介護の相談員とは、介護現場で相談援助を行う専門家です。「介護施設」「介護保険」「介護サービス」など活躍する分野は複数あり、名称もさまざまあります。複数ある介護の相談員の種類や特徴・具体的な仕事内容、さらには相談員になる方法を紹介します。
介護の相談を担う仕事とは?
介護の相談を受ける相談員には、「生活相談員」「介護支援専門員」「介護サービス相談員」などがあります。それぞれどのような仕事なのか、詳しく見ていきましょう。
施設などで相談を受ける「生活相談員」
高齢者福祉施設・介護福祉施設で、相談援助に携わるのが生活相談員です。施設の利用者やその家族の悩みを聞き、提供できる介護サービスの説明や、各種手続きのサポートを行います。自治体や医療機関・各種機関と連携する必要がある場合は、連絡・調整も重要な仕事です。
生活相談員の仕事は、勤務する施設によって大きく異なります。現場で介護に携わったり、施設のマネジメントを任されたりすることもあるでしょう。
介護保険サービスに強い「介護支援専門員」
介護支援専門員は、「ケアマネジャー」とも呼ばれる介護保険のプロです。要支援・要介護の高齢者が適切な介護保険サービスを受けられるよう、「ケアプラン」を作成します。必要があれば関係施設・機関との調整や、介護事業所と利用者の橋渡しを行うことも必要です。
介護支援専門員には、介護保険や介護に関する専門的な知識が求められます。就業のためには必要な研修を受けたり「介護支援専門員証」の交付を受けたりしなければなりません。
介護の品質向上を目指す「介護サービス相談員」
介護サービス利用者の不満や苦情などに対応するのが、介護サービス相談員です。介護サービス利用者から苦情や不満を聞き取り、施設との意見公開の上でサービスの改善低減を行うことでトラブルが大きくなったり長期化したりするのを防ぎます。
介護サービス相談員は、介護保険制度が始まった2000年に介護サービス利用者の権利擁護と介護保険サービスの質向上を目的として設置されました。元々の名称は「介護相談員」ですが、2020年4月より「介護サービス相談員」へと名称が改められています。
相談員に向いている人の特徴は?
介護の相談員は、人を相手にする仕事です。誰もがなれるものではなく、人によって向き不向きがあります。相談員に向いている人の特徴を見ていきましょう。
相談にきちんと耳を傾けられる
人の話を親身に聞ける人・どのような話にも耳を傾けられる人は、相談相手として信用されます。ヒアリングの精度が上がり、相談者にとって有益な提案を行えるでしょう。
また聞き上手な人は、人の言葉をくみとることにも長けています。「何から聞いたらよいか分からない」「言いたいことがうまく言えない」という相談者にとって、頼もしい存在となるはずです。
冷静でフットワークが軽い
相談者の中には、感情的になったり怒り出したりする人もいます。相手の言葉や態度にすぐに反応してしまう人は、相談員には向きません。どのような人・シチュエーションにも冷静かつフラットな態度で対応できる人は、相談員の仕事もスムーズに行えます。
さらに相談員の仕事は、デスクワークばかりではありません。トラブルや問題が起こったときは、積極的な関与が必要なケースもあります。必要があればすぐに相談者に面会したり、施設に出向いたりするなどフットワークの軽さも必要です。
生活相談員をもっと詳しく
生活相談員は、介護サービスの窓口的な存在です。相談援助が主な仕事ですが、場合によってはより多くの仕事に携わることもあります。生活相談員の仕事について、詳しく見ていきましょう。
具体的な仕事内容
生活相談員は、特別養護老人ホームや各種介護福祉施設に常駐する職員です。一般的には、「ソーシャルワーカー」の一種として認識されています。
仕事内容はさまざまですが、以下のような業務を行うことになるでしょう。
- 介護福祉施設の入退所の説明や手続きのサポート
- 施設利用者本人や家族の相談対応
- ケアマネジャー・地域包括センター・医療機関・自治体などとの連携・連絡・調整
- 施設内の連絡・調整
- 苦情対応
- 介護スタッフのサポート
- 利用者の個別支援計画の作成・ケアプラン作成の補助
施設の規模やスタッフの数によっては、生活相談員が現場業務を行うことも珍しくはありません。生活相談員として働く場合は、相談援助業務のスキルの他、身体介護や生活援助の知識・スキルが必要です。
生活相談員のやりがい
困っている人の役に立てるのが、生活相談員のやりがいです。自分の援助・提案によって、利用者やその家族の問題が解決されれば、介護の専門家として社会福祉に貢献できている喜びを感じられるはずです。
介護サービス・施設の利用者や家族から「ありがとう」「相談してよかった」などと言われれば、業務に取り組む上での大きなモチベーションとなるでしょう。
生活相談員になるには
生活相談員になるための要件は、自治体によって異なります。ただし介護サービスや社会福祉についての専門知識やスキルが必要となるため、社会福祉に関する資格が求められることがほとんどです。
具体的には、社会福祉士・精神保健福祉士・社会福祉主事任用資格などのいずれかが必要となるでしょう。それぞれの資格の取得方法は以下のとおりです。
- 社会福祉士:試験を受けて国家資格を取得。受験資格は福祉系大学などで指定科目を履修、あるいは一般養成施設で必要科目を履修するなど
- 精神保健福祉士:試験を受けて国家資格を取得。受験資格は福祉系大学で指定科目を履修、あるいは一般養成施設で学ぶなど
- 社会福祉主事任用資格:大学などで指定科目を履修する、厚生労働大臣が指定する養成機関または講習会を修了するなど
社会福祉士や精神保健福祉士の資格を取得できれば、そのまま社会福祉主事任用資格も得られます。自治体によっては、介護福祉士や介護支援専門員の資格保有者も、生活相談員の対象となることがあるようです。
介護支援専門員をもっと詳しく
介護支援専門員は、介護保険サービスの専門家として相談援助を行います。仕事内容ややりがい、介護支援専門員になる方法を見ていきましょう。
具体的な仕事内容
介護支援専門員の仕事は、介護を必要とする人が適切な介護保険サービスを受けられるよう支援することです。具体的には、以下の仕事があります。
- 訪問調査
- ケアプランの作成
- 各機関や施設との連携・連絡・調整
- 介護給付費の管理
介護支援専門員は、各自治体からの委託を受けて「要介護認定」のための訪問調査を行います。調査後は介護認定審査会に参加し、調査対象の要介護度を公正に審査・判定しなければなりません。
調査によって要支援・要介護となった人には、介護支援専門員が個別にケアプランを作成します。作成後は当事者や各分野の専門家を交えて会議を行い、プランの妥当性を検証することも必要です。
プラン実施後の経過も注視し、適宜修正・サービスの追加などを行わなければなりません。その他、各関係機関と連携したり、介護保険サービスの利用で発生する「介護給付費」を管理したりするのも仕事の一部です。
介護支援専門員のやりがい
介護支援専門員としてのやりがいは、要支援・要介護の人の健康状態や生活環境が改善されることです。
介護が必要となった本人やその家族は、多くの不安や問題を抱えています。自身が提案したケアプランが困っている人たちの助けとなれば、この仕事に就いてよかったと思えるはずです。
超高齢社会に突入している日本では、介護問題で悩む家庭が少なくありません。介護支援専門員のニーズは高まっており、必要とされていると実感できる場面は多々あるはずです。
介護保険サービスのプロとして、誇りを持って働けるのは大きな魅力といえるでしょう。
介護支援専門員のなり方
介護支援専門員になるためには、実務経験・試験の合格・実務研修が必要です。
まず実務経験は、指定された業務について「従事期間5年以上かつ従事日数900日以上」と定められています。指定された業務は、以下のいずれかです。
- 相談援助業務(生活相談員・支援相談員・相談支援専門員・主任相談支援員など)
- 特定の国家資格に基づく業務(医師・歯科医師・薬剤師・看護師・保健師など)
資格の要件を満たした人は、「介護支援専門員実務研修受講試験」に合格した後、87時間の「介護支援専門員実務研修」を修了すれば介護支援専門員として登録できます。
登録すると「介護支援専門員証」が交付され、介護支援専門員として働くことが可能です。
介護サービス相談員をもっと詳しく
他の相談員と比較して、業務に就くハードルが低いのが介護サービス相談員です。仕事内容ややりがい・なり方について見ていきましょう。
詳しい仕事内容
介護サービス相談員は、介護サービス提供者と利用者の橋渡しを行うのが主な仕事です。介護サービス事業所に足を運び、利用者の生の声に耳を傾け、必要があれば関係各機関と連絡を取り、適切な対応を求めることになります。
施設の雰囲気や職員の態度を観察することも、介護サービス相談員の重要な仕事です。問題があると思われる場合は、改善策を提案することもあります。問題が手に余る場合は、自治体と連携して問題解決に努めなければなりません。
注意したいのは、介護サービス相談員は橋渡し役・相談役である点です。訪問先の施設の良し悪しを判断したり、トラブルの仲裁を行ったりはできません。食事の介助や車椅子の乗降介助など、介護にあたる行為も禁じられています。
介護サービス相談員のやりがい
介護サービス相談員は、福祉系の資格がない人でも介護現場で役に立てるのが魅力です。
実際の介護に関わることはありませんが、介護サービス相談員の提案や指摘で介護サービスが改善されるケースは多々あります。介護が必要な人の役に立てると実感できることは、大きなやりがいとなるに違いありません。
また介護の現場に関わることができるのも、介護サービス相談員の魅力です。外側からは見えない介護サービス利用者の悩みや、介護の現状がよく分かるでしょう。
介護サービス相談員のなり方
介護サービス相談員には、特別な資格は必要ありません。自治体が主催する「介護サービス相談員養成研修」を40時間以上(介護サービス相談員補は介護サービス相談員補養成研修を12時間以上)受講し、各市区町村長の任命を受ければOKです。
ただし一定の知識やスキルを持つ人でも、介護に対する熱意やふさわしい人格がないと見なされると、介護サービス相談員として認められません。
登録後も現任研修に積極的に参加したり、コミュニケーションスキルの向上や介護保険制度の知識獲得に努めたりなど、介護の現場をよりよくしたいという強い意欲を保てる人が求められます。
介護の場で必要とされる相談員を目指そう
介護分野の相談員は、施設で介護を受けたり介護保険サービスを利用したりする人にとって頼りになる存在です。介護が必要な人やその家族の役に立ちたいという強い思いがある人に向いています。
介護分野の相談員になるためには、各種試験に合格しなければならない場合がほとんどです。まずは実務経験からと考える人は、介護福祉施設で実践的なスキルや知識を身に付けるのもよいでしょう。
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