水道技術管理者は、水道水の安全性と安定供給を担う職業です。水質管理から施設の維持管理までを行う技術面での責任者であり、水道全般に関する高い専門知識が求められます。役割や業務内容、未経験者が目指すために必要な資格を解説します。
水道技術管理者の役割と重要性
水道技術管理者は、安全な水の供給を担う重要な役職です。役割や水道事業における位置付けについて詳しく見ていきましょう。
水道技術管理者とは何か
水道技術管理者は、水道事業者や専用水道設置者が配置を義務付けられている技術面の責任者です。水道施設の管理・水質検査・衛生管理など、安全な水の供給に関わる技術的な責務を担うのが一般的です。
業務内容には、水道施設が法令に適合しているかの確認や定期的な水質検査、職員の健康管理などが含まれます。水質汚染が発生した場合、給水停止の判断を行う権限も有しています。
水道技術管理者の資格を取得するには、大学や短大、高等専門学校での関連学科の修了と実務経験、もしくは厚生労働大臣認定の講習会修了が必要です。
水道事業における水道技術管理者の位置付け
水道事業者は「水道法」という法律に基づき、水道の管理に関して、技術上の業務を担う水道技術管理者を必ず1人設置しなければなりません。
水道技術管理者は水道事業における技術責任者です。安全な水道水の供給を確保する業務を担当するほか、施設内の職員を技術的に監督します。
水道事業者自身が資格を有している場合は、別途管理者を置く必要はありませんが、通常は水道技術管理者が技術面を監督し、事業運営の安全性と安定性を支えます。
水道技術管理者の具体的な業務内容
水道技術管理者の具体的な業務内容は多岐にわたります。安全で清浄な水を供給するため、日常的な管理から緊急時の対応まで、幅広い責任を担っています。以下では、水道技術管理者の主要な業務内容について詳しく解説します。
日常的な管理業務
水道技術管理者の日常業務は、安全で清浄な水を供給するための重要な役割を担っています。水道技術管理者の主な業務は以下の通りです。
- 水道施設の基準適合検査
- 給水開始前の水質検査及び施設検査
- 給水装置の構造及び材質の基準適合検査
- 定期及び臨時の水質検査
- 関係者の健康診断
- 衛生上必要な措置
- 台帳の作成
- 給水の緊急停止
- 給水停止命令による給水停止
特に重要なのが、塩素消毒などの衛生上必要な措置です。これにより、水道水の安全性を維持しています。 緊急時の対応も水道技術管理者の重要な責務です。供給水に健康被害の恐れがある場合、迅速に給水停止などの措置を講じます。
緊急時の対応と責任
水道技術管理者は、緊急時にも重要な役割を担います。水質事故や災害発生時には、迅速な状況把握と適切な対応が求められるでしょう。
例えば、地震による配水管の破損時には、被害状況を速やかに確認し、応急復旧計画を立案します。また、水質汚染の疑いがある場合は、直ちに給水停止や代替水源の確保などの判断を下す必要があります。
自治体・消防・警察に情報共有をしたり、応援要請の判断をしたりするのも水道技術管理者の役割です。
水道施設の計画・設計・工事監督
水道技術管理者は、主に水質管理や施設の維持管理を担当し、施設の基準適合性や水質検査、安全な給水を確保するための技術的な管理業務を行います。工事監督や設計に関する役割を担うのは、布設工事監督者です。
例えば、新たな浄水場の建設では、水源の選定から施設の規模、処理方式まで、幅広い知識を活かして計画を立案します。
設計段階では、安全性・効率性・環境への配慮など、多角的な視点から最適な仕様を決定しなければなりません。特に、災害対策や将来の拡張性を考慮した設計が求められるでしょう。
工事監督では、設計図通りに施工が行われているか、品質管理は適切かなどを厳しくチェックします。完成後も、試運転や性能試験を通じて、施設が期待通りの機能を発揮するか確認します。
水道技術管理者の資格要件と取得方法
水道技術管理者の資格を取得するためには、特定の要件を満たす必要があります。ここでは、資格取得に必要な学歴と実務経験、資格取得講習の内容と期間、そして資格試験の概要と対策について詳しく解説します。
資格取得に必要な学歴と実務経験
水道技術管理者の資格取得には、特定の学歴と実務経験が必要です。大学で土木工学を学んだ場合、4年以上の実務経験が求められます。短大や高専卒業者の場合、それぞれ6年または8年の経験が必要です。
土木工学以外の理系学部でも同様の条件が適用されます。学歴がない場合でも、10年以上の実務経験があれば資格取得が可能です。簡易水道や小規模水道の場合、必要な経験年数は短縮されます。
資格取得講習の内容と期間
資格取得のための講習「水道技術管理者資格取得講習会」は、学科講習と実務研修に分かれています。
学科講習は約15日間にわたり、水道法や公衆衛生、水質管理などの知識を学びます。講習の最終日には、4科目の試験が実施され、全科目で60点以上の得点が必要です。
合格者は続いて15日間の実務研修を行い、取水施設や浄水施設の管理技術を習得します。この研修は試験ではなく、全日程の出席と実務研修日誌の提出が求められます。
出典:研修会・講習会のご案内(研修会・講習会一覧):公益社団法人 日本水道協会【JWWA】
水道技術管理者を目指すなら計画的に準備を進めよう
水道技術管理者は、安全で安定した水の供給を確保するため、水道事業において重要な役割を担う専門職です。水質管理や施設の維持管理などの業務を通じて、地域の水道インフラを技術面から支えます。
資格取得には、学歴や実務経験に加え、講習の受講が必要です。水道法で設置が義務付けられており、事業者は届け出を行わなければなりません。
水道技術管理者を目指す方は、早い段階から学歴や実務経験の準備を進め、資格取得に向けて計画的に学習を進めましょう。資格取得後も、継続的なスキルアップが求められる職種です。