自転車安全整備士とは?受験資格や試験の内容など詳しく解説

自転車安全整備士は、自転車の安全な利用を支える存在です。点検・整備のスキルを証明できるだけでなく、安全を保証する「TSマーク」を取り扱えます。自転車安全整備士の役割をはじめ、資格取得に必要な条件や試験内容、関連資格について解説します。

自転車安全整備士とは?

駐輪所

(出典) pixta.jp

自転車安全整備士は、自転車の点検・整備などを通じて、安全な利用をサポートする資格です。まずは資格の概要と、取得に必要な条件から確認していきましょう。

日本交通管理技術協会が実施する民間資格

自転車安全整備士は、日本交通管理技術協会による民間資格です。同協会は、自転車の安全利用促進を目的に活動する団体であり、資格制度を通じて高水準の整備技術を提供しています。

自転車の点検・整備と安全利用に関する指導を行うための資格で、試験は年に1回程度実施されます。自治体や企業でも高い評価を受けており、合格者は全国で活動が可能です。また資格保持者が点検・整備した自転車は、後述する「TSマーク」を貼れるようになります。

受験手数料は、実技・学科・面接を全て受ける場合は2万8,600円です。いずれかが免除になる場合は費用負担が軽減され、類似資格である自転車技士と両方受験する場合も、割安で受けられます。

出典:自転車安全整備技能検定受験案内 - (公財)日本交通管理技術協会

資格取得に必要な条件

自転車安全整備士の資格を取得するには、18歳以上であることに加え、自転車の点検・整備・安全利用に関する指導で、2年以上の実務経験を有する必要があります。

安全利用に関する指導とは、自転車の利用者が安全に走行できるように、ルール・マナー・適切な利用方法を伝える活動を指します。

車道の左側通行や一時停止場所での注意などの交通ルールの説明、歩道での徐行やベルの適切な使用方法といった安全運転マナーの指導などが例として挙げられるでしょう。

ヘルメットの着用や、リフレクター(反射板)の重要性の説明、点検・整備の重要性の啓発なども含まれます。

出典:自転車安全整備技能検定受験案内 - (公財)日本交通管理技術協会

難易度と合格率の目安

試験の難易度は、実技が少し高めで、合格率は50~60%程度です。一方、学科・面接の合格率は90%程度とされており、多くの人が合格しています。ただしどちらも、あくまでも目安なので、参考程度にとどめておきましょう。

実技試験では、一定の専門技術が求められます。自転車の点検・整備をしている人ならば、日頃の経験が生かせるでしょう。学科試験は、安全管理や自転車走行に関する法規について幅広い知識を問われますが、ほかの資格試験に比べると難易度は低めとされています。

資格取得者が扱えるTSマークについて

自転車整備

(出典) pixta.jp

先述の通り、自転車安全整備士が点検・整備した自転車には、TSマークを貼付できます。自転車の安全性を保証できるだけでなく、賠償責任保険と傷害保険なども付帯されています。概要を確認しておきましょう。

点検整備の証明に保険が付帯したマーク

TSは「Traffic Safety」の頭文字を取ったもので、自転車安全整備士が点検・整備した証しとして、多くの自転車に貼付されているマークです。青・赤・緑の色別に分けられ、それぞれ補償内容の異なる保険が付いています。

利用者は、自転車安全整備士のいる自転車安全整備店で点検・整備をしてもらい、TSマークを貼付してもらえば、その時点で対象の保険が付帯されます。なお、整備店で取り扱えるTSマークは、3種類のうち1種類のみです。

出典:TSマークとは - (公財)日本交通管理技術協会

TSマークの補償内容について

TSマークの貼付された自転車が事故を起こし第三者に損害を与えた結果、利用者が損害賠償責任を負ってしまった場合、次のようにマークの色によって補償が適用されます。

  • 青色:死亡・重度後遺障害(1~7級)の賠償責任補償で、限度額は1,000万円
  • 赤色:死亡・重度後遺障害(1~7級)の賠償責任補償で、限度額は1億円
  • 緑色:死亡・傷害の示談交渉サービス付きの賠償責任補償で、限度額は1億円

基本的に、被害者が死亡または重度の障害を負った場合などに、限度額の範囲で補償を受けられます。緑色は、保険会社が自転車の搭乗者に代わり、示談交渉をしてくれるのが特徴です。また、全ての人身事故が賠償責任補償の支払対象となっています。

搭乗者が交通事故に遭ったときの傷害補償もあり、日常的に自転車に乗る人には心強いでしょう。なお保険の有効期間は、TSマークに記載された点検基準日から1年間です。

出典:TSマークとは - (公財)日本交通管理技術協会

自動車安全整備士試験の内容

自転車修理

(出典) pixta.jp

自転車安全整備士の試験は、実技・学科・面接の3部門で構成されています。それぞれの内容を具体的に見ていきましょう。

実技試験

実技試験では、実際に自転車を整備し、過不足なく完遂できる技術があるかを問われます。タイヤ交換やブレーキの調整といった基本的な作業から、特殊なトラブルへの対処まで、さまざまなケースに対応する必要があります。

正確かつ迅速に作業を進めなければならないため、十分な業務経験を積んだ上で、きちんと準備をして試験に臨むことが大切です。試験で整備する自転車や工具なども用意しておきましょう。

出典:令和6年度 自転車技士・自転車安全整備士試験 受験者心得 PDF4枚目

学科試験

学科試験では、自転車の整備に関する知識を筆記で回答します。自転車の構造・部品名や、安全基準・関連法規に関する問題まで、幅広い知識が問われる試験です。

出題範囲が広いため、過去の問題集や公式テキストを活用して、効率的に学習を進める必要があります。特に、関連法規の問題は正確な理解が求められるので、出題範囲の法令をきちんと理解しておきましょう。

出典:令和6年度 自転車技士・自転車安全整備士試験 受験者心得 PDF11枚目

面接試験

面接試験は1人当たり5分程度で終わる簡易的なもので、資格取得の目的や安全整備士としての意識が評価されます。具体的な整備経験や資格取得後の活用方法について、自分の考えをしっかりと伝えることが重要です。

また、自転車の安全利用に対する熱意を聞かれる場合もあるので、どのように回答するか簡単にシミュレーションをしておくとよいでしょう。

出典:令和6年度 自転車技士・自転車安全整備士試験 受験者心得 PDF13枚目

自転車の整備に関するほかの資格は?

自転車の様子をチェックする

(出典) pixta.jp

自転車安全整備士以外にも、自転車の整備に役立つ資格がいくつかあります。代表的な資格を紹介するので、基本的なところを押さえておきましょう。

自転車技士

自転車技士は、一般社団法人日本車両検査協会(VIA)が認定する資格で、自転車の修理や販売に関する技術力を証明できます。試験内容は、自転車安全整備士試験に似ていますが、より技術的な内容が中心です。

高度な整備技術を習得したい人に適しており、知識・技術の向上を常に図るために、5年ごとに資格を更新する必要があります。

出典:自転車技士制度とは|自転車技士|一般財団法人 日本車両検査協会 VIA

SBM(スポーツバイクメカニック)

SBM(スポーツバイクメカニック)は、自転車の中でもスポーツバイクの整備に特化した、メカニックの知識・技術を担保する資格です。試験は講習形式で実施されるのが特徴で、スポーツバイク特有の技術を学べます。

特に、ロードバイクやマウンテンバイクの販売店で役立つ資格なので、興味のある人は概要を確認しておきましょう。2000年代初頭のロードバイクの流行により、近年はスポーツバイクの利用者も増えているので、今後注目される資格の1つといえます。

出典:SBM(スポーツバイクメカニック)|自転車産業振興協会

出典:スポーツ自転車整備士検定|自転車産業振興協会

自転車安全整備士を取得するなら実務から

自転車を修理する

(出典) pixta.jp

自転車安全整備士の資格取得を目指すなら、まず自転車整備の実務経験を積むことが重要です。業務を通じて技術を磨きながら、きちんと対策をして本番に臨みましょう。

現場で経験を積み、試験対策を十分に行うことで、実技・学科ともに合格への可能性が高まります。自転車関連分野で就職・転職を目指すならば、この機会に資格の取得を目指してみましょう。

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