転職で住民税を二重に徴収される可能性は?納付に関する注意点も解説

転職で居住地が変わった場合、翌年分から住民税の納付先が変わりますが、二重に徴収される可能性はないのでしょうか?国民健康保険料の納付とも異なる仕組みになっているので、この機会に住民税の納付に関する基本的な知識を押さえておきましょう。

転職での住民税の扱いは?

税金のイメージ

(出典) pixta.jp

住民税は会社勤めの場合、所得税とともに給料から天引きされるため、従業員側自身が手続きをする必要はありません。しかし転職や退職をする場合、状況によっては自分で住民税を納付しなければならない可能性があります。住民税の基本的な仕組みを理解しておきましょう。

1月1日時点での居住地に納める

住民税はその年の1月1日時点での居住地で、納付先と税率が決まります。従って、例えば6月に転職で居住地が変わったとしても、1月1日の時点で横浜市に住んでいたとすれば、1年分の住民税の納付先は横浜市になります。

転入先の市区町村で住民税の対象となるのは、翌年の1月1日からです。7月以降はすでに旧住所に住んでいなかったとしても、翌年になるまで納税地は変わりません。なお、国民健康保険料の場合は、居住地が変わった時点で納付先も保険料率も変わります。

会社員の場合、税金や保険料の支払いを意識するケースは少ないため、あまり意識したことがない人も多いでしょう。しかし転職や退職をする場合、自分で税金や保険料を納付する必要が出てくる場合もあるので、仕組みをよく理解しておきましょう。

参考:納税義務者(税を納めなければならない人)|総務省

住民税の納付額はどう決まる?

毎年納めるべき住民税の額は、均等割と所得割の合計額です。均等割は対象者の所得水準と無関係に、一律で課税されるものです。

一方で所得割は、前年の1月1日~12月31日の所得をベースに金額が算出されます。1年間の収入から必要な経費や各種所得控除を引いた「課税所得」に対して税率を乗じた後、各種控除分を引いた金額を住民税として納めます。

住民税の税率は従来、所得が一定金額以上の場合、超過分に高い税率をかける超過累進課税が採用されていました。しかし2007年度からは、所得水準によらず一律で10%の税率になっています。

参考:均等割と所得割|総務省

住民税の納付方法

住民税には次のように、特別徴収と普通徴収の2種類の納付方法があります。

  • 特別徴収:企業が社員の給与から住民税を徴収・納付する方法。会社員の場合はこちらに該当するので、住民税の納付を考える必要はない
  • 普通徴収:納税者が自ら住民税を納付する方法。主に自営業者や個人事業主が該当する。確定申告により納めるべき住民税の額が決まる

企業に勤めている人は、給料から所得税や住民税、社会保険料などが天引きされる形になり、住民税の場合は特別徴収により企業が納付します。

一方、普通徴収は納税者自らが住民税を納付する方法です。主に確定申告が必要な自営業者や個人事業主が該当し、基本的には申告した課税所得金額によって、納税額が決定します。

会社員からフリーランスに転身した場合、特別徴収から普通徴収に変わるため、住民税を自分で納める必要があるので注意しましょう。また後述するように、転職・退職の時期によっては、一時的に普通徴収に切り替わる人も出てきます。

参考:納付の方法|総務省

転職で住民税の二重課税は発生する?

電卓を操作する手元

(出典) pixta.jp

住民税の手続きは少し複雑なところもあるので、手違いにより二重に課税される可能性があるのではと心配する人もいるかもしれません。転職や退職などによって、住民税の二重課税が発生する可能性はないのでしょうか?

住民税の二重課税の心配はない

転職で別の企業に勤める場合や、独立して自営業者やフリーランスになる場合であっても、基本的に住民税の二重課税の心配はありません。

そもそも住民税は1月1日の時点において、対象者の住所がある自治体のみが、納付を請求できるルールになっています。

そのため、転職や退職、独立などをきっかけに納税者の住所が変わっても、旧住所と新住所の自治体が、それぞれ住民税を徴収する事態にはならないのです。

会社員で転職先が決まっている場合には、所定の手続きにより企業間で特別徴収が引き継がれます。会社を辞めて独立する場合でも、特別徴収から普通徴収に切り替わるだけで、二重に住民税を徴収される可能性はありません。

ただし後述するように、二重徴収ではないものの転職時期で納付方法が変わるため、給料から天引きされる住民税が多くなるケースはあります。

転職先が見つかっていない場合

転職先が見つかった状態で職場を退職する場合、そのまま転職先の企業に雇用される形になるため、特別徴収が引き継がれます。

しかし、転職先が見つかっていない場合や転職までに期間を要する場合、現在の職場を退職した後、一時的に住民税が特別徴収から普通徴収になるケースがあります。

住民税は前年の課税所得金額を基準に6月に納税額が決定され、翌年の5月にかけて納付する仕組みです。

初めて特別徴収から普通徴収に切り替わる人の中には、納付を忘れてしまう人もいるので注意しましょう。職場を退職する時期によっても、特別徴収で給料から天引きされる税額が異なるので、整理して覚えておく必要があります。

退職時期による納付方法の違い

それまで会社員として住民税の特別徴収を受けていた人が退職する場合、次のように退職月によって、住民税の納付方法や給料から天引きされる税額が変わります。

  • 1月1日~5月31日に退職する場合:5月まで毎月天引きされる予定だった住民税が、退職する月の給料からまとめて天引きされる(一括徴収)。給料よりも一括徴収の金額が多い場合、普通徴収として納税者が自ら納める
  • 6月1日〜12月31日に退職する場合:本来は翌年の5月まで毎月給料から天引きされる予定だった住民税を、一括で納付する。あるいは、普通徴収として自ら納付するかを選ぶことになる。一括納付の場合は退職月の給料からまとめて天引きとなり、足りない場合は普通徴収として自ら納める
  • 退職する月の住民税は、給与天引きにすることができるが、その翌月以降に納める予定だった住民税は、普通徴収になり、自分で納付する必要がある

一括徴収の場合、退職月に天引きされる金額がかなり大きくなります。二重徴収を疑う人もいますが、住民税の徴収の仕組みなので勘違いしないようにしましょう。普通徴収で納付する場合は、自宅に納付書が届くので、期限内に自分で納める必要があります。

誤って住民税を二重に納付してしまったら?

基本的に住民税を二重に納付する事態にはなりませんが、退職により5月までの住民税を給料から天引きされていた状態で、自らも納付してしまうと、二重納付になる可能性はあります。

誤って住民税を納付しすぎた場合でも、簡単に払いすぎた税金を取り戻すことが可能です。

税金を余計に納付している場合、自治体から「過誤納金還付(充当)通知書」が届きます。口座登録がされている場合は、登録されている口座に払いすぎた税金が還付されるので、特に何もする必要はありません。

一方、口座登録がされていない場合は、一緒に送られてくる口座振替依頼書に、還付を希望する口座を記入して返送しましょう。なお、納付期限が過ぎている税金がある場合は、そちらに還付金が充当されます。

参考:「過誤納金還付(充当)通知書」とはなんですか。|盛岡市

転職時に必要な住民税の手続き

手続きのイメージ

(出典) pixta.jp

転職時に必要な住民税の手続きを解説します。転職して特別徴収を受け続けるためには、書類の提出依頼が必要になるので、その点だけ注意しておきましょう。

すぐに転職できた場合

転職先が決まっている場合は、特別徴収を引き続き受けるために、転職前の企業に「給与所得者異動届出書」の作成を依頼しましょう。

依頼を受けた企業は必要事項を記入して、転職先の企業に書類を送付します。送付を受けた転職先企業も必要事項を記入し、その地域の市区町村に提出する流れです。退職する月の翌月10日までに提出が必要なので、早めに手続きを依頼しましょう。

転職先が未定か個人事業主になる場合

上記のように、5月末日までに退職する場合は基本的に一括徴収となり、企業側の手続きとなります。従業員側の手続きは特に必要ありません。

ただし、6月時点で転職先が決まっていない場合や、個人事業主として独立する場合などは、普通徴収で自ら住民税を納めなければいけません。自治体から納付書が届くので、忘れずに納付しましょう。

6月〜12月に退職した場合も同様です。納付書を使って自分で住民税を納付する以外、特に手続きは不要です。

納付が遅れると延滞金が発生する

住民税を遅れて納付する人もいますが、納付が遅れると、一定の率で延滞金の支払いが発生するので注意が必要です。納付時期をよく理解し、遅れずに納付できるようにしておきましょう。

普通徴収の場合、6月、8月、10月、翌年1月の末日までを期限として、合計4回に分けて納付するのが基本です。1年分の住民税を4回で納付するため、金額も大きくなりがちです。納付のための資金は、早いうちから計画的に用意しておきましょう。

転職時の住民税に関するQ&A

住民税のイメージ

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転職時の住民税に関して、よくある質問に回答します。手違いや手続きの遅れにより、自宅に住民税の納付書が届く可能性がありますが、二重納付にならないように注意しましょう。

転職した後に納税通知書が届いた場合は?

特別徴収の手続きが遅れるなどした場合、自宅に納税通知書が届く場合があります。転職先がすぐに見つかり、特別徴収の手続きもしている場合、自ら住民税を納付する必要はありません。

誤って二重納付にならないように、納付書を使う前に企業に確認してみましょう。切り替えの期限を過ぎてしまっている場合は、自分で住民税を納付する必要があります。

転職先が分かってしまうケースはある?

前述のように、転職先で特別徴収を継続する場合は「給与所得者異動届出書」の提出が必要です。前職の企業が転職先の企業に書類を送付する関係上、転職先を知られてしまう可能性があります。

退職する企業に転職に関する情報を知られたくない場合は、いったん普通徴収に切り替えるとよいでしょう。転職先の企業に移ってから、普通徴収から特別徴収への切り替え手続きをすれば問題ありません。

住民税の二重納付に注意しよう

電卓を操作する手元

(出典) pixta.jp

転職時期や退職・独立などにより、住民税の納付方法が変わるケースがあります。二重納付の心配は基本的にありませんが、誤って自ら納付してしまい、結果的に税金の納めすぎになる可能性はあるので、注意が必要です。住民税の仕組みと納付方法、必要な手続きなどを整理しておきましょう。

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