看護師として働いている人の中には、日々の忙しさから、やる気が下がってしまった人もいるのではないでしょうか。そんなときは、改めて看護師のやりがいを振り返ってみましょう。やる気が下がったときの対処法も解説します。
看護師がやりがいを感じる5つの瞬間
看護師がやりがいを感じる瞬間を5つピックアップして紹介します。これから看護師を目指している人も、ぜひ参考にしましょう。
患者の快復を見届けられたとき
自分が担当した患者が、元気な姿になって退院する様子を見届けられたときは、大きなやりがいを感じるでしょう。
病気やけがの治療を直接行うのは医師ですが、看護師は患者の治療がスムーズに進むようサポートするだけではなく、心のケアなども行いながら患者に寄り添い支えることを求められる仕事です。
患者が精神的・身体的な苦痛を感じたときは、看護師が様子を的確に把握し、医師へ伝達を行います。医師の説明を補足するなど、患者と医師の橋渡し的な役割も担っています。
看護師は医療の現場で欠かせない存在であり、社会的な意義も大きいでしょう。責任が大きい仕事ですが、担当をしていた患者や長い間入院していた患者の快復は、達成感や喜びを感じる瞬間のひとつです。
患者や家族から感謝されたとき
人から感謝されたときは、誰しもが高い充実感を得ます。中には人目に触れず、直接感謝されることがほとんどない仕事もある中、看護師は患者や家族から直接「ありがとう」といってもらえる仕事です。
看護師は夜勤もあり、細かな気配りもしなければならず、タフな仕事です。しかし患者や家族から感謝の言葉を受け取れば、今までの苦労も報われるのではないでしょうか。
つらいことが多い看護師ですが、患者の笑顔が活力となっている人も多くいます。
チームプレーで一体感を得られたとき
病院で勤務する場合、1人の患者に対して医師や他の看護師・作業療法士・栄養管理士など、さまざまな役割の人がチームとなって治療に当たります。
それぞれの役割を全うし、患者の退院を見送ったときには、チームとしての一体感を得られるでしょう。また、急変や急な入院・搬送などの緊急時に、医療スタッフが連携しながら対処し、患者の危機を回避できたときなども達成感を感じる瞬間です。
チームプレーにおいては、1人1人に重要な役割があり、欠かすことはできません。そのため自分が必要とされている重要感や、役割を全うする責任感も得られます。
組織の中で、自分にしか出せないバリューを発揮できることは、モチベーションを維持する上で重要な要素といえます。
日常生活で知識を生かせたとき
看護師の知識は現場だけでなく、日常生活でも生かせます。例えば、家族や友達が調子を崩していたとき、いち早く気付いて適切に対処できるでしょう。
もしかすると「放っておくと重大な病気につながっていた」なんてこともあるかもしれません。
患者だけでなく、自分の身内も助けられたときは「看護師でよかった」と思えるのではないでしょうか。
他人だけでなく、自分が体調不良になった場合も、適切な行動が取れます。生涯使える知識を身に付けられる点も、看護師のやりがいといえるでしょう。
頑張りが給与として返ってきたとき
「令和3年度賃金構造基本統計調査」を参考にすると、看護師の平均給与は498.6万円と試算できます。日本人の平均年収は約443万円なので、平均以上の水準といえます。
夜勤に入れば手当が付くので、給与も高くなります。大変なことが多い看護師ですが、その頑張りが給与として返ってきたときは、報われた気持ちになるでしょう。
賃金構造基本統計調査によると、ボーナスを除いた月の平均給与は34.4万円です。社会保険料や税金などを差し引くと、手取りはもう少し減りますが、生活するにはそれほど困らない水準でしょう。
参考:
令和3年度賃金構造基本統計調査|e-Stat
令和3年分民間給与実態統計調査|国税庁
看護師のやりがいは職場によっても異なる
働く施設によって、看護師のやりがいは異なります。病棟と外来・介護施設における看護師のやりがいを見ていきましょう。
病棟
病棟勤務の場合、1人の患者を数週間から数カ月にわたって看護するケースが多いでしょう。そのため、献身的に看護をした患者の回復を見届けられます。
また、さまざまな役割を持ったスタッフが働いているので、チームプレーで業務を遂行する達成感が得られるのも、病棟ならではのやりがいといえます。
救急病棟の場合は、処置の緊急性が高い患者を担当します。1分1秒が命取りになる状況下で、無事患者を助けられたときは、仕事の意義を感じられるでしょう。
外来
外来看護師の主な仕事は、受付やカルテ作成などを含んだ医師のサポートです。主な職場には病院とクリニックの2つが挙げられます。
どちらの場合も、個々の患者と向き合う時間は少ないものの、その分多くの患者と接する機会があります。患者によって症状はさまざまなので、多くの症例や治療の場面に立ち会うこともできます。
そのため、看護師としての知見を広げられる点が主なやりがいといえます。また、さまざまなタイプの人と接するため、コミュニケーション能力も鍛えられるでしょう。
特にクリニックの場合は、スタッフの人数が限られていることから、1人当たりの責任や裁量が大きくなります。
介護施設
介護施設では、看護師が活躍する場面が多くあります。医師が常駐しないケースが多いため、基本的には看護師が現場で判断をします。
治療をする場である病院とは異なり、介護施設は生活をする場です。入居者の日常生活のサポートや、ときにはレクリエーションに参加することもあるでしょう。
病院とは違った形で、入居者にじっくり寄り添えるのも、介護施設の特徴です。
やりがいを感じない場合はどうすればいい?
日々の忙しさやストレスから、自分が何のために仕事をしているのかわからなくなってしまう人もいるかもしれません。そんなときに試したい行動を3つ紹介します。
まずは自分と向き合う時間を作るところから始めてみましょう。
リフレッシュの機会を作る
仕事でのストレスの対処として、まずは休暇を取ってリフレッシュすることが一番です。
看護師は、その忙しさや過酷さ、プレッシャーなどによって、徐々にやりがいを感じられなくなって悩む人もいるでしょう。そうした場合、悩みの原因は仕事が合っていないといったことではなく、心身の疲れが影響していることがあります。
休暇を取り、仕事を忘れてひたすら休んだり、趣味に打ち込んでみたりなど、自分の好きなように時間を使ってみましょう。仕事と距離を置くことで心身が休まり、またやる気が出たり、看護師としての情熱が湧き出てくるかもしれません。
看護師になった理由を振り返る
原点に立ち返り、看護師を目指したきっかけを思い出してみましょう。どんな仕事でも、毎日同じことの繰り返しで過ぎていく面があります。人によっては、そのせいで自分の目指す方向ややりたいことがわからなくなる場合もあります。
看護師になったということは、看護学校で一生懸命勉強し、つらい実習を乗り越え、国家試験にも合格したということです。それは簡単なことではないので、きっと何らかのモチベーションがあったはずです。
少し時間をとって、自分はどんな看護師になりたかったのかを振り返ることで、向くべき方向が見えてくることもあるでしょう。
転職を検討してみる
やる気が下がっている原因が職場の環境によるものなら、転職を検討してみるとよいでしょう。看護師の働き方や、やりがいは職場によって異なります。
職場を変えることで、今までとは違ったやりがいを見いだせる可能性があります。転職を成功させるには、自分の価値観を整理し、職場に求める条件を明確にしましょう。
転職活動をするなら、「スタンバイ」で情報収集するのがおすすめです。スタンバイでは、看護師の高年収の求人も多く掲載しています。理想の職場を見つけたい人は、ぜひチェックしてみましょう。
転職の面接で看護観を聞かれることも
転職の面接では「看護観」を聞かれるケースが多くなっています。看護観の意味や見つけ方、面接での答え方の一例を解説します。準備を抜かりなく行い、転職を成功させましょう。
看護観とは?見つけ方も解説
看護観とは「看護師としての自分の考え方や信念、患者に提供したい看護の姿」のことです。自分はどんな看護師でありたいか、答えは人それぞれで正解はありません。
自分の看護観を見つける手順は、以下の通りです。参考にしてみましょう。
- 印象的な経験を思い出し、そのときの感情の動きを分析する
- 患者ファースト+PREP法で組み立てる
- 志望先の理念とリンクさせる
自分の看護観は過去の経験が大きく影響していることが多いので、まずは印象的なエピソードを深掘りします。
そのときの自分の取った行動や、抱いた感情を「なぜ?」と何回も自問することで、自分の看護観が見えてきます。
自分の看護観がわかったら、それを患者ファースト+PREP法で組み立てましょう。患者ファーストとは主語を患者にして「患者にどうなってほしいか」という目線のことです。
PREP法とは、結論→理由→具体例→結論の順でまとめる説明手法です。最後は応募先の理念と自分の看護観がマッチするように調整しましょう。
看護観の具体例
上記の内容を踏まえ、看護観の例文を紹介します。看護観を作る際の参考にしましょう。
私の看護観は常に「患者のために」を行動理念にすることです。
以前担当した患者の中に、通常は必要な処置を望まない方がいました。日々弱っていく姿を見て、私はやりきれない気持ちに苛まれていました。
ある日、そんな私の様子を見た先輩に「患者が望むことを全力でやりなさい」といわれ、今まで自分が思っていたことは、自分がやりたいことだったと気付いたのです。
それから患者と接するときは、自分の意見や主観は入れず、相手が何を望んでいるかを傾聴することに徹しています。
ポイントは、できるだけ具体的なエピソードを入れることです。そうすることで、自分だけの魅力的な看護観が伝わるでしょう。
看護師の仕事は社会的意義が高い
看護師は患者の回復を最前線でサポートする、社会的意義の高い仕事です。しかし日々の忙しさやプレッシャーから、やりがいを見いだせなくなっている人もいるかもしれません。
そんなときは、一度腰を落ち着けて自分と向き合ってみましょう。必要と判断した場合は、転職も選択肢に入ります。
看護師を目指していたころの気持ちを忘れず、後悔のない選択をしましょう。
助産師として1万件以上の出産に携わり、8千人以上の方を対象に産前・産後のセミナー講師を務める。海外での生活を機にバースコンサルタントを起ち上げ、現在「妊娠・出産・育児」関連のサービスの提供、アドバイスを行う。関連記事の執筆・監修、商品・サービスの監修、産院のコンサルタント、国・自治体の母子保健関連施策などに従事。
監修者のコメント
看護師の仕事は業務負担や責任が大きいですが、自分の学びや努力によって、嬉しい見返りも得ることができる仕事です。患者さんや家族に感謝されたり、先輩や周りのスタッフに認められたりすると、励みや自信になります。新しく学んだことや向上した技術を発揮できるとやりがいを感じます。毎日頑張っているあなたはとても立派です。ときには自分を労わる時間をつくりながら、看護師としての自分に誇りをもって働いてくださいね。