正社員が会社をクビになったらすべきこととは?必要な手続きを知ろう

正社員が突然クビを告げられた場合、どう対処するのが正解なのでしょうか?具体的な手続きや状況ごとの必要なアクション、損をしないためにチェックしておきたいポイントなど、知っておきたい情報を整理していきましょう。

正社員のクビ(解雇)には種類がある

頭を抱える男性

(出典) photo-ac.com

正社員をはじめ雇用期間に定めのない社員を会社がクビにする(解雇する)ときには、何らかの理由がなければ認められません。解雇の種類はその理由によって3種類に分けられます。種類ごとの意味を見ていきましょう。

懲戒解雇・普通解雇・整理解雇

解雇の種類としては、「懲戒解雇」「普通解雇」「整理解雇」の3つがあります。それぞれの意味を説明します。

  • 懲戒解雇:会社に著しい不利益を与えるような悪質な行為があった場合に下される処分。懲戒処分の中で最も重い。
  • 普通解雇:能力不足や勤怠不良・著しい適性の欠如など、労働者側の契約不履行(業務が遂行されていない)が原因の労働契約の解除。
  • 整理解雇:いわゆるリストラ。経営上の問題で人員削減を目的とした労働契約の解除。

一口に解雇といっても、種類によって退職後の扱いが変わります。クビを言い渡されてしまったときは、どのケースに当てはまるのかを確認しておきましょう。

種類を問わず解雇には正当な理由が必要

労働契約法には、懲戒解雇を含む懲戒処分や、解雇ついての考え方が示されています。客観的に合理性があり、労働者側の行為や状態に照らして妥当と判断される懲戒処分や解雇でなければ、認められません。

解雇が不当なものと認められた場合、種類を問わず解雇は無効になります。日本では会社が正社員を解雇するハードルは極めて高く、よほどのことがない限りクビにはできないのが実情です。

クビを言い渡された理由に疑問があるときは、本当に正当な解雇なのかを考えてみる必要があるでしょう。

参考:労働契約法 第15条・第16条| e-Gov法令検索

会社をクビになったら何をすればよい?

解雇通知

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実際にクビを告げられたら、突然のことにパニックになってしまうかもしれません。しかし、冷静に対応しないと、本来は防げたはずの不利益を被ったり退職後の生活が不便になったりする可能性があります。状況別に取りたい行動をチェックしておきましょう。

解雇予告通知書(解雇通知書)の確認

労働基準法では、解雇にあたって会社側は遅くとも30日前までに予告しなければならないと定めています。予告が解雇の30日前より後・即日解雇の場合は、手当を支払う決まりです。

クビを告げられてから解雇まで日数があれば、解雇日が来る前に「解雇予告通知書」を確認しましょう。解雇予告通知書は会社が解雇の意思を示すもので、解雇日や解雇理由が記載された書面です。即日解雇なら「解雇通知書」が発行されます。

ただ、口頭での予告や通知も認められているため、必ずしも解雇予告通知書や解雇通知書を受け取れるわけではありません。解雇理由が書かれていないケースもあります。

口頭のみだったり理由の記載がなかったりした場合は、解雇理由が書かれた証明書(解雇理由証明書)を請求しましょう。同法では、予告から解雇日までに労働者が解雇理由の証明書を請求した場合、会社は必ず発行することとされています。

解雇理由が書かれた書面は、万が一不当解雇だった場合に裁判で争うときの証拠になります。ただ、即日解雇で解雇通知書がないケースでは解雇までに証明書を請求できないので、退職後の対処が必要です。

参考:労働基準法 第20条第1項・第22条第2項| e-Gov法令検索

退職後にも解雇理由の証明書を請求できる

退職までに解雇理由が書かれた書類を受け取れなかった場合、退職後に解雇理由についての証明書を請求しましょう。請求された場合、会社はできるだけ早く発行しなければならない決まりです。

次の項目については、労働者側が希望すれば必ず記載してもらえます。

  • 働いていた期間
  • 担当していた仕事の種類
  • 社内のポジション
  • 解雇の場合は解雇理由を含めた退職理由

解雇理由が不当だったり、本来支給されるはずのお金がもらえていなかったりといった問題があっても、書面がないと証明が難しくなります。退職してしまったからと諦めずに請求しましょう。

参考:労働基準法 第22条第1項| e-Gov法令検索

年金・健康保険の切り替え手続き

正社員が解雇を受け入れて退職した場合、速やかに済ませたいのが、年金・健康保険の切り替え手続きです。

まず年金について、退職後の手続きは以下の2パターンに分かれます。

  • 国民年金に加入する:住んでいる地域の市区役所または町村役場で手続き(退職の翌日から14日以内)。
  • 配偶者の扶養に入る:配偶者の勤務先を通じて手続き(退職の翌日から14日以内)。

健康保険の切り替え手続きは、以下の3パターンです。

  • 任意継続被保険者制度を利用する:退職前の健康保険を最大2年間延長利用できる制度。住所地の協会けんぽ支部、もしくは各健康保険組合を通じて手続き(退職日の翌日から20日以内)。
  • 国民健康保険に加入する:住所地の市区役所・町村役場で手続き(退職の翌日から14日以内)。
  • 家族の扶養に入る:家族の勤務先を通じて手続き(原則退職の翌日から5日以内)。

解雇予告を受けてから転職活動をしていて、日を開けず社会保険加入の仕事に就く場合は、どちらの手続きも不要です。入社時に必要な書類を提出して、切り替えを待ちましょう。

参考:
会社を退職した時の国民年金の手続き|日本年金機構
会社を退職するとき | こんな時に健保 | 全国健康保険協会

もらえるお金を整理する

正社員として働いていた会社をクビになってしまったときは、次の仕事に就くまでの生活費に困らないための資金計画も必要です。現時点での貯金や、退職に伴ってもらえるお金を整理しておきましょう。

退職にあたって一般的に受け取れるお金には、「退職金」と「雇用保険の失業手当(失業保険)」があります。退職金の有無は会社の精度や解雇理由によってもらえない可能性ありますが、失業保険は受け取れるケースが多いでしょう。

また、場合によってはもらえる可能性があるのが、「解雇予告手当」「解雇後の賃金」「慰謝料」です。

解雇予告手当は、30日前までの解雇予告がなかった場合に、補償として支給されます。また、解雇後の賃金・慰謝料は、解雇が不当だと認められた場合に支払われ場合があります。

自身の権利を守るためにも、もらえるお金については念入りに確認しておきましょう。

クビが納得できないときは?

クビの事実に納得がいかず、会社側と争う意思があるなら、次のような行動は避けましょう。

  • 退職届への署名捺印
  • 失業保険の本受給
  • 解雇予告手当・退職金の請求

退職届への署名捺印すると、自分の意思で退職することになってしまいます。また、失業保険の本受給や解雇予告手当・退職金の請求は、すでに退職した(解雇に納得している)と認める行動です。

自分を不利な状況に追い込まないためにも、避ける必要があるでしょう。

知らないと損をする?考えられるケース

解雇通知と弁護士イメージ

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解雇をめぐっては、知識がなかったがために損をしてしまうケースもあります。後悔することのないよう、考えられるケースを確認していきましょう。

そもそも不当解雇だった

会社が労働者を解雇するためのハードルは高く、よほどの理由がない限り正当とは認められません。例えば「何度か遅刻した」程度での解雇は、無効と考えるのが一般的です。

解雇の正当性を争う場合には、解雇無効請求を起こします。裁判所に無効が認められれば復職できる上、復職しない道も選べます。いずれの場合でも、解雇日以降の賃金の請求が可能です。

あらゆる事態に備え、解雇(予告)通知書・解雇理由証明書で、解雇日・解雇理由を明確にしておくことが大切です。

自己都合退職にされてしまう

労働者側に重大な責任があるケースを除き、解雇による退職は会社都合扱いとなります。ただ、実際は解雇であるにもかかわらず、退職届の提出を促して自己都合退職にしようとする会社もまれにあります。

会社都合を自己都合として扱われると、失業保険の受給という面で大きな問題です。

  • 自己都合退職:失業給付金の受給までに「待機期間7日+給付制限2〜3カ月」を待つ必要がある。給付期間は90~150日。
  • 会社都合退職:「待機期間7日間」を待てば失業給付金を受け取れる。給付期間は90~330日。

解雇による退職である以上、自己都合退職を促されても受け入れる必要はありません。自分自身で交渉するか、難しければ労働問題に精通した弁護士に相談するといった対策を取りましょう。

参考:ハローワークインターネットサービス - 雇用保険手続きのご案内

実は解雇予告手当の対象だった

労働基準法では、会社が労働者を解雇する場合、少なくとも30日前までに解雇予告をしなければならない旨が定められています。

やむを得ず即時解雇とする場合には、「解雇予告手当」として30日分以上の平均賃金を支払わなければならない決まりです。また、予告日から解雇日まで30日に満たなかった場合、不足した日数分の平均賃金を支払うよう義務づけられています。

解雇予告手当は、退職後2年以内であれば請求可能です。正しく支払われていないことが分かったら、解雇(予告)通知書や解雇理由証明書など解雇日が書かれた書面をハローワークに持参し、手続きを進めましょう。

参考:労働基準法 第20条第1項・第115条| e-Gov法令検索

心機一転で再就職を目指すなら

履歴書を手にする男性

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クビによる退職後に心機一転、次は長く続けられる新しい仕事を探したいと思う人は多いでしょう。再就職を目指すにあたって、意識したいポイントを紹介します。

自分に合う仕事を見つけよう

「自分に合う仕事」の考え方は人それぞれですが、主体性を持って取り組め、成果を出してモチベーションを維持できるかどうかは1つの目安です。

やりがいを持って続けられる仕事に出会うためには、まず自分が求める労働条件を洗い出し、それに見合った仕事を探しましょう。

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クビになったらケースごとに最適な行動を

ネクタイを締める男性

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会社からクビを告げられたら、まずは解雇が正当なものであるかどうかを確認しましょう。不当解雇であれば、解雇無効訴訟を起こすことで復職も可能です。

仮に解雇が正当なものであったとしても、30日前までの予告がなければ、解雇予告手当の支払い対象になります。

正当なお金を受け取ることは、就職活動中の生活の不安払拭につながります。自分に合った仕事探しをじっくり行う上での、大きな助けとなるでしょう。