国家資格である社会福祉士は、障害があったり生活が苦しかったりする人をサポートする仕事です。やりがいの大きい職種ですが、きつさから「社会福祉士はやめとけ」という声もあります。その理由は何なのでしょうか?仕事内容や適性とともに見てきましょう。
この記事のポイント
- 社会福祉士とは
- 社会福祉士は、障害がある人や生活に困難を感じている人に対して、アドバイス・援助を行う仕事です。専門的な福祉の知識が不可欠で国家資格が必要です。
- 仕事の厳しさとやりがい
- 社会福祉士は、深刻な問題を抱えている利用者と接する機会が多く、責任の重さに負担を感じる場面も少なくありませんが、利用者からの難しい要望に合った解決策を出すために、自分の知識を活かしてサポートできることがやりがいにつながります。
- 社会福祉士に向いている人は?
- 利用者だけでなく、行政・医療機関と連携するケースも多いため、コミュニケーション能力が必要とされます。また、相談内容や求められることは多岐に渡るため、幅広い知識を積極的に習得できる方が向いています。
「社会福祉士はやめとけ」と言われる理由は?
社会福祉士という仕事は、「やめとけ」「ブラック」などと言われることも多い職業です。社会福祉士がきついとされる理由や、大変なポイントについて解説します。
メンタル面の疲労が大きい
社会福祉士は、深刻な問題を抱えている利用者と接する機会が多い仕事です。利用者は、毎日の生活・健康に関する悩みを抱えており、助けを求めて相談に訪れます。
利用者の事情を聞き、親身になって対応すること自体に、大きな負担を感じる人も少なくありません。多くの人の悩みに寄り添うことで、相談を受ける側にも精神的な負担がかかります。
相談内容や求めていることが1人1人違うからこそ、誰に対しても丁寧に向き合う姿勢が必要です。社会福祉士は対応の仕方が人の命にも関わる仕事であるため、責任の重さに追い詰められる人もいるでしょう。
努力が報われないことも
利用者のためを思って問題を改善しようと努力しても、必ずトラブルが解決するとは限りません。時には利用者と揉めてしまったり、申し出を断られたりするケースもあることを知っておきましょう。
利用者の状況によっては、適切だと判断したサービスを提供できないケースもあります。相談の内容次第では、そもそも問題を解決する手段が見つからない場合もあるでしょう。
また、相手のことを考えて取った行動が、相手からすれば迷惑だと思われることがあるのも苦労が多い理由です。賢明に考えた末の提案が相手に受け入れられなければ、頑張っても報われないと感じるかもしれません。
人間関係に疲れやすい
利用者のためにサービスの手続きを進める作業は、社会福祉士の仕事に含まれています。利用者への対応だけでなく、行政・医療機関とのやり取りも必要です。
利用者の希望を伝えたり行政側の指示を聞いたりと、間に入って手続きを進める社会福祉士は、板挟みの立場になります。自然と関わる人が多くなるため、人間関係に疲れてしまうのも大変なポイントです。
社会福祉士が1人しかいない職場では、同僚たちから孤立しやすい傾向もあります。仕事の悩みがあっても相談相手が見つからず、人間関係の悩みが原因で離職するケースは珍しくありません。
平均年収は全国平均よりもやや低め?
厚生労働省の職業情報提供サイトを見ると、社会福祉士を含む「福祉ソーシャルワーカー」の平均年収は約404万円です。日本人の給与所得者全体の平均年収443万円(国税庁が行った2021年分の「民間給与実態統計調査」より)と比べれば、やや低めの水準となっています。
福祉ソーシャルワーカーには資格を持たないソーシャルワーカーも含まれるため、社会福祉士だけに絞れば404万円より平均年収が高い可能性が高いでしょう。また、同じ福祉系の仕事でも、平均年収が約353万円の「施設介護員」と比べれば高めの給与水準です。
とはいえ、「やめとけ」と言われる理由を考慮すると、業務負荷と収入のバランスが取れていないように感じるかもしれません。満足できる対価を得たいなら、社会福祉士以外にも福祉系の資格を取るといった努力をした上で、できるだけ待遇のよい就職先を探しましょう。
参考:
福祉ソーシャルワーカー - 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
施設介護員 - 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
令和3年分 民間給与実態統計調査|国税庁
社会福祉士の仕事内容
社会福祉士の仕事は、困っている人にサービスを提供する相談業務がメインです。主な仕事の内容や、働く場所についてチェックしましょう。
困っている人のヒアリング
社会福祉士は、障害がある人や生活に困難を感じている人に対して、アドバイス・援助を行う国家資格です。
児童相談所・障害者支援施設など働く場所は多岐にわたり、相談の内容もさまざまです。相談しに来た人が適切な福祉サービスを受けられるよう、何度も丁寧なヒアリングを重ねます。
相談された内容によっては、利用者と個別にカウンセリングを行うケースも少なくありません。利用者の要望に合った解決策を出すためにも、制度・サービスに関する専門的な知識が求められます。
参考:[社会福祉士国家試験]:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター
その人に合ったサービスを提案
利用者にとって有益な福祉サービスを提案するのはもちろん、サービスを受けられるように手伝うのも社会福祉士の仕事です。実際にサービスを受けるまでには、行政・医療機関との連携も欠かせません。
利用者に代わって複雑な手続きを進めたり、サービスの内容を分かりやすく説明したりと、相手の立場を考えながら支援を進めます。支援計画書のような書類を作成するのも、仕事1つです。
提供されたサービスが利用者に合っていないと判断したときは、支援内容を見直します。利用者の様子を見ながら、継続的に相談に乗ることも重要です。
介護の分野でも活躍
社会福祉士の中には、支援員として介護施設で働いている人も少なくありません。介護施設の入居者・デイサービスの利用者に加えて、その家族を対象に相談に対応します。
施設に入居する際の手続きをしたり利用できる介護サービスを紹介したりと、家族の介護をしている人にも多様な支援をします。施設を退所した後まで、支援を続けるケースもあります。
介護の現場は人手不足の傾向にあり、実際に介護士の手伝いに回っている人もいるでしょう。高齢者の後見人として、財産管理を担当するのも社会福祉士の業務の一部です。
社会福祉士に向いている人
事務能力だけでなく、コミュニケーション能力を求められるのも、社会福祉士の特徴です。社会福祉士に向く人の考え方や、性格を見ていきましょう。
責任感が強い人
社会福祉士には、福祉に関する知識はもちろん、法律に関する知識が求められます。持ち込まれる相談内容によっては、その都度新しい分野について学ぶ必要が出てくるでしょう。
働いているうちに、福祉サービス・制度が変更される可能性も考えられます。資格を取得したからといって満足せず、必要に応じて学び続けていく努力が欠かせません。
自分が利用者の生活を大きく左右するという責任感を持てる人は、積極的に知識のアップデートに励めるでしょう。さらに真面目な性格であれば、煩雑な手続きもコツコツこなしていけるはずです。
相手の気持ちに寄り添える人
相談に訪れる利用者の中には、長年悩みを抱えて疲弊している人も数多くいます。精神的に追い詰められた相手とは、コミュニケーションが難しいと感じる場面もあるでしょう。
何気ない言葉で相手を怒らせてしまう、提案が受け入れられないなど、面談がスムーズに進まないこともあります。反発があったり意見が合わなかったりしても、まずは親身に話を聞くのが対応の基本です。
社会福祉士の仕事には、第一に利用者の状況を考えた対応が求められます。相手の気持ちを理解しようと思える人なら、うまく相談に対応できるでしょう。
福祉の知識と人を思いやる気持ちが大切
国家資格である社会福祉士の仕事に就くには、専門的な福祉の知識が不可欠です。制度が変更されることもあるため、仕事をしながら勉強を続けていく熱意も求められます。
援助を求める利用者をサポートするには、知識だけでなく、相手の助けになろうとする気持ちが大切です。利用者の悩みにしっかりと耳を傾け、適切な支援を提供できるように努力しましょう。
社会福祉士は「やめとけ」とも言われるほど精神的な負担が大きいものの、社会に貢献できます。働きに応じた給与がもらえれば、やりがいを持って働けるはずです。求人数に強みのあるスタンバイで、待遇のよい就職先を探してみましょう。