薬剤師の年収は低すぎる?年収アップの方法も解説

薬剤師の年収は本当に低いのでしょうか? 低いと感じている人が一定数いることは事実です。ではなぜそのように感じるのか、この記事では他の職業の年収と比べながら分析してみます。さらに、もっと年収を上げるにはどういった方法があるのかを解説していきます。

薬剤師の年収が低く思えるのはなぜ?

通帳とお札

(出典) photo-ac.com

薬剤師の年収が低いと思われがちな理由は、主に4つあります。

理由1:6年制大学卒なのに医師よりも年収が低いから

薬剤師になるためには、薬学部を卒業して国家試験に合格しなくてはなりません。薬学部は医学部と同じく、6年制で国家試験に合格する必要があります。それなのに医師に比べて薬剤師の年収は大幅に低いのが現状です。

厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、2021年現在での薬剤師の平均年収は580.5万円で、医師は1378.3万円です。数字だけをみれば薬剤師と医師の年収の開きは約2.4倍もあります。

しかし、医師の年収は全ての職業の中でもトップクラスで、高度に専門的な知識が必要な職業です。また、高齢化社会にあって医師不足のため激務を強いられていることも理由の1つでしょう。

参考:令和3年賃金構造基本統計調査|厚生労働省

理由2:昇給しにくいから

薬剤師の職場は昇給しにくい環境であるともいえます。病院・調剤薬局では役職手当が付く役職自体が少ないため、昇進しにくいのです。このため30代以上になると年収が上がりくくなります。

ドラッグストアでも会社自体が給与を抑えようとしていると、昇給しにくくなります。コロナ禍では会社自体の存続がかかっているので、従業員の給与は据え置きになるケースが多いようです。

理由3:薬学部の学費が高いから

私立大学の薬学部に入学した場合、6年分の平均的な学費は約1,100万円です。これに6年分の生活費や諸経費を加えると2,000万円を超えてしまいます。これだけの自己投資をしているのに薬剤師の年収は低い、元が取れないと感じてしまうのです。

ただし、薬剤師の平均年収580.5万円から生涯賃金を計算してみると約2億~2億3,000万円です。4年制大学卒業者に比べて、学費の元が取れないほど年収が低いとはいえません。薬剤師は日本全国で需要のある職業であるため、安定した収入を得られることもメリットです。

参考:文部科学省 令和3年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金 平均額(定員1人当たり)の調査結果について

理由4:業種や地域によって年収格差が大きいから

業種や地域によって大きく違うため、薬剤師の年収は低いと思われることがあります。
求人票に記載されている年収・報酬から判断すると、業種別薬剤師の平均年収はおよそ以下のようになります。

●病院 400万~450万円
●調剤薬局 450万~500万円
●ドラッグストア 500万~550万円
●製薬会社 500万~600万円

業種によってずいぶん差があることが分かります。

また、都道府県別で平均年収を見てみると以下のようになります。
●1位 山口県 667.1万円
●2位 香川県 652.9万円 
●3位 茨城県 649.2万円 
●4位 滋賀県 639.6万円
●5位 石川県 638.2万円
●47位 山形県 477.7万円

1位の山口県と47位の山形県では約200万円もの差があります。薬剤師が不足している地方では年収が高くなり、薬剤師が多い都市部では年収が低くなるからと考えられます。

参考:令和3年賃金構造基本統計調査|厚生労働省

薬剤師の年収は決して低くない

薬剤師の女性

(出典) photo-ac.com

上記のような理由で薬剤師の年収は低く思われがちですが、実際は決して低くはありません。日本全体の平均年収や他の医療従事者の年収と比べてみましょう。

他の職業と比べてみる

薬剤師の平均年収を日本全体の平均年収や資格が必要な職業と比べてみるとどうでしょうか。

●日本の平均年収:443万円(令和3年分 民間給与実態統計調査による)

●保育士 382.2万円
●理容・美容師 324.1万円
●ケアマネージャー 409.7万円
●小・中学校教員 698.6万円
●公認会計士・税理士 658.6万円

薬剤師の平均年収は580.5万円なので平均より高く、資格の必要な職業の中でも高い方だといえます。

参考:令和3年賃金構造基本統計調査|厚生労働省

他の医療従事者と比べてみる

看護師など他の医療従事者と薬剤師の年収を比べてみましょう。

●歯科医師 787.2万円
●診療放射線技師 546.7万円
●臨床検査技師 496.5万円
●理学療法士/作業療法士/言語聴覚士 426.5万円
●看護師 498.6万円
●准看護師 406.7万円

歯科医師を除けば、他の医療従事者の平均年収は400万円代から500万円代前半で、薬剤師の年収の方が高い状況です。

参考:令和3年賃金構造基本統計調査|厚生労働省

地方へ転職して年収を上げる

履歴書に記入する

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薬剤師の年収は決して低くはありませんが、もっと年収を上げるには地方で働くという方法があります。薬剤師が不足している都道府県では薬剤師に高い年収を支払う傾向にあるからです。

地方で働くメリット

地方で働くメリットは、何といっても物価や家賃が安いことです。たとえば東京でワンルームマンションを借りると、条件にもよりますが安くて月7万~8万円は必要です。地方では同じ金額でファミリータイプのマンションや一戸建てに住むことも可能です。

駐車場のある物件に住んで車通勤をすれば、満員電車のストレスからも解放されるでしょう(ただし車の維持費が発生します)。また、地方は自然豊かな環境で子育てができることも大きなメリットです。

ちなみに企業によっては、採用された場所と違う土地に配属された場合、地方勤務の手当を出すところもあるので確認しておきましょう。

地方で働くデメリット

地方で働くデメリットは、生活インフラが都市部に比べると不便であることです。公共の交通機関やお店・娯楽施設が少なくなりがちで、開催されるイベントや規模も限られています。
もう一つのデメリットはキャリアアップの難易度が高くなることです。学会や研究関連のイベントは東京など大都市で開催されることが多く、地方から出向くには費用と時間がかかります。しかし、最近はこうしたイベントでウェブ会議も併用され始めているため以前ほどのハンデキャップにはならないと考えられます。

地方へ転職する前に注意すべきこと

都市部から地方へ転職する場合は、事前に転職先の生活環境が自分に合っているかどうかをチェックしておきましょう。意外と転職するまで気づかずに失敗することがあります。
たとえば、地方のお店は閉店時間が早くなりがちで、深夜に空いている店は多くありません。全国チェーンの24時間営業のコンビニやファミレスが生活圏内にはない場合もあります。

次に、生活環境とともに職場についても下見しておくのがよいでしょう。給与や雇用形態を確認するのはもちろん重要です。

ただ、チェックするために遠距離を往復するのは大変です。さらに生活や職場について地方ならではの独自ルールがあるかもしれません。そんなときは転職サイトをうまく活用しましょう。転職サイトで勤務先を探す場合は、担当者を通して交渉できるためより確実な情報を得られます。スタンバイでは全国の薬剤師募集を探すことができます。

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昇進・昇給して年収を上げる

お札を数える

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年収を上げる方法としてより一般的な方法は、社内で昇進・昇給を目指すことです。

認定薬剤師・専門薬剤師などの資格を取得する

薬剤師の仕事は、日々新しい情報に敏感になり研さんを積み重ねていかなくてはなりません。せっかく勉強するのですから、資格という目に見える形にすることで客観的にもスキルを証明しやすくなります。


薬剤師の資格としては認定薬剤師と専門薬剤師が挙げられます。

●認定薬剤師:研修や実技の単位を取得して、最新の知識や技術を持っていると認定された薬剤師
●専門薬剤師:専門分野で十分な知識と技術を持っていると、各団体(学会)が認定した薬剤師

資格を取得すると資格手当を支給する会社もあります。積極的に合格を目指しましょう。

昇進条件を確認しておく

社内の評価基準および役職手当の有無を確認しておきましょう。昇給率・昇給のタイミングなどもできるだけ情報を集めます。昇給率は日本の平均が2%程度といわれているため、それ以下なら他の職場に転職するのもよいかもしれません。

あとは日々の努力が大切です。実はこれが一番難しいかもしれませんが、患者や同僚からの評判を損なわないようにして、社内での信頼度を上げていきましょう。

年収をアップさせるなら地方勤務がオススメ!

データを見る白衣の女性

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薬剤師の年収は低いと思われがちですが、それは医師の年収と比べてしまうからです。同じ6年制の大学卒業でも医師と薬剤師は役割や責任が違い、年収も異なります。
薬剤師の平均年収は他の職業や医療従事者に比べても高い方です。しかし、もっと年収を上げたい場合は、資格を取って社内で昇給・昇進を目指すのも良いでしょう。また、薬剤師が不足しがちな地方に転職するのもおすすめです。

 

※平均年収に関する数値は厚生労働省が出している「令和3年賃金構造基本統計調査」に基づいています。算出方法は「きまって支給する現金給与額×12カ月+年間賞与その他特別給与額=年収」としました。