業務時間中に所定の業務を終えられない場合や、自ら進めておきたい業務がある場合などに、自宅に仕事を持ち帰るビジネスパーソンは少なくありません。自宅に仕事を持ち帰った場合、残業代は付くのでしょうか?持ち帰り残業のリスクとともに解説します。
仕事の持ち帰りが起こる理由
ビジネスパーソンのほとんどは、オフィスで仕事をきちんと終えた上で、自宅でプライベートの時間をゆっくりと過ごしたいと思うものです。しかし一方で、自宅に仕事を持ち帰る人も少なくありません。
仕事の持ち帰りが起こってしまう理由は、何でしょうか?代表的な理由としては、以下の点が挙げられます。
自宅の方が仕事がはかどる
やむを得ず自宅に仕事を持ち帰っている人がいる一方で、自主的に自宅で仕事をしているビジネスパーソンは、決して少なくないのが実態です。
職場では、どうしても他の業務に忙殺されて本来の仕事がはかどらないケースや、1人で集中して仕事に取り組む必要がある場合など、自主的に仕事を持ち帰るケースが目立ちます。
本人のスケジュール管理に問題がある場合も多くありますが、職場から過度な量の仕事を任されているケースもあります。
働き方改革による影響
働き方改革の影響により、それまでなかった持ち帰り残業が発生している企業もあり、社会的に問題視されています。
働き方改革は本来、労働環境の質の改善や、ビジネスパーソンの生産性の向上を目的としたものですが、それが裏目に出ている企業は珍しくない状況です。
慢性的な人手不足に陥っている企業や、日常的に社員が多くの業務をこなしてる企業の社員は、働き方改革で残業時間が短縮された結果、仕事を持ち帰らざるを得なくなっていることが少なくありません。
残業・持ち帰りが常態化している
すでに企業内で、残業や仕事の持ち帰りが当たり前になっている企業もあります。
社員が気持ちの上では、仕事を持ち帰りたくないと思っていても、周りが当然のように長く残業したり、自宅でも仕事を続けていたりする企業では、仕事を持ち帰らざるを得ない空気になっているケースは珍しくありません。
持ち帰りが暗黙の了解になっているような企業では、息苦しい雰囲気で仕事をしている人もいるでしょう。環境を変えるためには、異動を願い出たり、思い切って転職を決断したりする覚悟が必要です。
仕事を持ち帰るリスクについて
自宅の方が、オフィスよりも仕事がはかどる人もいるでしょう。しかし、仕事を持ち帰る場合、以下のリスクが発生するため、基本的には推奨されない行為といえます。
情報漏えいのリスク
社員が自宅に仕事を持ち帰った場合、そこから機密情報が漏えいする恐れがあります。業務で使用するデータを、USBメモリーなどに保存して自宅に持ち帰る人もおり、そのまま紛失してしまったり、盗難に遭ったりするケースが実際に起こっています。
特に、顧客や取引先の個人情報が含まれる書類やデータを持ち出す場合、情報の漏えいにより大きな問題になる可能性もあるでしょう。
不正アクセスやのぞき見などにより、悪意ある第三者に情報が漏れるケースも考えられます。仕事を持ち帰らざるを得ない場合は、徹底したセキュリティー対策が必要です。
社員のモチベーション低下
慢性的に仕事の持ち帰りが発生している企業では、社員の仕事へのモチベーションも低下する傾向にあります。
自宅でも仕事をしなければならず、プライベートの時間が犠牲になったり、しっかりと休息を取れなくなったりして、オフィスでの仕事の生産性も低下する場合もあります。
心身のリフレッシュができず、仕事の生産性が低下してしまうと、1日にこなせる業務量が減ってしまうでしょう。
結果として、さらに仕事の持ち帰りが必要になる人が出てくる可能性があります。悪循環に陥ってしまい、業務効率が低下し続ける事態になりかねません。
心身の不調につながるケースも
持ち帰り残業が常態化した場合、仕事へのモチベーションが低下するのみならず、体調不良につながる恐れもあります。
自宅で十分な休息を得られず、仕事とプライベートの切り替えも難しくなるため、日常的にストレスがたまり、精神的に疲弊してしまう人は少なくありません。
在宅での仕事を含めた長時間労働は、ストレスからのうつ病をはじめとした、精神疾患にかかるリスクも上がってしまいます。メンタルヘルスの観点からも、できる限り避けた方が無難です。
仕事の持ち帰りを改善するための対処法
なるべく自宅に仕事を持ち帰らないようにするためには、以下の点を意識することが大切です。効率をきちんと考えて仕事をするのに加えて、1つ1つの仕事に集中して取り組むようにしましょう。特に重要なポイントを解説します。
業務の効率化を考える
本来の就業時間内にきちんと仕事を終わらせるためには、1つ1つの効率を考えて業務をこなす必要があります。
強制ではないにもかかわらず、仕事を自宅に持ち帰らざるを得ないならば、仕事の進め方を見直して効率化できる部分はないか検討することが大切です。
仕事を効率化するために重要なのは、優先順位を考えてタスクをこなすことです。全体の業務をタスクとして細分化し、どのタスクをどのような順番でこなすべきか考えてみましょう。
1つ1つの仕事に集中する
複数の仕事を、同時並行でこなしている人は少なくありません。いわゆるマルチタスクをこなせる人が、ビジネスパーソンとして優秀といったイメージを持っている人もいます。
しかし、実際はマルチタスクよりも、シングルタスクの方が効率が良いとされています。1つ1つの仕事に集中して取り組む方が、時間を分割して複数の仕事に割り当てるよりも、結果として仕事がスムーズに進むケースが大半です。
スケジュール管理が苦手な人などは、意図せずマルチタスクをしているケースもあるので注意が必要です。1つの仕事にじっくりと取り組めるように、仕事のスケジュールの組み方を見直してみましょう。
報・連・相の徹底
いわゆる「報・連・相」を徹底して、チームで仕事を進める姿勢も重要です。1人で多くの仕事を抱えてしまい、自分だけが周りよりも長時間労働をしている人は、決して少なくありません。
1人だけで仕事を終わらせようとせずに、誰かに任せたり、上司に相談したりすることも必要です。1人で多くの仕事を抱えすぎると、結果的に周りの迷惑になってしまう場合もあります。
自分の許容量をきちんと把握し、無理をしないように注意しなければいけません。日頃から「報・連・相」を意識していれば、周りからフォローしてもらえる機会も増えるでしょう。
対処法では間に合わない場合
対処法を試しても仕事の持ち帰りがなくならない場合、自分の許容範囲を優に超えた仕事量を抱えている可能性があります。
自分だけでは状況を改善できない可能性が高いので、以下のように業務量の調整を依頼してみましょう。それでも状況が変わらないならば、転職を検討するのも有効です。
上司に業務量の相談をする
企業によっては、1人1人の社員に任せられる業務量が多く、個人の仕事の効率化だけでは対応できないことがあります。
慢性的な人手不足に陥っている企業や、経営者が現場の状況をよく理解していない場合など、社員が過重労働を強いられているケースは珍しくありません。
もし、1人ではこなせない量の業務を抱えているならば、まずは上司に相談して業務量を調整してもらいましょう。
上司への相談ができない場合や、相談しても対応してもらえない場合などは、人事部門の相談窓口や、労働基準監督署などへの相談も検討する必要があります。
特に、相談しても上司が取り合ってくれない場合は、企業の体質に問題がある可能性もあります。現場の社員は気付かなくても、一般的にはハラスメントと判断される行為を受けている場合もあるので、冷静に自分の置かれた環境を判断することが大事です。
転職をする方法もアリ
残業や仕事の持ち帰りが常態化し、企業全体で当たり前になっている場合などは、上司や人事部門に相談しても、状況が変わらない可能性があります。その場合は環境を変えるために、思い切って転職を検討してみましょう。
事実、転職によって過重労働から解放され、自分の強み・特性を生かせる仕事ができるようになった人も多くいます。過度な業務を抱えたまま無理に働き続けると、体を壊してしまう恐れもあるので、求人サイトで自分に合った転職先を探してみましょう。
業界トップクラスの求人数を誇る「スタンバイ」ならば、さまざまな業界・職種の求人案件を探せます。こだわりの条件で自分に合った求人を見つけられるので、転職を検討している人は、この機会にぜひ利用してみましょう。
そもそも持ち帰り残業は労働時間なのか
仕事の持ち帰りが起こってしまう原因や、有効な対処法について解説してきましたが、そもそも持ち帰り残業は労働時間に含まれるのでしょうか?法的な位置付けを理解しておきましょう。
基本的には労働時間外と見なされる
仕事を自宅に持ち帰っている場合、基本的に会社の指揮命令下に置かれた労働には該当しないため、労働時間外に自らの意思で働いていると見なされます。
従って、会社との雇用契約に基づいた労働時間には入らず、残業代(時間外労働手当)も出ないので注意しましょう。
企業側が社員の持ち帰り業務に対して、自主的に時間外労働手当を支給している場合もありますが、法的には支払う必要がない点は覚えておく必要があります。
労働時間・残業代が出るケース
原則として、持ち帰りの残業は労働時間には入りません。しかし、上司から持ち帰りを指示されたときや、明確な言葉がなくとも「暗黙の了解」により仕事を持ち帰らざるを得ない状況にある場合などは、労働時間と見なされるケースもあります。
特に、上司から明確な指示があるなら、会社の指揮命令下での仕事になるため、時間外労働手当の対象となります。暗黙の了解があるケースでも、それが認定されれば労働時間となり、残業代を請求できる可能性があるので覚えておきましょう。
仕事は業務時間内に終わらせよう!
仕事の持ち帰りが起こる理由としては、自宅の方が仕事ができると考える人がいるのに加えて、働き方改革の影響なども考えられます。企業によっては、社員の仕事の持ち帰りが、状態化しているケースもあるでしょう。
情報漏えいのリスクをはじめ、仕事の持ち帰りにはさまざまな問題が伴うため、基本的に避けた方が無難です。特に自主的な持ち帰り残業は、時間外労働手当の対象にもならないので、業務時間内にきちんと仕事を終わらせるように工夫しましょう。