営業職は実力次第で高収入も可能な職種です。営業経験がない人でも採用されやすく、未経験から転職する人も数多くいます。営業職に転職したいけれど仕事の内容がよく分からないという人は、営業職の種類や仕事の流れ、平均年収を確認しましょう。
営業職とはどんな仕事?
営業職に興味はあるものの、具体的にどのような仕事なのか把握していない人も多いかもしれません。営業職を簡潔に表現すると、商品やサービスを購入してもらうよう働きかける仕事です。営業職の仕事について具体的に説明します。
営業職は自社の売上に貢献する仕事
営業職は、顧客に対して自社の商品やサービスを提案して購入してもらう仕事です。「営業マン」や「セールスマン」とも呼ばれるため、商品を売り込むのが主な仕事だと思っている人も多いでしょう。
しかし営業職の仕事は本来、顧客が抱えている課題を聞き出し、解決方法を提案するのが基本です。自社の売上に直接的に貢献する役割なので、結果を出すことによって昇進や昇給にもつながりやすく、やりがいを感じられる仕事でもあります。
顧客から見れば、企業の顔ともいえる立場です。
販売職との違い
営業職と販売職は、商品やサービスを顧客に提供するという点では似ていますが、顧客の購買意欲に対するアプローチの仕方が異なります。
営業職は顧客に向けて商品やサービスを提案し、購買意欲を引き出すのが職務です。一方で販売職は、商品を購入するという意欲を持って来店した顧客に対し、商品やサービスの魅力を伝えて購買意欲をさらに高めるのが主な仕事です。
例えば、すでに自動車を所有している顧客に新車購入の案内などを行うのが営業職で、自動車の購入を考えて来店した客に対応するのが販売職と考えれば分かりやすいでしょう。
営業の種類はさまざま
営業職といっても、種類は多様です。例えば、個人営業と法人営業のように商品を売る相手の違いや、新規営業や既存営業など営業手法の違いによって、具体的な仕事の内容は異なります。
また、客先に訪問して営業する訪問営業や飛び込み営業だけでなく、自社内で電話によって商品について案内する内勤営業も営業職の一種です。
営業職が取り扱う商材も、業界ごとにさまざまな種類が存在します。そのため、同じ営業職でも、種類によって求められる知識やスキルも多様です。
基本的な仕事の流れをチェック
営業の種類によって多少の違いはあるものの、基本的な仕事の流れは決まっています。営業職の具体的な仕事内容を確認しましょう。
戦略策定・リサーチ
営業職は、やみくもに商品やサービスを売り込みむわけではありません。まずは営業戦略を策定し、顧客についてしっかりリサーチするところから始めます。
営業職は個人で結果を出せばよいという仕事ではなく、チームとして最高の成績を挙げるのが基本です。まずチームの中長期的な目標を決め、そこから逆算して年度内や月間の目標値を設定します。
チームとしての目標が決まったら、個々の営業担当者に達成目標が割り振られます。営業戦略を立てた後に決めるのが、具体的なアプローチ先です。自分の担当エリアの中から契約の見込みのある顧客を洗い出し、優先順位をつけてリスト化します。
アポ獲得・商談
アプローチ先が決まったら、営業活動を開始します。営業にもさまざまな進め方がありますが、電話をかけたり直接顧客のもとに出向いたりしてアポを取り、日を改めて商談するというスタイルが一般的です。
アポを獲得できたら、具体的に商談を進めます。商談では、単に商品やサービスについて説明するだけではありません。
相手の要望や困っていることを丁寧にヒアリングし、ニーズに沿って提案することが重要です。提案内容に興味を持ってもらえたら、具体的な金額を提示するために見積書を作成します。
商品・サービスの手配と納品
見積書の内容に納得してもらい受注できたら、商品やサービスを納品するための手配に移ります。企業によっては、受注業務を営業事務が担当するケースもあるでしょう。
しかしその場合も、商品が顧客に納品されるまで、営業職が責任を持って見届けなければなりません。何らかの不備やトラブルがあった場合には、迅速な対応が求められます。
商品が無事に納品されたら請求書を発行し、予定通り売掛金が回収できるように管理するのも営業職の仕事です。企業によっては、請求書の発行は経理部門が担当するケースもあります。
アフターフォロー
商品やサービスを納品した後のアフターフォローも、営業職にとって重要な仕事です。購入してもらったことへのお礼だけでなく、商品やサービスに問題はないか、使っていて分からないことはないかといった点をヒアリングします。
電話やメールでの定期的なコンタクトに加え、訪問して顧客から直接聞き取る姿勢も大切です。アフターフォローを充実させて顧客との信頼関係を強化し、リピート販売やアップセル・クロスセルなどにつなげます。
営業職の平均年収はどれくらい?
営業職の平均年収は、取り扱っている商品やサービスの種類によって異なります。厚生労働省のデータに基づき、「自動車」「保険」「金融」「機械器具・通信・システム」を扱う営業の平均年収を確認しましょう。
なお平均年収は、「令和3年賃金構造基本統計調査」の「きまって支給する現金給与額(企業規模計10人以上)」の12カ月分と「年間賞与その他特別給与額」を合計して算出しました。
自動車の営業
厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、自動車の営業(自動車営業職業従事者)の平均年収は523万2,300円です。自動車営業は、自動車メーカーや販売店(ディーラー)で、自社の車を販売するために営業活動を行います。
自社の車を購入した既存顧客やディーラーに来店した新規顧客に対して、展示会やイベントの案内などを通じて、得意客を増やしていくのが仕事です。車は高価な買い物なので、顧客が納得できる説明や提案によって信頼を得ることがポイントです。
また、買い換え時期を狙って効率的に営業活動できるよう、顧客情報も管理します。さらに製品の改善に向けて、ユーザーの声をメーカー側にフィードバックするのも、営業職の仕事の1つです。
参考:賃金構造基本統計調査 令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計) | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口
保険の営業
保険の営業(保険営業職業従事者)の平均年収は、461万8,600円です。保険営業の仕事は、代金と引き換えに商品を渡すものではありません。保険商品の販売を通して、顧客に将来起こりうるリスクに対する備えや、安心・安全な生活をサポートする仕事です。
扱う保険商品には、生命保険・医療保険・自動車保険・火災保険・地震保険など、さまざまな種類があります。顧客のライフスタイルやライフプランを把握して、最適な保険商品を提案することが必要です。
また、保険契約の継続やライフステージの変化への対応をはじめ、きめ細かいアフターフォローも重要な業務といえます。
参考:賃金構造基本統計調査 令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計) | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口
金融の営業
金融の営業職(金融営業職業従事者)の平均年収は、573万3,000円です。金融の営業は、自社が扱う金融商品を提案し、顧客の資産形成や運用をサポートします。取引する顧客によって、個人営業と法人営業の2つに大別が可能です。
個人営業はリテール営業とも呼ばれ、個人の顧客に向けて貯蓄や投資に関する金融商品や、住宅・教育ローンなどを提案します。法人営業は、企業や団体の経営者や事業主を相手にする仕事です。
法人営業においては、資金調達に携わる職務の重要度が高いため、個人営業とは仕事の内容が異なります。どちらも顧客の資産を取り扱う仕事なので、顧客からの信頼を得ることが重要です。金融商品に関する知識や業界の動向を把握する力も求められます。
参考:賃金構造基本統計調査 令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計) | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口
機械器具・通信・システムの営業
機械器具や通信・システム系の営業(自動車を除く機械器具・通信・システム営業職業従事者)の平均年収は、600万9,500円です。
機械器具の営業は、生産用機械・電気機械・自動車以外の輸送用機械といった商品を、顧客のニーズに合わせて提案・販売する役割を担います。主な取扱商品は、パソコンなどの個人向け製品から工場の生産設備用機器まで多種多様です。
通信・システムの営業は、顧客の課題解決に向け、情報処理技術や情報通信技術を使ったシステムやサービスを提案します。取り扱う商品は、インターネット回線・クラウドサービス・セキュリティシステム・ビジネスシステムなど多彩です。
参考:賃金構造基本統計調査 令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計) | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口
未経験でも営業に転職できる?
営業職は未経験者の求人も多い職種です。未経験者が営業職へ転職するにあたり、知っておくべきポイントを解説します。
ポテンシャル重視の企業も多い
過去に営業職としての経験がない未経験者でも、やる気を重視して採用する企業はあります。営業職への転職は、技術職や企画職と違い、入社前に高度な知識やスキルを求められるケースは少ないのが特徴です。
企業側としては即戦力となる営業職を雇いたいのは当然ですが、一方でやる気のある未経験者を採用し、将来的な成長に期待する企業も少なくありません。
仕事への熱意やモチベーションの高さをアピールすれば、未経験者でも転職しやすい職種といえるでしょう。
初めてでも転職しやすい業界は?
不動産業界・保険業界・人材サービス業界・インターネット業界など、無形商材の新規開拓営業は、営業未経験者の募集が多い傾向にあります。
不動産業界では、戸建てやマンションの売買・賃貸仲介やリフォーム営業のほかに、投資用マンションの営業職の募集も活発です。保険業界は入社後の教育体制が整っているので、保険の知識がない未経験者でも転職しやすいのが特徴です。
人材サービス業界でも、人材採用に関わる課題解決を担う営業職の需要は増えています。Web広告の伸長が目覚ましいインターネット業界では、広告営業に未経験者を募集している企業が多い傾向です。
営業職に必要なスキル
営業職に転職する上で特別な知識が必要ないとはいえ、仕事をするにあたり身に付けておいた方がよいスキルはあります。具体的に3つ確認しましょう。
ヒアリング力
営業職にとって、顧客の課題やニーズを聞き出すヒアリング力は不可欠です。営業職に求められるヒアリング力は、相手の話を聞く傾聴力だけではありません。
相手が潜在的に求めているものを聞き出すために、うまく質問を投げかけるなど、話しやすい状況を作るテクニックも必要といえます。顧客の要望を聞き出すには、フレームワークを用いるのもおすすめです。
例えば、顧客のニーズを明らかにするには、顧客の状況・課題・表面化していない問題・課題解決後の利益に関して4種の質問をする「SPIN話法」を用いるのも効果的とされます。
見込み客の購買意欲を判断するには、予算・決定権・課題解決の必要性・解決までの期限といった「決裁権」「必要性」「導入時期」の3点をヒヤリングする「BANT情報」を活用する方法もあるでしょう。
論理的思考力(ロジカルシンキング)
営業職には、物事を論理的に考えるロジカルシンキングのスキルも必要です。プレゼンや営業トークで相手を納得させるためには、筋道を立てて分かりやすく伝えなければなりません。
ロジカルシンキングによるトークでは、まず結論から話し、「なぜならば」という根拠を基に再度結論へと導きます。ロジカルシンキングを身に付けるためには、日頃から物事に対して「なぜ?」と疑問を持って考える習慣を持つのがおすすめです。
「なぜこの問題が起こるのか」「なぜこの作業が必要なのか」と考えることが、ロジカルシンキングにつながります。ロジカルシンキングによって分かりやすく伝えることで、プレゼン力も高まるでしょう。
交渉力
顧客の要望と自社の事情を擦り合わせて落とし所を決めるための交渉力も、欠かせないスキルの1つです。顧客のニーズばかりを聞き入れてしまうと、自社にとって不利益な結果になる可能性もあります。
顧客に対してだけでなく、上司や他部署など社内に対して交渉が必要になるケースも少なくありません。交渉力を身に付けるには、相手のニーズを把握した上で、自分の判断軸がぶれないよう、交渉のゴールをしっかりイメージしておくことが大切です。
また交渉する際には、複数の提案を準備しておくのもポイントです。いくつかの選択肢を用意しておくと、予期せぬ要望にもすぐに対応できるため、ビジネスチャンスを逃す事態を避けられます。
営業職のやりがい
営業職はやりがいを感じやすい職種です。どのようなときにやりがいを感じるのか、具体的に見ていきましょう。
仕事の成果が見えやすい
職種によっては成果を測定しにくく、仕事のモチベーションを保ちにくいケースもあります。しかし営業職は、達成率や売上実績のように仕事の成果が数字で見えるので、やりがいを感じやすい職種です。
基本給に加えて、成績に応じて手当が支給されるインセンティブ制度を設けている企業が多く、営業成績が給与に反映されやすいのも特徴です。
実力がすべての職種なので、年齢や勤務年数に関係なく高収入を得られる可能性がある点も、やりがいにつながるでしょう。
顧客との信頼関係を構築できる
営業職にとって、顧客との信頼関係をいかに構築するかは重要なポイントといえます。顧客の課題を解決し、「あなたのおかげで助かった」といった感謝の言葉をもらった際のやりがいは大きいものです。
顧客が自分の提案や仕事内容に満足し、信頼してもらえているという実感を持てたときほど、うれしい瞬間はないでしょう。
頑張った成果が認められ、モチベーションが上がるのは、どの仕事でも同じです。顧客と直接やり取りする営業職は特に、やりがいを感じやすい職種といえます。
ビジネスを通じて成長できる
営業職の仕事を通じて、さまざまなビジネススキルが身に付くため、自分の成長にやりがいを感じる場面も多々あります。営業の仕事を通して磨かれるスキルは、コミュニケーションスキル・プレゼンスキル・ヒアリングスキルなどさまざまです。
特に未経験から転職した人にとっては、入社時と比べてこれらのスキルが格段にアップしていると実感できる場面も多いものです。営業職としてだけでなく、さまざまな場で、人としても大きく成長していることを感じられるでしょう。
営業職のキャリアパスはどう描く?
営業職のキャリアパスには、主に「社内での昇進」「他部署への異動」「他業界への転職」の3つがあります。それぞれの方法について確認しましょう。
社内での昇進を目指す
営業職としての経験を積んで、社内で昇進するのが1つの方法です。営業職の昇進ルートは、営業スタッフとして実績を上げ、営業マネージャーや営業課長などへ昇進し、さらに営業部長をはじめとするマネジメント側へと進むコースが一般的と考えられます。
しかし、用意されている役職の数には限りがあるため、ポスト争いで負けてしまえば思い通りのキャリアパスを描けなくなる可能性もあるでしょう。
出世争いが起きた場合に勝ち残るためには、優秀な営業成績を残すなど、昇進の裏付けとなる評価を得ておくことが必要です。
営業以外の部署に異動する
営業で培ったスキルや知識を生かして、他部署で活躍するという方法もあります。例えば、顧客の声に直接触れてきた営業経験を生かし、企画や商品開発部門で新たな商品の企画や開発に携わることも可能です。
営業で養われたコミュニケーション能力やフットワークの軽さに加えて、企画や開発に必要な発想力も身に付くでしょう。または、チームで連携した経験を基に、人事や総務などの管理部門で人材育成に取り組む道もあります。
他部署に異動する場合も、営業職として成果を出し、信頼感を得ておくことがポイントです。異動への意欲をアピールするために、異動先で必要となるスキルを学んでおくことも大切といえます。
転職して他業界で活躍する
同じ営業職でも、扱う商品の種類や業界によって収入は異なるため、保険の営業から金融の営業というように、他業界に転職して収入アップを狙うのもおすすめです。
例えば医薬品メーカーや証券会社は、一般的な営業スキルのほかに専門的な知識も必要なため、年収が高い業界とされます。
あるいは、商社や流通業界に転職して海外クライアントとの取引経験を積めば、その先に外資系企業へのキャリア転換も可能です。企業の規模によっても収入は異なるので、現職より大きな会社に転職するのもよいでしょう。
営業職はやりがいや手応えを得られる仕事
営業職にはさまざまな種類があり、求められるスキルも異なります。しかし一般的には、専門的な知識や高度な技術はさほど必要ないため、未経験者でも転職しやすいのが特徴です。
仕事の成果に応じて収入も増えるので、大きなやりがいや手応えを得られるのも魅力といえるでしょう。コミュニケーション力やロジカルシンキングのスキルも身に付くので、営業職としての経験を積んだ後に、さらなるキャリアアップも狙えます。
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