契約社員とは?正社員や派遣社員との違い、待遇について知ろう

企業で働くには、いろいろな雇用形態があります。その中の1つが「契約社員」ですが、具体的にどんな雇用形態なのでしょうか?正社員・派遣社員との違いや社会保険の有無など、契約社員の待遇について詳しく解説します。

契約社員とは?

書類に書き込む男性

(出典) photo-ac.com

そもそも契約社員とは、どういう雇用形態を指すのでしょうか?まずは、契約社員の基本的な定義について解説します。

有期雇用契約の一種

契約社員は、正社員など正規雇用の社員とは異なる契約内容で雇用契約を締結している社員のことで、大きく「有期雇用契約」の社員と「無期雇用契約」の社員に分かれます。

有期雇用契約とは、その名の通り期限がある働き方を指します。あらかじめ6カ月間や1年間などの期限を決め、雇用主と労働者が労働契約を結ぶ仕組みです。

パートやアルバイト、定年後の嘱託社員なども有期雇用契約にあたります。契約の満了時に再契約すれば、継続して働くことも可能です。しかし、双方の希望が折り合わなければ、更新されずに契約終了となるケースもあります。

反対に、最初に期間を定めずに労働契約を結ぶ形式は『無期雇用契約』です。

契約社員と正社員、派遣社員の違いは?

書類とハンコ、朱肉とボールペン

(出典) photo-ac.com

契約社員として働くことを考えたとき、正社員や派遣社員など、ほかの雇用形態との違いを理解しておく必要があります。さまざまな観点から、契約社員・正社員・派遣社員の違いを比較してみましょう。

雇用主の違い

契約社員と正社員は『直接雇用』、派遣社員は『間接雇用』なので、雇用主(自分が契約する相手)が違います。直接雇用では、勤務先の企業と労働者が労働契約を結び、給料は企業から直接支払われます。

しかし、派遣社員の場合は間に派遣会社が入るのが特徴です。派遣会社に登録し、派遣会社から紹介を受けて企業に派遣されます。あくまでも雇用主は派遣会社で、勤務している企業ではありません。

この場合、派遣先の企業から派遣会社に派遣料金が支払われ、派遣社員は派遣会社から給料を受け取ります。

契約期間の違い

正社員は無期雇用契約に分類され、契約期間の定めはありません。労働者が退職を申し出たり、企業から解雇されたりしない限り、特に契約更新の必要もなく、定年まで働くことが可能です。

しかし、有期契約社員と派遣社員は有期雇用契約のため、あらかじめ期間を決めて契約します。有期契約社員は、1回の契約で働ける期間は最長3年で、契約満了時には再契約が可能です。最短契約期間の決まりはありません。

派遣社員は日雇いが禁止されており、原則として最短31日です。派遣社員の場合、同一企業の同一業務では、最長3年間と決められています。

給与の違い

派遣社員の給与は、『時給×勤務時間』で計算されることが多く、契約社員は契約によって時給・日給・月給などさまざまです。正社員は、月給制になっているケースが多いでしょう。

給与に差が出るのがボーナスや退職金です。ボーナスや退職金の制度がある企業の場合、正社員にはどちらも支給されます。

契約社員や派遣社員の場合、ボーナスや退職金が支給されるには条件があり、対応は企業によります。

仕事内容の違い

それぞれの雇用形態により、仕事の内容も変わってきます。派遣社員は派遣契約で定められた仕事だけを行い、基本的に契約外の仕事は行いません。

契約社員も最初の契約によって、ある程度仕事の内容は決められています。しかし、派遣社員よりも仕事の内容が幅広かったり、専門的な仕事に特化されたりするのが一般的です。企業によっては、正社員と同じような働きを期待されるかもしれません。

派遣社員や契約社員と比べると、当然、正社員が最も責任の重い立場といえます。また、決まった仕事ではなく、人事異動などで別の部署に移れば、仕事内容が大きく変わることもあるでしょう。

契約社員に社会保険はあるの?

仁王立ちの小さな人形と書類

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契約社員と正社員には、いろいろな待遇の違いがあります。それでは、社会保険に関して違いはあるのでしょうか?社会保険の定義と、契約社員の加入条件を解説します。

社会保険とは?

社会保険には、健康保険・厚生年金保険・介護保険・雇用保険などがあります。健康保険は病気・ケガなどの際に、給付が受けられる保険です。

厚生年金保険は、20歳以上になると全員が加入する『国民年金保険』に上乗せされるもので、高齢になったり障害を負ったりしたときに、年金が支給されます。

介護保険は、将来介護が必要になったときの費用負担に備えるもので、40歳以上が加入対象です。

社会保険に加入すると、勤め先の企業に保険料の半額を負担してもらえます。社会保険の有無によって、保険料の負担や将来の保障内容が違ってくるため、社会保険の有無についてはチェックしておくのがおすすめです。

条件を満たせば加入できる

社会保険が適用される事業所に勤めている場合、正社員は必ず被保険者になります。しかし、契約社員が社会保険に加入するには、一定の条件を満たさなければいけません。

基本的には、同じ事業所で同じような仕事を行っている労働者に比べ、1週間および1カ月の所定労働時間が3/4以上であれば、加入できます。つまり、正社員と同じ勤務時間で働いている契約社員であれば、適用されると考えてよいでしょう。

この条件を満たさない場合でも、従業員数101人以上の会社であれば「所定労働時間が週20時間以上」「月額8万8000円以上の賃金」「1年以上雇用される見込みがある」「学生ではない」といった条件を満たしていれば加入対象です。

なお、所定労働時間に残業は含まれない点には注意しましょう。

参考:パート・アルバイトの皆さんへ 社会保険の加入により手厚い保障が受けられます。|政府広報オンライン

雇用保険や労災保険も

雇用保険や労災保険などの労働保険も、社会保険に含んで考えるケースがあります。

雇用保険とは、労働者が失業した場合に失業給付を行ったり、教育訓練給付金を支給したりする仕組みです。

雇用保険の適用事業所に採用された場合、1週間の所定労働時間が20時間以上あり、31日以上の雇用見込みがあれば、加入可能です。健康保険や厚生年金保険に比べて、加入要件のハードルは低くなっています。

一方、労災保険は仕事や通勤中のケガ・死亡に対して、保険金が支払われます。契約期間や雇用形態にかかわらず、全ての労働者が対象となるため、契約社員も加入の対象です。

参考:労働保険に加入するには|一般社団法人 全国労働保険事務組合連合会

契約社員のメリット

パソコン作業をする男性

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雇用形態の違いによって、メリット・デメリットも異なってくるものです。契約社員として働く際のメリットを見ていきましょう。

希望の職場で働きやすい

契約社員は、正社員に比べて給与などが安い分、採用のハードルが下がる傾向にあります。正社員としては狭き門であっても、契約社員であれば採用されるかもしれません。働きたい職場で契約社員を募集しているのであれば、チャレンジしてみるのもおすすめです。

新しい仕事を始める場合、自分に合うかどうかは、働いてみなければ分かりません。いきなり正社員で入ると、合わなかったときに退職しづらいなどのデメリットがありますが、契約社員なら期間満了とともに辞めることも可能です。

ワークライフバランスを実現しやすい

契約社員は、正社員に比べると、契約上は仕事の内容が限定されています。そのため、契約内容によってはワークライフバランスを実現しやすい場合があります。

ただし、正社員と契約社員で業務上は大きな差がないケースもあるので、実態としては企業や業界によってしまうのが本当のところです。

また、契約社員は勤務地も決まっているため、ライフプランを立てやすいのもメリットです。

契約社員のデメリット

コインの山を登る人の指

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契約社員にはメリットだけでなく、デメリットもあります。契約社員のデメリットとして、特に押さえておきたいポイントを2点紹介します。

昇進・昇格の機会が少ない

契約社員のデメリットとしては、昇進・昇格の機会が少ないことが挙げられます。契約社員は、最初の契約時の条件で、期間満了まで働くのが一般的です。

よい働きをしたとしても、途中で給料が上がったり待遇がよくなったりするケースはほとんどありません。長期契約は安心ですが、ずっと同じ条件で働くことになるため、正社員と比べてモチベーションの維持が難しくなる人もいるでしょう。

また、契約満了での更新の際には、自分で条件を交渉する必要があります。派遣社員であれば、派遣会社が間に入って条件交渉してくれますが、契約社員は自分で企業と向き合わなければいけません。

雇用が不安定

雇用が安定しないのは、契約社員の大きなデメリットといえます。契約期間が満了したとき、契約が更新される保証はありません。もしそのまま契約終了になったときには、新たな職場を一から探す必要があります。

派遣社員の場合も期間が決まっていますが、派遣先を派遣会社が探してくれるという点で、契約社員と異なります。派遣社員は、自分だけで新たな職場を探す必要がなく、契約期間満了となっても負担が軽いことがほとんどでしょう。

しかし、契約社員は自分だけで仕事を探さなければならず、契約期間満了になり更新されなかったときの負担が大きいのです。

契約社員から正社員になれる可能性はある?

パソコンを打つ男性

(出典) photo-ac.com

契約社員を足がかりに、正社員としての採用を目指す人もいるでしょう。それでは、契約社員から正社員になれる可能性はあるのでしょうか?正社員を目指す人が、チェックしておきたいポイントを解説します。

契約社員の5年ルールとは?

契約社員には、契約期間「最長3年(高度な専門知識が必要な職種や定年後に継続雇用される場合は最長5年)」しか働けないという制限があります。

また、更新も含めて継続して5年たてば期間を限定しない「無期労働契約に転換できる」というルールもあります。2013年4月1日に施行された改正労働契約法で追加された内容で、契約社員などの有期労働契約者の処遇を改善する目的で定められました。

具体的には、期間を定めた労働契約が通算5年を超えたときに、労働者が申し出れば無期労働契約に転換できるというものです。

ただし、無期労働契約だからといって、必ずしも正社員になれるとは限りません。期間の定めがない『無期契約社員』など、ほかの雇用形態の可能性もあるため注意しましょう。

参考:無期転換ルールについて|厚生労働省

正社員登用制度をチェック

無期契約社員ではなく、正社員を目指したい場合は、正社員登用制度の有無をチェックしましょう。企業によっては、契約社員や派遣社員からの正社員登用を積極的に実施しているケースがあります。そういった企業を選べば、正社員への道も近くなるでしょう。

正社員登用制度の有無だけでなく、実際に制度を利用した登用実績があるのかどうかも確認すべきポイントです。名目上挙げているだけで実績がない場合、正社員になれる可能性は低くなってしまいます。

採用前に正社員登用制度の詳細を確認しておけば、正社員への転換意志も伝えられるため、詳しくチェックしておくのがおすすめです。

契約社員という働き方を考えてみよう

ミーティング中の人

(出典) photo-ac.com

契約社員という働き方には、メリットもデメリットもあります。しかし、自分のライフプランに合っているなら、選択肢の1つとして考えてみるのもよいでしょう。

契約社員の特徴や、正社員・派遣社員との違いを理解した上で、自分がイメージする働き方を実現できるか、具体的に検討してみることが大切です。

ゆくゆくは正社員になりたいという人は、契約社員として採用される前に正社員登用制度の有無や実績も確認してみましょう。まずは契約社員として働いてみることで、その企業で正社員としてやっていけそうかどうかの判断の目安にもなるはずです。

中野裕哲
【監修者】All About 起業・独立のノウハウガイド中野裕哲

起業コンサルタント、税理士、行政書士、特定社労士。年間約300件の起業無料相談受託。起業準備から経営までまるごと支援。税理士法人V-Spirits (経済産業省経営革新等認定支援機関) グループ代表。
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著書:
0からわかる! 起業超入門 相談件数No.1のプロが教える失敗しない起業55の法則
一日も早く起業したい人が「やっておくべきこと・知っておくべきこと」