業務委託とは?基本知識を確認して自分に合った働き方を見つけよう

仕事を探していると業務委託という言葉に出合いますが、意外と正しく理解できていないものです。基本的な意味から、雇用契約・派遣契約との違い、業務委託で働くことのメリットとデメリット、正社員との働き方の違いなどを紹介していきます。

業務委託という働き方

業務委託の契約書

(出典) photo-ac.com

業務委託とはどのような働き方のことを指すのでしょうか。通常の勤務形態や派遣契約とは何が違うのかといった点を解説します。

企業から業務を委託される

業務委託とは、企業が他の会社や個人などの外部に業務を委託することです。企業側は自社で対応しきれないタスクを他でやってもらうことができ、委託された側は業務時間や場所の縛りが少ない環境で働けるメリットがあります。

とはいえ仕事に対する成果はもちろん求められるため、成果を達成できなかった場合、事前にお互いが合意した契約書にもとづいて、契約終了やその後の減額などが発生するケースもある点に注意です。

雇用契約との違い

雇用契約は、正社員やパート、アルバイトとして会社と直接労働契約を結ぶことです。従業員は会社側に労働力を提供し、会社側は従業員に給与を支払うことで契約が成立します。

業務委託との違いは、労働基準法・労働契約法といった労働関係の法律が適用されるかどうかです。雇用契約は業務委託と異なり、労働法が適用されるため企業の指示に基づいて動くことが前提となっています。

派遣契約との違い

派遣会社と派遣先の会社の間で結ばれる契約が派遣契約で、自分が働く会社で直接雇われているわけではなく、派遣会社に登録した働き手が他の企業に派遣される、という点が大きな違いといえます。

派遣契約においては、派遣先の企業が、派遣社員に対して業務を指示します。派遣先でのトラブルは、雇用主である派遣会社が解決することが原則です。

業務委託の種類

パソコンに向かって作業をする女性

(出典) photo-ac.com

業務委託には種類があり、契約の形が分かれています。どういった種類の契約があるのかを紹介しましょう。

請負契約

請負契約とは、成果物を完成させることで報酬を受け取れる契約のことです。納品が完了すれば報酬が支払われます。何かの制作を企業から依頼されるなど、納品物がある場合はこの契約方法になることが多いです。

どのくらいの時間作業をしたか、どのような作業の流れで完成させたかは問われません。不備のない成果物を納品することで、契約完了となる仕組みです。もし仮に納品物を完成させられなかった場合は報酬が発生しないのが原則です。

委任契約

契約中に定められた業務を遂行することで、報酬が発生する契約のことです(民法第643条参照)。法律行為に関する業務、法律行為に関係しない準委任契約の2種類があります。

前者は税務顧問や訴訟代理人などが該当し、後者はコンサルティングやシステム開発といった仕事が該当します。

これらは業務を遂行することで、納品物の有無に関わらず、稼働時間・対応件数などによって報酬が発生する仕組みです。

参考:民法 | e-Gov法令検索

業務委託で働くメリット

在宅勤務のイメージ

(出典) photo-ac.com

業務委託の契約で働くと、働き手にとってはどういったメリットがあるのでしょうか。環境面や収入面の観点から解説していきます。

時間や場所を自分で決められる

業務委託の場合は企業と雇用関係にあるわけではなく、あくまで仕事を委託する側とされる側の関係です。そのため、働く時間や場所を自分で自由に選べる点がメリットとなります。

基本的には業務をどう進めるかも働き手の裁量に委ねられるため、自分のペースとやり方で仕事をしたい人には向いているでしょう。

ただし一部の企業では業務委託の形式でありながら、通常の従業員と同じような常駐型の勤務体系になっているところもあります。事前に契約内容をしっかり確認しておきましょう。

得意分野を伸ばせる

仕事の内容を自分で選べるため、自分の得意分野や専門分野に関する仕事を受けやすい点がメリットです。

業務委託ではなく正社員やアルバイト・パートで会社に勤めている場合は、苦手分野にも関わる必要が出てきます。電話対応、事務処理といった雑務も発生するでしょう。

業務委託なら、自分のやりたい仕事に集中できます。得意な仕事を選んで依頼を受けることで、力を存分に発揮できるでしょう。また、得意な仕事のスキルアップが見込め、結果として長所を伸ばせます。

収入を上げることも可能

自分の力を発揮できる仕事が専門的なスキルを必要とするものの場合、報酬が高額な業務委託も多くあります。実績を増やすことで評価が高くなり、さらに仕事の依頼が来るという好循環になれば収入が上がるでしょう。

もし専門的な知識やスキルがなくても、業務委託では自分の裁量で受ける仕事の数を調節できるため、仕事数を増やして収入アップも可能です。

また、副業が認められている会社であれば、業務委託の仕事を受けて月収を上げることもできます。

業務委託で働くデメリット

パソコンで作業をしている手元

(出典) photo-ac.com

反対に業務委託で働くことのデメリットは何でしょうか。仕事との関わり方や労働法、税金の点から解説します。

仕事を自分で見つける必要がある

通常の雇用契約とは異なり、業務委託の場合は何もしないと仕事を振られることはありません。そのため、自分から仕事を探してもらいに行かなければいけないのがデメリットです。

報酬も、会社から決まった額が支払われたり自動で増えたりするわけではないので、賃上げ交渉が必要な場合、自分でしなければいけません。

常に仕事が潤沢にあるとは限らない点も注意です。業務委託は、あくまでも特定業務を会社から委託される契約です。仕事が継続するとは限りませんし、契約が打ち切られれば仕事はなくなります。

継続的に仕事をして、安定した収入を得るためには、スキルを磨いたり自ら仕事を提案したりするといった努力が必要になるでしょう。

労働法が適用されない

会社との直接契約ではないため、業務委託には労働法が適用されない点もデメリットとなります。

労働法が適用されないということは、失業保険や労災保険がないということです。仕事を失ったとしても失業手当は支給されませんし、労災に対してのカバーも基本的にはありません。

また残業や最低賃金の概念がないため、働き方によっては通常の雇用契約よりも長く働いたのに収入が少なくなるケースもあります。収入が保証されないのは、安定志向が強い人にとっては懸念材料となるでしょう。

確定申告など税金面の問題

税金面でも、業務委託にはデメリットがあります。会社に勤めている場合は税金関係の処理は会社がしてくれますが、業務委託の場合は自分でする必要が発生します。

特に確定申告は経費の計算・まとめなど手間がかかるため、事務作業が苦手な人にはなかなか大変なタスクとなるでしょう。

健康保険などの社会保険についても、会社に負担してもらったり手続きしてもらったりができないので、自分で手続きをしないといけません。

業務委託と正社員どっちがよい?

会社でのミーティングの様子

(出典) photo-ac.com

業務委託にはメリットとデメリットがそれぞれありますが、実際に働く際には正社員とどちらがよいのでしょうか? どういった人が業務委託あるいは正社員に向いているかを解説します。

業務委託に向いている人

業務委託に向いている傾向があるのは、以下のような性格・性質を持った人です。

  • 自分で何かを積極的にしたり、開拓したりすることが好き
  • 仕事自体は1人で黙々とやりたい
  • スケジュール、体調の管理が得意
  • 仕事のやり方を自分で決め、問題が起きたときも自力で解決できる

仕事を自分で探し、自分の裁量で行うのが業務委託なので、自分から動ける人には向いていると言えます。また、体調を崩して仕事ができなくなれば、その分業務に支障が出て報酬が減ることもあるため、体調管理がしっかりできる人も向いているでしょう。

職種にもよりますが、業務委託ではオフィスに出向かず自室で1人作業を進めることも可能です。そのため、仕事を1人で黙々とやりたい人や外部とのやりとりが面倒という人にもぴったりでしょう。

正社員に向いている人

反対に、正社員向きの人の傾向は以下のような性格・性質を持った人です。

  • 安定した収入が欲しい
  • 福利厚生を重要視したい
  • チームでする仕事に興味がある
  • 長く会社務めをして役職に就きたい

正社員の一番魅力的なところは安定面でしょう。収入が減ることはそれほど想定されておらず、毎月決まった給料をもらえます。役職に就いたり資格を取ったりすることで、収入は増えていくことが多いでしょう。

家賃手当、健康診断補助といった福利厚生が厚い点もメリットです。そういった部分を重要視している人には正社員が向いています。

職種次第にはなりますが、個人ではなくチーム単位で動くことが多いのも正社員の特徴です。個人で活動するより仲間と一緒に働きたい人も正社員向きでしょう。

業務委託を始めるために必要なこと

パソコンで作業する男性

(出典) photo-ac.com

業務委託で働こうとしたとき、まず何から始めればよいのでしょうか。必要な手順について解説します。

仕事を見つける

業務委託で働く場合、仕事を自分で見つけてこなければいけません。ただし、もし正社員として働きながら二足のわらじで業務委託の仕事もやりたいという場合、就業規則を確認する必要があります。

現在の勤め先が副業を禁止している場合、働きながら別口で業務委託の契約をすると規則違反となってしまう点に注意です。競合他社でなければ大丈夫という会社もあります。

いざ仕事を探すときは、インターネットで探すのが一般的な方法です。メジャーな業務委託の職種としてWEBライター・文字起こしなどがありますが、他にも多様な職種が存在します。

たとえばデータ入力スタッフ、配送スタッフ、オペレーター、フォトグラファーといったようにジャンル問わずさまざまな業務委託があります。

国内最大級の求人サイト「スタンバイ」でも、「業務委託」で検索するといろいろな仕事を見つけることが可能です。

スタンバイ|国内最大級の仕事・求人探しサイトなら

 

契約について確認する

興味のある業務委託を見つけたら、応募して、双方が合意した後、契約へと進むのが一般的です。契約時には、いくつか確認しておいた方がよい点があります。

まず基本的な業務の内容や、業務範囲についてです。これを確認しておかないと、想定外の業務を委託される場合もあります。

続いて、報酬の金額や納期についても確認しましょう。いつまでに納品すればよいのか、納品完了するといくらもらえるのかを見ておかないと、後々トラブルに発展する恐れがあります。

その他にも成果物に関する権利や、損害賠償についても確認しておいた方がいいでしょう。

開業届は提出する必要がある?

仕事を始めた場合、個人事業主として開業届を出す必要があります。届け出を出さないと、税務署から事業として認めてもらえません。

開業届を出さなかったとしても罰則はありませんが、事業扱いとはならないため事業としての恩恵は受けられなくなる点に注意です。一定以上の金額で、定期的に業務委託での仕事を行う場合、届け出を出すことがおすすめです。

具体的には、確定申告の際に青色申告ができなくなったり、事業用の銀行口座を開設できなくなったりするデメリットが発生します。

青色申告をすると特別控除を所得から差し引いたり、赤字の繰り越しができたりと、税金の面でメリットが大きくなる仕組みです。

開業届は仕事を開始してから1カ月以内の提出となっているため、恩恵を受けたい人は忘れずに提出しましょう。

メリットとデメリットを把握して働き方を選ぶ!

パソコンの前で考え事をしている女性

(出典) photo-ac.com

業務委託という働き方は、通常の雇用形態とは異なり自由度の高さというメリットがあります。また、働き方や持っているスキルによっては正社員よりも稼ぐことができるでしょう。

正社員と比べて収入面が安定しないといったデメリットもありますが、自分のペースで作業をしたい人には特に向いている働き方と言えます。

自分は業務委託が向いているのか、正社員が向いているのかをしっかり把握して、自分に合ったスタイルで働き方を選んでいきましょう。