心理学の知識を生かして就職するには?資格の種類や職種を解説

メンタルヘルスが注目されている昨今、心理学を学ぶ人や、仕事へ生かしたい人も増えています。心理学を仕事に生かすには、どうすればよいのでしょうか。心理学の知識を用いた仕事の種類や、おすすめの資格などについて解説します。

心理学を生かせる就職先は?

福祉施設

(出典) pixta.jp

心理学を学んだ人の中には、さまざまな場所でカウンセラーとして活躍している人も多くいます。どのような職場で働いているのか具体的な例を見ていきましょう。

病院・福祉施設

病院や福祉施設は、心理学の知識を生かした仕事に就ける場所の1つです。病院では、精神科・心療内科・小児科などで心理カウンセラーとして勤務する人もいます。

患者や家族からの相談の対応や、精神科医と連携し、心理学療法を用いた心理テストを行うのが主な仕事です。

福祉施設には、老人保健施設や児童相談所などのほか、さまざまな支援センターも含まれます。福祉施設で働く人の主な仕事は、施設の入所者や利用者の心理的なケア・支援です。

市区町村の保健センターで働く場合は、乳幼児の発達相談などに携わることもあります。福祉施設では、心理学の知識に加えて、福祉分野での資格を持っている人も少なくありません。

一般企業など

近年、職場の環境や人間関係などが原因で心の問題を抱える人も増えているといわれています。

従業員のメンタルヘルス対策として、社内に相談室などを設置する企業もあり、心理学を学んだ人の中には、そういった企業で産業カウンセラーとして勤務している人もいます。

企業によっては、専任のカウンセラーを置くのではなく、人事担当がカウンセラーの資格を取得することもあるようです。

企業で働くカウンセラーは、従業員のメンタルヘルスだけでなく、社員教育などを担う場合もあります。また、心理学の資格がなくても、営業職やマーケティング職など、心理学の知識を生かせる職種もあります。

教育現場

学校で働くカウンセラーは、スクールカウンセラーとも呼ばれます。スクールカウンセラーの主な仕事は、児童や生徒の相談に乗ることです。子どもたちの成長や発達に関して、保護者や教員をサポートすることもあります。

また、いじめ・非行・子どもの犯罪といった問題に対して解決の糸口を探ったり、災害のあとなどにPTSDのケアをしたりするのもスクールカウンセラーの仕事です。

公立学校の場合、自治体によって採用基準は異なります。国家資格が必須とされるケースは少ないものの、基本的に民間の臨床心理士資格は必要とされています。

心理学を用いる主な仕事の種類

心理士のイメージ

(出典) pixta.jp

心理学の知識や資格を用いる仕事には、さまざまな種類があります。ここではまず、仕事の種類や内容について説明します。

公認心理師

公認心理師は、心理に関する支援を必要とする人を、心理学の技術や知識を用いてサポートするのが仕事です。主に、病院・学校・企業・福祉施設などが公認心理師の一般的な就職先です。

心に問題を抱えている人の心理をカウンセリングによって分析し、問題を解決するために助言や指導をします。本人からだけでなく、家族や関係者からの相談に対しても、助言や援助をする場合もあります。

また、メンタルヘルスに関する知識を普及させるための教育や、情報の提供なども公認心理師の仕事です。

臨床心理士

臨床心理士は、心の問題を抱えた人の相談に乗り、解決に向けた助言や援助をする「心理専門職」です。臨床心理士は、公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会が認定する、民間資格です。

臨床心理士の多くは、病院などの医療機関のほか、学校や福祉施設などでカウンセラーとして働いています。

家庭裁判所・少年院・刑務所・保護観察所・少年鑑別所などで、矯正心理専門職になる人もいます。矯正心理専門職とは、罪を犯してしまった人の社会復帰や、刑務所内での指導案の実施などに携わる仕事です。

キャリアコンサルタント

キャリアコンサルタントとは、職業の選択、仕事に必要なスキルの開発や、向上に対して助言や指導をする「キャリアコンサルティング」を行う専門家です。キャリアコンサルタントとして仕事をするには、国家資格の取得が必要です。

主な就職先は、企業・ハローワーク・教育機関などですが、女性センターなどの地域施設・福祉施設・NPO法人などで活躍している人もいます。福祉施設やNPO法人では、障害者や生活困窮者の自立支援や就労支援なども行います。

社会福祉士

社会福祉士は、厚生労働大臣によって交付される国家資格です。社会福祉士の主な仕事は、心身の障害や、経済的・環境的な理由によって日常生活を送ることに困難を抱えている人への相談援助です。

相談者の困りごとを解決するために利用できる福祉サービスの紹介など、安心して日常生活を送れるよう、福祉面からの助言や支援をします。

相談や支援の対象となる人は幅広く、高齢者・子ども・障害者・生活困窮者などさまざまです。社会福祉士の就職先には、高齢者施設や児童相談所などの福祉施設のほか、地域の社会福祉協議会や自治体の保健福祉課などがあります。

心理カウンセラー

心理カウンセラーは、心理的な専門知識を生かして、さまざまな悩みを持つ人の相談に乗る仕事です。公認心理師や臨床心理士のような資格がなくても、心理カウンセラーを名乗れますが、心理学に関する専門知識は求められます。

専門知識を身に付けるには、心理学を学べる学校や講座などに通うのが一般的です。仕事をしながら心理学の知識を身に付けたいときは、通信講座などで学ぶ方法もあります。

心理カウンセラーの就職先には、医療機関や福祉施設などが一般的ですが、独立して個人のカウンセリングルームを開設する人もいます。

心理学の知識を生かして就職できる一般企業の職種

ビジネスマン

(出典) pixta.jp

心理学の知識を生かせるのは、カウンセリングの仕事ばかりではありません。一見、心理学とは関係がなさそうな一般企業の職種にも、心理学の知識を生かせるものがあります。どのような職種があるのか、具体的に見ていきましょう。

マーケティング職

消費者の心理を読み取って戦略を立てるという観点から、心理学とマーケティング職には密接な関係があるといわれています。

マーケティング職とは、市場の動向を把握して、自社の商品やサービスが売れる仕組みを作っていく仕事です。市場調査の結果や広告の効果測定などを元に、消費者のニーズを分析し、販売戦略を立てていきます。

プロモーションや宣伝活動には、心理学の知識を用いることが多いため、マーケティング職として仕事をしながら、心理学のノウハウを習得する人は少なくありません。

消費者の購買意欲を刺激する商品パッケージのデザインや、キャッチコピーの作成などにも、心理学の知識は役立つでしょう。

営業職

営業職にも心理学の知識が役立ちます。営業職は商品やサービスを販売するために、顧客が解決したい課題やニーズなどを把握し、それに基づいて提案する仕事です。

営業職に心理学の知識があれば、顧客のニーズの理解から、提案・成約まで、商談をスムーズに進めやすくなるでしょう。顧客とのコミュニケーションにも、心理学の知識は役立ちます。

ヒアリングで顧客の深層心理を読み取ることによって、潜在的な欲求を満たす商品やサービスの提案・提供が可能になります。

販売職

販売職では、顧客とのやりとりに心理学の知識が役立ちます。特に、商品を買いたいけれど、まだ決めかねている顧客に対しては、心理学に基づいたアプローチが効果的です。

顧客の心理状態を理解し、相手に合わせたセールスをすることで、販売につながる可能性があります。また、心理学の知識は商品のディスプレイや仕入れにも活用できます。

スタッフのマネジメントにおいても、相手の気持ちを理解することが重要であり、心理学の知識が役立つでしょう。

人事労務職

企業の採用活動から、社員研修・従業員のメンタルチェックまで、幅広い業務を担う人事労務職にも、心理学の知識を生かせます。例えば、採用活動においては、自社のニーズに合った人材像の構築に心理学の知識が役立ちます。

メンタルヘルスに問題を抱えている従業員や、パワハラ・セクハラなどへの対応の際も、心理学の資格を持っていれば、カウンセリングを行うことも可能です。

企業内の労働環境を健全に保つ役割も果たす人事労務職にとって、心理学の知識は大きな助けとなるでしょう。

心理学を生かして就職する際に必要な資格の違い

会話するビジネスウーマン

(出典) pixta.jp

心理学には国家資格のほかにも多くの民間資格があり、就職するにあたっては、特定の資格が必須になることもあります。心理学の資格の種類や受験要件について説明します。

国家資格

国内の心理職の国家資格は、公認心理師だけです。しかし、ほかにも心理学を生かした仕事をする上で役立つ国家資格として、キャリアコンサルタント・精神保健福祉士・社会福祉士などもあります。

<公認心理師>

国内唯一の心理職国家資格です。公認心理師国家試験に合格後、資格登録をします。資格試験を受験するには、大学および大学院で指定科目を履修していることが必要です。

<キャリアコンサルタント>

労働者に対してキャリアコンサルティングを行い、キャリア形成を支援します。受験要件は、厚生労働大臣が認定する講習を修了する・キャリアコンサルティングの実務経験3年以上・技能検定キャリアコンサルティング職種の学科または実技試験に合格する、のいずれかです。

<精神保健福祉士>

精神科などの医療機関で施設利用者を支援します。受験要件は保健福祉系大学4年制で指定科目を履修、または保健福祉系大学3年制・2年制で指定科目を履修のうえ相談援助実務1年または2年以上が必要など、いくつかのルートがあります。

<社会福祉士>

心身に障害を抱える人や、生活に困難を感じる人を福祉面から支援します。受験要件は、4年制または3年制・2年制の保健福祉系大学で指定科目を履修したあと、3年制・2年制の場合は、相談援助実務1年または2年以上が必要です。精神保健福祉士と同様、これ以外にもルートがあります。

参考:
一般財団法人 日本心理研修センター
特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会
[精神保健福祉士国家試験]:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター
[社会福祉士国家試験]:公益財団法人 社会福祉振興・試験センター

民間資格

心理学に関する資格には、国家資格のほかにも、さまざまな団体によって認定される民間資格があります。中でも、仕事をする上で取得が必須となることが多いのは、臨床心理士・産業カウンセラー・認定心理士の3種類です。

<臨床心理士>

「日本臨床心理士資格認定協会」が認定する資格です。受験するには、臨床心理士養成に関する指定大学院か、専門職大学院を修了していることが基本とされています。

<産業カウンセラー>

「一般社団法人日本産業カウンセラー協会」が認定する資格です。受験には、協会が行う講座を修了しているか、4年制大学または大学院で指定の科目の単位を取得していることなどが必要とされています。

<認定心理士>

「公益社団法人日本心理学会」が認定する資格です。大学で必要な科目の単位を取得して卒業後、協会に資格申請します。審査に合格すると認定心理士の資格を取得できます。

参考:
公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会
一般社団法人 日本産業カウンセラー協会
公益社団法人 日本心理学会

心理学を学ぶには?

資格の勉強をする女性

(出典) pixta.jp

心理学を生かして就職するためには、心理学の知識や技術を身に付けることが不可欠です。心理学を学ぶ方法を2つ紹介します。

資格を取得する

心理学を生かして働くには、資格を取得するのがおすすめです。心理学の資格には、国家資格と民間資格の2種類があるので、自分がなりたい職種に必要な資格を取得しましょう。

例えば、病院で心理カウンセラーとなるには、公認心理師や臨床心理士の資格が必要です。一般企業でカウンセラーとして働きたいときは、産業カウンセラーの資格を取得しておくと有利です。

大学卒業などを受験要件としている資格も多いものの、指定講座を受講することで受験資格を得られるなど、仕事をしながら取得できる資格もあります。

スクールや通信講座で学ぶ

働きながら心理学を学びたいときは、スクールや通信講座を活用するのもおすすめです。通学のスクールであれば、講義を受けるだけでなく、カウンセリングなどを実践的に学べるメリットもあります。

「心理学を学びたい」という同じ目的を持った人と一緒に学べるので、モチベーションも保ちやすく、情報交換できるのもポイントです。通学が難しい人は、通信講座を活用すると、自分の好きな時間に勉強できます。

心理学の知識を生かして就職できる職種は多種多様

打ち合わせをする会社員

(出典) pixta.jp

心理学の知識は、さまざまな仕事に生かせます。心理カウンセラーとして活躍したいときは、自分がなりたい職種に必要な資格を取得しておくことがおすすめです。

また、公認心理師や臨床心理士のような心理の専門職だけでなく、営業職やマーケティング職などにも心理学の知識が役立ちます。

心理学の知識を生かせる仕事探しには、求人数が豊富な「スタンバイ」を活用するのもおすすめです。

スタンバイ|国内最大級の仕事・求人探しサイトなら