昇給とはどんな制度?種類による違いを把握して転職を成功させよう

転職先で長く働きたい場合、昇給制度がある企業を選びたいと考える人も多いでしょう。企業によって昇給制度には違いがあるため、種類や実施率、就職先の見極め方法などを知ることが大切です。昇給制度の概要や、転職活動への生かし方について解説します。

昇給とは?

計算機と給与明細とお札

(出典) photo-ac.com

昇給とは、どのようなことを指す言葉なのでしょうか?昇給の具体的な意味や、ベースアップとの違いについて解説します。

給与・賃金の増額のこと

昇給とは、個々の従業員の給与・賃金が増えることです。正社員の昇給は基本給が増え、アルバイト・パートなら時給がアップします。

ボーナス・手当が増額となった場合も給与・賃金は増えますが、昇給とはみなされません。昇給は、あくまでも給与・賃金のベースとなる部分が増えることです。

昇給は大きく分けると6種類あり、給与・賃金が増える条件やタイミングなどがそれぞれ異なります。どの昇給制度を採用するのかは、企業が独自に決めることが可能です。

ベースアップとの違いは?

昇給と混同しやすい言葉に、ベースアップがあります。昇給が従業員ごとの増額であるのに対し、ベースアップは全従業員の給与・賃金を底上げすることです。

例えば、1%のベースアップが採用された場合、個々の能力・勤続年数に関係なく、従業員全員の基本給が1%アップします。

ベースアップは、企業と労働組合との交渉により決まるのが一般的です。一度ベースアップを採用するとなかなか下げられないため、企業にとっては大きな負担となります。

高度経済成長期には、多くの企業が毎年ベースアップを実施していました。しかし、バブル崩壊後は景気が低迷しているため、ほとんどの企業がベースアップに消極的です。

昇給制度の種類

給与明細

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昇給の種類は大きく6つに分けられており、企業ごとに採用している制度が異なります。各制度の特徴を見てみましょう。

大きく分けて6つの種類がある

日本の企業では、以下に挙げる6つの昇給制度のうち、いずれかを採用しているのが一般的です。制度ごとに、昇給の条件やタイミングが異なる点を確認しましょう。

  • 定期昇給:年齢・業績に応じて毎年一定の時期に行われる
  • 自動昇給:能力・業績に関係なく勤続年数・年齢に応じて自動的に給与が増える
  • 臨時昇給:会社の業績が好調なときなどに臨時で行われる
  • 考課昇給:業績・勤務態度の評価に応じて昇給率が決まる
  • 普通昇給:技能・業務遂行能力がアップしたときに採用される
  • 特別昇給:特別な実績・功労が生じた際に行われる

昇給制度を導入している企業の大半は、『定期昇給制度』を採用しています。自分の会社がどの制度を採用しているのかは、就業規則で確認できるでしょう。

昇給がない会社もある?

給料袋とお札

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企業によっては、昇給がないケースもあります。昇給がなくても、法律違反にはならないことを知っておきましょう。

昇給なしの会社も珍しくない

昇給制度は、全ての企業で導入されているわけではありません。実際には、昇給がない会社も存在します。

厚生労働省が公表している『令和3年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況』を見ると、2021年に実施した調査における対象企業のうち、少なくとも『約1割』は2021年中に賃金の改定を実施していないことが分かります。

また、昇給制度を導入している企業であっても、必ず昇給を実施するとは限りません。

例えば、『昇給年1回』としている場合は、『年1回の昇給が行われる可能性がある』という意味です。年1回の昇給があるか、全く昇給がないかのどちらかになります。

参考:令和3年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況 第1表 | 厚生労働省

違法か否かは就業規則による

企業に昇給を実施させる法律上の義務はないため、昇給がないケースでも違反になるわけではありません。

ただし企業には、就業規則や労働契約に、昇給の有無・時期を記載する義務があります。「昇給なし」と書かれていても違法にはなりませんが、昇給について何も記載がない場合は違法になる可能性があるのです。

なお、産休・育休で休んだことを理由に昇給しない場合は、違法とみなされることがあります。『産休・育休により休暇を取得した労働者を不利益に扱ってはならない』と、法律で定められているためです。

転職時に昇給を確認する方法

パソコンを操作しメモを取る男性

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志望企業が昇給制度を導入しているかどうかは、求人票や面接で確認可能です。それぞれの具体的な確認方法を紹介します。

求人票を確認

企業が求人を行う際は、自社の雇用条件を求職者に明示する必要があります。転職活動中に企業の昇給制度を確認したい場合は、求人票をチェックしてみましょう。

勤務時間・業務内容などが記載されている『雇用条件欄』を見れば、昇給についても記載されています。求人票の昇給に関して、よくある記載例は以下の通りです

  • 昇給/年1回(4月)
  • 昇給/年2~4回
  • 昇給/随時
  • 給与改定年1回(7月)

企業によっては、1回の昇給により金額がいくら上昇したのか、過去の実績を記載しているケースもあります。

面接時に確認

転職時に昇給を確認したい場合は、面接時に聞くのも1つの方法です。面接の際に昇給について質問すること自体は、特に問題はないでしょう。

ただし、待遇に関することばかり質問すると、面接官に与える印象を悪くしてしまいかねません。質問するタイミングや聞き方に、工夫を凝らす必要があります。

昇給について質問するベストなタイミングは、面接終盤に逆質問を求められたときです。逆質問では、応募者が自由に質問できるため、昇給があるかどうか聞いてみましょう。

ストレートに聞くのではなく、入社や仕事への意欲を示しつつ、「成果に対しての評価はどのようにされるのでしょうか?」など評価制度と絡めて聞くのがおすすめです。

転職後に昇給しやすい人の特徴

デスクワークをする人

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転職後に昇給しやすい人には、共通の特徴があります。どのような人が昇給しやすいのか、見ていきましょう。

自分の強みを理解している

転職後に昇給しやすい人は、自分の強みをしっかりと理解しています。自分のスキル・実績を生かせる企業を探し、実際に転職して存分に力を発揮しているのです。

昇給制度がある企業に転職しても、実際に給与が上がるかどうかは自分の努力・成果によります。転職先できちんと結果を出さなければ、いつまでも給与は上がらないでしょう。

自分の強みを理解し、強みを生かせる企業に転職するためには、自己分析・企業研究が不可欠です。転職活動中にしっかりとリサーチを行い、今の実力を最大限に発揮できそうな企業を選びましょう。

必要なスキルを積極的に身に付けている

多くの企業で必要とされるスキルが身に付いている人も、転職後に昇給しやすいでしょう。例えば、希少性の高いスキルが備わっている人は、企業から重宝されやすくなります。

優れたコンサルティング能力を持つ営業経験者や、AI・機械学習の領域に詳しいエンジニアは、スキルの希少性が高いため転職後の昇給を期待できるでしょう。

また、新規事業の立ち上げ経験がある人や、ビジネスレベルの英語力がある人も、スキルの希少性が高いと判断されます。転職活動中に余裕があるなら、希少なスキルを積極的に習得しておくのがおすすめです。

給与水準が高い・自分に合った企業に転職した

給与水準が高い企業・自分に合った企業に転職した人は、年収が上がりやすくなります。前職での待遇があまりよくなかったからこそ、転職で年収が上がるといったケースです。

例えば、前職が年功序列だった場合、能力主義の職場に転職すれば年収アップを期待できるでしょう。実力・成果が、給与に反映されやすくなるためです。

自分に合った企業を探すのに、豊富なスキルを持っている必要はありません。1つのスキルをピンポイントに発揮できる企業に転職できれば、成果を出しやすくなるため昇給が期待できます。

もし転職先で昇給しにくい場合は?

打ち合わせをする社員たち

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転職先で思うように年収が上がらない場合は、以下に挙げる方法を実践するのがおすすめです。昇給しにくい職場で、年収をアップさせるコツを紹介します。

スキル・資格を磨く

転職後に昇給しにくい理由の1つに、転職先に適したスキルを持っていないことが挙げられます。スキルがないからといって、安易に再転職を考えないようにしましょう。

スキルが足りないと感じているなら、スキルを磨いたり資格を取得したりするのがおすすめです。企業によっては、特定の資格保有者に資格手当が出るケースもあります。

実際に職場で働いてみれば、どのようなスキル・資格が役立つのかが分かるでしょう。せっかく転職できたのなら、転職先で結果が出るように頑張ってみることが重要です。

コミュニケーションを大切にする

社内でのコミュニケーションを重視することも、転職先で年収を上げるために大切なポイントです。円滑なコミュニケーションを取れる能力は、立派なスキルであることを理解しましょう。

コミュニケーション能力を発揮して、周囲と良好な関係を構築できれば、成果を理解してもらいやすくなるため、自分の評価が上がりやすくなります。

また、直属の上司だけでなく、他部署の上司からの評価を得ておくのもおすすめです。自分のことを評価してくれる上司が多いほど、昇給の査定時に有利になるでしょう。

上司に直接交渉する方法も

自分なりに努力をしているのにもかかわらず年収が上がらないなら、上司に直接交渉する方法もあります。交渉する際は、上司を納得させられる材料を用意しましょう。

できるだけ客観性の高い資料を用意できれば、説得力が高まります。成果を数値で示したり、過去の成果との比較を示したりして、昇給に値する明確な根拠を提示することが大切です。

ただし、転職後間もない時期の昇給交渉は、しない方が無難です。まずは、一定期間業務に取り組み、十分な実績を積んでから交渉に臨みましょう。

働く目的を絞りすぎないよう注意!

資料をチェックする男性

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転職先で長く働き続けるためには、昇給制度を確認しておくことも大切です。昇給制度の有無は、求人票から確認することができますが、具体的に知りたい場合は面接時にうまく聞いてみるのもよいでしょう。

しかし、給与面だけに固執しすぎると、仕事内容によっては長続きしない恐れがあります。転職先を探す際は、働く目的を絞りすぎないように意識することが重要です。

あくまでも総合的に判断し、自分らしい働き方ができそうな企業を選びましょう。