理学療法士は、病気やケガの回復を助けるために、なくてはならない存在です。初任給や平均年収は、他の職業と比べて高水準なのでしょうか?これから理学療法士を目指す人や、給料が伸び悩んで困っている人に向けて、給料事情や年収アップの方法を解説します。
この記事のポイント
- 理学療法士の初任給
- 理学療法士の初任給は約25万円で、他の医療業界の職種と比べると低い傾向です。
- 医療業界の他職種の給料との違い
- 医療業界の他職種の中では平均年収が低めだが、一般的な職業に比べて大幅に低いわけではありません。
- 理学療法士が年収をアップさせるには
- 理学療法士が年収を伸ばすには、専門性を高めたり、副業をしたりなどの方法があります。
理学療法士の給料事情
理学療法士の初任給や手取り、平均年収・ボーナスなどを知ると、給料事情が見えてきます。経験年数別の収入の推移も、併せてチェックしましょう。
※一般的に給料は基本給を指し、諸手当を含めませんが、本記事では諸手当を含めた給与を給料としています。
※賃金構造基本統計調査のデータは、一般労働者・企業規模10人以上のものを使用しています。
※平均年収(年間の給料)は、賃金構造基本統計調査の「きまって支給する現金給与額」の12カ月分と「年間賞与その他特別給与額」を合計した金額です。
初任給と手取り
厚生労働省が実施した「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、経験年数0年の理学療法士の給与は24万8,600円です。
給与から社会保険料や税金を差し引いた額が、手取りとなります。手取りは総支給額の78~85%程度とされるので、初任給24万8,600円の手取りは約20万円となるでしょう。
1年目はボーナスの支給があったとしても、満額はもらえないのが一般的です。ボーナスが期待できない分、初年度の年収は低くなります。
平均年収とボーナス
厚生労働省が実施した「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、企業規模計(10人以上)の場合、理学療法士(経験年数計)の平均年収は432万5,200円です。そのうち、ボーナスは71万4,400円となっています。
国税庁が実施した「令和5年分民間給与実態統計調査」によると、給与所得者の平均年収は460万円です。
これらのことから、理学療法士の平均年収は、一般的な職業と比べて若干下回ってはいるものの、際立って安すぎるわけではないと判断できます。
出典:賃金構造基本統計調査 令和5年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計) | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口
出典:令和5年分 民間給与実態統計調査|国税庁
経験年数別の収入の違い
理学療法士の初任給は低いかもしれませんが、経験年数とともに収入が上がります。経験年数別の年収と、内訳を見てみましょう。
- 0年:年収306万900円(月収24万8,600円、ボーナス7万7,700円)
- 1~4年:年収368万7,400円(月収25万4,100円、ボーナス63万8,200円)
- 5~9年:年収401万6,500円(月収27万7,400円、ボーナス68万7,700円)
- 10~14年:年収447万3,400円(月収30万6,300円、ボーナス79万7,800円)
- 15年以上:年収501万4,900円(月収給33万8,500円、ボーナス95万2,900円)
経験年数別の給与をチェックすると、キャリアに見合った金額かどうかを知る1つの目安になるでしょう。
勤務先の違いによる理学療法士の給料の比較
同じ理学療法士であっても、勤めている施設によって給料に差が出る場合があります。勤務先の違いにより、給料にどのような変化があるのか見ていきましょう。
施設形態による比較
理学療法士の就職先として一般的な勤務先の業務形態は、病院・診療所・クリニック・介護施設などです。同じ規模の施設であっても、給料や待遇はそれぞれ異なります。
一般病院よりも、大学病院や整形外科クリニックの方が、給料が高いとされます。介護施設の場合、リハビリに特化しているなどの事情があれば、高めに設定されていることがあるでしょう。
賞与や各種手当、福利厚生が手厚いかどうかでも働きやすさが変わってくるので、しっかりとチェックすることが大切です。
勤務地によっても異なる
東京と地方など、勤務地によって給料に差はあるのか見てみましょう。厚生労働省による「job tag」の理学療法士の統計データによると、2023年の地域別平均年収は以下の通りです。
- 北海道:411万円
- 宮城県:401万2,000円
- 東京都:444万7,000円
- 埼玉県:446万6,000円
- 千葉県:442万3,000円
- 神奈川県:430万3,000円
- 新潟県:407万2,000円
- 愛知県:452万2,000円
- 大阪府:451万2,000円
- 和歌山県:433万8,000円
- 長崎県:373万4,000円
- 沖縄県:441万9,000円
首都圏や大都市を抱える県は、高くなる傾向です。しかし、中には平均年収の432万5,200万円を、大きく下回る地域も存在しています。
出典:理学療法士(PT) - 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
医療業界の他職種の給料との比較
理学療法士と医療業界の他の職種を比べたとき、給料の水準はどの程度なのでしょうか?ここでは、他の職種の初任給や平均年収との比較を紹介します。
他職種の初任給との比較
「令和5年賃金構造基本統計調査」を基に、理学療法士の初任給と、他の職種の初任給を比較してみましょう。
- 医師:年収598万4,500円(月収49万6,600円、ボーナス2万5,300円)
- 薬剤師:年収373万700円(月収30万6,800円、ボーナス5万5,400円)
- 看護師:年収325万900円(月収26万600円、ボーナス13万1,800円)
- 診療放射線技師:年収314万4,500円(月収24万7,900円、ボーナス16万9,700円)
- 理学療法士:年収306万900円(月収24万8,600円、ボーナス7万7,700円)
医師の初任給は、他の医療系の職種に比べて飛び抜けて高い傾向です。薬剤師や看護師の初任給も、やや高めに設定されていると分かります。
理学療法士は他の医療系職種と比べ、初任給が高いとはいえない結果です。ただし、医師や看護師には夜勤があり、手当が多く付いている点も収入の違いに関係しています。
他職種の年収との比較
理学療法士の平均年収は、他の職種と比較して安いのでしょうか?「令和5年賃金構造基本統計調査」を基に、企業規模計(10人以上)の場合の、他職種の平均年収と比較してみましょう。
- 医師:1,436万4,700円(月収109万700円、ボーナス127万6,300円)
- 薬剤師:577万8,700円(月収41万7,500円、ボーナス76万8,700円)
- 看護師:508万1,700円(月収35万2,100円、ボーナス85万6,500円)
- 診療放射線技師:536万9,700円(月収36万7,400円、ボーナス96万900円)
- 理学療法士:432万5,200円(月収30万900円、ボーナス71万4,400円)
理学療法士は、医療業界の職種の中では低めの年収です。これには、各職種の平均年齢も関係しています。
理学療法士の平均年齢は35.6歳ですが、比較した他業種の平均年齢が40歳以上です。若い人が多いため、平均年収で比較したときの差が大きくなっていると考えられます。
理学療法士が年収をアップさせる方法
理学療法士の年収は、努力や工夫次第で伸ばせる可能性があります。年収を伸ばしたい場合、どのような方法があるのか見ていきましょう。
スキルアップや資格の取得
年収をアップさせる方法の1つが、「認定理学療法士」「専門理学療法士」などを目指して専門性を高めることです。
いずれも、日本理学療法士協会に入会している「登録理学療法士」を対象とした制度です。受験資格を得るには、研修カリキュラムを受講するなどの要件を満たす必要があります。
専門性を高めると、患者により質の高いサービスを提供できるのがメリットです。職場全体のリハビリ技術を向上させる役割を担い、頼れる存在として認められれば、給与が上がる可能性があります。
スポーツジムや介護施設で副業する
勤め先の就業規則で禁止されていないのであれば、副業で稼ぐのも1つの方法です。理学療法士におすすめな副業は、医療・福祉系の施設、スポーツなどの分野で資格を生かして働くことです。
スポーツジムや介護施設などでは、ケガの予防や身体パフォーマンスの向上などをサポートする役割が求められます。
本業に支障が出ない範囲で働くには、空いている時間・余暇をうまく活用し、アルバイトや非常勤などの働き方をするとよいでしょう。本業とは異なる領域で働くことで、視野が広がる点も魅力です。
整体院などを開業し独立する
医療・福祉系の施設に勤務するのではなく、独立して年収アップを狙う方法もあります。
理学療法士の資格だけでは、医療行為を提供する事業所を開業できません。しかし、整体院での施術は、原則として医療保険の対象外であるため、特別な資格がなくても開業でき、理学療法士としてのキャリアを生かせます。
また、柔道整復師や鍼灸師などは、医師の指示がなくても治療できる資格です。理学療法士以外の資格も取得すれば、より選択肢が広がるでしょう。
開業するにはまとまった資金の確保や、事業計画なども必要になりますが、成功すれば大きな収入を得られる可能性があります。
給料の高い施設に転職する
現在の給料に不満なら、より待遇が良い施設に転職する方法もおすすめです。転職先を探す際は、昇給やキャリアアップ制度などに力を入れているかどうかを意識しましょう。
施設によっては、しっかりとした評価制度を設けているところもあります。実績や会社への貢献度などで給料が上がる仕組みを採用しているところなら、昇給しやすいでしょう。
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理学療法士として満足できる働き方をしよう
理学療法士の初任給や平均年収は、他の医療系の職種に比べると、やや低い特徴があります。勤務先や地域によって給料事情が異なる点にも注目し、勤務先を選びましょう。
理学療法士として働く魅力は、収入だけではありません。患者を元気にするサポートができ、多くの人から感謝される点に喜びを感じる人は多いでしょう。
収入を増やしたい場合、専門性を磨き条件の良い職場に転職する方法などがおすすめです。資格を生かした副業や、他の資格を取得して開業する方法も検討してみましょう。