美しい庭園は見ていて楽しく、心も癒されます。そのような素敵な空間をデザインする職業が、ガーデンデザイナーです。これからガーデンデザイナーを目指す人に、具体的な仕事内容や年収の目安、おすすめの資格などを解説します。
ガーデンデザイナーとはどんな職業?
ガーデンデザイナーという職業があることを知っていても、具体的に何をするのかまでは分からない人もいるでしょう。ガーデンデザイナーの特徴について、庭師との違いや将来展望も併せて解説します。
庭の設計・デザインを担当
ガーデンデザイナーは名前の通り、庭の設計とデザインを担当する専門家です。自分が設計した庭の維持管理にかかわることもあります。活躍場所は個人宅の庭からビルの屋上庭園や都市公園まで、さまざまです。
庭は草木や石などの自然界にあるものと、噴水や池、橋のように人工的に作るものが調和して、美しい景観となります。
このためガーデンデザイナーには、植物の知識はもちろん、土壌・給排水・エクステリア素材・建築など、さまざまな専門知識が必要です。
ガーデンデザイナーと庭師との違い
ガーデンデザイナーと庭師はどちらも庭をデザインする職業ですが、何が違うのでしょうか。庭師は日本庭園の造園や維持管理に携わる職人です。自ら植物をせんていしたり、庭石を動かしたりするのも庭師の役割です。
一方、ガーデンデザイナーは日本庭園に限らず、洋風の庭や商業施設の緑地空間など、幅広いスタイルの庭園を手がけます。庭のコンセプトを決めたり、設計図を描いたりするのがメインで、せんていや工事などの実作業は行いません。
ガーデンデザイナーの将来性
ガーデンデザイナーへのニーズは今後、増えると考えられています。主な理由は以下の通りです。
- 環境保護への意識が高まっている
- ストレス社会における癒し効果が期待されている
近年、地球温暖化や生物多様性の危機が広く認識されるようになり、環境保護への意識が高まっています。環境対策としてオフィスビルや商業施設、公共施設などで自然の景観を取り入れるようになり、ガーデンデザイナーの活躍の場が増えているのです。
ストレス社会で自然との触れ合いが重視されるようになったこともあり、個人宅でも庭園設計を依頼する人が増加傾向にあります。
ガーデンデザイナーの働き方と収入
ガーデンデザイナーは、どのような場所で、どんな業務をこなしているのでしょうか。就職先や仕事の流れ、年収など働き方について具体的に解説します。
主な就業先
ガーデンデザイナーの就業先は、造園会社やガーデニング専門店・エクステリアの設計事務所・住宅メーカーなど多岐にわたります。造園会社では、個人宅の庭から公園、街路樹の整備まで幅広い案件に携わります。
ガーデニング専門店では、個人宅の庭のデザインを手がけることが多いでしょう。エクステリア専門の設計事務所も、ガーデンデザイナーの活躍の場です。庭だけでなく外壁や門、カーポートなども含めた外構全体のデザインを行います。
家の顔となる外観を総合的にプロデュースする、やりがいのある仕事といえるでしょう。フリーランスとして、屋上緑化や壁面緑化などの都市緑化プロジェクトにかかわることもあります。
役割と仕事の流れ
ガーデンデザイナーの役割は、顧客の要望に添って庭をプロデュースすることです。その業務は、以下のような流れで進みます。
- 顧客から庭のイメージや予算、敷地の状況などをヒアリング
- 現地を視察
- ヒアリングや視察で得られた情報を元にデザインを考案
- ラフ図面と見積もりを作成し、プレゼンテーション
- 受注後、詳細な設計図を作成
- 使用する植物や、実際に工事を請け負う業者を手配
- 工事への立ち合い・監督
- 顧客に引き渡し、維持管理についてアドバイスする
平均的な年収や待遇
ガーデンデザイナーの年収は、経験や実力によって変動します。新人の場合、年収300万円程度ですが、キャリアを積めば500万円以上も可能です。大手造園会社に就職した場合、福利厚生や研修制度など、手厚いサポートを受けられることもあります。
独立という選択肢も魅力的です。フリーランスとして活動すれば、受注先の選択肢が広がり、高収入を得る可能性も高まります。ただし安定した収入を得るには、確かな実力と営業努力が欠かせません。
ガーデンデザイナーになるには
ガーデンデザイナーには、どうすればなれるのでしょうか?一般的な方法を紹介します。
基礎知識を習得する
ガーデンデザイナーを目指すなら、専門的な知識と技術の習得は必須です。多くの場合、大学や専門学校で学ぶことから始まります。環境園芸学部や緑地環境学科、園芸科などの学部・学科では、植物学や造園学、デザイン理論などを体系的に学べます。
本場のガーデニング技術を学ぶため、イギリスへの留学も選択肢の1つです。すでに社会に出ている人が基礎知識を学ぶなら、関連資格を取得するとよいでしょう。試験勉強を通して、必要な知識が身に付きます。
造園会社などに就職して経験を積む
基礎知識があったとしても、新卒や未経験からいきなりガーデンデザイナーとして活躍できるわけではありません。ガーデンデザイナーに役立つ資格の中には、実務経験が必要なものもあります。
まずは造園会社や設計事務所などに就職し、実務経験を積む必要があるのです。初めは図面作成の補助や現場作業などのアシスタント業務から始まり、徐々に責任ある仕事を任されるようになります。
この過程で、ガーデンデザイナーに求められる現場のノウハウや、顧客とのコミュニケーション能力が培われます。
ガーデンデザイナーにおすすめの資格
ガーデンデザイナーとしてのキャリアを築く上で、専門的な資格の取得は大きな強みとなります。業界での信頼性を高め、より高度な仕事を任されるチャンスを広げるおすすめの資格を紹介します。
ガーデンデザイナー認定試験
ガーデンデザイナー認定試験は、一般社団法人日本ガーデンデザイナー協会が主催する民間資格です。ガーデンデザインに関する、一定の知識や技術を証明する目的で設けられました。
合格者には「ガーデンデザイナー認定証」が授与されます。受験に際し、実務経験などの特別な要件はありません。学生や未経験者でも挑戦できるので、就職活動で意欲をアピールする手段としても役立ちます。
出典:ガーデンデザイナー認定試験|一般社団法人日本ガーデンデザイナー協会
造園技能士
造園技能士は厚生労働省が認定する国家資格です。造園に関する高度な技能を持つことを証明するには、最適な資格といってもよいでしょう。
試験は厚生労働省が、各都道府県の職業能力開発協会に委託する形で実施しています。1級から3級まであり、実務経験や技能レベルに応じて取得できます。
所定の実務経験と、一定レベルの知識を有していれば、誰でも挑戦可能です。
出典:技能検定のご案内 : 中央職業能力開発協会(JAVADA)
出典:厚生労働省|造園技能検定試験の試験科目及びその範囲並びにその細目
エクステリアプランナー
エクステリアプランナーは、住宅の外構設計や工事監理の能力を証明する資格です。近年、多くの自治体で景観条例が施行され、街並みに配慮した外構工事の需要が高まっています。
エクステリアプランナーは、こうした要求に応える資格といえるでしょう。全体的な外観を整えたいという顧客のニーズに対応でき、仕事の幅が広がるのもメリットです。
資格は1級と2級に分かれており、2級は誰でも受験できます。1級の場合は所定の資格を有することが条件です。所定資格の中には、実務経験が必要なものもあります。
出典:エクステリアプランナー - 資格・講習:JPEX 日本エクステリア建設業協会
ガーデンデザイナーに向いている人
ガーデンデザイナーには、特定の資質や能力が求められます。この仕事に向いている人の特徴を3つ紹介します。
自然や植物が好き
ガーデンデザイナーにとって、自然や植物への深い愛情は欠かせません。自然や植物への愛情は、単なる知識だけでなく、植物の健康状態を見極める目や、手入れの際の繊細な感覚にも表れます。
植物の特性を理解し、適切な環境を整えることで、庭全体の調和を生み出せるのです。例えば、日陰を好む植物と日向を好む植物を適切に配置したり、季節ごとに花が咲く植物を組み合わせたりすることで、年間を通じて魅力的な庭を設計できます。
植物の成長速度や最終的な大きさを考慮し、長期的な視点で庭の変化を予測する能力も求められます。もともと自然や植物が好きでなければ、丁寧な仕事はできないといえるでしょう。
美的センスに優れている
ガーデンデザイナーは、画家や小説家と同じく、何もない状態から庭という作品を造る仕事です。美しい庭を造るには、優れた美的センスが欠かせません。
自分なりに色彩感覚やバランス感覚を駆使し、クライアントの要望を形にする能力が求められます。日本庭園の静寂さや、洋式庭園の整然とした美しさなど、さまざまなスタイルを表現できる柔軟性も必要です。
春に咲く花と秋に紅葉する木々を組み合わせるなど、1年を通じて魅力的な庭を演出する想像力も問われます。
コミュニケーションや段取りが上手
ガーデンデザイナーには、一定のビジネスセンスも必要です。顧客へのヒアリングや業者への指示などは、コミュニケーション力がなければ務まりません。
また、期限や予算が決まっている中、効率的に仕事を進めるためには、上手に段取りする力が求められます。
指定した植物が届かないときや、資材の価格高騰で予算がオーバーしそうなときに、臨機応変に対処できる能力も、ガーデンデザイナーとして成功するために欠かせない要素といえるでしょう。
適性を見極め、ガーデンデザイナーへの道を検討しよう
ガーデンデザイナーは、庭園や緑地の設計・施工を担う専門職です。造園学や園芸学を学んだ上で実務経験を積み、独り立ちするのが一般的なコースです。関連資格の取得も、大きな武器となるでしょう。
就職先は造園会社や設計事務所が多く、フリーランスとしての道もあります。ただしデザイナーとはいえ、デザインセンスだけでなれるわけでもありません。自然や植物への興味や、コミュニケーションスキルも求められます。
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