離職率が高い会社では、残業や業務量が多くなりがちです。できれば、労働環境が良い職場で働きたいと感じる人は多いでしょう。転職を成功させるために知っておきたい、離職率が高い会社の特徴や見分け方などを紹介します。
この記事のポイント
- 離職率が高い業界とは
- 新規学卒就職者を対象にした調査では、宿泊業・飲食サービス業が、高卒・大卒ともに最も高い結果となっています。
- 人が離れやすい会社の特徴
- 労働時間が長く給与水準が低いなどの特徴があり、ワークライフバランスを取りにくい場合が少なくありません。
- 見分け方のコツ
- 企業のIR情報を見て従業員数と募集数のバランスを見る方法や、面接官に質問する方法などがあります。
離職率が高い会社が多い業界
どのような仕事でも、途中で辞めてしまう人は出てくるものですが、離職率が高い会社とそうでない会社があります。離職率が高い職場の傾向を探るために、業界別の離職率を見ていきましょう。
業界別に見る新卒者の3年以内の離職率
厚生労働省が調査した、2021年3月に卒業した新規学卒就職者の3年以内の離職率を、業界別に見てみましょう。主だった業界の離職率は、以下の通りです。
業種 | 新規高卒就職者の離職率 | 新規大卒就職者の離職率 |
---|---|---|
宿泊業・飲食サービス業 | 65.1% | 56.6% |
生活関連サービス業・娯楽業 | 61.0% | 53.7% |
サービス業(他に分類されないもの) | 39.9% | 40.3% |
教育・学習支援業 | 53.1% | 46.6% |
医療・福祉 | 49.3% | 41.5% |
小売業 | 48.6% | 41.9% |
不動産業・物品賃貸業 | 44.0% | 38.3% |
建設業 | 43.2% | 30.7% |
卸売業 | 41.2% | 31.8% |
電気・ガス・熱供給・水道業 | 11.7% | 12.5% |
高卒・大卒ともに、宿泊業・飲食サービス業に従事する人の離職率が、最も高いことが分かります。離職率が最も低い業種は、高卒・大卒ともに電気・ガス・熱供給・水道業でした。
出典:新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)を公表します|厚生労働省
新規大卒就職者の34.9%が離職
2021年3月新規学卒就職者の、3年以内の離職率についても見てみましょう。
- 大卒:34.9%
- 短大卒:44.6%
- 高卒:38.4%
- 中学卒:50.5%
中学卒が突出していますが、最も少ない大卒でも34.9%という結果になっています。
また、事業所規模別に見ると5人未満の事業所での離職率が最も多く、59.1%が離職しています。規模が大きいほど、離職率が下がる傾向です。
大きな会社の方が離職率が低い理由は、待遇面や研修の充実度などで有利になりやすいためだと考えられます。
離職率が高い会社の特徴
同じ業界に属していても、中途退職者が少ない場合もあります。会社によって離職率に差があるのは、なぜなのでしょうか?ここでは、辞める人が多い会社の特徴を紹介します。
一般消費者を対象にしている
離職率が高い上位の業界を見ると、BtoC企業(Business to Customer)が大半を占めています。BtoC企業の大きな特徴は、個人を対象にしたサービスを行っていることです。
個人消費者に向けた仕事の大変さとして、「ライバル企業が多い」「顧客単価が低く、競争を勝ち抜くのが困難」などが挙げられます。
こうした企業に勤める従業員は、「難しくてクリアできないノルマが課せられている」「クレーム対応が多い」といった問題を抱えている可能性もあるでしょう。
給与水準が低め
どのような業界にもいえることですが、給与が働きに見合っていないと離職しやすくなります。
厚生労働省が公表している「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、離職率が高かった宿泊業・飲食サービス業の平均月収は25万9,500円と、最も低い結果になっています。
収入を増やすことだけが仕事のやりがいではないものの、給与水準が低いと苦労の割に喜びが少ないと感じる人もいるでしょう。
もっと給与水準が高い職場に転職したくなった結果、離職するケースが多いのではないかと考えられます。
出典:令和5年賃金構造基本統計調査 結果の概況 産業別|厚生労働省
残業が多く長時間労働
「労働時間が長い」「残業が多い」なども、離職しやすい会社の特徴です。どんなに好きな仕事でも、拘束時間が長すぎると私生活を充実させにくいでしょう。
ワークライフバランスは仕事を選ぶ上で、重視されやすいポイントの1つです。長時間労働は、家庭で過ごす時間や趣味も大切にしたいと考える人にとって、続けにくい原因となります。
また、休んでも疲労が回復せず、体力面が厳しいなどの問題が起こる場合もあります。長い時間働いているにもかかわらず給与が低い職場では、より離職しやすいでしょう。
人手不足などで業務量が多い
離職率が高い会社は人手不足になりやすく、1人当たりがこなさなければならない仕事の量が多くなります。
医療・福祉分野のように、社会的な需要が高い業界でも、人手が足りず業務量が多くなりがちです。何度も募集をしてやっと採用できても、すぐにまた離職者が出る悪循環に陥ることがあります。
人手不足はなかなか改善しにくい問題なので、多くの業務量をこなし続けることに疲れ果てて離職してしまう場合や、待遇が良い他の職場に人材が移ってしまうケースもあるでしょう。
離職率が高い会社の見分け方
事前に離職率が高い会社を見抜ければ、リスクを負わずに済みます。どのように見分ければよいのか、具体的なチェックポイントを見ていきましょう。
社員数と募集人数が見合っているか
常に人材を募集しているにもかかわらず、従業員数が増えていない会社は、離職率が高い可能性があります。
たまたま定年退職などが多かったケースも考えられますが、事業拡大などの理由がないのであれば、労働環境に何らかの問題があって離職する人が多いのかもしれません。
辞める人が多いことを見越して、多くの募集をかける企業もあるため注意が必要です。従業員数や募集状況を知るには、企業のIR情報などを確認してみましょう。
インターネットや口コミを活用する
応募を検討している企業がある場合、企業名などで検索をかけてみると、思わぬ情報を得られる場合があります。
インターネットの口コミサイトや求人サイトなどには、離職率について書かれていることがあるでしょう。実際に働いている人の声を掲載しているものは参考になりますが、全てが真実とは限らない点に注意が必要です。
また、企業が運営しているSNSやブログなどを見ると、ある程度の雰囲気をチェックできます。
就職四季報で調べてみる
就職四季報は、就職活動に役立つ情報が掲載されている書籍です。離職率以外にも、採用者数や平均年収などを確認できます。
しかし、全ての企業を掲載しているわけではなく、自分が転職したい企業の情報がない可能性もあります。また、項目によっては「回答なし」となっている場合もあるでしょう。
新規学卒者向けの情報が中心ですが、利用者に合わせたさまざまなラインアップがあり、企業研究に特化した「会社四季報」もあります。
採用担当者に聞いてみる
応募前に確実な離職率を知るのは難しいことですが、実際に働いている人と直接会って話を聞くと、実情が見えてきます。
例えば、面接の際に採用担当者に聞く方法もあります。離職率を尋ねる際は、失礼にならないように注意しましょう。仕事へのやる気を疑われないように、聞き方を工夫することが大切です。
「中途採用で入られた方は、どれくらいいらっしゃいますか?」など、直接的な言葉を避けて、実態を探る方法がおすすめです。中途採用者の数が多いほど、離職率も高いと想像できます。
離職率が高い会社で働くデメリット
離職率が高い会社で働くと、働きやすさの面でデメリットが生じる場合があります。どのような可能性があるのか、詳しく見ていきましょう。
職場の人間関係に疲れやすい
離職率が高い会社では、職場の人間関係に疲れやすいところがデメリットです。労働環境の悪さが原因で、ギスギスした雰囲気になっているケースが考えられます。
労働時間や待遇などに問題がなくても、モラルハラスメント・パワーハラスメントなどの理由で、離職率が高い場合もあります。そうした職場では、良好な人間関係を保ちづらいでしょう。
仕事内容が好きでも、人間関係が悪いとチームワークを取りづらくなり、パフォーマンスが下がってしまう可能性があります。また、モチベーションの低下を招きやすい点も問題です。
十分な指導や研修を受けづらい
離職率が高い会社に就職すると、十分な教育を受けられない中で働くことになるかもしれません。人材育成に何らかの問題を抱えているため、離職率が上がっている場合があります。
指導法に一貫性がないなども、仕事を覚えにくくなる原因の1つです。また、教育係がいても、相談しにくい相手では適切な指導を受けられないでしょう。
研修の体制が整っていない職場では、不安を抱えた状態で仕事を進めなければならず、行き詰まりやすくなります。入社後、新人へのサポートが期待できない中で、働く覚悟が必要になるでしょう。
離職率の改善に効果的な方法
離職率の高さを改善するには、離職しやすい要因を突き止め、対処していくことが必要です。人材が定着しやすい職場にするために、効果的な方法を見ていきましょう。
労働環境の見直し
人間関係や長時間勤務など、労働環境が悪いと離職率が上がる原因になります。まずは、何に問題があるのかを洗い出しましょう。
例えば、アンケートや聞き取り調査を実施し、従業員が不満を感じている点を見つけ出す方法があります。実施の際は匿名性にすると、より本音を引き出しやすくなります。
また、問題点を指摘しやすい、風通しの良い環境づくりも大切です。人間関係に問題がある場合は、オープンスペースの設置やチャットツールの導入など、コミュニケーションが活性化しやすい環境を整えるとよいでしょう。
人手不足が原因であれば、ITツールを導入するなどして業務効率化を図る方法もあります。
公平な評価制度を設ける
従業員が「自分の働きが正しく評価されていない」と感じるのも、離職率が上がる原因となります。公平な評価制度を設けると、頑張りが適切に反映されるようになり、従業員のモチベーションが高まります。
新しい評価制度を設ける際は、現状を把握することから始めましょう。具体的な制度や基準を設ける前に、自社の理念や目標と照らし合わせ、どのような人材を理想とするのか、方針を固めます。
方針を基に、能力・成果・意欲など、評価の対象となる項目を定めましょう。複雑すぎる評価制度は避け、従業員の目から見たときに分かりやすい内容にすることが大切です。
離職率に注目し転職を成功させよう
離職率が高い会社の特徴が分かると、転職に失敗しにくくなります。業界別の離職率を確認し、より労働環境が良さそうな仕事に就くのも1つの方法です。
人が辞めやすい職場で既に働いている場合は、何が原因なのかを探り、改善できることがあれば取り組んでみましょう。
労働環境を改善する方法を試してもうまくいかないときや、離職率が高い職場で働くのに限界を感じたときは、転職がおすすめです。
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