公務員の病気休暇の取り扱いは?会社員との違いもチェック

公務員には法律や人事院規則で病気休暇が定められています。病気休暇はどのようなときに取得できるのでしょうか?取得するときの注意点や、病気休職の決まりについても見ていきましょう。会社員との違いも解説します。

病気休暇とは

体調不良

(出典) pixta.jp

病気休暇とは、けがや病気のときに使える特別休暇のことです。導入は義務ではないため、病気休暇の有無は勤務先によって異なります。まずは、公務員の病気休暇がどのような休暇なのかを見ていきましょう。

療養目的の休暇

けがや病気で療養する目的で休みが必要なときに使えるのが病気休暇です。法律で定められている年次有給休暇とは別に設けられます。

病気休暇の導入は法律で定められているわけではありません。制度を設けている企業もあれば、設けていない企業もあります。また導入している場合でも、制度の詳細は企業ごとに異なるため、詳細は勤務先に確認が必要です。

例えば、「1年間に7日間の病気休暇を取得可能」「取得日数の制限はなく10日まで有給扱いで取得可能」「通院に使いやすいよう1時間単位で取得可能」といった制度を設けている企業があります。

民間企業の導入割合

厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査 結果の概況」によると、病気休暇を導入している企業は21.9%です。規模の大きな企業ほど導入している割合が高く、従業員1,000人以上の企業で37.9%が病気休暇を設けているのに対し、従業員30~99人の企業では18.4%に留まっていることが分かります。

導入している企業は全体で見ると少数派です。勤務先に病気休暇の制度が整備されているかどうかは、就業規則でチェックしましょう。

出典:令和5年就労条件総合調査 結果の概況 PDF5枚目|厚生労働省

公務員の病気休暇

発熱のイメージ

(出典) pixta.jp

民間企業では病気休暇の導入が義務化されていません。一方、公務員の病気休暇は法律や人事院規則で定められており、その内容にのっとって取得可能です。公務員の病気休暇の概要や、取得事由・特定病気休暇について見ていきましょう。

法律や人事院規則で定められている

病気休暇は民間企業では福利厚生の一種です。制度の導入は各企業が判断するものですが、先にも述べた厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査 結果の概況」によれば、病気休暇がない企業は約80.0%に上ります。

それに対し、国家公務員の病気休暇は「一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律」と「人事院規則」で明確に定められているのが特徴です。「一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律」の第18条の条文をチェックしましょう。

病気休暇は、職員が負傷又は疾病のため療養する必要があり、その勤務しないことがやむを得ないと認められる場合における休暇とする。

地方公務員の病気休暇も、法律や人事院規則に準ずる形で条例に定められています。公務員であれば、けがや病気による療養が必要なときには、病気休暇を活用して休暇を取得することが可能です。

出典:一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律 第18条|e-Gov法令検索

病気休暇の取得事由

病気休暇を取得できるのは、勤務しないことがやむを得ない場合に限ります。例えば、けがや病気から回復するために療養が必要な場合です。一定期間休まなければ回復しない場合には、病気休暇を使って休めます。

けがや病気がなく療養する必要がないにもかかわらず病気休暇を使うと、懲戒処分の対象となり、減給もしくは戒告の処分が下されます。

特定病気休暇との違い

人事院規則では、病気休暇の他に特定病気休暇についても定められています。特定病気休暇とは、以下の理由以外で病気休暇を取得することです。

  • 生理日の就業が著しく困難な場合
  • 公務もしくは通勤によるけがや病気
  • 健康診断や面接指導を行った医師が、健康に異常があるか、異常を来す恐れがあるとした職員に対して、事後措置(休暇・休職・職務の変更など)を行う場合

例えば、「インフルエンザにかかり5日間療養する必要がある」「休日に参加したフットサルでアキレス腱を断裂し1週間療養する必要がある」といった場合には特定病気休暇を利用します。

出典:人事院規則15-14(職員の勤務時間、休日及び休暇) 第21条 第1項| e-Gov法令検索

出典:人事院規則10-4(職員の保健及び安全保持) 第23条 第1項| e-Gov法令検索

出典:人事院規則10-4(職員の保健及び安全保持) 第24条 第1項| e-Gov法令検索

公務員が病気休暇を取得するときの注意点

診断書

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公務員が病気休暇を取得するときには、把握しておくべき注意点があります。スムーズに病気休暇を取得するために、休暇中の給与や休暇のリセット期間、診断書の提出の有無について、事前に把握しておきましょう。

病気休暇中の給与

公務員の病気休暇は最大で90日間取得できます。この間の給与は全額支給される決まりです。

一方、民間企業では、病気休暇を導入していても、給与が支給されるとは限りません。ノーワーク・ノーペイの原則に基づくと、企業に病気休暇中の給与を支払う義務はないため、支給する企業もあればしない企業もあります。

最大90日間分の給与を全額支給する公務員の病気休暇は、民間企業と比べると保障が手厚い制度といえるでしょう。

特定病気休暇がリセットされる期間

特定病気休暇で8日間以上休んだ場合、勤務日数が20日間を超えると、休暇日数がリセットされます。20日間を超える前に再び特定病気休暇を取得すると、直前の特定病気休暇と連続した休暇としてカウントされる仕組みです。

例えば、10日間の特定病気休暇を取った後、勤務時間が15日間のタイミングで再び特定病気休暇を取得する場合、前回の10日間の続きから休暇日数を数えることとなります。そのため、2回目の特定病気休暇を取るときには、タイミングに注意が必要です。

ただし特定病気休暇の取得事由が、今回と前回の休暇で明らかに違う場合には、連続した休暇とはカウントしません。前回の特定病気休暇で病気を理由に最大90日間休んだとしても、次の特定病気休暇が事故によるけがが理由であれば、その翌日から再び最大90日間の特定病気休暇を取得できます。

出典:人事院規則15-14(職員の勤務時間、休日及び休暇) 第21条|e-Gov法令検索

特定病気休暇を取るときの診断書の有無

公務員が特定病気休暇を取得するとき、以下に当てはまるようであれば、病院が発行した診断書の提出が必要です。

  • 要勤務日が4日以上ある連続した8日間以上の期間にわたり、特定病気休暇を取得するとき
  • 特定病気休暇の初日より1カ月前の期間に通算5日以上の特定病気休暇を取得しているとき

特定病気休暇が7日間以下の場合や、特定病気休暇の初日より1カ月前の期間に取得した特定病気休暇が4日以下であれば、診断書の提出は必要ありません。

出典:職員の勤務時間、休日及び休暇の運用について 第17 休暇の承認関係|人事院

公務員の病気休職もチェック

休職願

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病気休暇や特定病気休暇は最大90日間の取得が可能です。ただしこの期間が過ぎても療養が十分でない場合もあるでしょう。このときに取得できるのが病気休職です。病気休職の期間について解説します。

最長3年間の休職が可能

国家公務員法第79条に基づき、公務員は以下のいずれかの場合に、本人の意思にかかわらず休職させられます。

心身の故障のため、長期の休養を要する場合

刑事事件に関し起訴された場合

本来、休職の制度は療養目的ではなく、免職までの猶予期間といった性質を持つものです。ただし公務員が自ら休職を願い出ることは、最高裁判例で「無効ではない」とされているため、療養のために用いられています。

休職できるのは3年を超えない期間です。最大90日間の病気休暇や特定病気休暇で療養が不十分なときには、病気休職へ移ります。

出典:国家公務員法 第79条|e-Gov法令検索

出典:裁判例結果詳細|裁判所

3年を超えるとどうなる?

十分な療養で回復した後、公務員として復帰できるのは、休職期間が3年に達していない場合です。

休職期間の上限である3年を超えると復帰が難しくなります。医師2名の診断で、公務員として働くのが難しいと判断されると免職処分です。

病気休暇・特定病気休暇の期間と合わせると、最大3年カ月は公務員としての地位を確保しながら療養できます。

出典:地方公務員法 第28条 第1項 第2号| e-Gov法令検索

出典:国家公務員法 第78条 第2号| e-Gov法令検索

出典:人事院規則11-4(職員の身分保障) 第7条 第3項| e-Gov法令検索

出典:人事院規則11-4(職員の身分保障) 第5条 第1項| e-Gov法令検索

公務員の病気休暇を把握しよう

体調不良

(出典) pixta.jp

病気休暇は公務員の場合、法律や人事院規則で定められています。最大90日間取得できる休暇で、この間の給与は全額支給される決まりです。病気休暇の導入や制度内容が各企業に任されている民間企業と比べて、充実した待遇といえます。

あらかじめ病気休暇について把握し、スムーズに制度を活用しましょう。