「御社」と「貴社」の違いとは?使い方や例文、注意点を紹介

就職活動やビジネスシーンでよく使う『御社』と『貴社』という言葉は、使う場面が異なります。違いや正しい使い方を例文とともに紹介します。使う際の注意点や間違えたらどうなるのかについても確認し、就職活動で自信を持って使い分けられるようになりましょう。

「御社」と「貴社」の意味や違いとは?

スーツ姿の2人の女性

(出典) photo-ac.com

言葉自体は知っていても、どのような意味や違いがあるのか説明できない人もいるのではないでしょうか。まずは、それぞれの意味や違いを見ていきましょう。

相手の会社に対して使う尊敬語

『御社(おんしゃ)』と『貴社(きしゃ)』は、どちらも『相手の会社』という意味の尊敬語です。尊敬語は自分がへりくだるのではなく、相手を立てることで敬意を表す表現方法です。敬意を示す『御』や『貴』を付けて、相手企業が自社よりも格上という認識で使う敬称になります。

ビジネスシーンで相手側の企業に対して『あなたの会社』や『そちらの会社』『おたくの会社』と呼ぶと、自分よりも下に見ている印象を与え、失礼になるため注意しましょう。

話し言葉と書き言葉

2つの言葉の大きな違いは、『御社』が話し言葉で、『貴社』が書き言葉である点です。意味は同じですが使われる場面が違うので注意しましょう。

相手を敬う表現として『貴殿』や『貴女』が使われてきたのと同様に、もともとは『貴社』のみが使われていました。しかし、『記者』『汽車』『帰社』など同音異義語があり、会話の中で用いると紛らわしいことから、話し言葉では『御社』が使われるようになったのです。

文書では漢字が用いられ他の言葉と混同することがないため、メールや書類には『貴社』が使われています。ただし、相手企業との関係性によっては、文書でも『御社』を用いるケースもあるようです。

「御社」と「貴社」の使い方と例文

笑顔で外で電話をする男性

(出典) photo-ac.com

就職活動で、それぞれの言葉を正しく使えるように使い方を紹介します。使い方が分かる例文も紹介するので、状況に合わせてアレンジして使ってみましょう。

「御社」は主に面接や電話で使う

就職活動で『御社』を使う具体的な場面は、主に面接や電話です。相手企業について言及する場面で『御社』を使いましょう。例えば、面接時に志望動機を説明したり、会社の説明会で質問したりするときです。

相手と直接対面していなくても、言葉を交わすときは『御社』を用います。例えば、電話で企業に問い合わせたり、テレビ電話で面接を受けたりするときです。

『御社』は就職活動だけでなく、就職してからも取引先や相手企業に使える話し言葉なので、覚えておくと役立つでしょう。

「御社」の例文

就職活動で使える『御社』を使った例文を紹介します。

  • 御社では、働き方改革を推し進めていると聞いております。どのような制度を導入しているのでしょうか
  • 御社の年功序列ではなく、年齢に関係なく実力次第で活躍できる社風に感銘を受け、応募いたしました
  • 長年の海外生活で培った語学力や見識を生かし、御社に貢献したいと考えております
  • (電話)御社から数日中に面接日の連絡をメールでいただけるということでしたが、まだ届いていないようですので、お手数ですがご確認いただけますでしょうか

「貴社」は主に履歴書やメールで使う

就職活動で『貴社』を使う主な場面は、履歴書やメールなどの文書です。例えば、履歴書やエントリーシートといった応募書類には、志望動機や自己PRを書きます。そのような場面で相手企業に言及するときは『貴社』を使いましょう。

メールも書き言葉なので『貴社』を用います。面接の日程調整や面接後のお礼をメールで送る場合も『貴社』を使いましょう。

また、応募書類を郵送するときは、送付状を付けて送ることが珍しくありません。送付状に『時候のあいさつ』を入れる場合も『貴社』が使われます。

「貴社」の例文

『貴社』を使った例文は以下の通りです。

  • 世界に先駆ける貴社の最先端の技術に非常に強い関心を抱いております
  • 会社説明会でのプレゼンテーションに心を動かされ、貴社で働きたいという思いが強くなりました
  • 貴社へ面接に伺える日をお知らせいたします
  • (送付状)貴社ますますご清栄のことと心からお慶び申し上げます

「御社」や「貴社」を使う際の注意点

人差し指を上に向けるスーツ姿の男性

(出典) photo-ac.com

その他には、次のようなことを知っておき、場面に応じて気をつけると良いでしょう。

二重敬語に気を付ける

履歴書に『貴社殿』と書いたり、面接時に『御社様』と言ったりしないように気を付けましょう。一見、より丁寧な表現だと思われがちですが、『様』や『殿』を付けるのは誤りです。相手を敬う『御』や『貴』がすでに付いていて『二重敬語』になるためです。

相手に敬意を表そうという姿勢は大切ですが、誤った使い方をしてしまうと「社会人としてのマナーがない」「教養がない」とマイナスの印象を与えてしまうこともあるため、注意しましょう。

一般企業以外は別の呼び方がある

一般企業以外は、別の敬称があるため、きちんと把握しておくことが大切です。例えば、次のような呼び方があります。

  • 銀行:御行(おんこう)・貴行(きこう)
  • 病院:御院(おんいん)・貴院(きいん)
  • 店舗:御店(おんてん)・貴店(きてん)
  • 学校:御校(おんこう)・貴校(きこう)
  • 省庁:御省(おんしょう)・貴省(きしょう)、御庁(おんちょう)・貴庁(きちょう)


話し言葉には『御』、書き言葉には『貴』を付ける点は同じです。ほかにも組合・協会・財団法人などにも別の敬称があります。間違えてしまうと「常識がない」と思われてしまう可能性があるので、応募先に合わせて正しい敬称を確認しておくことが大切です。

「弊社」や「当社」と混同しない

混同されがちな言葉に『弊社(へいしゃ)』と『当社(とうしゃ)』があります。どちらも自社を指す言葉で『御社』『貴社』とは全く意味が異なるので注意しましょう。

『弊社』はへりくだった表現で社外の人に使うのが一般的です。『当社』は主に社内の人同士など対等な関係の場合に使います。ただし『当社』はプレゼンテーションなど、社外の不特定多数の人に対して使われることもあります。

就職活動で『弊社』や『当社』を使うと、会社を代表しているような印象を与えてしまいます。『現在の職場・会社・勤め先』や『現職』といった表現を用いるようにしましょう。すでに退職している会社に対しては、『前職』を使うのが一般的です。

使い方を間違えたらどうなる?

面接を受けるスーツ姿の女性

(出典) photo-ac.com

『御社』や『貴社』は日常会話で使う言葉ではないため、使い慣れていないと間違えてしまうこともあるでしょう。もし使い方を間違えてしまったときは、どうなるのでしょうか?

マイナスの印象を与えることも

『御社』と『貴社』の使い方を間違えたからといって、必ずしも不採用になるというわけではありません。緊張する面接では言い間違えてしまうことはあるものなので、それほど重視していない面接官もいます。それよりも全体を通しての言葉遣いや、態度といった礼儀が重視される傾向があります。

ただし履歴書やエントリーシートの全てが『御社』となっていたり、誤字脱字が多かったりすると、「一般常識がない」などマイナスの印象を与えてしまうこともあるでしょう。

誤字脱字は見直しをすれば防げることなので、「意欲に欠ける」と思われ不採用につながることもあるかもしれません。

応募書類は必ず見直しをして、誤字脱字がないか確認するように心掛けましょう。

人柄や意欲を伝えることが大事

ipadを持つ女性

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言葉の使い分けや敬語を正しく使うことは大切ですが、気を取られ過ぎてしまうと思うような結果につながらないこともあります。

面接で大切なことは、人柄や意欲をしっかりアピールし伝えることです。そのためには、コミュニケーションをしっかり取ることが大切です。発言内容や分かりやすさ、説得力など相手にきちんと思いを伝えることを意識しましょう。

言葉遣いを気にし過ぎて委縮してしまい、あなたの魅力が伝わらない面接にならないようにすることが大切です。

使い分けを意識し過ぎると、本領が発揮できないこともあります。きちんとコミュニケーションを取り、あなたの魅力や強みをアピールすることが大切です。