フェルミ推定の基礎知識!早めの対策で苦手意識をなくしておこう

ハイクラスの仕事に転職する場合は、フェルミ推定の問題が出ることもあります。基本知識や事前にできる対策法を知っておけば、余裕を持って本番に臨めるでしょう。フェルミ推定の目的や解き方、おすすめの事前対策法について解説します。

フェルミ推定とは?

電卓

(出典) photo-ac.com

「フェルミ推定」という聞きなれない言葉を、転職活動中に初めて耳にしたという人も多いでしょう。フェルミ推定とは一体何なのか、まずは概要を解説します。

正確な数字が分からないものを概算する

フェルミ推定とは正確な数字で解答できない問題を概算することです。ノーベル賞物理学者のエンリコ・フェルミが考案したことから、フェルミ推定と呼ばれています。

一見するとまるで答えの予想がつかない問題を、与えられた情報から論理的思考にのっとり概算していくのが、フェルミ推定のテストで求められる力です。

出題される問題の具体例としては、以下に挙げるようなものがあります。

  • 日本にあるコンビニの数
  • 世界中で今寝ている人の数
  • 日本の小学生・中学生・高校生・大学生の合計人数
  • 日本国内における缶コーヒーの年間売上高

フェルミ推定では解答を導き出すまでの過程が重要です。フェルミ推定で出した答えと実際の答えがかけ離れていても問題ありません。

論理的思考を求められる職種で出るテスト

フェルミ推定はコンサルティング業界・外資系・金融投資系の採用試験でよく行われます。いずれも論理的思考力や問題解決力、分析・解析能力を求められる職種です。

例えばコンサルティングの仕事では、依頼者が抱える問題を分析し、問題の背景にあるものを確認しなければなりません。問題の解決を図る過程で必要となるスキルが論理的思考力なのです。

金融投資系の分野でも、企業のM&Aや資金調達の提案を行う業務で、買収価格の概算や資金調達方法の説明を行うための高い思考力や提案力を求められます。

フェルミ推定を行う目的

資料を前に説明するスーツの男性

(出典) photo-ac.com

フェルミ推定は応募者のどのような能力を見るために実施されるテストなのでしょうか。企業がフェルミ推定を行う目的について解説します。

推論する力を測る

フェルミ推定で最も重視されるのは、応募者の推論する力を測ることです。抽象的な問題を現実的な数字に当てはめて結果を導き出す力や、何を切り口にするか考える力を見られます。

フェルミ推定で出題される問題は、思考力や発想力を求められるものばかりです。答えを出すために必要なデータの活用方法、解答を導くためのアプローチなど、解答そのものではなく解答までのプロセスに注目されます。

柔軟性のある思考力もフェルミ推定で見られる能力の1つです。臨機応変に対応できたり、変化する物事へスピーディーに対応できたりする力は、ビジネスシーンでも重要視されます。

論理的な説明・プレゼン力もポイント

フェルミ推定では自分の中で答えを出すだけではなく、過程や結果の論理的な解説ができるかも見られます。なぜそのような解答を導き出したのか、第三者が分かる内容で適切に説明しなければなりません。

フェルミ推定を通してコミュニケーション能力やプレゼン力も判断されます。いずれもビジネスシーンで仕事をうまく進めていくために欠かせないスキルです。

コミュニケーション能力やプレゼン力は、文章だけでは十分な判断ができません。そのため、フェルミ推定は面接官を交えたグループワーク形式で行われるのが一般的です。

解き方の基本ステップ

バインダーを手に記入する男性

(出典) photo-ac.com

フェルミ推定で出題される問題の解き方を具体的に紹介します。基本的なステップとそれぞれの重要ポイントを押さえておきましょう。

前提条件を確認する

フェルミ推定の問題を解く際は、最初に前提条件を確認することが重要です。出題者側の意図に沿った適切な答えを導き出すために、条件を明確にしなければなりません。

例えば「缶ビールの売上高を求めよ」と問われた場合は、「日本か全世界か」「期間はいつからいつまでか」を確かめる必要があります。銘柄の指定があるのかもチェックすべきでしょう。

前提条件をあいまいにしたまま問題に取り組むと、出題者の意図から外れた解答を出してしまいかねません。明確な前提条件がない場合は、ある程度の前提をチームで決めましょう。

構成要素をピックアップして式を作る

前提条件が明確になったら、答えを導き出すために必要な要素をピックアップして式を作ります。構成要素の種類は問題の内容によりさまざまです。

例えば日本国内での缶ビールの年間売上高を求めるなら、「缶ビールの単価×販売数量」の式で売上高を求められます。この問題は販売数量をどのように考えるのかがポイントです。

ビールの販売数量を求める場合、ビールを飲む年齢層を決める必要があります。1人当たり年間で何回ビールを買うのかも考えなければなりません。

このように要素を分解していけば、最終的には「缶ビールの単価×ビールを飲む人口×1人当たりの年間購入回数」という式が作れます。

式に必要な数字を入力する

問題の構成要素をもとに式ができた後は、必要な数字を式に入力します。缶ビールの年間売上高の式では、「ビールを飲む人口」と「1人当たりの年間購入回数」の数字をどのように出すのかがポイントです。

ビールを飲む年齢層は、飲酒可能年齢のうち20~80歳が妥当なラインでしょう。さらに「お酒を飲まない人の割合」「お酒の中からビールを選ぶ割合」などを考慮していきます。

1人当たりの年間購入回数を考える場合は、「1週間当たりの飲酒回数」や「季節による回数の違い」などについて仮説を立てれば、説得力のある数字が出せるでしょう。

一般的にフェルミ推定では問題を解く時間が限られています。ゆっくりと考える時間はないことが多いため、決まっている数字を使える場合はある程度の前提情報を知っておくことが重要です。

最後に検証を行う

作成した式に数字まで入力できたら、解答を出す前に式や数字の妥当性を検証しましょう。あまりにも現実離れしているような答えが出た場合、分析ミスをしている恐れがあります。

最後に検証して解答に無理があったり、面接官にミスを指摘されたりした場合は、式や数字を再度考えてみなければなりません。前提条件や構成要素の設定が誤っている可能性もあります。

明確な答えがないフェルミ推定においては、プロセスを振り返って検証を行うことも重要な作業です。面接官を納得させられる解答が出るまで、しっかりとチェックしましょう。

事前にできる対策は?

ノートに書き込み勉強するイメージ

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前もって準備をしておけば、余裕を持ってフェルミ推定の問題に臨めるでしょう。事前にできる有効な対策を紹介します。

材料になる情報を覚える

フェルミ推定で式に入力する数値の中には、あらかじめ知っておくと便利なものがあります。例えば以下に挙げる情報の数値を覚えておけば、より精度の高い答えを導き出せるでしょう。

<日本に関する統計値>

  • 人口
  • 世帯数
  • 国土面積
  • 平均寿命
  • 労働人口
  • 年間出生数
  • 大学進学率
  • 企業の数
  • 学校の数
  • 平均年収

各項目における最新の数値は、官公庁のサイトで調べれば公式データが分かります。雑学の知識を増やす感覚で、なるべく多くの情報を事前に覚えておくとよいでしょう。

分からない数値がある場合も、知っている数値から仮定することが可能です。例えば平均世帯人数が分からないなら、「総人口÷世帯数」で仮定できます。

対策本で練習をしよう

フェルミ推定の事前準備としては、対策本で練習を積んでおくのもおすすめです。フェルミ推定の対策に特化した参考書が数多く販売されています。

対策本に掲載されているさまざまな例題を解いておけば、問題の傾向を把握することが可能です。どのようなパターンの問題が出題されるのか分かっていれば、本番もスムーズに臨めるでしょう。

要素の拾い方や切り口を自分の中でストックできる点もポイントです。できるだけ多くの問題に触れ、前提条件の確認や構成要素のピックアップに慣れておきましょう。

最初は簡単な問題からチャレンジ

今までフェルミ推定の問題をまったく解いたことがない人は、簡単な問題からチャレンジしましょう。フェルミ推定の考え方に慣れておくことが大切です。

いきなり難しい問題に挑戦しても解けないだけでなく、苦手意識を持ってしまう恐れがあります。チャレンジする問題の難易度を徐々に上げていくのがおすすめです。

対策本の中には、フェルミ推定を体系立てて学習できるものや、ステップ別に分析方法を学べるものなどがあります。最初は初心者向けの入門編から取り組むとよいでしょう。

選考試験を受ける際のポイント

スーツの男性

(出典) photo-ac.com

フェルミ推定を受ける際に気を付けたいポイントについて解説します。テストで高評価を得るために、以下の2点をしっかりと理解しておきましょう。

完璧な数字を求めすぎない

フェルミ推定の問題を解く際は、完璧な数字を求めすぎないことが大切です。答えの数字にこだわりすぎると、無駄な時間を費やしてしまう恐れがあります。

フェルミ推定では完璧な答えを求めていません。たとえきちんと調査したところで、そもそも答えとして正確な数値を出せない問題もあります。

材料になる前提情報に関しても、無理に最新情報や細かい数値を用意しておく必要はありません。前提情報はあくまでもあると便利な情報に過ぎず、分からない場合は仮定の数値でも大丈夫です。

重要なのは考え方と答え方

フェルミ推定で重要視されているのは、答えを出すまでの考え方や、自分の考えを人に説明できる能力です。数字にこだわるのではなく、プロセスにこだわらなければなりません。

拾い上げた要素や作成した式に的外れな部分がないか、論理的な方法で答えを導き出せているかなど、解答までの過程をきちんとまとめることに注力しましょう。

最後にしっかりと検証することや、自分の考えを相手が理解しやすいように話すことも、強く意識する必要があります。

論理的思考を育てるのは仕事上でも有利に!

ノートに記入する男性

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正確な数字が分からないものを概算するフェルミ推定のテストは、主に論理的思考を求められる職種の採用試験で出題されます。推論する力やプレゼン力を測るのがフェルミ推定の目的です。

フェルミ推定の問題は解き方がある程度パターン化されており、事前の対策が功を奏します。論理的思考を育てれば仕事上でも有利になるため、早めに準備をしておきましょう。