード型)が発行されている場合は、そちらの返却手続きは別途必要です。
脱退手続きの期限は加入している健康保険によって異なるため、あらかじめ確認しておきましょう。手続きが遅れると、再就職先の健康保険に加入した後も、脱退するまでの保険料が発生する可能性があるので注意が必要です。
再就職したら健康保険以外の手続きも必要?

再就職すると、健康保険以外にも、年金の切り替えや雇用保険の加入手続きが必要です。それぞれの方法について解説します。
年金
再就職すると、国民年金から厚生年金に変わります。入社すると会社が加入手続きを行ってくれるため、自分で手続きする必要はありません。ただし、会社から基礎年金番号やマイナンバーの提示を求められることがあるので、用意しておきましょう。
厚生年金に加入すると、国民年金からは自動的に脱退することになるので手続きは不要です。厚生年金に加入すると、国民年金の保険料に加えて、厚生年金保険料を事業主と折半で納めることになります。
雇用保険
再就職先での雇用保険の加入手続きも会社側が行います。ただし、失業保険を受給している間に再就職が決まったときは、ハローワークへの届け出が必要です。
再就職が決まった時点で、ハローワークに連絡しましょう。連絡の時点では電話でもOKです。再就職先に「採用(内定)証明書」を記入してもらったら、「就職日の前日」にハローワークに行き、失業認定申告書と併せて提出します。
前日に行けないときは、ハローワークに相談しましょう。
再就職したときの健康保険に関するQ&A

再就職したときの健康保険に関する疑問をQ&Aでまとめました。手続きの漏れなどがないよう、しっかり確認しておきましょう。
Q. 入社後すぐに病院にかかりたいが、マイナ保険証がまだ使えない場合は?
A.会社から「健康保険被保険者資格証明書」を発行してもらいましょう。
再就職先の会社で健康保険の加入手続きが終わっても、その情報がマイナ保険証に反映されるまでには数日かかる場合があります。
もし情報が更新される前に医療機関を受診したい場合は、会社に依頼して「健康保険被保険者資格証明書」を発行してもらってください。これがあれば、マイナ保険証が利用できない期間でも、保険診療を受けることができます。
もし証明書の発行が間に合わない場合は、一度医療費を全額自己負担し、後日、加入した健康保険組合に申請して払い戻しを受ける「療養費」という制度を利用することも可能です。その際は、必ず領収書を保管しておきましょう。
Q. 前納していた健康保険の保険料は返してもらえますか?
A.はい、返還されます。
再就職先の保険に加入したことで資格を喪失した月の、翌月以降の保険料が月割りで計算されて戻ってきます。
- 国民健康保険の場合 お住まいの市区町村から、還付に関する通知が届きますので、その案内に従って手続きしてください。
- 任意継続の場合 加入していた健康保険組合から返還されます。手続き方法は組合によって異なるため、ご自身で問い合わせて確認しましょう。
Q. 失業保険の受給中に再就職が決まると「再就職手当」をもらえると聞きました。私も対象になりますか?
A.はい、一定の条件をすべて満たしていれば支給されます。
再就職手当は、失業保険(基本手当)の受給資格がある方が、早期に安定した職業に就いた場合に支給されるお祝い金のような制度です。支給額は、失業保険の支給残日数によって決まります。
主な支給条件は以下の通りです。ご自身の状況と照らし合わせてみてください。
- 失業保険の受給手続き後、7日間の待期期間が満了した後の就職であること
- 就職日の前日時点で、失業保険の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あること
- 離職前の会社や、その会社と密接な関わりのある会社への再就職ではないこと
- (自己都合退職などで給付制限がある場合)待期期間満了後1カ月間は、ハローワークまたは許可された職業紹介事業者の紹介による就職であること
- 1年を超えて勤務することが確実であること
- 原則として、雇用保険の被保険者資格を取得する条件の雇用であること
- 過去3年以内に、再就職手当や常用就職支度手当の支給を受けていないこと
- 求職の申し込みをする前から採用が内定していた会社ではないこと
再就職したら健康保険の切り替えを忘れずに

再就職したら、健康保険の切り替えが必要です。基本的に、新しい健康保険への加入手続きは会社側がやってくれるため、自分で行う必要はありません。とはいえ、自分の保険がどのような仕組みになっているのかは、知っておくのがおすすめです。
健康保険の切り替え以外に、再就職手当の受給資格などについても確認しておくとよいでしょう。再就職先が決まっていない人は、スタンバイの求人検索を活用してみてください。スマホからも検索できるので、気になる人はチェックしてみましょう。