「保育士の給料だけでは生活が苦しい」という人もいるでしょう。保育士の給与は国が定めた基準に基づいて決められ、一般的な職種に比べて低い傾向があることで知られています。
本業以外の仕事ができれば経済状態を改善できますが、保育士は副業をしてもよいのでしょうか。この記事では、保育士が副業できるのかどうかや、初めてでも挑戦しやすい副業を紹介しています。
これから副業を開始しようと考えている保育士の人は、ぜひチェックしてみてください。
この記事のポイント
- ・保育士は副業できるのか
- 副業できるかどうかは勤務先や立場によって異なるため、職場のルールを確認することが重要です。
- ・保育士におすすめな副業
- 幼児教室の講師やベビーシッターなど、保育士のスキルや経験を生かせる仕事がおすすめです。
- ・副業を決める際に注意すべきこと
- 園児の保護者に会いにくい場所や自宅から遠すぎない場所、保育士のスキルを生かせるかどうかなどを重視して選びましょう。
保育士は副業が認められている?

保育士といってもさまざまな働き方があり、副業が認められている場合もあればそうでない場合もあります。副業を始めてから後悔しないように、保育士と副業のルールについて理解を深めましょう。
公立保育園の正職員はNG
地方公務員法第38条により、公立保育園の正職員の副業は原則として認められていません。地域貢献活動として部分的に認められている場合もありますが、お金を稼ぐことを主な目的とした活動は禁じられています。
私立保育園の正職員は園が認めているなら副業をしても構いませんが、就業規則で禁じられている場合もあるため注意しましょう。就業規則を破ると何らかの処分を受けることになり、最悪の場合は解雇の可能性もあります。
就業規則で認められているならOK
私立保育園に勤務している場合やパートタイムの保育士は、副業が認められているケースがあります。公務員とは違い、就業規則で認められているのであれば問題はありません。
就業規則に副業に関する記載がない場合、念のため上司に許可を得るなどの手順を踏むことがおすすめです。副業が認められている私立保育園でも、申請をするルールになっていることもあるので、確認してみましょう。
また、ルールとして明記されていなくても、慣習により不可となる場合もあります。副業の内容によっては、認められないといったケースもあるでしょう。
副業が禁止される理由
法律で禁じられているわけではないのに、副業が許されない私立保育園もあります。何が問題なのか、疑問に思う人もいるでしょう。
保育士は体力勝負の仕事であり、保育業務に支障が出ることを防ぐため副業を禁じていることがあります。また、副業をしている保育士の存在が、保護者からのクレームにつながるのを懸念している場合もあるでしょう。
政府の働き方改革によって副業が推進されている流れもあるため、今後は副業ができるようになる私立保育園が増える可能性はあると考えられます。
保育士が始めやすい副業7選

多種多様な副業がある中で、何を選べばよいのか悩む場合があります。初めて副業をする人は、本業と両立させやすい仕事を始めることがおすすめです。保育士に向いている副業をチェックしましょう。
幼児教室のインストラクター
幼児教室では、保育士として培った子どもや保護者と接する能力を生かして働けます。フルタイム以外に、週末のみ、週1〜2回程度など、副業として働きやすい求人もあるので探してみましょう。
幼児教室は遊びやコミュニケーションを通じて、幼児教育を行う場所です。就学前の0〜6歳の子どもを対象としています。総合的な教育をする教室以外にも、外国語や運動といった特定の分野に特化したものなどさまざまです。
中には、幼稚園や小学校の受験を目的とした教室もあり、どのような教育に重きを置いているかは教室によって異なります。
ピアノの先生
ピアノスキルがある保育士は、幼児向けの音楽教室に登録する方法や、自宅などでピアノ講師として副業をする方法もおすすめです。収入を得られるだけでなく、音楽のスキルが上がるメリットもあります。
副業としてピアノの先生をする場合、本業にするのとは違い多くの生徒を獲得しなくてよいため、取り組みやすいでしょう。保育士としてのスキルがあれば、幼児が楽しみながらピアノに親しむ環境をつくりやすくなります。
また、必ずしも幼児だけを相手にしなければならないわけではなく、ピアノの初歩を学びたい全ての年代の人を対象にできるところも魅力です。
ベビーシッター
家庭を訪問し個別に保育をするベビーシッターは、保育士のスキルや経験を生かせる代表的な仕事です。
保育士資格があれば保護者が安心して子どもを任せられるので、依頼を受けやすくなります。資格を持たない人より、収入面で有利になる可能性が高いでしょう。
仕事内容は子どもの日常的な世話や見守り、遊び相手など、保育士の得意分野ばかりです。保育士とは違い、保育園・幼稚園や習い事の送迎、勉強の見守りなども任せられることがあります。
また、各家庭の事情や教育方針に合わせた対応も求められるでしょう。午前中に2時間ほど、夕方から3時間程度など短時間の依頼もあり、隙間時間を使いやすいところも副業としておすすめな理由です。
家事代行業
依頼者の家庭を訪問し、食事の準備・掃除・整理整頓・洗濯・子どもの世話といった家事を代行する副業もおすすめです。保育士の資格があると、子どものいる家庭での家事代行がしやすいでしょう。
家事代行マッチングサイトや家事代行業者などに登録すれば、仕事を見つけられます。希望する時給や時間帯などを伝え、折り合いがつく仕事を選べるので、忙しい保育士でも比較的働きやすいでしょう。
共働きの世帯が増えた昨今は、家事代行業の必要性が増しています。忙しい家庭を支えることで、社会貢献ができるところも魅力の1つです。
Webライター
インターネット上で公開される、さまざまな記事を執筆するのがWebライターの役割です。基本的なパソコンスキルや、文章作成力がある人に向いています。
子育てに関する悩みの解消や子どもとの向き合い方など、保育士ならではの専門知識を生かしながら、記事を執筆できるところが強みです。
分かりやすい文章を書ける人や、読者が求めている記事を執筆できる人は、高単価の案件を引き受けやすいといえます。クラウドソーシングサービスを使えば、初心者でも簡単に仕事を開始できます。
また、在宅で働けるので、家事や本業との両立もしやすいでしょう。通勤が必要なく、体力的な消耗が少ないところも、保育士におすすめな理由です。
イベントスタッフ
イベントスタッフは1日のみ、土日のみなどの単発で働けます。臨時収入が欲しいときだけ働きたい人におすすめです。
イベントがなければ仕事もないため、安定して働きたい人よりも短期間で集中的に稼ぎたい人に向いています。一緒に働くメンバーはほぼ毎回異なるので、人間関係のしがらみがありません。
テーマパークやレジャー施設などの子どもが多く集まる場所でのイベントや、幼児向けのイベントを選べば、保育士資格を生かすこともできるでしょう。
拘束時間が長く体力的な負担が大きいですが、その分高単価な求人も見つかりやすく、中には1万円以上の日当が出る仕事もあります。
飲食店などの接客業
ファミリーレストランなどの飲食店やスーパー、コンビニエンスストアなどの接客業も副業としておすすめです。これらの仕事は、保育士の仕事を通じて身に付けたコミュニケーションスキルを生かせます。
早朝や夕方、深夜帯などのシフトもあり、本業の合間を縫って働きやすいでしょう。接客業は需要が高く人手不足に陥りやすいため、多くの求人の中から選べる点もメリットです。
「自宅から近い場所で働きたい」「園児の保護者に会わない場所で働きたい」といった希望に合わせて働きやすいといえます。
保育士が注意したい副業

保育士の肩書を持っている場合、注意が必要な副業があります。どのような副業に注意したらよいのか、見ていきましょう。
SNSでできる副業
SNS副業とは、SNSでの活動を通じて収益を得ることです。自分の得意分野や世間の関心を集める話題などを発信し、ファンやフォロワーを獲得します。
読者・視聴者からの反響や動画の再生数などに応じて、報酬を得られる仕組みを採用しているSNSもあります。一定の人気がある人は、企業からの案件も受けられるでしょう。
「イヤイヤ期の子どもの対応の仕方」「子どもが喜ぶ遊び方」といった、保育士として得た知識やスキルを発信し、人気を獲得している人もいます。
SNSをしながら収入を得られる点に魅力を感じる人は多いかもしれませんが、情報発信すれば必ず収益を得られるわけではない点や、個人情報の流出などに注意が必要です。
写真を掲載しないようにしても、園児や保護者の話題などを通じて個人を特定され、問題に発展する可能性があります。
水商売などの夜の仕事
キャバクラやスナックなどでの接客業は時給が高く、勤務時間後に働けるので副業しやすい特徴があります。同じ時間を使うのであれば、より多くの収入を得たいと思う人もいるでしょう。
しかし、夜の仕事は周囲にバレたときのリスクが高い点に注意が必要です。「夜職をしている人に子どもを任せたくない」と感じる人もいるため、保育士の仕事を続けにくくなる可能性があります。
また、イメージ的な問題だけでなく、夜遅い時間帯の仕事をしていると睡眠時間が削られ、肉体的な疲労を十分に回復しにくいといえます。
お酒に付き合わなければならない場合、体調管理が難しくなる点もデメリットです。保育士は重労働なため、日中に疲労困憊になりパフォーマンスが低下する心配もあるでしょう。
保育士が副業を選ぶポイント

自分に向いている副業を選ぶポイントを知っていると、失敗しにくくなります。保育士が副業を選ぶとき、何を基準にすればよいのかを見ていきましょう。
保育士のスキルを生かせる
保育士のスキルを生かせる副業を選ぶと、効率良く稼げます。全く未知の分野に挑戦するよりも、保育士資格が強みとなるような仕事を選ぶことがおすすめです。
子どもが利用する場所は保育園や幼稚園以外にも、さまざまな場所があります。乳幼児期の子どもと関わる仕事であれば、保育士資格やスキルを生かせるでしょう。
また、稼ぎやすいだけでなく、自分の得意分野を伸ばすことにもつながります。例えば、幼児教室やピアノの先生、ベビーシッターなどの副業は、より専門的な知識を高めるために役立ち、本業にも生かせる仕事です。
保育園以外の場所で働くと視野が広がり、本業のモチベーションを上げる効果も期待できます。
目標金額を達成できる
副業を始める前にどの程度の金額を稼ぐか決めておくと、仕事を探しやすくなります。目標に見合う金額を稼ぐには、どの仕事を何時間程度すればよいのか逆算してみましょう。
最初は、月1〜2万円など少額から始めると無理がありません。家事代行業やWebライターなどは、仕事に慣れないうちは効率良く稼げない場合があります。
初めから高い目標を設定してしまうと、挫折してしまうでしょう。また、目標金額に無理があると、多くの時間を副業に使わなければならなくなり、本業に差し障りが出る原因にもなります。
無理をしなければ生活を賄えない場合は、収入と支出のバランスを見直してみましょう。余裕のある生活をするには、支出が収入を超えないように調整しながら家計を管理することが大切です。
保護者や園児に会いにくい
保育士は子どもの命を預かる立場であるため、保育士が副業をすることに対し、保護者が過剰な心配をしてしまうことがあります。
在宅以外で副業をする場合、保護者や園児に会いにくい場所を選びましょう。副業が禁止されていない保育園で働いているなら、周囲にバレたとしても何も問題はないと思いがちです。
しかし、保護者からすると副業が禁止されているかどうかに関係なく、悪いイメージを持つ場合があります。
かといって、あまり遠くの職場を選びすぎても通勤時間を取られて大変です。保護者や園児に会う可能性が低く、職場や自宅から遠すぎない場所を選びましょう。
保育士が副業で失敗しないようにするには

副業を頑張りすぎて本業が続けづらくなってしまった、という失敗をしてしまうことがあります。このような失敗を防ぐため、事前に注意したいポイントを見ていきましょう。
本業に差し障りが出ないようにする
保育士は激務なため、体力に自信がある人でも掛け持ちで仕事をするのは大変です。休日に心身を休め、疲労を取らないと意欲的に仕事ができません。
副業をしすぎて、休日が全くない状態にならないようにしましょう。もっと働きたいという思いがあったとしても、ある日突然、限界が来て体調を崩すこともあります。
副業で成果を出すと、もっと仕事をしてほしいと依頼される場合がありますが、無理のない範囲で引き受けることが大切です。目標金額を高く設定しすぎないようにするのも、忘れないようにしましょう。
確定申告を忘れない
保育士の中には、これまでに確定申告をしたことがない人もいるでしょう。しかし、副業の収入が20万円を超えた場合は、確定申告が必要と決められています。
確定申告はその年の所得を計算し、所得税や社会保険料額などを確定するために行うものです。期限までに申告をしないと、無申告加算税や延滞税などが課せられます。
通常、給与所得者は勤め先が所得や税金を計算してくれるので、自営業やフリーランス、複数のアルバイト・パートを掛け持ちしている人以外は、自分でする必要がありません。
出典:No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人|国税庁
出典:No.2024 確定申告を忘れたとき|国税庁
副業禁止の場合は他の方法を考える
副業禁止の職場に勤務している場合、在宅ワークや単発バイトも含めて副業をするのはやめましょう。誰にも言わなければ、分からないと考えるのは間違いです。
中には、在宅やSNSなどで副業をしているから、周囲に知られる心配はないと考える人もいるでしょう。しかし、副業で収入が上がった結果、住民税の額が増えて勤務先に副業が知られる場合があります。
住民税は毎月の給与から天引きされる仕組みになっているため、勤務先の経理担当者が見れば、副業していることが分かります。就業規則を破ると、何らかの不利益を被ることになるでしょう。
注意を受けるだけで済んだとしても、同僚や上司などからの信頼を得られなくなり、働きづらくなる可能性が高いといえます。
副業以外で収入を上げるには

副業ができなくても、収入を増やす方法はあります。副業ができるかどうかに関係なく、保育士が収入を上げる方法を見ていきましょう。
スキルアップや昇進を目指す
保育士としてスキルアップや管理職を目指すと、年収を上げられます。「保育士等キャリアアップ研修」を受講し、副主任保育士や専門リーダーになれば給与アップが見込めるでしょう。
都道府県または都道府県知事が指定した研修実施機関が、乳児保育や幼児教育、食育・アレルギーといった分野別に体系化された研修を実施しています。
日々の仕事をこなしながらキャリアアップ研修を受けるのは大変ですが、研修を受けると勤めている保育園に手当が支給され、保育士の処遇改善を図れる点がメリットです。
専門的な知識が身に付き、転職の際に有利になる点も見逃せません。非正規社員やアルバイト・パートで保育士をしている人は、正職員を目指すと収入がアップします。
出典:保育士等(民間)のキャリアアップの仕組み・処遇改善のイメージ|厚生労働省
給料の良い保育園に転職
スキルアップやキャリアアップをしても、思ったように給与が増えない場合があります。管理職のポストが空いていなければ昇進はできないため、タイミングにも左右されます。
昇給や昇進が望めない場合、今よりも給料が良い保育園に転職するのも1つの方法です。また、保育園で働くことだけにこだわらず、保育士の資格が生きる別の仕事に転職する方法もあります。
さまざまな求人情報を比較し、これまでのキャリアを生かしながら、給与や待遇面が良くなる仕事はないか探してみましょう。
保育に関わる仕事を探す際は、国内最大級の求人情報一括検索サイト「スタンバイ」がおすすめです。保育士の資格を生かせる求人情報が豊富に掲載されていますので、ぜひご活用ください。
副業できなくても収入を上げる方法はある

保育士が副業をする際は、副業できるルールになっているかどうか確認が必要です。認められていない場合は、スキルアップや昇進による昇給を目指しましょう。
努力しても状況が改善されないなら、転職をして状況を変える方法もあります。また、副業が認められていても、本業に支障を来さない範囲で取り組むことが大切です。
どの副業を選ぶか迷ったときは、保育士のスキルを生かせるかどうかや、保護者や園児に会いにくいかどうかなどに注意して選ぶことを意識しましょう。