診療放射線技師の平均年収は約537万円で、他の医療職より高水準です。スキルアップや資格取得で収入向上が見込めます。資格には放射線機器管理士や放射線管理士などがあり、取得するとキャリアの幅を広げられるでしょう。
▼この記事のポイント(記事概要)
- 診療放射線技師の給与水準
診療放射線技師の平均年収は、2023年度で約537万円と比較的高水準といえます。 - 給与の推移と条件による違い
給与は勤務先の規模・地域・経験年数によって大きく異なります。 - スキルアップによる収入向上の可能性
専門資格を取得することで、キャリアアップや給与の向上が期待できます。
診療放射線技師の給料の相場は?
診療放射線技師は、医療現場で重要な役割を担う専門職の1つです。レントゲン・CT・MRIなどの画像診断装置を操作し、医師が正確な診断を下せるように支援します。その専門性の高さから、給与水準も比較的安定している職業といえます。
以下の項目で診療放射線技師の給料の相場について、詳しく解説します。
なお本記事では、基本給以外の諸手当を含めた給与を「給料」として記載しています。
※賃金構造基本統計調査のデータは、一般労働者・企業規模10人以上のものを使用
※平均年収(年間の給料)は、賃金構造基本統計調査における「きまって支給する現金給与額」の12カ月分と「年間賞与その他特別給与額」を合計した金額
2023年度の平均年収は約537万円
2023年の「賃金構造基本統計調査」によると、診療放射線技師の平均年収は約537万円です。
診療放射線技師の年収は、基本給に加え、各種手当や賞与が含まれる形で算出されています。具体的には「きまって支給する現金給与額」の月額平均が36万7,400円であり、これを12カ月分合計すると440万8,800円です。
さらに「年間賞与その他特別給与額」が96万0,900円支給されるため、これらを合計すると、平均年収は約537万円となります。
なお診療放射線技師の給与は、勤務する医療機関の規模・地域や、経験年数などによって異なります。例えば大規模な病院・大学病院では、給与水準が高くなる傾向にあります。
また夜勤や当直勤務がある場合は、手当が加算されるため、実際の月収がより高くなるケースも少なくありません。
給与の向上を目指すためには、経験を積んだり、専門の資格を取得したりすると良いでしょう。
出典:「賃金構造基本統計調査」1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)| 政府統計の総合窓口
他の医療関係職と比較しても給与水準は高い傾向にある
診療放射線技師の給与は、医療職の中でも比較的高い水準にあります。厚生労働省の「2023年賃金構造基本統計調査」によると、診療放射線技師の平均年収は約537万円で、看護師の平均年収約508万円、理学療法士・作業療法士の平均年収約433万円と、その他の医療色と比較して高めです。
また、勤務先の規模によっても年収に差があり、特に1,000人以上の医療機関では、さらに高い給与が期待できます。
給与水準が高い背景には、専門性の高さがあります。CT・MRI・X線などの高度な医療機器を正確に操作する技術や、患者の安全を確保しながら適切な撮影を行う責任が求められるためです。
また診療放射線技師の活躍の場は、病院やクリニックに限らず、医療機器メーカーや研究機関にも広がっています。特にメーカーの技術職やアプリケーションスペシャリストなどの職種では、さらに高い給与を得ることも可能です。
収入を向上させるには、スキルアップや資格取得が重要です。核医学検査や放射線治療などの専門資格を取得すれば、より高度な業務に携われるだけでなく、給与の上昇も期待できます。また、管理職や主任技師への昇進によって、さらなる収入アップを目指せるでしょう。
条件別にみる診療放射線技師の収入
診療放射線技師の収入は、勤務先の種類や地域、経験年数、雇用形態などによって大きく異なります。初任給の目安から、年齢や性別による違い、都道府県ごとの平均年収まで、さまざまな視点から給与の実態を詳しくみていきましょう。
また、短時間労働のケースや近年の収入推移についても解説します。診療放射線技師としてのキャリアを考える際の参考にしてください。
診療放射線技師の初任給はおよそ278万円
診療放射線技師の初任給は、厚生労働省の「2023年賃金構造基本統計調査」にもとづき、20歳~24歳の経験年数0年のデータから推測すると、年収約278万円となります。これは、所定内給与額(月収)と年間賞与その他特別給与額を合算して算出されます。
具体的には、20歳~24歳の所定内給与額は22万6,500円であり、年間賞与その他特別給与額は6万9,100円とされています。これをもとに計算すると(22万6,500円×12カ月)+6万9,100円=約278万円となります。
出典:「賃金構造基本統計調査」10 職種(小分類)、年齢階級、経験年数階級別所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)| 政府統計の総合窓口
年齢別では55~59歳で最も給与水準が高くなる
診療放射線技師の給与は年齢とともに上昇し、特に55歳~59歳で最も高い水準に達します。この年齢層の平均年収は約713万円となり、他の年代と比較しても高い水準です。
給与水準の高さには、長年の経験や専門知識の蓄積が影響しています。また、診療放射線技師の平均勤続年数は13.4年と比較的長く、医療関係職の中でも安定したキャリアを築きやすい職種であることが分かります。
給与の内訳としては、基本給に加え、賞与が大きな割合を占めています。特に勤続年数が長くなるにつれ、賞与の支給額も増加する傾向があります。55歳~59歳の技師にとっては、年間賞与の額も高くなり、それが年収全体を押し上げる要因の1つです。
性別による平均年収の差
診療放射線技師の平均年収には、性別による差がみられます。男性の平均年収は約516万円、女性は約450万円と、約66万円の差があります。
この違いは、男性の平均勤続年数が14.5年、女性が10.1年と、勤続年数の差が要因です。勤続年数が長いほど昇給や役職に就く機会が増え、年収の上昇につながる傾向があります。
また、ライフイベントによる就業継続の違いや、勤務先の選択による給与水準の違いも影響している可能性があります。
都道府県ごとの平均年収
診療放射線技師の平均年収は地域によって異なりますが、大都市を有する都道府県が必ずしも高いわけではありません。例えば、東京都の平均年収は約524万円ですが、神奈川県は約519万円、大阪府は約582万円です。
一方で、秋田県では平均約642万円と高水準ですが、勤続年数が17.8年と全国平均よりも長く、年収だけで地域差を比較するのは難しい点もあります。
地方でも経験を積むことで高収入が得られる場合があり、単に勤務地の違いだけで収入を判断するのは適切ではないといえます。
出典:「賃金構造基本統計調査」3都道府県、職種(特掲)、性別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)| 政府統計の総合窓口
短時間労働の場合
診療放射線技師が短時間労働を選択するケースもあります。短時間労働に従事する診療放射線技師の平均労働時間は1日6.0時間、月間の実労働日数は約11.1日です。これらの条件で計算すると、月収は約16万1,700円となり、時給換算すると約2,450円となります。
短時間労働は、仕事とプライベートとの両立を図りながら働く上で有効な選択肢です。しかし、労働時間や日数が限られるため、収入面での調整が必要となるかもしれません。自身のライフスタイルやキャリアプランに合わせて、勤務形態を検討しましょう。
出典:「賃金構造基本統計調査」1 短時間労働者の職種(小分類)別1時間当たり所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)| 政府統計の総合窓口
診療放射線技師の平均年収推移
近年の診療放射線技師の平均年収は、2021年547万円・2022年544万円・2023年537万円と推移しています。一方、全給与所得者の平均給与は、2021年443万円・2022年458万円・2023年460万円と推移しています。
これらのデータから、全給与所得者の平均給与は徐々に増加している一方、診療放射線技師の平均年収は減少傾向にあります。しかし、診療放射線技師の平均年収は依然として全給与所得者の平均を上回っており、専門職としての高い給与水準を維持しています。
出典:令和3年「賃金構造基本統計調査」1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)| 政府統計の総合窓口
出典:令和4年「賃金構造基本統計調査」1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)| 政府統計の総合窓口
出典:令和5年「賃金構造基本統計調査」1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)| 政府統計の総合窓口
スキルアップを目指せる認定資格
診療放射線技師としてキャリアアップを目指す際、専門性を高める認定資格の取得は非常に有効です。認定資格には多くの種類があり、自分に適した資格を選びましょう。ここでは、診療放射線技師におすすめの認定資格を紹介します。
放射線機器管理士
放射線機器管理士は、医療施設での放射線機器の安全管理や品質維持を担当する、重要な資格です。この資格を取得するためには、放射線機器の特性を理解し、適正な使用を確保するための管理スキルが必要です。
講習では、関係法令や診断用X線装置などの機器の扱い方を学び、放射線機器管理に関する知識を深めます。試験では講習内容にもとづく理論や実務能力が問われます。
放射線管理士
放射線管理士は、医療施設における放射線の安全管理・医療被ばくの低減に努める重要な資格です。医療現場での放射線防護に加え、緊急時の被ばく医療にも対応します。
この資格は、放射線被ばくから国民の生命を守ることを目的としており、講習や試験では診療における放射線防護だけでなく、線量計測・除染・災害時対応などを専門的に学びます。
また関係法令についても深く理解し、医療施設内外での放射線安全管理に貢献できる知識と技術が必要です。
医療画像情報精度管理士
医療画像情報精度管理士は、放射線診療においてより良い医療画像および情報を提供するため、医療画像情報の適切な利用・管理を行う資格です。
この資格を持つ人は、医療機関で画像データの管理責任者として常駐し、画像情報の精度を確保します。医療用高精細モニターの管理や、施設外のデータセンターでの画像データ集約など、効率的なデータ管理も求められます。
さらに医療関連知識だけでなく、コンピューターやネットワークに関する基礎的な知識も必要です。災害時にはBCP(事業継続計画)にも対応し、緊急時にもデータの安全管理を行います。
臨床実習指導教員
臨床実習指導教員は、診療放射線技師を目指す学生向けの指導・医療現場での教育を担当する資格です。この資格を持つ人は、臨床実習の実施や、診療放射線技師としての資質向上に寄与する重要な役割を担います。
指導教員として、実習施設の指導者に必要な知識や、臨床実習の効果的な指導方法を習得し、学生の実践的な学びをサポートします。
臨床実習指導教員になるためには、公益財団法人医療研修推進財団(P-MET)が実施する実習施設指導者養成講習会を受講し、さらに日本診療放射線技師会の講習会を修了した後、認定試験に合格することが必要です。
放射線被ばく相談員
放射線被ばく相談員は、医療被ばくに限らず、環境汚染などを原因とする放射線被ばく全般に対応する専門資格です。医療被ばくの管理に加え、災害時の被ばく相談・メンタルヘルス支援・リスクコミュニケーションなどの知識を習得します。
資格取得には、日本診療放射線技師会の講習会を受講し、認定試験に合格することが必要です。2024年時点で全国の有資格者は559人と少なく、自治体によっては1人しかいない場合もあります。
他にもさまざまな資格取得を目指せる
これまで紹介した5つの資格は、日本診療放射線技師会(JART)が定めるものですが、他にも取得可能な資格があります。
例えば、検診マンモグラフィ撮影認定診療放射線技師は、日本乳がん検診精度管理中央機構が管理する、マンモグラフィ撮影の専門知識を習得する資格です。
またX線CT認定技師は、日本X線CT専門技師認定機構が運営し、一定の業務経験と講習修了後の試験合格で認定されます。これらの資格を取得すれば、専門性を高められ、キャリアアップにつなげられるでしょう。
スキルアップで仕事の幅を広げよう
診療放射線技師は、医療現場で画像診断を担当する専門職です。給与水準は安定しており、2023年の賃金構造基本統計調査によると、平均年収は約537万円です。
年収は勤務先の規模・地域・経験年数によって変動しますが、大規模な病院に勤めていたり、専門資格を持っていたりする場合は、さらに高い収入が期待できます。
給与を向上させるには、スキルアップや資格取得が大切です。放射線機器管理士・医療画像情報精度管理士などの資格を取ることで、専門的な知見を広げられ、キャリアアップを実現できるでしょう。
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