仕事を休むときや誘いを断るときは、「所用のため」というフレーズを使うことがあります。意味やビジネスシーンでの主な使い方、例文を見ていきましょう。「所用のため」の言い換え表現や英語でのフレーズ、使うときの注意点も紹介します。
「所用のため」の意味とは?
「所用のため」は、用事があるときに使う前置きの言葉です。使う場面や言葉の意味を解説します。
欠席の意を伝える際に使われる言葉
「所要のため」の「所用」は、用事・用件の意味です。日常的な言い方にすると「用事があるため」「用事のため」「やらなければならないことがあるため」のような言い回しになります。
基本的には、欠席するときの断り文句や、現在この場所にはいないと表現するときに使われるでしょう。「所用のため欠席します」「彼は所用のため席を外しております」などが挙げられます。
敬語ではなく丁寧な表現
「所用のため」自体は、敬語表現ではなく丁寧な表現とされます。「用事があるので」に比べると、改まった場面でも使いやすく、フォーマルな印象です。
ビジネスやフォーマルシーンで使用すると考えると、「所用のため」を使う場面では敬語で話すことが多いでしょう。
目上の人への対応を含むビジネスシーンで使えるかどうかは、使う場面や文章の組み立て方によって変わります。正しい敬語を使い、用事の理由を伝える必要のない場面であれば、使用に問題はありません。
出席できないときの断り文句として使う場合は、マナーを守りましょう。明確な理由を告げずに「所用」で済ませると、重要ではない用事で断ったのではないかと邪推される恐れもあります。
ビジネスシーンでの使い方
ビジネスシーンで「所用のため」を使う場面は、いくつかあります。それぞれの使い方や、例文を確認しましょう。英語で「所用のため」と伝えたいときに使える表現も紹介します。
イベントなどを欠席する場合
「所用のため」は、欠席の連絡をするときに使えます。主な例文を見てみましょう。
【例文1】
「○○さんは、今度の送別会に参加予定ですか?」
「すみません。その日は所用のため欠席の予定です」
【例文2】
「本日19時からの▲▲の勉強会に参加を予定していたのですが、所用のため急遽行けなくなりました。申し訳ありません」
用事の内容を説明できない場合は、理由を告げずに簡単にまとめましょう。
来客・電話を取り次ぐ場合
「所用のため」は、自分だけでなく他者の行動に対しても使えます。どのような用事で出かけているか分からない場合でも、デスクや社内にいないことが伝わりやすいでしょう。
【例文1】
「○○課長はいらっしゃいますか?」
「申し訳ありません。○○は所用のため席を外しております。戻り次第折り返すよう伝えます」
【例文2】
「▲▲さんに相談があるのですが、出勤されていますか?」
「ただ今、所用のため外出中です。すぐに戻るとのことですので、少しお待ちいただけますか?」
該当者がいないと伝えるだけであれば、必ずしも「所用のため」と説明する必要はありません。「〇〇は席を外しております」だけでも通じるため、無理に使う必要はないでしょう。
英語で表現する場合
英語で欠席を伝える場合、言い回しによっては失礼な印象を与える恐れがあります。説明の際は「用事がある」とだけ言うべきか、具体的な説明をするべきかを検討した上で表現を考えましょう。
【「所用がある」と理由を告げずに断る場合】
I have a thing to do.(用事があるんだ)
【申し訳ない気持ちを表現して誘いを断る場合】
I'm sorry, but I can't go with you.(申し訳ないけど、一緒に行くことはできない)
【「〇〇さんは所用のため電話に出られません」と伝えたい場合】
(He or She)is unavailable right now.(彼/彼女は今手が離せません)
ビジネスで使う場合は丁寧な表現を心がけ、何かしらの事情を告げるか申し訳ない気持ちを表現すると、相手に納得してもらいやすくなります。
「所用のため」を言い換えると?
他の言い方で「所用のため」を伝えたい場合、いくつかの候補があります。それぞれニュアンスが異なるため、使い分けるようにしましょう。使い方と例文を紹介します。
諸事情により
「諸事情により」は、「さまざまな事情や理由によって」という意味です。個別の事情を詳しく説明できないものの、何かしらの問題があったことを表します。
「所用のため」は、単に「何らかの用事がある」という意味です。「諸事情により」には用事以外の事情が含まれます。トラブル・支障が出たときに、使われることが多いでしょう。
【例文1】
「○○の件は進んでおりますでしょうか」「申し訳ありません。現在、そちらの件は諸事情により制作が停止しております。改めてご連絡いたしますのでお待ちください」
【例文2】
「どうされましたか?」
「すみません。今日そちらに伺う予定でしたが、諸事情により難しそうです。今後の予定が分かり次第連絡いたしますので、■■様によろしくお伝えください」
「諸事情により」を使うと、「簡単に説明できないような複雑な事情がある」と受け止められる可能性が高くなります。簡単な用事であれば、「所用のため」の方が適しているでしょう。
都合により
「都合により」は、欠席の連絡や何らかのトラブルがあったときに使える言葉です。「都合」は、何らかの事情・状況を指します。
カジュアルなシーンや、プライベートな用事で欠席を伝えるときにも使いやすい表現です。
【例文1】
「都合により、今日のイベントに参加できなくなりました」
【例文2】
「都合により、〇〇の案件は中止になりました」
欠席を伝えるときには、「都合が合わず」「都合がつかず」とも言い換えられます。
私用のため
「私用」は、プライベートな用事を指します。仕事以外の用事は、ほとんどが私用に含まれるでしょう。同じ意味で「私事のため」と言い換えも可能です。
「私用のため」と「所用のため」は、ほぼ同じ意味で使えます。出席できないときの断り文句として、使うケースが多いでしょう。
【例文1】
「私用のため、先に帰らせていただきます」
【例文2】
「私用のため、〇月〇日に休暇を取りたいのですがよろしいでしょうか」
「所用のため」と意味が似ているといっても、使えない場面もあります。例えば、外部とのやりとりで、「部長は私用のため席を外しております」と伝えるのはおすすめできません。
仕事よりプライベートを優先して出かけているように見えてしまうため、本人の了承なく事情を明かすとマナー違反になる恐れがあります。
「所用のため」を使う際の注意点
用事があるときに使いやすい「所用のため」ですが、使えない場面や使用を避けた方がよいケースもあります。使うときの注意点を覚えておきましょう。
事情説明が必要な場面では使えない
「所用のため」は、用件を説明できないときや濁すときに使う言葉です。具体的な理由を伝えなければならない場面では、使えません。
例えば、遅刻の理由を聞かれたときには、きちんと事情を説明することが大切です。「病院に行っていたため」「電車が遅れたため」など、やむを得ない事情もあるでしょう。
正当な理由があるにもかかわらず、「所用のため遅れてしまいました」と言うと、言えないような理由があるか不誠実であると判断されてしまいます。
相手から誘いを受けて断る場合も、「所用のため」より納得できる事情を告げる方がスマートです。
多用はしない
「所用のため」は具体的な説明の必要がなく、何らかの用事があることも伝えられる便利な言葉です。
しかし、使いすぎには注意しましょう。便利な言葉であるが故に、使わなくてもよい場面で多用してしまうケースも考えられます。
例えば、数分席を外すだけなのに毎回「所用のため」と繰り返していると、いったい何の用事があるのか、サボっているのではないかと要らぬ誤解を受けるかもしれません。
他者が席を外しているときも同様です。毎回取引先に「所用のため席を外しております」とばかり言っていると、ちょっとした用事で度々会社からいなくなる人のような印象を与える可能性もあります。
出張や会議中など、理由が明確であれば伝える方がよいケースも考えられるでしょう。
社会人として適切な言葉遣いを心がけよう
ビジネスシーンでは、改まった言葉遣いを求められるケースが少なくありません。「所用のため」は、細かい事情説明をする必要がなく、使いやすい言葉です。
適切な場面で使用すれば、簡単に用事があることを伝えられます。使いすぎには注意し、適宜言い換えて表現するなど、シチュエーションに合わせて使い分けるようにしましょう。