作業療法士の年収は、勤務年数やキャリア、働く場所によって変わります。年収をアップさせるにはどのような方法があるのでしょうか?将来的な動向を把握した上で、早めにキャリアプランを描きましょう。作業療法士と相性のよい資格も紹介します。
作業療法士の平均年収は?
作業療法士は、リハビリテーション医療におけるスペシャリストです。既に作業療法士として働いている人やこれから目指す人は、収入面が気になるのではないでしょうか?
厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」(2021年)を基に、正社員やパート・アルバイト、都道府県別の年収を確認しましょう。
正社員の年収は約426万円
作業療法士の収入は、雇用形態によって異なります。正社員の平均年収(男女)は約426万円(※)で、詳細は以下の通りです。
- きまって支給する現金給与額:29万6,000円/月
- 年間賞与・その他の特別給与額:71万3,400円
国税庁の「民間給与実態統計調査」(2021年)によると、1年を通じて勤務した給与所得者の平均給与は443万円です。作業療法士の年収は、全体平均よりもやや低いことが分かります。
作業療法士の年収は年齢とともに順調に増え続け、55~59歳にピークを迎えます。
<年齢階級別の平均年収>
- 20~24歳:約328万円
- 25~29歳:約379万円
- 30~34歳:約414万円
- 35~39歳:約437万円
- 40~44歳:約487万円
- 45~49歳:約515万円
- 50~54歳:約539万円
- 55~59歳:約574万円
- 60~64歳:約479万円
※平均年収の算出方法
・きまって支給する現金給与額×12カ月+年間賞与・その他の特別給与額で算出
・理学療法士・言語聴覚士・視能訓練士を含む平均値
・企業規模が10人以上の場合の平均給与、賞与等で計算
参考:
賃金構造基本統計調査 令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)|政府統計の総合窓口
令和3年分民間給与実態統計調査|国税庁
賃金構造基本統計調査 令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 5 職種(小分類)、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)|政府統計の総合窓口
パート・アルバイトの年収
短時間労働者(パート・アルバイトなど)として働く作業療法士の場合、正社員よりも年収は低くなります。
- 1時間当たりの所定内給与額:2,255円
- 年間賞与・その他特別給与額:11万4,500円
平均の労働時間が1日5.7時間・実労働日数が12.7日の場合、平均月収は約16万円、年間賞与・その他特別給与額を含めた平均年収は約207万円です。
参考までに、1時間当たりの所定内給与額は、歯科衛生士が1,644円、臨床検査技師が2,065円、栄養士が1,783円です。作業療法士の時給は、一部の職種よりも高いことが分かります。
参考:賃金構造基本統計調査 令和3年賃金構造基本統計調査 短時間労働者 職種 1 短時間労働者の職種(小分類)別1時間当たり所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)|政府統計の総合窓口
年収は都道府県によって変わる
以下は、「賃金構造基本統計調査」にもとづき一部のエリアの平均年収を割り出したものです。地域によってばらつきがあり、神奈川と福岡では50万円以上の差が生じています。
- 北海道:約413万円
- 宮城:約438万円
- 埼玉:約453万円
- 東京:約451万円
- 神奈川:約460万円
- 大阪:約442万円
- 岡山:約441万円
- 福岡:約402万円
収入アップを望むのであれば、平均年収が高い地域の事業所に転職するという選択も有効そうです。
他のリハビリ専門職との比較
リハビリテーション職には、作業療法士の他に理学療法士・言語聴覚士・視能訓練士などがあります。作業療法士と他のリハビリ専門職の年収に、違いはあるのでしょうか?
年収の差はあまりない
国が毎年実施している「賃金構造基本統計調査」において、作業療法士・理学療法士・言語聴覚士・視能訓練士は同じ区分で集計されています。働く場所や仕事内容にもよりますが、年収に大きな差はないと考えてよいでしょう。
「賃金構造基本統計調査」(2021年)におけるリハビリ専門職の平均年収は、約426万円です。どれも国家資格が必要な職業ですが、給与所得者の全体平均給与額(443万円)よりも、17万円ほど低いのが現状です。
参考:職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)|賃金構造基本統計調査 令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 |政府統計の総合窓口
作業療法士の将来
作業療法士は、体が不自由な高齢者や障害がある人をサポートする仕事です。応用的動作の回復・維持を促すリハビリを提供するほか、精神面でのケアも行います。今後、作業療法士のニーズはどう変化していく見込みなのでしょうか?
日本の高齢化に伴い需要が高まる
高齢化が進むにつれ、作業療法士の需要は高まると予想されます。総務省統計局のデータ(2022年9月15日推計)によると、65歳以上の高齢者は過去最高の3,627万人で、総人口に占める割合は29.1%です。
作業療法士の仕事領域は、大きく「身体障害領域」「精神障害領域」「発達障害領域」「老年期障害領域」に分かれます。高齢化が進めば、加齢に伴う疾患により障害を抱える人が増える可能性があるでしょう。
医療機関や介護老人保健施設、デイケア(通所リハビリテーション)など、作業療法士の活躍の場は多岐にわたります。
参考:統計局ホームページ/令和4年/統計トピックスNo.132 統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-/1.高齢者の人口|総務省統計局
有資格者の増加により年収が上がりにくい
第57回作業療法士国家試験(2022年)の合格率は80.5%(新卒者88.7%)で、5,723人中4,608人が合格しています。国家試験の中でも合格率が非常に高い部類です。
高齢化に伴い、作業療法士のニーズは増えると予想されるものの、有資格者も増加すれば採用される確率が下がったり、年収が上がりにくくなったりする可能性があるでしょう。
先に紹介した通り、作業療法士の平均年収は約426万円で、500万円台にはまだまだ届きません。
参考:第57回理学療法士国家試験及び第57回作業療法士国家試験の合格発表について|厚生労働省
作業療法士の年収の上げ方
年齢や勤続年数、雇用形態にもよりますが、作業療法士にとって「年収500万円」が1つの目標になるでしょう。年収を上げるにはどのような方法があるのでしょうか?
資格を取得してスキルアップを目指す
1つ目は、新たな資格を取得する方法です。能力の向上が期待できるのはもちろん、仕事の幅が大きく広がるため、収入アップにもつながるでしょう。さまざまな観点から患者をサポートできるようになり、周囲からの評価も高くなります。
作業療法士と相性のよい資格として、以下のようなものが挙げられます。
- 認定作業療法士
- 専門作業療法士
- 理学療法士
- 3学会合同呼吸療法認定士
- 心臓リハビリテーション指導士
- 栄養サポートチーム専門療法士
- 福祉住環境コーディネーター
現在の職場でキャリアアップする
作業療法士の年収は、年齢や勤務年数に比例する傾向があります。55~59歳になると、年収が500万円に達する人も多いため、現在の職場で地道にキャリアを積むのもよいでしょう。
作業療法士が昇進するには、知識や技術の豊富さだけでなく、チームをまとめるリーダーシップが不可欠です。
リーダー役を任されると、業務の割り振りやスタッフの調整、他の職種との連携などさまざまな業務をこなさなければなりませんが、周囲からの信頼も厚くなります。リハビリテーション科の科長や部長などの役職に昇進するケースも珍しくありません。
独立・起業する
作業療法士には開業権がなく、作業療法士の名称では起業できません。独立・起業を目指すのであれば、作業療法士以外のサービスで事業を始める必要があります。
例えば、ヨガやピラティスなどのインストラクターの資格があれば、作業療法士の専門知識を生かしたオリジナルのレッスンが行えるでしょう。
リフレクソロジーや整体、パーソナルトレーニングなどの勉強をしてサロンを開業する人もいれば、訪問看護やデイサービスの事業所を立ち上げる人もいます。
また、フリーランスの作業療法士になれば、自分の裁量で自由に働ける上、努力次第では収入もアップするでしょう。ただし、医療機関や介護事業所に自ら営業に行く必要があるため、どちらかというと外向的でアクティブな人に向いています。
転職によって待遇がよくなるケースも
作業療法士の年収は、企業規模に比例する傾向があります。小さな事業所で働くよりも100人以上の大きな事業所で働いた方が待遇が改善する可能性が高いのです。できるだけ早く収入をアップさせたい人は、大きな事業所への転職を検討しましょう。
企業規模別に見た作業療法士の平均年収は以下の通りです。
- 10~99人:約414万円
- 100~999人:約418万円
- 1,000人以上:約462万円
転職を検討する際は、国内最大級の仕事・求人探しサイト「スタンバイ」を活用し、仕事内容や待遇を比較してみましょう。
参考:賃金構造基本統計調査 令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)|政府統計の総合窓口
作業療法士の年収アップには戦略が大切
作業療法士の国家資格は、合格率が80%以上と高いのが特徴です。資格を持っているだけでは年収は上がらないため、今のうちからしっかりとキャリアプランを考えておくことが重要です。
できるだけ短期間で収入を増やしたい人は、転職を検討しましょう。労働条件や待遇は、働く場所や事業所の規模によって変わります。「スタンバイ」には、作業療法士の求人が多数掲載されているので、ぜひチェックしてみましょう。