マッチポンプの意味は?自作自演との違いや仕事で行う危険性を紹介

マッチポンプは、日常の場面やビジネスシーンで幅広く使われる言葉です。いったいどのような意味があるのでしょうか?似た言葉である自作自演との違いや、他の類語を紹介します。ビジネスで使われる「マッチポンプ商法」の意味やリスクも確認しましょう。

マッチポンプってどういう意味?

マッチで火をつける

(出典) pixta.jp

マッチポンプは、数十年前に誕生した和製外来語です。現代では使われる場面が限られていますが、ビジネスや社会ニュースなどで目にする機会は多いでしょう。一般的な意味や、由来を解説します。

利益を得るために自作自演することを指す

マッチポンプは言葉の通り、火をつける「マッチ」と水を出す「ポンプ」から生まれた和製外来語です。

自分で火をつけておきながらポンプを使って消火する様子から、何らかの利益・評価を得るために自ら問題を起こし、自分で解決する行為を意味します。問題を起こして解決する様子から、自作自演とニュアンスが近い言葉です。

問題を起こす行動が「マッチで火をつける行為」で、起こした問題を解決する行動が「水をかけて消火する様子」を表します。実際に問題を起こしていなくても、問題があるかのように装い、相手を不安にさせる行為も含まれる点が特徴です。

マッチポンプの由来・語源

マッチポンプが広く使われるようになったのは、1961年の国会での議員の発言がきっかけとされています。

公共料金を上げることで物価に火をつけながら、同時に物価の上昇を抑えるという矛盾した政策を、批判的に「マッチポンプ方式」と表現したことが始まりと見られます。

さらに、1966年の「黒い霧事件」に関連して、政治家が自作自演の恐喝行為を行ったことが、マッチポンプという言葉の普及に影響を与えました。

この事件を通じて、政治家が自ら問題を作り出し、それを解決するふりをして利益を得る様子が、マッチポンプの具体例として認識されるようになったのです。

このように、マッチポンプは元々政治的な文脈で使われ始めた言葉ですが、現在では一般的に自作自演や詐欺的な行為を指す言葉としても用いられます。

言葉としてのマッチポンプの使い方

マッチポンプは、利益を得るために自ら問題を起こして解決策を提示する人に対して使われるケースや、詐欺的なビジネスを指す意味でも使われます。主な例文を見ていきましょう。

あの人のやっていることは、完全なマッチポンプだ
マッチポンプ商法にだまされないよう注意してください
あのブログはまるで、マッチポンプかやらせに見える

マッチポンプのように「自分で問題を起こす」「自分で解決方法を提示する」「利益のために行う」という、全ての意味を備えた言い換え表現はほとんどありません。多くの場合、悪い意味で使われるため、使用する場面には注意が必要です。

マッチポンプと自作自演の違いは?

パソコンを操作する手元

(出典) pixta.jp

流行した当時のマッチポンプには、「自作自演の狂言によって金銭などの利益を得ること」というニュアンスもあります。本来の意味を考えるとややイメージが異なりますが、マッチポンプと自作自演は何が違うのでしょうか?一般的な意味を解説します。

「自作自演」は見返りを求めるとは限らない

自作自演には、2つの意味があります。1つは「自分で作った作品・楽曲を自分で演じること」です。2つ目は、「自分で計画し、立てた計画を自分だけで実行すること」です。

「自作自演」という言葉は、何らかの問題が起きたように装って周囲を驚かせる行為や、他人になりすまして自分を高く評価するようなときにも使われます。

「自分で計画し、自分だけで実行すること」の中には、自らの利益のためにシナリオを作り、あたかも本当に起きたことのように演じる行為も含まれるのです。

マッチポンプには問題が起きたかのように装い、相手をだまして利益を得ようとする意味もあり、ニュアンスは似ています。ただ、自作自演には「問題の解決策を提示する」といった行為は基本的に含まれず、何らかの見返りを得ようとするとは限りません。

ネット用語としての「自作自演」

インターネットでは、姿を見せず文章だけでやりとりができることから、他人になりすます行為やうその情報を広める行為が簡単にできます。

ネット用語として「自作自演」が使われるときは、他者になりすます行為や、うその情報を拡散する行為が中心です。他者になりすまして自分を擁護するような書き込みをした場合、自作自演といわれることがあります。

実際には起きていない作り事を公開し、うその情報を広めるケースもあるでしょう。例えば、「家に泥棒が入った」と注目を集めるような書き込みをしているものの、実際には何も起きていないケースが該当します。

マッチポンプのように「自分で火をつけておきながら解決しようとする」という意図は含まれませんが、見返りを得るために注目を集めようとする点では同じです。

マッチポンプの類語・言い換え表現

テレビ番組

(出典) pixta.jp

マッチポンプと完全に一致する言葉はほとんどありませんが、似た言葉はいくつかあります。類語や、言い換え表現として使える言葉を確認しましょう。

やらせ

「やらせ」は、主にテレビ番組や週刊誌などのマスメディアで行われます。実際は起きていないことを、過度な誇張や演技によって事実と見せかける手法です。

特に、テレビ番組では番組制作の都合上多少の演出が入るケースが多く、演出を超えた過度な誇張や、事実に反する内容が「やらせ」と判断されます。

出演者にお願いし演技をしてもらうケースや、同意を得て事実ではない情報を公開するのもやらせです。

マッチポンプとは異なり「自分で起こした問題を解決しようとする」方向ではありませんが、事実とは異なる情報を公開し問題を起こそうとする点は似ています。

捏造

「捏造」は、事実ではないことを、まるで事実であるかのようにつくり上げることを指します。

例えば、売上表の数字を書き換え、あたかも売り上げがあったかのように装うのも捏造です。インタビューで本人が発言していない内容を公開するのも、捏造に当たります。

やらせと似ていますが、演出・演技によるものではなく、「うその情報をつくり上げる」方向に近いでしょう。マッチポンプでも利益を得るために、ありもしない問題をつくり上げるケースがあり、似た意味で使われます。

一人芝居

「一人芝居」は、芝居において1人で複数人を演じる様子や、思い込みによって1人で感情的になり何らかの言動をする様子を指します。

マッチポンプの類語である自作自演に似た言葉ですが、インターネット上での自作自演行為のように、承認欲求・利益を求めるような意図はありません。

一般用語の一人芝居は、相手の思いに気付かず1人で舞い上がっている状況や、怒りをぶつけているような状況を表します。

「マッチポンプ商法」の定義と具体例

スマホを操作する手元

(出典) pixta.jp

マッチポンプの中には、ビジネスで使われる「マッチポンプ商法」もあります。どのような商法が、マッチポンプと呼ばれるのでしょうか?基本的な定義と具体例を紹介します。

マッチポンプ商法の定義

マッチポンプ商法は、自分で何らかの問題を起こしておきながら、解決方法を提示することで商品・サービスを売りつける商法です。そのほか、解決策の提示によって報酬を得るための自作自演行為も、マッチポンプ商法に含まれます。

マッチポンプの問題行為は、うその情報を伝えたり、相手に損害を与えたりといった行為が中心です。詐欺罪や器物損壊罪、恐喝罪などの犯罪行為に該当するケースもあるでしょう。

架空の存在になりすまして注目を集める行為のように、誰にも迷惑がかかっていない場合、報酬を得ていても犯罪行為にならない可能性もあります。

マッチポンプ商法をもっと分かりやすく

マッチポンプ商法には、以下のような例があります。

例えば、水道業者が家に来て、点検をするケースです。「耐用年数を超えているのでこのままでは危険」などと言い、修理・交換代金を請求します。すぐに交換しなければならないかのように不安をあおり、契約を迫る点が特徴です。

また、「水が汚れている」とありもしない事実をでっち上げ、解決の手段として何らかの商品・サービスを売りつける行為もマッチポンプといえます。

「ステマ」もマッチポンプ商法の1つ

「ステマ」は、ステルスマーケティングの略称です。企業や個人が、インフルエンサー・芸能人など影響力のある人に宣伝を依頼します。単に宣伝をしてもらうのではなく、宣伝とは分からないように高い評価をしてもらうのが特徴です。

ステマは、自作自演ややらせに近いマーケティング手法といえるでしょう。マッチポンプの本来の意味とはやや異なりますが、宣伝内容が詐欺的なものも含まれるため、マッチポンプ商法の一種として判断されるケースもあるようです。

なお、ステマは2023年10月1日から景品表示法違反の対象となっており、宣伝と分からないような広告を事業者が依頼すると法律違反になります。

出典:令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。 | 消費者庁

ビジネスでマッチポンプを行う危険性

空気の悪い職場

(出典) pixta.jp

ビジネスでは、マッチポンプを行うと高いリスクがあります。なぜ問題があるのか、理由を見ていきましょう。できる限り、仕事では行わない方が無難です。

企業の信頼が失われる

マッチポンプは何らかの問題を起こす、または起きたように見せかけるため、詐欺的な印象があります。たとえ法律に違反していないとしても、印象は良くありません。

マッチポンプに気付かれると、顧客からの信頼を失います。企業の信頼を維持するためにも、問題を起こして利益を得るような手法は避けた方がよいでしょう。

しかし、広告・宣伝においては、商品を魅力的に見せるために誇張のような表現が入ってしまうケースもあります。演出の全てが悪いわけではなく、詐欺に見えるような手法や悪質な販売方法を避けることが大切です。

法令違反になってしまうケースも

わざと問題を起こす行為は、法律違反にもつながります。例えば、わざと何かを壊す行為は器物損壊罪の恐れがあります。相手があれば、損害賠償請求をされる可能性もあるでしょう。

顧客をだますような行為をすれば、詐欺罪で訴えられるかもしれません。特に、うその情報を話して契約を迫るような行為は、悪質と見なされます。

また、問題を解決する代わりに金品を脅し取るような発言があれば、脅迫罪に該当するでしょう。安易に考えず、誠実にビジネスを進めることが大切です。

ビジネスシーンでのマッチポンプは控えて

禁止のイメージ

(出典) pixta.jp

マッチポンプは、自分で火をつけて、自分で消火するような行為を表す言葉です。過去に政界で起きた事件や、関与した人物を指す言葉としても認知され、自作自演の不正を指す意味として使われてきた経緯もあります。

ビジネスシーンでは、詐欺に近い悪質な商法が「マッチポンプ商法」と呼ばれており、営業の方法には注意が必要です。自らトラブルを起こし、それを解決できる商品・サービスを売りつけるような行為は、法令違反につながる可能性があります。

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