組織における立場や仕事内容、責任の範囲などを表す「役職」は、企業によって名称が異なる場合もありますが、組織運営には欠かせない機能です。企業の役職にはどのようなものがあるか、整理して覚えておきましょう。公務員に使われる役職も解説します。
そもそも役職とは?
「役職」とは、組織において特定の役割を指すもので、組織運営には欠かせない機能です。さらに、外部から社員の立場を認識するにも必要なので、ほとんどの企業がさまざまな役職を定めています。
まずは、役職の定義や必要性について、基本的なところを整理しておきましょう。
組織内における役割・職務を示すもの
主に企業をはじめとした組織内で、特定の社員の役割や職務を表すものが役職であり、いわゆる肩書と同じ意味で使われるケースも多くあります。例えば、課長や部長などは、多くの企業が管理者の立場を示す役職として設けています。
たとえ同じ役職名であっても、企業によって具体的な仕事内容や権限が異なる場合も多く、特定の企業しか設けていない役職も少なくありません。
役職の必要性について
組織に役職が必要な理由としては、まず誰がどのような立場で仕事をするのか、明確にするためです。その人が持つ役割や責任を端的に示すことで、組織内で仕事内容の重複を避け、現場が混乱せずに済むようになります。
また、役職ごとに権限を明確に割り当てれば、迅速な意思決定ができるようになり、多くの社員が業務を遂行しやすくなる点も挙げられます。
組織全体を統制しやすくなり、社員同士が自らの役割を認識した上で、その立場に応じたコミュニケーションが取れるようになるでしょう。
課長や部長といった役職を持てれば、社員に責任感を持たせられるのに加えて、仕事へのモチベーションアップも期待できます。
一般企業で使われる主な役職【実務】
一般企業で使われる、代表的な役職を押さえておきましょう。まずは、現場で実務を担う重要な役職から紹介していきます。
主任
主任とは現場のまとめ役を担う社員を指すことが多く、管理職としての役職ではなく、プレーヤー側の役職と位置付けられるのが一般的です。
一定以上の経験・スキルを有する一般社員が、主任に抜てきされるケースが多く、チーフや単にリーダーなどと呼ばれることもあります。
管理職に対して、チームの進捗・問題点などを適宜報告する役割を持っており、管理職からの指示をチームメンバーに伝えるのも仕事です。
主任は、多くの企業において管理職ではありませんが、管理職に次ぐ役職と考えられており、管理職の登竜門と位置付けている企業も少なくありません。
係長・課長
係長や課長は、多くの企業で一般的に設けられている役職です。どのような立場の社員か、よく知っている人も多いでしょう。
係長は、組織構造における最小単位である「係」を管理する社員で、中間管理職に当たります。現場レベルでの業務を取りまとめるのが、主な役割です。
一方、課長は複数の係が集まってできる「課」の長です。複数の係から構成される部門を統括し、全体の運営を管理します。部門全体の方針を示し、目標の達成に向けた計画を立てるのも役割です。
課長を中間管理職と管理職のどちらに位置付けるかは、企業の組織構造や方針によって異なります。ただし、一般的には課長も中間管理職と見なされるケースが多いでしょう。
一般企業で使われる主な役職【管理】
一般企業において、管理職としての役割を与えられているのは、以下のように次長や部長などです。さらに事業部制の組織の場合は、各事業部のトップとして本部長を据える企業が多くあります。それぞれ見ていきましょう。
次長・部長
次長とは、部長と課長の間のポジションで、部長の補佐的な働きをする役職です。部長の右腕として部門運営をサポートし、部長が不在の際には、代理として部門全体を統括します。
とりわけ社員数の多い大企業で設けられる傾向にあり、部門の目標達成に向けた施策の立案と実行を担います。
部長とは、部門・部署における責任者の立場であり、多くの企業において管理職の代表格です。担当する部門全体を統括するのが役割で、経営戦略に基づいて当該部門の長期的な戦略を策定し、実行に移します。
さらに人材や予算など、部門の運営に必要なリソースを管理し、適切に配分するのも、長である部長の重要な仕事です。経営者をはじめとしたマネジメント層の方針を受け、運営に反映させる必要があるため、経営側の視点で働く必要があります。
本部長
本社の下に独立した事業部を設置している組織の場合、それぞれの事業部のトップは「本部長」と呼ばれる場合があります。各事業部のトップとして本部長の役職が設置され、その下に各部門をまとめる部長がいる組織構造です。
それぞれの事業部に所属する部長にとって、本部長は上席の役職となり、各部長を取りまとめる役割を担います。本部長は、各事業部の方針・組織目標を定めるとともに、人材・予算・設備などリソースの最適化を図ります。
ただし、本部長の位置付けは企業によって異なる場合も多いので、詳しく知りたい場合は、対象企業の組織図を確認しなければいけません。
一般企業で使われる主な役職【経営】
続いて、マネジメント層として、組織全体を統括する立場の役職を紹介します。経営者である社長や代表取締役のほか、常務取締役・副社長などの立場が有名な役職です。
常務・専務取締役
常務取締役・専務取締役は、いずれも大企業を中心に設けられている役職で、企業の代表である社長(代表取締役)の補佐役として知られています。
いずれの役職も設置している企業は多くありますが、常務・専務のいずれかのみ設けている企業もあり、単に取締役と呼称されるケースも珍しくありません。
常務取締役とは社長の補佐をしつつ、企業の日常業務を統括・管理する役割を担います。トップである社長の意思を、それぞれの部門・部署に伝えるとともに、各部門の運営状況をモニタリングし、必要な改善策を実行する役割です。
一方、専務取締役は社長・副社長の補佐が主な役割で、トップに近いポジションで組織全体を統括します。
常務取締役との位置付けは、企業によって異なる場合も多くありますが、日常業務の管理も担う常務に対して、専務はより経営者寄りの役割をこなすのが一般的です。
取締役について
取締役は、事業運営において中心的な役割を果たす役職であり、企業の責任者として業務の執行と意思決定を担います。
会社法において、株式会社には1人または2人以上の取締役を置かなければならないと規定されており、取締役会を設置している企業は3人以上の取締役が必要です。
取締役は、法律で定められた業務執行に関する意思決定権を有する者であり、複数の取締役がいる場合は、その過半数により会社の方針が決定されます。
なお、社内の利害関係にとらわれずに事業運営を遂行するため、社外から取締役を招く企業も少なくありません(社外取締役)。
出典:会社法 第三百四十八条(業務の執行)|e-Gov法令検索
出典:会社法 第三百四十九条(株式会社の代表)|e-Gov法令検索
副社長
副社長はその名の通り、社長に次ぐポジションとして、事業全体を統括する立場です。社長だけでは全体の管理が難しい大規模な企業において、代表取締役である社長とほぼ同じ権限を有する役職として設けられます。
日本企業の場合は、副社長を置いていない組織の方が多く、大企業でも社長の下に数名の取締役がいるケースの方が一般的です。法律で設置が義務付けられているわけではなく、具体的な権限も企業によって異なります。
社長・代表取締役
社長や代表取締役は全社員の上に立ち、経営の全てに責任を負う立場です。「社長」という呼称は、商習慣上における事業の責任者として、多くの人が一般的に使用しています。一方、代表取締役は、会社法上で定められた最高責任者の役職です。
いずれの呼び方をするにせよ、企業のトップとして、業務に関する一切の裁判上・裁判外の行為をする権限を有しており、業務執行に関する全ての意思決定とその責任を担います。
会社法において、代表取締役は複数名の選定が可能とされており、取締役が1名しかいない場合はその者が代表取締役と見なされます。
出典:会社法 第三百四十九条4項(株式会社の代表)|e-Gov法令検索
公務員に使われる役職
次に、公務員に使われる代表的な役職を簡単に紹介します。地方公務員と国家公務員の場合のそれぞれにおいて、代表的な役職を確認しておきましょう。
地方公務員
地方公務員の場合、次のように民間企業と同じような役職が多くあります。仕事内容は公務員独自のものもありますが、与えられている権限は一般的な企業とあまり変わりません。
- 部長
- 次長
- 統括課長
- 課長
- 課長補佐
- 係長
- 係員
まずは部門を統括する管理職として部長がおり、その下に次長・統括課長などがいる組織体制です。複数の課を取りまとめ、各課の管理者である課長に指示を出す統括課長や、課長の下で仕事をサポートする課長補佐などの役職もあります。
国家公務員
国家公務員の場合は、中央官庁の各府省庁における官僚のトップである事務次官をはじめ、次のような役職があります。
- 事務次官
- 外局長官
- 官房長
- 局長
- 部長
- 局次長
- 課長
- 課長補佐
- 室長
- 専門官
- 係長
- 主任
管理職ではない一般職員は係員と呼ばれ、主任・係長・専門官といったように、昇進する人事システムです。
昇進には明確な基準が設けられている場合も多く、慣習的に年齢のほか、それまでの仕事内容・役割などによってキャリアアップする場合もあります。
外資系企業で使われる主な役職
外資系企業の場合は、日本の企業とは異なる役職が設けられているケースも少なくありません。ここでは、多くの外資系企業で目にする機会の多い役職について、簡単に紹介しておきます。
Leader・Managerなど【実務】
海外企業や外資系の日本企業などの場合は、次の役職が設けられているので、簡単に押さえておきましょう。
- Leader(リーダー):現場のチームをまとめる社員、係長や主任に当たる
- Manager(マネージャー):課長や部長クラスの社員で、特定の部門・部署を統括する
- Director(ディレクター):部長と同じような立場を示す場合もあれば、取締役クラスの社員を指す場合もある
- General Manager(ゼネラルマネージャー):特定の事業部署を統括する立場の者や、工場長などの立場を指す
- Vice President(バイスプレジデント):事業部長や事業の統括本部長などに当たる役職を指す
ただし、企業によって位置付けが異なる場合も多く、国によってもDirectorやGeneral Managerの立場は変わってきます。
COO・CEOなど【経営】
外資系企業では、マネジメント層の呼び方も日本の企業とは異なるので、代表的な役職を知っておきましょう。
- Senior Vice President(上級副社長):社長を補佐する立場で、副社長のような立場。日本では事業本部長の位置付けが多い
- CFO(最高財務責任者):財務部門の統括者
- COO(最高執行責任者):財務以外の部門の統括者
- CEO(最高経営責任者):経営の最高責任者
- President(社長):社長を指す言葉だが、アメリカ以外ではあまり使用されない
- Chairman(取締役会長):日本の「会長職」に当たる立場
CFOやCEOなどは、日本でも一般的に知られている言葉であり、日本の企業でも正式な役職として設定されているケースが珍しくありません。
なお、日本では社長をCEOと呼ぶ場合もありますが、欧米ではCEOとPresident(社長)の立場は、明確に区別されているケースが多いので注意しましょう。
役職を正しく把握し知識を深めていこう
役職は、企業が独自に設定している場合もありますが、係長・課長・部長などの立場は、業界・業種にかかわらず多くの企業に共通しているものです。この機会に主な役割や仕事内容、与えられている権限などを整理して覚えておきましょう。
また、外資系企業の場合は、日本でもManager(マネージャー)やDirector(ディレクター)などの役職で呼ばれることが多くあります。
これから外資系企業に転職を目指す人は、今のうちから呼び方に慣れておくとよいでしょう。目指すべきキャリアを考える上でも、役職を正しく理解することが重要です。