「ご用命」は、目上の相手に対して使うのにふさわしい表現ですが、使い方を間違えると失礼になることもあります。正しい意味や適切な使用場面を知ることは、ビジネスコミュニケーションを円滑に進める上で役立つでしょう。
「ご用命」とはどんな意味?
相手から依頼や要望を受けたときに使う丁寧な表現で、ビジネスでは目上の人やクライアントに対して使うケースが多いでしょう。言葉の意味と正しい使い方を解説します。
基本的な意味と用法
「用命」には、「物事を人に頼む」と「注文する」の2つの意味があります。接頭語(接頭辞)の「ご」は、尊敬・謙譲・美化の用法に分かれますが、ここでは尊敬の意味で使われています。
ビジネスや商売をしている人であれば、「ご用命いただきありがとうございます」や「ご用命を心よりお待ち申し上げます」などの表現を使うケースが多いでしょう。
これらの表現は、相手への敬意を示すとともに良好な関係構築に役立ちます。心からの感謝の気持ちを込めて、タイミングよく伝えましょう。状況に応じて「ご依頼(ご注文)いただき感謝いたします」などの表現と使い分けるのも効果的です。
使用できる相手と場面
自分より目上の相手に対して使用するのが一般的で、同僚・部下・家族などの身内に対しては使いません。
自分が商品・サービスの注文を受ける立場にある場合、「(弊社に)ぜひ注文(依頼)してください」は、直接的で商売っ気が強いため、相手によっては別の表現に言い換えるケースが多いのです。
話し言葉と書き言葉の両方で使えますが、自分が相手に注文・依頼をする立場のときには使いません。誰が主語になっているかをしっかりと意識しましょう。
「ご用命」を含む表現と例文
敬語表現を適切に使用するためには、より多くの例文に触れることが重要です。ここでは、ビジネスシーンでよく使われる代表的なフレーズと具体的な例文を紹介します。
ご用命を賜る・承る
賜る(たまわる)には、謙譲語の「もらう」と尊敬語の「与える」の2つの意味があります。この文脈では、もらうの意味で使われています。
承る(うけたまわる)は、受ける・聞く・引き受けるの謙譲表現で、相手から何らかのアクションがあったときに使うのが基本です。
どちらも非常に丁寧な表現であり、目上の人に対してのみ使います。ビジネスシーンで使える例文をチェックしましょう。
【例文】
- 〇〇様にご用命を賜りましたことを大変光栄に存じております
- 〇〇の商品につきまして、確かにご用命を承りました
ご用命がございましたら
相手の要望が不明確な場合に使用する表現です。相手の潜在的なニーズに応えたいという姿勢を示せるため、取引がより円滑に進むでしょう。
【例文】
- 他に何かご用命がございましたら承ります
- ご用命の際には、弊社にお申し付けください
これらの表現は、顧客サービスや商談の場面で特に有効です。ビジネスメールの締めくくりとしても適しており、「ご用命がございましたら、いつでもご連絡くださいませ」のように使用する人もいます。
「ご用命」の類語と例文
「ご用命」は丁寧な表現ですが、状況によってはあまり適切でない場合もあります。相手や場面に応じた適切な言い回しを学びましょう。
ご下命
ご下命は、下命(かめい)に接頭辞の「ご」を付けた丁寧な表現です。下命は、命令や言い付けを意味し、目上の人が目下の人に命令や指示を出す際に使われます。
社長や取締役のように、より格上の相手に対して使用する表現であり、一般的なビジネスシーンでは、あまり使われません。相手や状況に応じて適切に使い分けることが重要です。
【例文】
- ご検討のうえ、ぜひご下命くださいますようお願いいたします
- ご下命あり次第、航空券をすぐに手配いたします
申し付ける・仰せ付ける
申し付けるは、依頼・命令を意味する言葉で、目上の人が目下の相手に依頼する際に使います。ビジネスシーンでは、取引先やクライアントといった社外の相手に使用するのが一般的で、フォーマルな印象を与えます。
仰せ付ける(おおせつける)は、さらに格式高い表現です。言い付けるの尊敬表現で、会社では社長や取締役などの地位が上の相手に対して用います。
【例文】
- 英語での対応も可能ですので、お気軽に申し付けくださいませ
- ご不便がありましたら、ご遠慮なく仰せ付けくださいませ
ご所望
「所望(しょもう)」とは、あることをしてもらいたい、または欲しいと望むことです。要望と似ていますが、目に見えるものを望む際に用いられるのが一般的です。例えば、サンプルが欲しいときは「サンプルを一式所望する」と表現できます。
一方「ご所望(ごしょもう)」は目上の人を敬う言い回しです。よく使われる例文をチェックしましょう。
【例文】
- どのようなサンプルをご所望でしょうか?
- ご所望の資料を送付いたしました
- 〇〇様がご所望ならば、すぐにお持ちいたします
「ご用命」は相手やシーンを選んで使おう
ご用命という言葉は、顧客とのやりとりでよく用いられます。「注文(依頼)してほしい」と伝えるよりも、相手に対して丁寧でフォーマルな印象を与えるでしょう。会話の中ではもちろん、メールや文書の中でも使用可能です。
一方で、自分を主語にするといった誤った表現を使う人も見受けられます。敬語は適切に使わなければ、相手に違和感を与えてしまいます。ビジネスパーソンとして、類語や言い換え表現も覚えておきましょう。