2022年10月から看護師の給料が上がっている?金額や条件を解説

2022年10月から、看護師の給料が上がったのはご存知でしょうか?看護師にとっては朗報ですが、給料アップの対象者となるには一定の条件が必要です。この度の給料見直しの背景から金額・対象、前回の給料見直しとの違いまで解説します。

2022年10月から看護師の給料がアップ

看護師の女性

(出典) photo-ac.com

まずは2022年10月から始まった、給料見直しの背景と具体的な金額に触れます。基本の金額を押さえた上で、細かい計算方法も把握しておきましょう。

なお本記事では、厚生労働省による「個別改定項目について」をベースに紹介していきます。

参考:個別改定項目について|厚生労働省

1人当たり月額1万2,000円相当の給料アップへ

2022年10月から、看護師の給料が月額1万2,000円相当上がりました。今回の給料見直しは、看護職員処遇改善評価料の新設(診療報酬の改定)による給料見直しで、今後も継続的な給料アップが担保されています。

看護師の給料が見直されるきっかけとなったのは、岸田内閣の成立です。2021年秋頃から、新型コロナウイルス感染症の対応に取り組む看護師を対象として、給料アップの議論が行われてきました。

2022年8月に給料見直しの方向性が固まり、10月から実施される結果となった次第です。月額1万2,000円は、看護師の収入の3%に当たる金額として、今回の給料見直しの基準になっています。

看護職員処遇改善評価料の計算方法

新設された看護職員処遇改善評価料は、外来診察料ではなく、入院料に加算されます。

看護職員処遇改善評価料の区分は全部で165通りあり、「看護職員数と延べ入院患者数をもとに計算した数値」から決まる仕組みになっています。

区分ごとに点数が割り当てられていて、看護職員処遇改善評価料1の1点から、看護職員処遇改善評価料165の340点まであります。

【数値の計算式】

  • 看護職員等の賃上げ必要額÷(当該病院の延べ入院患者数×10円)

また「看護職員等の賃上げ必要額」は、以下の式で計算されます。

【看護職員等の賃上げ必要額】

  • 看護職員等の数×1万2,000円×1.165

給料アップの対象要件は?

バインダーを見せる看護師の女性

(出典) photo-ac.com

自分が給料アップの対象者かどうかは、特に気になるところでしょう。今回の給料改善の対象になる条件を解説します。

対象の病院

自分が対象か確認する前に、まずは自分の勤めている病院が対象になっているか確かめる必要があります。今回の給料見直しの対象病院は、以下のいずれかの条件を満たす保険医療機関です。

  • 救急医療管理加算に係る届出を提出済みで、年間200件以上の救急搬送に対応している
  • 救命救急センター・高度救命救急センター・小児救命救急センターの、いずれかを設置している

1つ目の条件における救急搬送件数は、給料見直しを実施する年度を基準として、前々年度の実績をもとに判断されます。届出を新規で提出する場合は、前年度の実績が対象です。

また、年間200件以上の実績を満たせなくなったとしても、給料見直しの実施年度の前年度に、半年間で100件以上の緊急搬送実績があれば対象になります。

対象となる職種

対象の病院で勤務している人の中でも、職種によって給料見直しの対象者が限定されています。

今回の給料見直しの対象者は「看護職員」です。看護職員の範囲は、看護師・准看護師・保健師・助産師です。

また、各保険医療機関が実際の勤務状況から判断して、看護補助者・理学療法士のほか、歯科衛生士・診療放射線技師・管理栄養士などコメディカルの職員を、給料見直しの対象とすることもできます。

ただし対象となる職種の人であっても、産前・産後休業中や育児休業中、介護休業中の職員は対象外となります。さらに薬剤師は、今回の給料見直しの対象にはならないのも大きなポイントです。

診療報酬改定のポイント

給与明細と電卓とペン

(出典) photo-ac.com

看護師として働く人にとって、今回の給料改善はうれしいニュースです。しかし、表面的な内容だけをすくい取ってしまわないよう注意が必要です。診療報酬改定で押さえておきたいポイントを解説します。

一定の給料アップが保証されている

看護師らの給料アップは国の政策にもとづく決定ですが、実際には各病院を通して行われます。病院を経由すると聞いて、「支給されたお金が、別の用途で用いられるのではないか」と心配する人もいるでしょう。

しかし、新設された看護職員処遇改善評価料にもとづく金額は、全て看護師らの処遇改善にのみ用途が限定されているため心配無用です。また2/3以上の金額は、基本給あるいは毎月の手当として支給するよう定められています。

さらに、一部項目の給料を上げ、その代わりに別の項目の給料を下げることも禁止されています。これらのルールを遵守しているかは、年に一度の「賃金改善実績報告書」によって確認される仕組みです。

必ずしも1万2,000円上がるわけではない

2022年10月以降は、必ずしも対象者全員の給料が1万2,000円上がるわけではない点も、理解しておく必要があります。

看護職員処遇改善評価料にもとづく金額の2/3以上は、毎月の給料に反映させるのが必須です。しかし、残りの1/3は直接的な給料の改善に使う義務がありません。

処遇改善に使われるため、何らかの形で恩恵を受ける可能性はありますが、実感を伴う変化につながらない場合もあるでしょう。

また給料改善の対象者数と、診療報酬の計算で用いる看護職員数は別である点も重要です。つまり、看護職員以外も給料アップの対象になり得ますが、各保険医療機関に配分されるのは看護職員の人数にもとづく金額なのです。

したがって、看護職員以外の給料改善にも取り組む保険医療機関で働いている場合、1人当たりの給料アップの幅は小さくなります。

2022年2〜9月に支給の補助金との違い

給料袋と電卓と明細

(出典) photo-ac.com

看護師の給料アップに向けた政策は、実は2022年2〜9月にも実施されていました。ただし、10月以降の給料改善とは枠組みが異なります。9月以前と10月以降の給料改善の相違点を解説します。

支給される金額と財源

2022年2〜9月の8カ月間にわたる給料改善の取り組みも、今回と同様に岸田内閣の意向によるものでした。引き上げられる金額は4,000円で、看護師の収入の1%に当たる金額です。

9月までの給料アップは、10月から始まる本格的な給料改善の先駆けとして実施されました。迅速な適用を実現するために財源には公費を使い、一時的な補助金として支給された点が、10月以降の給料改善との違いです。

参考:看護職員等処遇改善事業 |厚生労働省

給料アップの対象施設と対象者

給料アップの対象も、9月以前と10月以降では異なります。2〜9月の給料改善では、コロナ医療などに取り組む医療機関が対象施設でした。具体的には、年間の救急搬送が200件以上、あるいは三次救急の役割を担う病院です。

10月以降では、コロナ医療への取り組みは要件から外され、条件が緩和しました。職種としては、看護職員が対象なのは同じです。

また、看護職員以外のコメディカルも、実情に応じて給料改善の対象者にカウントできます。

自力で給料を上げる方法も紹介

病院での打ち合わせ

(出典) photo-ac.com

今回の国の政策で看護師の給料アップが実現されましたが、外部要因に頼らず、自力で給料アップにつなげる方法もあります。ここでは、努力次第では給料アップが期待できる方法を紹介します。

管理職に昇進する

給料を上げる1つ目の方法は、昇進して師長・主任などの管理職を目指すことです。昇進して責任のある役職に就けば、昇給して現在よりも多くの給料をもらえます。

昇進しなくても勤務時間を増やしたり、夜勤を増やしたりすればより多くの給料をもらえますが、心身への負担を考えるとよい選択とはいえません。管理職に就けば、持続的かつ効率的な働き方で給料アップが可能です。

資格を取得する

給料を上げる2つ目の方法は、専門・認定看護師などの資格を取得することです。特定分野におけるスペシャリストとして手当てが支給され、同時に管理職へ昇進できるケースも多くみられます。

専門・認定看護師は配置や看護外来など、診療報酬に位置付けられています。自分の興味、関心が持てる業務に従事できるとともに、昇給にも期待が持てます。

別の病院に転職する

看護師の給料は、働いている病院の経営状況や、職員の待遇に対する考え方に大きな影響を受けます。

勤務先によって給料の相場が異なるため、同じ業務内容でも転職するだけで給料アップにつながるケースも珍しくありません。

また、ある程度のキャリアを積んでいるなら、転職ではなく独立して事業所を開設するのも1つの手です。転職や独立に抵抗がある人は、まずは副業として単発の仕事に手を付けるのもよいでしょう。

転職先の病院を探すときは、「スタンバイ」を利用するのがおすすめです。こだわりの条件をもとに探せるため、自分にぴったりの病院が見つかるでしょう。

スタンバイ|国内最大級の仕事・求人探しサイトなら

給料アップを目指して自分でも動き出そう

看護師の女性

(出典) photo-ac.com

2022年10月に改定された、診療報酬の中身を詳しく確認しました。今回の改定は2〜9月に実施された、給料見直しの延長線上にある取り組みです。

10月以降は、継続的に月額1万2,000円相当の給料改善が適用されます。新たな診療報酬の恩恵を受けるには、対象の病院で働いていることが条件です。

看護職員のほかにコメディカルも対象になり得ますが、1人当たりの配分額が下がる点などは踏まえておく必要があります。

政策による給料見直しに頼るのではなく、自分の努力次第で給料アップにつなげられる方法もあります。昇進を目指したり、転職・副業をしたりして、積極的に給料アップを目指しましょう。

藤澤一馬
【監修者】All About 看護師 / 在宅介護と生活設計ガイド藤澤一馬

医療・お金・法律分野における三種の専門資格取得。医療、介護現場の生の声に応える、本当に知りたい情報を発信。企業、個人への医療・介護教育にも取り組む。
All Aboutプロフィールページ
公式サイト