経済学部で学んだ経歴があると、新卒での就職はもちろん、社会人になってからの転職にも有利になる場合があります。その理由とともに、経済学部出身者が取得しておきたい資格や活躍しやすい業界・職種を知って、仕事探しに生かしましょう。
経済学部出身者が就職に有利とされる理由
経済学部はほとんどの大学にあり、文系の中でも就職しやすい学部として知られています。なぜ経済学部を出ていると、就職に有利なのでしょうか?在学中に学ぶ内容や学部の環境から、理由を紹介します。
より実践を見据えた内容を学ぶから
経済学部が就職に有利な理由として、社会人になってすぐに役立てられる内容を学ぶことが考えられます。
経済学の領域の1つ「マクロ経済学」は、社会全体の消費活動や国・政府と経済の関わりなど、お金の流れを通じて社会全体の構造を学べる学問です。
「ミクロ経済学」では、企業や家計を最小単位として意思決定・行動の仕方を学べます。どちらの知識も、市場状況の判断や企業としての動き方の決定に役立つでしょう。
また、統計学・会計学といった分野を専攻していた場合は、専門的な業務で重宝されやすくなります。統計学の知識が生きる職種にはデータサイエンティスト、会計学の知識が生きる職種には経理が挙げられます。
文系の中でも数字に向き合う時間が多いから
文系学部の傾向として、数字に触れる機会が少ない点が挙げられます。理系学部に比べて、計算が必要な場面には弱いと思われるかもしれません。
しかし、経済学部の講義や演習にはデータを使った分析も含まれるため、他の文系学部より数字を扱う時間が多くなります。確率や微分・積分といった数学の知識が問われる場面も、少なくありません。統計学の知識も身に付きます。
企業活動を精密に理解して戦略を立てるには、数字への理解が不可欠です。数字を多く扱ってきた経済学部出身者は、企業にとって即戦力になり得る人材として評価されやすいでしょう。
論理的・定量化思考が身に付くから
経済学部では、数字や数学の知識はもちろん、データに基づく論理的思考が求められます。特に応用経済学には、人々の行動原理や、実現される資源の配分をデータから検証する「論理的思考力」が欠かせません。
また、経済学部で統計学を学ぶに当たって、定量的な考え方は必須です。例えば、消費税率が日本経済全体に及ぼす影響や、学歴と収入の相関関係などの事象を分析するためには、全てを数字に落とし込んで考える必要があります。
売り上げの管理やマーケティングといったビジネスシーンでは、データから結論を導き出せる論理的思考・定量化思考が必要です。どちらも在学中に磨いてきた経済学部出身者は、企業に評価されやすいでしょう。
ビジネスに役立つ資格を取得しやすいから
ビジネスですぐ生かせる資格を取得しやすいのも、経済学部が就職に有利とされる理由です。一部の大学の経済学部には、特定の資格を取得するためのカリキュラムや、資格取得を支援する取り組みが見られます。
例えば、日本大学の経済学部では授業料の一部を大学が負担し、学内での「学内講座」と提携する外部の専門学校での「学外講座」で、リーズナブルに資格取得を目指せる環境を用意しています。
また、社会人になってから日商簿記・FP技能検定などの資格を取得したい場合も、経済学部出身者は有利です。大学で学んだ知識があるため、勉強にかかる時間が短く済むでしょう。
経済学部出身者の就職で役立つ資格
経済学部を卒業したものの、在学中に資格を取らなかった人もいるかもしれません。しかし、社会人になってからでも、資格を取得することで経済学部出身の経歴を生かしやすくなります。
経済学部出身者の就職・転職に役立つ資格を、見ていきましょう。
※各資格の情報は2024年1月14日の公式情報を基に記載しています。
日商簿記
日商簿記検定試験(日商簿記)は、幅広い業界で重宝される資格です。商工会議所が主催しており、以下の5レベルに分かれています。
- 1級
- 2級
- 3級
- 簿記初級
- 原価計算初級
就職で有利に働く目安は、2級以上です。2級は、高度な商業簿記や原価計算を含む工業簿記を作成でき、財務諸表から経営状況を読み解けるレベルとされます。
1級と2級の試験科目・試験時間・合格基準は、以下の通りです。
等級 | 試験科目 | 試験時間 | 合格基準 |
---|---|---|---|
1級 | 商業簿記 会計学 工業簿記 原価計算 |
商業簿記・会計学で90分 工業簿記・原価計算で90分 |
70%以上(各科目40%以上必須) |
2級 | 商業簿記 工業簿記 |
90分 | 70%以上 |
受験料は、1級で7,850円(税込み)、2級で4,720円(税込み)となっています。
FP技能検定
FP技能検定は、日本FP協会と金融財政事情研究会が実施している、お金についての幅広い知識を証明できる国家検定です。等級は1〜3級の3レベルで、いずれの級にも学科試験と実技試験があります。
FP技能検定で注意したいのが、団体によって実施している試験の内容が違う点です。日本FP協会と金融財政事情研究会は、それぞれ以下の科目を実施しています。目指すキャリアに合わせて、実施団体を選びましょう。
実施団体 | 1級 | 2級 | 3級 |
---|---|---|---|
日本FP協会 | 資産設計提案業務 (学科試験の実施なし) | 資産設計提案業務 | 資産設計提案業務 |
金融財政事情研究会 | 資産相談業務 | 個人資産相談業務 中小事業主資産相談業務 生保顧客資産相談業務 損保顧客資産相談業務 |
個人資産相談業務 保険顧客相談業務 |
日商簿記と同じく、就職に役立つのは2級以上です。まずは3級から取得し、ステップアップしていきましょう。
中小企業診断士
中小企業診断士は、中小企業の経営課題の解決をサポートできる国家資格です。中小企業診断士の他に、経営コンサルティングに関わる国家資格はありません。
合格すると、経営コンサルティングの他にも、公的機関での相談業務やセミナー講師など幅広いキャリアが選択肢に入ります。経済学部での経験を生かしつつ、専門性を高めたい人におすすめの資格です。
中小企業診断士に等級はなく、2日にわたって7科目の試験が実施されます。試験科目は、以下の通りです。
- A 経済学・経済政策
- B 財務・会計
- C 企業経営理論
- D 運営管理(オペレーション・マネジメント)
- E 経営法務
- F 経営情報システム
- G 中小企業経営・中小企業政策
各科目100点の配点となっており、経営に関する幅広い知識が問われます。難易度が高い資格なので、経済学部で学んだ知識があっても、合格にはそれなりの時間がかかると考えましょう。
出典:中小企業診断士資格取得を目指す方に中小企業診断士試験のご案内です
CMA
証券アナリストを目指す経済学部出身者におすすめの資格が、「公益社団法人 日本証券アナリスト協会」が管理・運営しているCMAです。
CMAを取得すれば、投資価値を分析・評価できるスキルが身に付きます。他にも、財務から金融商品・資本市場まで、投資・金融に関する幅広い知識を習得できるのがCMAの魅力です。
取得後は証券アナリストはもちろん、新規事業の発足やM&Aをはじめとした投資戦略に携われる人材を目指せます。取得までのステップは、以下の通りです。
- 第1次レベル講座(6つの学習分野)を一括受講する
- 第1次試験を3科目受験し、全科目に合格する ※第1次試験は、第1次レベル講座受講年度の翌年から受験可能
- 第2次レベル講座を受講する ※第2次レベル講座は、第1次試験に合格した年度から受講可能
- 第2次試験(全ての学習分野の総合試験)を受験して合格する ※第2次試験は、第2次レベル講座受講年度の翌年から受験可能
- 実務経験3年以上の認定を受け、検定会員として日本証券アナリスト協会に入会する
第2次試験に合格しても、実務経験が3年に満たない場合は、実務経験が3年以上になった時点で入会すればCMA資格を取得できます。
受講料は、第1次レベル講座で6万円(税込み・一般受講者)、第2次レベル講座で5万7,000円と安くはありません。自身の目指すキャリアを絞り込み、必要かどうかを判断しましょう。
経済学部出身者におすすめの業界
経済学部で学んだ知識を生かして就職・転職したいなら、経済学部出身者が活躍しやすい業界を押さえておきましょう。代表的な業界・分野と、それぞれの概要を紹介します。
金融業界
経済学部出身者が活躍しやすい業界として、まず金融業界が挙げられます。銀行・証券会社・保険会社など、経済の仕組みやお金の流れを把握している人材を欲している業界です。
経済学部生の就職はもちろん、社会人になってからの異業種転職でも、経済学部出身は金融業界で有利です。中小企業診断士やCMAのようなコンサルティングに生かせる資格を保有していれば、金融機関の法人営業としても重宝されます。
メーカー
食品・自動車・IT機器などの各メーカーでも、経済学部出身者は求められます。経済学部では、ミクロ経済学で企業の意思決定・行動について学んでおり、メーカーの経済活動をよく理解できると考えられるためです。
また、経済学部出身者は、経営戦略に深く関わるマーケティング・企画の部門でも活躍できます。
元々メーカーで営業・事務など他の職種で働いていた経験がある場合は、経営戦略についての知識を証明できる資格を取得し、マーケティング・企画の部門に転身するのもよいでしょう。
商社
数字に向き合う機会が多かった経済学部出身者には、商社もおすすめできる業界です。特に国際貿易業務では、経済学で学んだ知識が求められる機会が多くあります。
さらに、世界の経済について学んでいた人なら、海外に拠点を持つケースが大半である商社で活躍しやすいでしょう。
商社での活躍を目指すなら、証券アナリストとともに、TOEICのように英語力を証明できる資格を取得しておくと有利です。
IT業界
IT業界でも、経済学部で学んだ知識や身に付けたスキルを生かせます。変化の激しいIT業界では、顧客のニーズはもちろん、市場状況を的確に分析・把握できる人材が欠かせません。マクロ経済で学んだ知識が生きるでしょう。
また、論理的思考力が鍛えられているのも、経済学部出身者にIT業界がマッチしやすい理由です。システムを作る工程に関わらない職種だとしても、エンジニア・プログラマーとの連携には論理的思考力が必要になる可能性があります。
コンサルティング業界
企業経営について一定の知識を持つ経済学部出身者には、コンサルティング業界(コンサルティングファーム)もおすすめです。経済の仕組みや企業の財務について学んだ経験と、論理的思考力・分析力を生かせます。
コンサルティングファームには、例として以下のような分野があります。
- 戦略系
- 総合系
- IT系
- シンクタンク
- 人事系
- 中小企業コンサルティング
中小企業診断士を取得すれば、中小企業に特化した分野での活躍が期待できるでしょう。経済学部出身で異業種・異職種からの転職を考えているなら、経験してきた業界の知識を生かせる分野を探す方法もあります。
公務員
国家公務員には、経済分野のスペシャリストである「国税専門官」「財務専門官」というポジションがあります。
国税専門官は、国税局や税務署で法律・会計・経済の専門知識を基に、内国税の賦課・徴収に携わる仕事です。
財務専門官は、財務局で国有財産の有効活用をはじめとした、金融に関わる業務に携わります。どちらも、経済学部で学んだ知識を生かせる仕事です。
また、地方公務員の試験にも、経済学の知識が問われる設問があります。経済学部出身者の転職で、収入の安定を重視している場合は、公務員も視野に入れてみましょう。
経済学部出身者におすすめの職種
キャリアチェンジを考えているなら、業界だけでなく具体的な職種についても、自身の経歴に合うものを知っておきましょう。経済学部出身者が活躍できる職種を、3つ紹介します。
経理
経理・会計・財務の仕事は、会計学を専攻していた経済学部出身者におすすめの職種です。会計学専攻でなくても入社後に知識を付けることは可能ですが、専攻していた人の方が業務になじみやすいでしょう。
企業の経理では、現金・預金・手形の管理や伝票作成、買掛金・売掛金の管理といった業務を担当します。経理として経験を積み、会計・財務のように経営に深く関わるポジションを目指すのも1つのキャリアです。
マーケティング・企画
メーカーに限らず、経済学部出身者は企業のマーケティング・企画の部門で重宝されます。ミクロ経済で学んだ企業の経済活動はもちろん、マクロ経済で学んだ社会構造全体の知識も市場の分析に役立ちます。
マーケティング・企画は、世の中のニーズを分析して新たな商品・サービスを生み出したり、販促活動・広告宣伝の戦略を考えたりする職種です。
転職で異職種からのキャリアチェンジを考えるなら、同じ業界での経験が生かせる求人も探してみましょう。
営業
経済学の専門知識が求められる職種ではありませんが、営業も経済学部出身者が活躍できる仕事です。営業は売り上げを伸ばす役割の職種であり、お金の流れを正しく理解できる経済学部出身者は有利になります。
時事的な動向を読める点も、経済学部で学んだ人が営業で成功しやすい理由です。経済の流れや取引先・競合他社の動きを的確につかむことで、より効果的なアプローチが取れるでしょう。
経済学部の強みを生かせる仕事に就職しよう
経済学部で学んだ人は、履修する内容がビジネスに直結するため就職に有利だとされています。資格を取得しやすいのも、経済学部で学んだ人の強みです。
社会人になってからキャリアチェンジのために資格を取る際も、分野によっては大学時代に得た知識が役立ちます。
経済学部出身の強みを生かせる業界・職種に絞って求人を探せば、チャレンジすべき仕事を判断しやすくなるはずです。
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