学生の立場でアルバイトをしている人は多くいますが、確定申告が必要な条件が分からないケースは珍しくありません。確定申告がどのような場合に必要なのか、基本的なところを押さえておきましょう。学生が確定申告をする際の方法も解説します。
学生で確定申告が必要なケース
学生であっても、所得の状況によっては確定申告が必要です。特に、以下の状況に該当する人は、確定申告が必要な可能性が高いでしょう。
複数のアルバイトをしている
複数のアルバイトを掛け持ちしている人は、学生でも確定申告が必要になる場合があるので、注意が必要です。税制上、年末調整は1社しかできないことになっています。このため2社以上でアルバイトをしている場合、年末調整を受けていない方の所得分を、申告しなければいけません。
また、給与収入の年間合計額が103万円を超える場合も、確定申告が必要になります。複数のアルバイト先から支払われる給与を合算し、総収入を確認してみましょう。
各アルバイト先で源泉徴収をされている場合でも、年末調整はされていないため、正しい所得税額を確定させるために申告が必要です。
出典:No.2520 2か所以上から給与をもらっている人の源泉徴収|国税庁
年の途中でアルバイトを辞めた
アルバイトを年の途中で辞めた場合、勤務先で年末調整がされないため、自分で確定申告をして過不足分の税金を精算する必要があります。源泉徴収票をアルバイト先から受け取り、申告書に添付します。
ただし、例外的に年末調整をしてもらえるケースもあるので、その際には確定申告の必要はありません。
例えば、著しく体調を崩して年内の復職が不可能、新しくアルバイトをする予定がないなどの場合は、アルバイト先が年末調整をしてくれる可能性もあるので、一度確認してみるとよいでしょう。
出典:No.1910 中途退職で年末調整を受けていないとき|国税庁
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を提出していない
アルバイトを始める際に、給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を提出していない場合、勤務先から年末調整を受けられません。本来、納付すべき税金よりも、多く徴収されている可能性があるので、正しい税額を決めるために確定申告が必要です。
源泉徴収により引かれた税金が、本来の税額よりも多い場合、確定申告により還付金を受け取れる可能性があります。
アルバイト以外で確定申告が必要なケース
アルバイトだけではなく、以下に該当する人も確定申告が必要になることがあります。学生の立場でフリーランスとして活動している人や、フリマアプリで物品を販売している人などは、注意しましょう。
業務委託を請け負っていた場合
クラウドソーシングや家庭教師などの業務委託を請け負っている場合、確定申告が必要なケースがあります。
給与所得ではなく事業所得や雑所得として扱われるため、諸経費を差し引いて48万円以上の所得がある場合は、課税対象です。
また、アルバイトをしており、業務委託が副業扱いになる場合、経費を差し引いた後の所得が20万円を超える場合も確定申告が必要です。アルバイトのほかに、副業でも収入を得ている人は注意しましょう。
フリマアプリなどで得た収入が対象になることも
フリマアプリやネットオークションなどで得た金銭も、その額によっては確定申告の対象になる場合があります。古着や家具など、家庭内で使用していた不要品をフリマアプリなどで売却する場合は、基本的に非課税であり、確定申告は必要ありません。
しかし、営利目的で仕入れた商品を販売して利益を得る場合は、注意が必要です。商品の仕入額や送料など、経費を差し引いた所得が年間20万円(非給与所得者は48万円)を超える場合は、確定申告を行わなければいけません。
出典:No.1906 給与所得者がネットオークション等により副収入を得た場合|国税庁
税金が安くなる?「勤労学生控除」について
勤労学生控除とは、学生でありながら一定の収入を得ている人に対して適用される、特別な控除です。制度の活用により納める税金が安くなる可能性があるので、該当する要件や申請手続きについて知っておきましょう。
勤労学生控除に該当する要件
勤労学生控除を受けるには、以下の要件を満たす必要があります。
- 学校教育法に規定される学生の立場であること
- 給与所得・事業所得・雑所得など、勤労による所得があること
- 勤労による所得以外の所得が、10万円以下であること
- 合計の所得金額が75万円以下であること
「勤労による所得以外の所得」とは、株の配当や家賃収入、ギャンブルで得られた一時的な収入などのことです。上記の要件に該当しているならば、課税所得が27万円減額されるため、税金の負担を軽減できます。
勤労学生控除に必要な手続き
勤労学生控除を受けるには、確定申告の際に控除申請が必要です。申請時には、在学に関する証明書の提出も必要なので、通っている学校に申請して取得しておきましょう。
アルバイト先が1カ所のみで、そこで年末調整する場合、扶養控除等(異動)申告書を勤務先に提出します。これは、勤務先から渡されるものです。
勤労学生控除に関する事項に記入し、在学に関する証明書が必要な場合は添付して勤務先に提出すれば、手続きが完結します。
学生が確定申告する場合の方法・手順
確定申告の経験がある学生は、そう多くはないかもしれません。難しそうと思われがちですが、基本的な流れを押さえればスムーズに進められます。確定申告の大まかな流れを押さえておきましょう。
税務署で確定申告する方法
税務署に行って確定申告をする場合、事前に必要な書類をそろえておき、現地で申告書を作成して提出します。
確定申告書と所得金額が分かる書類に加えて、控除証明書・本人確認書類(マイナンバーカード)・銀行口座が分かるものを用意しておきましょう。確定申告書は、国税庁のWebサイトからダウンロードするか、税務署で直接受け取れます。
税務署では無料で相談を受け付けているため、分からないことがあれば、気軽に相談しましょう。具体的な記入箇所や方法・注意点などを教えてもらえます。
また、PCやスマホからe-Taxでの申告も可能です。マイナンバーカードがあれば、自宅からでも確定申告ができるので便利です。システム上で確定申告書を作成し、オンラインで税務署に提出しましょう。
なお、申告書の送信時には、マイナンバーカードを発行した際に自分で設定したパスワードが必要です。パスワードを忘れてしまった場合、初期化・再設定の手続きが求められます。失念してしまう人も多いので注意しましょう。
出典:スマホとマイナンバーカードでe-Tax!|令和6年分 確定申告特集
青色・白色申告の違い
確定申告には、青色申告と白色申告の2種類があります。
青色申告は、所得控除額が大きくなるメリットがありますが、帳簿を付ける必要があるため手間がかかります。一方、白色申告は手続きが簡単ですが、控除額が少ないため節税効果が限定的です。
ただし、アルバイトでの収入は基本的に給与所得であるため、一般的には白色申告の対象となります。青色申告は、事業所得や不動産所得を得ている場合に選択できる方法です。アルバイトのみで収入を得ているならば、白色申告と考えて差し支えありません。
確定申告に関するQ&A
確定申告に関して、多くの人が感じる疑問や不明点について回答します。確定申告に対する理解を深め、確実に必要な手続きを取れるようにしましょう。
確定申告をしないとどうなる?
確定申告を怠ると、最大で5年さかのぼって、税務署から指摘を受ける可能性があります。追加の税金納付や延滞税が課される可能性があり、場合によっては罰則の対象となる恐れもあります。
たとえ確定申告をしなくても、市町村役場や税務署から督促されるため、申告をしなかったからといって税を逃れることはできません。ペナルティーにより、納付しなければならない税金を増やさないためにも、条件に該当するならば、毎年必ず確定申告をするようにしましょう。
確定申告を忘れたらどうすればよい?
その年によって若干異なるものの、確定申告の時期は2月16日〜3月15日までとなっています。もし期限を過ぎてしまった場合は、期限後申告が可能です。気が付いた時点で、できるだけ早く申告をするようにしましょう。
何から始めればよいのか分からない、すぐに手続きができないといった場合は、まずは税務署に相談することが大事です。申告が遅れるほど、延滞税がかかる可能性があるので、速やかな対応が求められます。
確定申告をすると還付金を受け取れるの?
還付金は、本来納めるべきだった税額よりも、実際に納めた税額の方が多かった場合に受け取れます。
給与や事業報酬から源泉徴収されている場合、最終的に納める必要のある税額よりも多く納付しているケースが多いため、確定申告で正しい税額を計算し、納め過ぎた税金を取り戻すことが大事です。
アルバイト先で源泉徴収されている人なら、確定申告によって還付を受けられる可能性が高いでしょう。
逆に、本来の納税額よりも、実際の納税額が少なかった場合は、不足分を追加で納めなくてはなりません。
確定申告によって損をすることはある?
基本的に、正確に申告をすれば、適正な税額を納めることになるため、損にはなりません。むしろ控除を適切に活用することで、税金の負担を抑えられる可能性があります。
ただし、年間の所得(業務委託などの場合)が48万円、アルバイトなど給与所得者の場合は103万円を超えると、学生でも扶養控除の対象になりません。扶養に入っている人は、扶養者である家族の税金の負担が増えるケースはあるので、注意しましょう。
学生だからと確定申告をサボらないよう注意
学生でも収入の状況によっては、確定申告が必要になります。複数のアルバイトをしている場合や、年の途中で仕事を辞めた場合など、条件に該当する可能性があるので、自分の収入状況はきちんと把握しておきましょう。
確定申告を怠るとペナルティーが発生する可能性があるため、期限内にしっかり対応しなければいけません。適切に申告をすることで、税金の額を軽減できたり、還付金を受け取ったりできる場合もあります。学生だからと油断せずに、必要な手続きをすることが大切です。